PandoraPartyProject

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狂黒の気配

 鉄帝の戦乱の気配がまだ燻って居た頃の話だ。
 覇竜領域ではピュニシオンの森での探索が続けられていた。その中で、珱・琉珂 (p3n000246)は『ピュニシオンの森の先』についての調査を敢行すると決定した。
「危険だけれど、共に来て欲しいの」
 その結果を元にして里長代行達と今後の方針を決めるために。

 ピュニシオンの森での探索を終え、目的の『モノ』が入った箱を手にしたイレギュラーズ達は一冊の手帳を手にしていた。

 ――この手記を手にした者へ。

 そんな書き出しから始まったのは珱・珠珀が敢てピュニシオンの中に残したという手記であった。
 フリアノンの元里長が態々残した手記の中にはベルゼーと過ごした日々のことが描かれている。
 幼少期の琉珂の事、そして、彼がベルゼーに聞いたという『ピュニシオンの森』の向こう側の話。
「……此処から先が、『知れば行きたくなるかも知れない場所』」
 そう呟くЯ・E・D(p3p009532)に琉珂は頷いてからゆっくりと頁を捲った。

 彼は竜種達が、何にも苛まれず過ごす事の出来る安寧の地を作ろうとしたらしい。
 その地で、我々との共存ができればと願ったのだろう。
 その地の名はヘスペリデス。
 屹度、何かあれば彼はその場所に行く事だろう。……竜は強い。彼に何かが起っても屹度、耐えられるはずだ。


「もしかして、珠珀さんは、知っていたのかしら」
 ガイアドニス(p3p010327)の呟きに琉珂は困惑をその表情に貼り付けた。
「うそ」
 全ては憶測でしかないが、もしかすると、珠珀は――琉珂の父は、ベルゼーの正体を知っていたのだろうか。
 黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は「それならば『何かが起っても』という言葉には合点がいく」と頷いた。
 そして、ベルゼーに『何か』が起るなら、屹度それは――男の望まぬ形で『権能が暴走する』という可能性だけだ。
「リュカ?」
「琉珂」
 秦・鈴花(p3p010358)朱華(p3p010458)の呼び掛けに琉珂は震えた声音で「あのね」と紡いだ。
「あの、……オジサマは『暴食』だった。いつかね、里に一緒に来た人が言っていたの。
 ニュクスさんっていって、金髪の、穏やかに笑う人だった。その人が『ベルゼー様は腹が空くと暴走するから』って」
 それは権能の暴走を意味しているのではないか。琉珂がそう捉えたように、スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)も同じ意味合いとして認識した。

 ラドンの罪域を超えねばならないという。ラドンとは、ベルゼーの友であった竜種の一人なのだそうだ。
 だからこそ、彼はその危険性を教えてくれた。狂黒竜ラドン……いや、正確な名を『ラドネスチタ』。
 ベルゼーの着けたニックネームを気に入り彼はそう名乗っているらしい。
 そのラドンは森を侵す者を許さない。故に、その地を越えんとする者を見定めるのだそうだ。
 それを聞いてから私はこの話しを他言せぬように決めた。だが、何時か森を越えようとした者が出た時のために記す。
 ヘスペリデスに向かわんとするならば、竜種を倒さねばならない。将星種は危険だ。
 だからこそ、その地に向かおうとした者よ、どうか――思い留まって……


 書かれた文字を見詰め、それ以上は琉珂は読まなかった。傍らのスティアは小さく頷く。
「……ラドネスチタ、とても、危険なんだね」
「もちろん、手記に書かれていた場所は目指すよね。本当、ベルゼーさんに会いにいくだけでも大冒険だよ」
 危険を承知の上で、その判断は揺るがないかとЯ・E・Dは問うた。知的好奇心が滲むようにも見えたその眸はこの地を大いに愉しんだ『』にも良く似ている。
「……彼が『暴走』したときに、全てを飲み込んでしまうなら、とっても辛い事でしょう。
 あの人は遠く離れることで護ろうとした、のですよね。なら、止めてあげなくては」
 ユーフォニー(p3p010323)が微笑めば、琉珂は「オジサマって本当に自分勝手」と呟いた。
「……私も、そう、思うわ。里を護るなら、オジサマが『暴走』してしまう可能性の芽を摘みたい。
 それ以上に……あの人の優しさを知っているから、私は、あの人の気持も守りたいと願って仕舞った」
 琉珂の唇が震える。ユウェル・ベルク(p3p010361)と鈴花は、続く言葉を待ちながら唇を引き結んだ。
 ――里長らしくない。エゴに塗れた、等身大の17歳だ。
「オジサマを、ベルゼー・グラトニオスを、その地に留め……。
 私は、里を、あの人の心を、護る為に、あの人を『冠位暴食』を倒したいわ」
「当たり前よ。里を好きにさせるもんですか。思いっきりぶん殴ってやりましょうよ! ね、ゆえ」
「うんうんっ、さとちょーがそうしたいなら、そうしよう。それじゃ、今は」
 くるりと振り返ったユウェルに朱華はにんまりと微笑んで。
「全員無事に、家に帰るわ!」
 勿論、『姉様』もと掴んだ掌の温もりは幼い日々を思い出す。
 この平穏を求め、愛した人が『世界にとって許されざる存在』だったならば。
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)はそれはどれ程の痛みであろうかと考えて嘆息した。ベルゼーは、身を引き裂かれるような思いで、ヘスペリデスへと向かったのだろうか。
(ああ、屹度……屹度……悲しみは計り知れないのでしょう。
 何もかもが儘ならないからこそ、物語は美しいとも言いますが……少しでも救いがあれば良いのに)
 ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)はそう呟いてから目を伏せた。深き森の奥地に存在する黒き影は『試練の時』を待っている――

 ※ピュニシオンの森の『先』について、新たな情報を入手しました――!


 ※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!
 ※昨日(4/1)は何もなかったよ……?

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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