PandoraPartyProject

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第2小節のそのあとで

●急報
「ぴ、ぴよぉ! 大変です皆さん! グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)さんが『呼び声』に応じ反転、姿を消したそうです! 魔種とそれを先導していた旅人は失踪したと……!」
 ブラウ (p3n000090)はローレットの談話室に駆け込むなり、今しがたあがってきた報告書をどさりと置いた。のちほど映像として視認できるだろうが、最も重要な点はローレットに於いても優秀な戦力として数えられるグリムの喪失であろう。
「深緑で起きた騒ぎは、弾正さんの弟さん含めかなり助けられたみたいです! ほんと、皆さん無茶しはる……治療も終わってるようで……」
 野火止・蜜柑 (p3n000236)はつい先日、深緑を騒がせた一連の事件について語る。場合によっては魔種の介入、そこから新たな【膠窈(セバストス)】の発生も懸念されていたことを考えれば、上々の成果だといえるだろう。少なくとも、大量の肉腫をそのまま、ないしなお悪い状況に持っていかなかったのは最善と言っていいだろう。大半の同志は豊穣に新天地を求めるのだという。
「海洋で起きた『毒の乙女』レイラのテロまがいの行動は弾正とアーマデルにビビってレイラが逃げちまったみたいだけど、だいぶ傷ついてるから上首尾だって聞いた。でも、誘拐なんて許せねえよな……」
 キータ・ペテルソン(p3n000049)は預かってきた資料をめくりながら報告する。魔種が毒で冒した子供達は生き延びること叶わなかったが、往来のど真ん中で始まったテロルの阻止、という意味でいえばこちらも大戦果といって差し支えなし。それに伴うイレギュラーズの被害は大きかったが、致命的ではない。よく堪えたと、称賛してよかろう。
「成程……有難う蝙蝠くん。そういう事だったんだね。人の心は本当に判らないね。ミスタ・冥夜の兄上はヴィジャ盤の破片を捨てて敗走、撃破には至らず。でも、そのコアの位置を特定できたようだよ。秘宝種の魔種を相手にするには、非常に大きな情報だと思っているけど、どうかな?」
 リリィリィ・レギオン(p3n000234)は蝙蝠から、先ごろ解決したばかりの事案について『蝙蝠』から報告を受けていた。曰く、鵜来巣 朝時なる魔種はイレギュラーズの実力、こと弟である冥夜のそれを認め、敗走を宣言したのだという。どこまで本音なのか測りかねるが、一先ず体を休められるだけの猶予は得たといっていい。
「これで『シュプレヒコール』絡みと思われる事件は一通り終わったということになりますね。ラサでは、『異形の母』と呼ばれる魔種が未確認の『セバストス』に切り刻まれて死亡、当該セバストスはそのまま撤退したとのことです。これを踏まえて、今までの話を整理しましょう」
 日高 三弦(p3n000097)は背後の壁に据えられた黒板に一連の事件について書いていき、これまでに起きた事態をまとめる。
「まず、昨年晩秋に『煮え炎の殺生石』なる魔種の異常個体が発見されました。こちらは問題なく処理されましたが、『彼女』が訴えかけた情報で、『シュプレヒコール』なる旅人とその盲信者が暗躍している事実が明らかとなります。彼の目的は『反転の観測』。魔種の発生ではありません。ここまではよろしいでしょうか?」
「ぴよぉ……旅人の方がそんな事をしたら、『滅びのアーク』が余計溜まりやすくなるのでは」
 三弦の説明を聞いたブラウが不安そうな声を上げ、三弦はそれに首肯する。『第1世代』、つまり直接混沌に送り込まれた旅人は即ち特異運命座標であり、その行動は『空繰パンドラ』を満たす行為に直結するのだ。だが、魔種を生み出す実験などしていれば、現れる『滅びのアークの軍勢』が圧倒的多量のアークを生み出すため帳尻が合わない。バランスが狂う。そのため、ローレットは彼の調査の為に少数精鋭のイレギュラーズを各国に派遣し、その動向を追ったのである。
 その流れで、ラサ、海洋、深緑、そして幻想の各国で『シュプレヒコール』と関連する魔種やその協力者を突き止めた、というわけだ。そして各国での結果は。
「で、手に入れたヴィジャ盤の破片は4、そしてダウジングストーンですか」
「ミスタ・朝時が投げよこしたものかい? 報告を受けた限りでは意味があるように思えないが」
「勿論、これ単体では意味がないのでしょう。割っていたということは単独では効果がなく、魔種達が守っていたならそれは重要と見ていいでしょう」
 リリィリィの言葉に、「つまりです」、と三弦は続ける。
「今保有しているヴィジャ盤と石とで、シュプレヒコールの本拠を割り出せる可能性があります」

