PandoraPartyProject

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終焉交響曲

 無数の終わりが、誰かが『終焉』と称した絶望が押し寄せていた。
 光差さぬ『影の城』はこれ程までに誰かが死力を尽くしても、特異運命座標なる勇者達が運命を振り絞っても未だその堅牢性を失っては居なかった。
 絶大かつ膨大な影の物量は必ずや討ち果たさねばならぬR.O.Oのラスボス――つまり『イノリ』への道を阻み続けていた。
 信じられない程の奮闘を見せ、彼への道をこじ開けた時点でそれは確かに奇跡だった。
 だが、奇跡に奇跡を重ねる要求は『可能性』をより天文学的なものに変える。小さくする――
「頑張るね。でも、その内限界は来るだろう?
 僕には分かる。そしてきっと賢しい君達も分かっているだろう。
 億が一の確率の分岐の末に君達が僕を倒し得る――僕に届き得る運命は存在するかも知れない。
 しかしそれはずっと先の話だ。少なくとも『セフィロト』のマザーが耐え忍ぶ内に、僕が倒される事なんて有り得ない。
 君達は強くて、戦い慣れているから――『そんな事は分かっている』だろう?」
 それでも影を穿ち抜き、自身に挑む『戦力』を送り込み続けるイレギュラーズを『イノリ』はせせら笑った。
 それは軽侮ではない。『むしろ最大限の感嘆を見せているからこそ彼の言葉は皮肉っぽくなる』。
 七罪の魔種すら子供扱いの『原罪』から『敵に対しても好意的』というヴェールを剥ぎ取ったのは紛れもなく一同の戦いの成果であった。
 少なくともこの瞬間、『イノリ』はイレギュラーズを争うべき敵だと認識しているのだ。
 自身の言葉の通り、『億が一には原罪を破り得る脅威』として。
「……しかし、存外にだらしない。
 それともやはり君達の強さを褒めるべきなのか。
『外』の戦況は各地で余り良くないようだ――彼等は所詮僕の前座に過ぎない。
『例え全敗したとしても勝つのは僕だが、気分自体は良くないね』」
「随分と余裕を出しますね」
『志屍 瑠璃のアバター』ラピスラズリ(p3x000416)が冷淡に笑う。
「クリストの『お陰』で種は割れているんですよ。
 それぞれの勝利は必ずこの戦いに収束する――終焉の結果が芳しくないならば、貴方の『権能』もやがては陰るという事でしょう?」
「否定はしない。だが、それでも君達には時間も余裕も足りないな」
 ネクスト各地での戦いは激しさを増し、次々と佳境へ差し掛かっていた。
 イレギュラーズの、ネクストの民の戦いは素晴らしくこれまで可能な限りで終焉の爪痕を跳ね返し続けているようだ。
 ラピスラズリの言う通り、『そういう意味では』状況は良化の兆しを見せている。
「僕以外の脇役が敗れたからどうなる? それが僕を倒せる事に繋がるとでも?
 ああ……実に甘やかだ。多少の予定外こそあったが、クリストもこれ以上の肩入れはしないだろう。
 なら、僕の予定は変わらないよ。君達の『戦線』はやがて決壊し、時間は尽きる。
 命を削るようにして作るその血道が何時まで保つかを――僕は楽しみに見る事が出来るだろう!」
 しかし、同時に『イノリ』の言う通り、不都合な事実が存在する事も否めなかった。
「いい性格なさってる、って話で良いんですかねぇ。『ラスボス』らしいっちゃそれまでですがね」
『憂念啾啾』ビャクダン(p3x008813)が苦笑いを浮かべた。
『イノリ』の接敵する為には莫大な労力と戦力を浪費してでも道を作り出す必要がある。
 それは少なからぬ無理によって生み出された産物であり、支える為に精鋭たる戦力を削ぎ落とされるならば『イノリ』に届く刃は減じよう。
 無限同士とは言え、物量限界には明確な『差』が存在した。
「ああ、もう面倒くせぇ!」
「とても、意地悪で……とっても、めっ! なのです……!」
【大鴉を追うもの】クシィ(p3x000244)が苛立ちを見せ、【ちいさなくまのこ】 ベル (p3x008216)が愛らしい抗議の姿を見せた。
 イレギュラーズは理解をしている。局地戦で勝ったとしてもこの『蛇口』を止めない事には事態の沈静は有り得ないと。
 そして『イノリ』はこの状況に『持久戦』を挑むに違いないと確信もしている――

 ――イレギュラーズの苦境と『イノリ』の優位は物量差の問題である。

「確かに堅い考え方だ。
 しかしながらミスタ・イノリ。貴方はどうやら我々を理解し切っていないようですねぇ」
「……? 面白い事を言うね。負け惜しみじゃないなら詳しく聞いてみたい所だ」
「暫くすればその意味は分かると思いますよ。まぁ、こればかりは我々(イレギュラーズ)への『慣れ』の問題でしょうけど」
『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)が涼しく言った。
「ああ、そういう事ね」
「成る程、『あっちこっち勝ち始めたなら』想像はつく」
『合成獣』アルス(p3x007360)が、『黒麒』Λ(p3x008609)が頷いた。
「計算だけでどうにかなると思うんじゃねぇよ」
「ええ。『そちらがその気なら』俄然やる気になって来ましたよ!」
『山賊』グドルフ(p3x000694)が獰猛な笑みを見せ、『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)の大きな瞳が輝きを増した。
(……あながち強がりにも見えない。まだある? 隠し玉が?)
 嗚呼、『影の城』に挑むのは『R.O.Oの精鋭』ばかりだ。
 だが、イレギュラーズの総力は彼等だけではない。今『イノリ』に向かう力が全てでは有り得ない。
 彼等は各地で自身の信ずる何かの為に力を尽くす。或る者はこの戦いに力よ届けと、或る者は許し難き存在を打ち砕かんと。
 又或る者は今確かにネクストにある大切な物を守ろうと――
『イノリ』にはイレギュラーズとの交戦経験がない。
 重要なのは如何なる理由があったとしても現在の彼の見るイレギュラーズは『最大』ではないという事だ。
 各地での戦いを優位に進めた戦力が、片手間にでも終焉の抑えを買って出たなら、そのパワーバランスは確実に反転する。
 そして面々の顔を見れば分かる通り『イレギュラーズは圧倒的に後半に強い。僅かな隙間をこじ開け、燎原の火の如く可能性を覆すものなのだ』!
「……ああ、つまり。そういう事か。
 君達は、どうやら本気で『それ』をやり切る心算らしい……!」
 果たして、確かな優位に余裕を見せていた『イノリ』の美しい顔が僅かな曇りを見せたのは、この戦いが更に長く続いた頃の話だった。
(……これで『一杯』かと思っていたが、中々どうして。
 こんな事で僕の勝ちは変わらないが――何て非効率だ。何て暴力的なやり方だ!
 どうやら連中は――影の城、終焉の獣達を尽くすり潰す心算らしい!)
『イノリ』に刃を届かせるその為に、出来る事はまだここにある。
 イレギュラーズの反転攻勢はまだ始まったばかりだった――


※リミテッドクエスト『The End of BreakerS』が発生しました!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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