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シナリオ詳細

<Sprechchor op.Ⅱ>永遠で在れ

冒険中

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング


 彼との出会いは偶然で、けれど後から思うのはどう考えても必然だったということ。
 静かな霊園の中、かけられた言葉と交錯する視線。その先にある瞳。
 何故彼が僕の名前を知っていたのかはわからない。けれど彼が名を呼んで、こちらを見た瞬間に魅入られてしまったんだ。
 美しい瞳だった。これこそが僕の待ち望んでいたもので、しかしもっと美しくなる瞬間がある――永遠にすべきは今ではない。
 だから友人として、たくさん彼に話しかけた。少しずつ色を垂らして、混ぜたら変化があるように、瞳もまた感情で微細な変化を見せる。彼の瞳が最も美しいのはどんな思いを抱いた時だろう。
 その答えを知ったのは、彼の母親が亡くなった時だった。
「グリムくん」
 そっと名を呼べば、彼は顔を上げて僕を見る。悲しみに染まった瞳は美しかった。
 けれど、やはり今ではない。
 今よりも深い悲しみに溺れてほしい。そうすれば、僕の『世界で一番綺麗な人形』が完成するだろうと確信した。
 だから――あの日、手紙を送ったのに。いいや、来てもらおうとしたのが間違いだったのだ。最初から迎えに行けば、きっと彼は僕の元に在った。
 代わりに来た父親を人形に仕立て、今度こそと迎えに行ったから遅かった。遅かったから、彼は僕の手から零れ落ちてしまった。
「グリムくん……? どこですか?」
 応えはなかった。静寂が答えを返していた。

 それからは人形を作っては壊す日々。美しいものを知ってしまったから、完成できない作品に価値はない。
 これは違う。
 これも違う。
 どれだけ作ったってあの瞳には叶わない――コレジャナイ。



 暗い一室だった。壁際にはそこかしこに本物と見まごうばかりの精巧な人形パーツが並べられ、人形師は部屋の真ん中に置かれた椅子に座り込んでいた。目の前にあるのは人間大の人形だが破壊され、向き合う人形師はうなだれたように顔を俯かせている。
 吐息のような囁きでグリムくん、と呼んでみても応えはない。当然だ、観客は消えてしまった。迎えに行ったのに跡形もなく"消失した"。
 あの瞳を見てからはどの作品も色褪せてしまう。完成には程遠い。ただ作り上げればそれはただの失敗作だ。
「わぁお。いいですねぇ、本物の悪じゃないですか」
 不意に上がった声に、しかし人形師――エメス・パペトアはゆっくりと振り返った。少女だ。その気配は人のそれで、決してエメスと同類ではない。
「キミ、ここは立ち入り禁止ですよ」
「悪(あこ)にそういうの関係ないですから。それに亜心は"悪であるアナタ"と協力関係を結びに来たんです。悪役プロデューサーなんですよ」
 にっこり笑う正義巛巛亜心。エメスの正体を知った上での接触だと示唆した彼女は、視線を壁の方へと寄せる。
「これ、すごいですね。全部殺して奪ってくるんですか?」
「霊園へ素材を探しに行くこともありますよ」
 壁際に並べられた精巧な人形パーツ。それは"本物と見まごう"ではなく、"本物"なのだ。
 ある時は殺して。
 ある時は死期を待ち、新鮮なうちに墓を掘り返して。
 心の琴線にかかった素材は人形のパーツとして、永遠に美しいままとするのだ。
「亜心は戦うのは無理ですけど、そのお手伝いならできます。どうですか? 好きな素材(人間)をぜーんぶアナタのものにだってできますよ!」
 好きな素材と言われ、真っ先に思い浮かんだのはグリムのことだった。思い当たる節があるというエメスの様子に亜心はますます笑みを深める。
 彼女による手助けにより、グリムを永遠にできる可能性が上がるというのなら願ったりかなったり。だが。
「……君への見返りは?」
「亜心はお手伝いできれば十分です! 一般ぴーぽーでいるの、マジで勘弁って感じなんですよ。だって、」
 亜心は言葉を切って、エメスに向けていた視線を再び壁一面に並ぶ人間の一部へ向けた。これならとても楽しくなりそうだと、嗤って。

「――平凡な世界なんて、クソつまんなくて最悪ですから」



「スラム街で起こった変死体事件、ね……」
 メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)とグリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)、Tricky・Stars(p3p004734)、佐藤 美咲(p3p009818)はローレットのテーブルに着き、向かい合って難しい表情を浮かべていた。
「近頃増え続けているらしい」
「人の身体なんてどうするつもりかしら」
「さあな」
 稔が肩を竦める。そうよねとメルランヌは小さくため息をついた。

 ――その坊やは唇と喉仏。『その前は』髪が頭皮ごと、右足親指。
 ――死体の欠損だよ。最近死んだやつは、鋭い刃物で切り裂かれたように体の一部がなくなってんだよ。

 グリムがスラム街の商店街で聞いたのは、欠損死体が見つかるという情報であった。スラムで死体が転がっていること自体は不自然なことでもないが、欠損している、しかも故意であるとなれば話は別だ。
「スラム街では恐らく亜心が悪人の勧誘をしていた。俺たちがスラムで怪しまれたのも合点がいく」
「となると、その変死体事件とも関係がありそうっスね」
 美咲は考え込む。幻想貴族の方はロクな情報も持っていなかった、というより消されてしまった。となると最後に邂逅した旅人、正義巛巛亜心を追うのが筋であろう。
 しかし、どのようにしてその足取りを掴むべきか――。

