PandoraPartyProject
さぁ行こう さぁ勝とう
過去から逃れられる人はいないけれど。
未来に夢見て生きる事は――誰だってやっていいんだ。
「言ったでしょ、殺すって」
終焉の地。始原の旅人たるナイトハルトが抗する地の一角で――
京は遂に、そのナイトハルトに協力する者を追い詰めていた。
ヴィッター・ハルトマン。彼もまた旅人(ウォーカー)たる者。
つまりはイレギュラーズだ。しかし彼は滅びの側に立っている。
『非常に個人的な』事情の為に。
ナイトハルトから終焉獣を託され、R.O.Oよりサルベージしたベヒーモスを託され……しかしその全てをイレギュラーズに突破されてしまった。これだけの膨大な数がありながら何故――
いやその理由など今はどうでもいい。
とにかく終焉に与した彼の命もまた風前の灯火であった。なぜならば……
「あなたは本当に邪魔。あなたがどう動こうがね、もしも万が一彼が死んだら――」
ワタシのチャンスがなくなるでしょ?
斯様な言を紡ぎながら、憤怒たる感情を秘めている京が眼前にいるのだから。
ヴィッターは虎の尾を踏んだのだ。自らの目的を果たす為に余計なものにも手を出した。
彼はただ只管に一人の命だけを狙うべきだったのだ。そう……
「ヴィッターさん。私は貴方の命を背負う」
ハリエット、その者だけを。
彼女は告げる。己を追って来た過去――ヴィッターに対して。そして同時に……
決意の感情を瞳に込めながら。
「今まで犯した罪と貴方を殺した罪を背負って、これからも生きていく。
……灯をくれた人と共に。過去は変えられないけれど。それでも――
この先は。その人に恥じない生き方をするんだ」
「欺瞞だ。背負うなんて、罪から逃れようとする者の都合のいいワードなだけだ」
「それでも。『そう』だと決めるのは、貴方じゃないんだ」
例えヴィッターが何を言おうと、もう心が惑わされる事はない。
……生きるためになんでもやった。殺人と自身を売ること以外はほぼ何でも。
この手が汚れてないなんて決して言えない。
けれど。
――君は他人を信頼したくないのか、それとも信頼できるなら信頼したいのか。
あの時くれた言葉が、私の始まりだったんだから。
前を向いて生きていく。
「幸せになんてさせるか――ハリエット!」
「――ッ!」
「どこ狙ってんのよ――アンタは、最後まで!!」
だから動く。
その言葉をくれた人を護るために。
ヴィッター最後の足掻き。ならばと狙うはギルオスだ。
傍にはイラスがいる。援護せんとヴィッターの動きに目を光らせている寛治もいる。メイの注いだ守護の術式もある。更には傍にいる京が狙いに勘付いてヴィッターの首筋へ蹴撃を繰り出さんとしているか――だからその一撃が彼の命を奪う事が出来る可能性は低い。だけどハリエットにとってはそんなの関係ない。
護りたいと思うから護るんだ。
射撃音。その音色はほぼ同時に鳴り響きて。
一つはハリエットの肩を抉る。
そしてもう一つは――
「――」
ヴィッターの額に吸い込まれた。
鮮血迸る。それは命を奪った、正にその証左。
だけど。生きていくと、決めたのだから。
「ハリエット! なんて無茶を……! 君が死んだら、僕は」
「――ギルオス、さん」
駆け寄って来る姿があった。肩を負傷し、倒れようとした彼女を支えるギルオス。
暖かな手の平が、包み込む。
あぁ。
混沌に来てから随分経ったけど。時を重ねて、貴方に恋する気持ちを教えて貰った。
いや、恋よりもっと大きくて、温かい。
きっと、これは愛情。
――愛してるんだ。
「……やれやれ。戦場の最中だっていうのに、ホントお気楽なものね」
「イラス、茶化さないでくれ」
「大切なものが出来たならもう離さない事ね――それより、まだ残ってるわよ」
と。視線を戦場全体へと向けながらギルオスへと言葉を繋いだのは黒髪のイラスなる者だ。彼女が言うのは周囲の終焉獣……だけではない。ヴィッターが指示していたベヒーモスの事を指している。
だが、奴も時を同じくして打ち倒されんとしている。
数多のイレギュラーズの攻勢。鉄帝国軍人による砲撃や、迷宮森林警備隊による弓撃。
それらが間断なく放たれ、指揮していたヴィッターも落ちたとなれば最早制御は効かぬのだ。最後の灯か、先程よりも随分と見境なく暴れ散らかしているようだ、が――
「ぬぉぉぉおおおりゃぁぁぁああああああああああッ!!!」
咆哮するかの如く立ち向かった光があった。
――夢心地だ! ウォーワイバーンを駆りて高速のままベヒーモスへと向かう。練りに練り上げた御殿様ゲージは既に最終段階にまで至っている――ならば今こそ解き放つ時。飛翔と共に急降下。超速の儘に振るわれるソレは究極にして絶対奥義ッ!