『ヴィジャ盤』『ダウジングストーン』
「兄上が渡したこれに、そんな可能性が……あったなんて……」
「冥夜さん、危ないよ! ここに座ってて、ね?」
 鵜来巣 冥夜(p3p008218)は卓上に体を投げ出すようにヴィジャ盤の破片を置くと、荒い息を整える。アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は疲労困憊ながらも足を向けた冥夜の無茶ぶりに焦りつつ椅子を引き、座った彼の肉体を診た。命に別状なきことが、今見て取れる最大の功績か。
「長頼さんについての占いが外れてよかったー……って終わらせるわけにはいかないんだよね? シュプレヒコール……さん? を放っておくともっと酷くなるなんて」
「その上、アウスグライヒとかいう【膠窈(セバストス)】、つまりザントマンの同類が背後にいるんですよ? 面倒極まりないです」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)冬越 弾正(p3p007105)の弟の無事を喜ぶ……が、手放しとはいかない。雨宮 利香(p3p001254)の言葉通り、より厄介な敵の存在が明らかになったからだ。『ザントマンの同類』の言葉に、アレクシアは身を固くした。
「長頼が無事で帰ってきたのは皆のお陰だ。あとは、あいつを唆したシュプレヒコールを叩かなければ。それでラムダ殿、私見で構わないが……その、ヨタカ殿の現状は」
「あの魔種を倒したからか、睡眠は安定しているって聞いたよ。多分、武器商人さんがついているせいもあると想う」
 ラムダ・アイリス(p3p008609)は弾正に水を向けられ、ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)武器商人(p3p001107)について応じた。2人が話し合いの場に居ないのは、特に消耗がひどい両者を慮ってのことである。……冥夜の状態が大概ひどいとは想定外だったが。
「あのド悪人……亜心さんに一発いれられなかったのが悔しくて仕方ないですよ! でも、それ以上に……」
 ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)はそこまで言って口ごもり、歯を食いしばる。屈辱。その2文字以外で例えることすらかなわぬ苦い状況は然し、生きて帰ったことで多大な情報を持ち帰った有利に繋がっている。
「ま、まあ皆さん色々あったんですから、全部円満に解決とはいきませんよ! まずはこのヴィジャ盤を並べて、多分この石を真上で揺らせば……?」
 ともすれば暗くなりそうな雰囲気を、利香は無理やり明るくしようと努めた。慌ててヴィジャ盤を並べ、ダウジングストーンをその上に掲げ。
 数秒間、なにも起きなかった。だが、それぞれがどす黒い燐光を放つのを、一同は見逃さない。水晶が揺れるたびに呪いが解けるように文字が消え、クリアな色合いを取り戻す水晶。
 意味のない文字列だったはずのヴィジャ盤の並びに、あきらかに意味がありげな幾つかの単語が――言語がバラバラだが『崩れないバベル』の恩恵だ――並び始める。
「『幻想』と座標、そしてこれは……『フラド』、と読んでいいのかな? 人名だよね?」
「つまりこの座標、そこにあるだろう幻想貴族が今回の一件に噛んでいるということだろう。そうに違いない。すぐに捜索を」
 確認するように周囲に問うスティアをよそに、冥夜は即座に向かおうと立ち上がり、そして膝をついた。周囲の「言わんこっちゃない」という視線が痛い。
「大体のあたりはついたけど、行ってすぐ名前が割れてる貴族がシュプレヒコールを匿うだろうか? まずローレットで下調べをしてからの方がいいとボクは思う」
 ラムダの言葉に、一同は深々と頭を下げた。
 概ねの場所は判明した。……奇しくも三大貴族の領地を避けた格好となる、メフ・メフィートから西に真っ直ぐ向かったラサ国境・北付近を示しているのは笑い話にもならなかったが。

●影の底で
「……なーんですか、アレ。感じ悪ぅ。でも、あの毒々しさは悪くないですね」
「朝時は勝手に動くそうだよ。好きにやらせるといい。私も彼には興味が薄いし、なにか従わせようなんて思ってない。私は『か弱い』からね」
 正義巛巛亜心は、今しがたシュプレヒコールのところから去った鵜来巣 朝時のあまりの態度に毒づいた。生意気な男だ。どうにでもなってしまえ、と。だが、それと同じくらい制御できない悪というものに惚れ惚れしたものを感じてもいた。壊れているのだ、ブレーキというやつが。
「でも、君が報告してくれた一部始終は非常に興味深かった。あれはとても使いでがありそうだね。……いっしょじゃなかったのかい?」
「それが、姿をくらましてしまって……でも大丈夫! 亜心ちゃんは『2人も』新しい方を連れてきましたから!」
 亜心はシュプレヒコールの落胆したかのような声に応じ、ふんすと胸を張って連れてきた2人を迎え入れた。

「アリーよ」
「……グリム・サンセール」
 かたや、赤いドレスを身に纏った、如何にも『お高い』女。すべてを受け容れる気品を持っているようで、容赦なく切り捨てる冷酷さが感じられた。
 かたや、灰色に染まった幻想種。力なき目の中には、おそらくその場の誰もが映っている様子はない。
「なんじゃ、どちらも無愛想そうじゃの。どうにも妾はこういう手合いは好かん」
「でもぉ、こういった面々がいなければ『この地』を守れないわけですしぃ? 切れる手札は持っておいて損はありませんよぉ、ヒッヒ……!」
 2人の様子を見たアウスグライヒは不機嫌そうに鼻を鳴らす。だが、傍に居た医師――宇宙外科医・杉田玄黒は邪険に扱うことなきよう、アウスグライヒに言葉を重ねる。
「貴女の気まぐれで、ローレットがここを見つけるかもしれない。襲撃の算段を立てているかもしれない。だから、正義巛巛さんに頑張ってもらったんですからぁ」
「さて、どうかの? 場所も、ここを治め『た』貴族の名を得たとて、妾達のところまで辿り着けるかは分からぬ。そも、誰も寄り付かぬ辺境よ。どんな有様になっていたとて、生きて事態を伝えられる者がいなくば気付かれまい。この地の情勢にはな」
「小鳥達ならどうかは読めないけど、やはりたどり着けないだろうね。私達はただここでゆるりと、アウスグライヒの所業を見ていればいい。勿論、魔種諸君には働いてもらうが。……まだまだわからないことだらけのこの世界だ。よしんば彼らが辿り着いても、その時は丹念にすり潰さねばな」

※<Sprechchor op.Ⅱ>のシナリオが完結し、『原罪のシュプレヒコール』の本拠地が判明しました!
※グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)が反転しました……

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