「皆さーん! 新しい依頼なのです! 幻想国に魔種(デモニス)が確認されたのです!」

 不意にローレットへ響いた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に空気がひりつく。4人も黙ってそちらへ視線を動かした。
 小走りにやって来たユリーカは掲示板へ羊皮紙を留め、依頼を受けたい者は自分のところへ来るようにと宣伝する。ちらほらとその依頼を見に行ったイレギュラーズに混じって、美咲もひょいと覗いて暫し。3人のいるテーブルへ難しい表情を浮かべて戻って来た。
「あのスラムの近くにある霊園らしいっス」
「霊園……」
 グリムが眉を寄せる。静かに眠る者たちの邪魔をしようというのか。

 この時、まだ彼は知らなかった。向かう先に――自身の知る者がいる、だなんて。

GMコメント

●成功条件
 旅人「正義巛巛亜心」及び魔種「エメス・パペトア」の撃退、或いは撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●フィールド
 幻想首都のスラム街にほど近い霊園。
 あまり手入れのされていない場所で、既に割れてしまっている墓石なども存在します。
 また、いくつかは暴かれてしまっているようです。それがエネミーの仕業か、元々かは定かでありません。

●エネミー
・正義巛巛亜心
 Tricky・Stars (p3p004734)の関係者。ウォーカーの少女であり、平和と正義が大嫌い。混沌では悪役プロデューサーとして動いています。
 戦闘能力はありませんが、味方への強力なパッシブを持ちます。また、驚くほどに逃げ足が速いです。
 基本的にはエメスの人形に複数体で守られていますし、自分から何か仕掛けようとはしません。

・エメス・パペトア
 グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)の関係者。元オールドワンの魔種で、性別不明の人形師です。世界で一番綺麗な人形を作る為、色々な人の身体や遺体から素材を剥ぎ取り、パーツを組み合わせて作品を作っています。
 しかしエメスにはとても欲しているモノがあり、現在作り上げた人形はどれも試作品だそうです。今回はそれらを操って戦います。壊れることには何の思いも抱きません。
 その戦い方からは自身が戦う事を苦手とするように見えますが、魔種ですので気を抜かず立ち向かってください。

・エメスの人形たち×30
 魔種によって作られた人形。子供から大人まで様々です。その髪の毛1本にいたるまで、本物の人間からはぎ取った素材が使われています。
 ある人形は盾となり、ある人形は矛となります。亜心のパッシブによって強力かつ数の多いエネミーとなりますので最大の障壁でしょう。とはいえ、操り手のエメスからは複雑な命令はできず、比較的わかりやすい動きをすると思われます。
 武器は持っておらず、素手で攻撃してきます。人間と異なり痛覚が存在しない為、時にはその肉体のリミッターを超えた捨て身攻撃もあるでしょう。

 人形たちの中に、グリムさんの両親が混ざっています。彼らはまざりものではなく、1つの身体をそのまま人形へ仕立て上げています。
 ――キミの為ですよ?

●EXプレイング
 このシナリオにおいて、エネミー「エメスの人形たち」の身体の一部を指定することが出来ます。彼らの戦闘能力は変化しません。
 知り合いや関係者などの、見覚えのある人の部位(目、眉、腕、etc.)に見えて心がざわつく、というような心情面のスパイスとしてご利用ください。
 『混沌内で故人となった関係者』を指定して頂くと、もれなく墓が暴かれ、遺体の一部が消えている設定が生まれます。こちらはそういった設定が許せる人だけ設定してください。また、遺体が墓に埋葬されている事が前提になります。

※好みの子と戦える、といった趣旨ではございません。

●ご挨拶
 愁です。
 ふみのGMの物語に乗っからせて頂きました。ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)さんの関係者『原罪のシュプレヒコール』関連シナリオの一部となります。
 それではどうぞ、よろしくお願い致します。

●関連作
『蒼く燃える程熱く、燃え尽きぬほど濃密に』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6584)
『<Sprechchor>闇を掬って眺めるような』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6757)

●魔種
 純種が反転、変化した存在です。
 終焉(ラスト・ラスト)という勢力を構成するのは混沌における徒花でもあります。
 大いなる狂気を抱いており、関わる相手にその狂気を伝播させる事が出来ます。強力な魔種程、その能力が強く、魔種から及ぼされるその影響は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』と定義されており、堕落への誘惑として忌避されています。
 通常の純種を大きく凌駕する能力を持っており、通常の純種が『呼び声』なる切っ掛けを肯定した時、変化するものとされています。
 またイレギュラーズと似た能力を持ち、自身の行動によって『滅びのアーク』に可能性を蓄積してしまうのです。(『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と逆の効果を発生させる神器です)

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 また、原罪の呼び声が発生する可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <Sprechchor op.Ⅱ>永遠で在れ冒険中
  • GM名
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 出発日時2022年01月19日 23時59分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(10人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
シラス(p3p004421)
竜剣
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
ボクを知りませんか
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
竜食い
ヴェルグリーズ(p3p008566)
全てを断つ剣
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
誰かの為の墓守
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて
佐藤 美咲(p3p009818)
合理的じゃない
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
航空猟兵

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