PandoraPartyProject
大失敗
「……どいつもこいつも!」
悪態を吐く『冠位色欲』ルクレツィアの美貌は表現しようもない位の不機嫌に歪んでいた。
風月なる流れ者に裏切られたのがケチのつき始めだった。
「子供のお使いもこなせないなんて! ああ、本当に使えない……!」
『冥王公演』の重要パーツとして使う予定だったガブリエル・ロウ・バルツァーレクを失った事は過ぎた事にしても、そのリカバリーに当たった三つの手管の全てが成功とは言えない結果に終わったのは憤る彼女としても予定外の事であった。
『煉獄』の器となるリア・クォーツ(p3p004937)の心を蹂躙せんとした企てはガブリエルを皮切りに、クォーツ院も、バルツァーレク貴族派も、中央教会への仕掛けも全て不発に終わっている。幾分かの被害を出せた程度の話はあるのだが、目標とする結果にはまるで届いていない現実がある。
「アタナシアの奴も……ああ、もう。期待した私が馬鹿でしたわ」
愛しい主君の唇から自身の名が零れ落ちた事をアタナシアは喜ぶだろうか?
それとも、それを語る彼女の声色に強い苛立ちがあった事を嘆くのだろうか?
実際の所は分からないが、重要なのは現時点でルクレツィアの望みが順調に叶っていない方の事である。
「人質が居ないという事は、本腰を入れて攻められる可能性があるという事でもある。
否。実際問題、彼等は『来る』だろうな。それはたとえ御身が直接出陣しても同じ事だ」
「……っ……!」
ギリ、と犬歯を鳴らしたルクレツィアは憎悪の目でダンテを見た。
「侮るな」と言ってやりたいのは山々だが、ローレットは七罪の中でも最も戦闘に特化した『最強』のバルナバスを相手にしても怯まない連中である。
冠位が五つまでも失陥している現状を考えれば、勝敗は兎も角『来る』事だけは確実だろう。冠位七罪――更には『愛しいオニーサマ』こと原罪イノリの目的は滅びのアークを溜め、神託を成就する事である。
『その時』が迫りつつある今、ルクレツィアはつまらない戦いでリスクを背負いたいとは思えない。
『冥王公演』さえ発動したならば、幻想(このくに)は大混乱に陥るのだ。
頼りにならない兄弟とは別に、イノリもさぞ自分を見直すに違いないと言うのに!
「……本当に、忌々しい」
「如何なされるか。『冥王公演』の準備は進んでいる。
これではアベリアは抗するだろうが、それはか弱い光。発動自体も可能性も未だ十分だ。
しかし、幾分か時間が掛かるのは確かだし――私はローレットの全戦力との激突は想定していない」
「……」
「采配次第だな、スポンサー殿」
「分かっておりますわよ!」
ダンテの言葉に癇癪を爆発させたルクレツィアが声を激しく荒らげた。
「……貴方の『黄金劇場』に力を貸して差し上げます」
「ほう?」
「貴方程度の結界では侵入者全てを阻む事は難しいでしょう。
しかし、私が貴方の劇場を完成させれば外部からの侵入は不可能になる、はず」
「……成る程、目的が済むまで只管守りを固めるか」
「非力な貴方達の為ですッ!」
ルクレツィアの言葉にダンテは肩を竦めた。
冠位七罪は大半の者が『傲慢』も兼ねている。特に性格が『これ』なルクレツィアが逃げ回って自分の計画を遂行するような真似を嫌う事は目に見えていた。
(さぞ、自尊心が傷付いた事だろうな。スポンサー殿は)
冷笑を浮かべたダンテはしかし考える。
(元より、『冥王公演』の最終章にはスポンサー殿の『権能』が不可欠だった。
ならば、黄金劇場の強化はどうあれ一石二鳥か。彼女からすれば不本意極まりないのだろうがね!)
やり方は不満かも知れないが合理的ではある。
成る程、それに特化した冠位色欲の結界を超えられる者等、人智の範囲には有り得まい――
※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……
※プーレルジールでの戦況が届いています――!
※神の王国に対する攻撃が始まりました!!
※『遂行者』グドルフ・ボイデルの身に変化が起こりました――
これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|終焉の兆し(??編)
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