――シン・シャイニング・夢心地・アルティメット斬!!
輝いて! 煌めいて! ときめいて!
ベヒーモスを両断せんと斬るッ!
されば右頭頂部付近から左腰へと掛けて一閃。軌跡がまるで光の如く描かれ……
「よし、一気に押し切ろう! ベヒーモスさえ倒せればこっちのものだよ!」
「然り。だが手負いの獣の最後の足掻きを食らう訳にはいかん。
速度は緩めぬからな――落ちるなよ」
「勿論! そこは任せて!」
故。スティアは、この一瞬を正念場と見据える。
クワルバルツの背に騎乗せし彼女は戦場を駆け巡りながら加護を齎し続けていた。治癒を。活力を満たす術式を。数多を用いて彼女はイレギュラーズ達の援護を成さんとする――
同時に想うのは。カロル・ロゥーロルゥーの事だ。
本物の方は竜と共にあったと聞く。彼女も遥か過去、こんな景色を眺めたのだろうか。
竜の背より眺める地平は遥か彼方まで捉えられるが如し。
……偉大な聖女に肩を並べられたかは分からない、けれど。
「聖女と理由が力を合わせて勝てない敵なんているはずもないよ!
――ベヒーモスを倒そう。滅びの化身を倒して、人と竜の可能性を……見せるんだ!」
「そうだよクワルバルツちゃん! 相手が世界のなんだろうと、関係ない。
私達は生きている。私達は此処に確かにいるんだって事を証明してみせよう!」
「むっ。おい、お前までいつのまに私に……!」
刹那。スティア以外の声がしたと思えば、サクラではないか! まぁまぁいいじゃん! という形で乗せてもらい機を窺っていたのだ。ベヒーモスに隙が出来る瞬間を。そしてその時は来た……!
「細かい事はともかくクワルバルツちゃん、ベヒーモスの直上に移動して貰ってもいいかな!? そうしたら後は思いっきり叩き落して! 大丈夫、生き残ってみせるから!」
「注文の多い輩だな――! 死んだら自らを恨……せめて話を聞けェッ!!」
重力の力を用いてベヒーモスへと撃を叩き込み続けるクワルバルツ。
であれば、その周囲では非常に強い重力による奔流があるものだ――
サクラはソレをあえて利用する。恐れなく地上方向へと向かって、跳躍。
――神速の勢いで跳び降りたのである。
返事もろくに聞かず、しかし信じているからと。
往く。ベヒーモスが悪あがきの如く巨大なる腕を振るってくるが。
知った事か。
「お祖父様、力を貸して……!」
紡がれた想いがあるのだ。こんな存在に断ち切らせなどしない――!
腕が振るわれれば、その腕を逆に足場にしてやり、更なる跳躍と成せば。
「これが私達の! 人と竜の絆の一撃だぁ――!!」
斬撃一閃。斬りこんだ。
先程夢心地が斬りつけた方向とは逆の左側から斜めに。さればベヒーモスに刻まれるのはまるで――十字の刻みが如く。罰を与えし斬撃が……
滅びの象徴たるベヒーモスを打ち倒そう。
――消えていく。R.O.Oデータよりサルベージされた存在であるベヒーモスは、まるで砂の如く。外殻より徐々にその形を保てなくなっていく。仕舞にはその巨体が地上へと倒れ込もうか。
されば終焉獣達が幾らか下敷きになるものだ。
衝撃波。後ろに倒れ込んだが故にこそ、イレギュラーズ達には左程の被害はなく。
逆に終焉の側には多くの被害を齎す――滅びの化身の筈がなんたる皮肉であろうか。
「ぉぉお! あのデカブツが倒されたぞ! 今だ、突撃――!!」
「えぇい血の気の多い連中が逸って……! しかしこの機を逃す意味はない、かッ」
「そうだよ、突撃だよ突撃!! 今なら――届く!」
そしてすかさず現地の鉄帝国軍が戦場の傷跡を広げんと士気が高揚。
大突撃を行い始める。彼らにも疲弊が溜まっている筈だが、機を逃す訳にはいかぬと。
であればゲルツ・ゲブラーは迷いながらもその流れに乗らんとし。
同じくアウレオナ・アリーアルも愛刀と共に続くものだ。
滅びの気配が薄れてきている。
イレギュラーズ達の活躍はここだけではない。各地で轟いているのだから。
それもまた彼らの戦意と活力を満たしているのか――
ならば行こう。この勢いの儘に。
滅びを晴らし、平穏なる世界をこの手に掴む為に。
始原の旅人を――討ちに行くッ!
※<終焉のクロニクル>始まりのレクイエムが最終局面に移行しています!
※『咎の黒眼』オーグロブとの戦いが終結しました――!
※最終決戦が進行中です!
※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
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これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|Bad End 8(終焉編)
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