PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

インシデント『Emerald』

 ※システム検索中……error……access……error……hit……
 ※緊急クエスト<大樹の嘆き>……フィールド『翡翠』サクラメント凍結処理中……
 ※サクラメント凍結処理を実行しています……暫くお待ちください……

 ※――完了しました。アップデートします。



「――ドゥネーブ卿。かの話を聞きましたか?」
 声がする。その声の主はガブリエル・ロウ・バルツァーレクだ――尤もそれは『幻想』の、ではなくR.O.O世界における『伝承』NPCとしてのガブリエルという意味でだが。
 此処はそのガブリエルの邸宅。
 そして、向かいに座っている『ドゥネーブ卿』と呼ばれたのは一人の青年……
 名をベネディクト・セレネヴァーユ・ドゥネーブ
 伝承貴族ドゥネーブ家の嫡男である彼はR.O.Oにおけるベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)である。そんな彼と話している内容は、遠い大自然の中にある秘境の国『翡翠』の事で。
「……翡翠と繋がりのあるキャラバンが音沙汰ない、とは」
「ええ。かの国は些か以上に排他的ですが、しかしどこの誰も外と関わっていないという訳ではありません。盗賊まがいの砂嵐を回避し、我ら伝承と取引を持っている者もいました……が」
 最近その者達が訪れぬのだという。
 いやそればかりではない――翡翠の方面に出向いた者が帰ってこぬ、とも。
 如何に排他主義の強い翡翠とは言えこれはおかしい。国境線で何かが起こっているのかもしれない――特に商人ギルドと強い繋がりを持つ遊楽伯としては無視出来ない事態だ――が。だからといって簡単に調査ともいかない。
 翡翠との国の間にはかの砂嵐が存在している。かつて『ジーニアス・ゲイム・ネクスト』において伝承国に攻撃をもしかけてきた国……いやあの事件は一部手引きがあったともされるが……ともかく。あんな山賊だか盗賊紛いの国が存在している以上簡単にはいかないのだ。
「それ故、貴方の力をお借りしたいのです」
「具体的には?」
「伝承よりの使者として翡翠に向かってください。道中の邪魔は全て排除して構いません」
 だからこそ武闘派である者でもなくば、と。
 ベネディクトは敵に慈悲も容赦もない人物として武威に秀でる者だ。
 多少の賊程度ならなんの問題もなく――
「かの名高い遊楽伯のお誘いであれば是非にも」
「そうですか――それはありがたい」
「……が、一つだけ確認を。もしも翡翠に何かしらの問題が生じているとして。
 その確認の為に翡翠に踏み込んでも良いか――俺が『判断』しても?」
 が、その時。ベネディクトの双眸に宿った色は何か。
 強い瞳だ。何か、確固とした意志を携えている様な……
「ふむ。まぁ、そうですね。構わないといえば構いませんが……なにか理由が?」
「…………身内の者に病が。その薬があると思わしきが翡翠なのです」
「身内。ああ、もしや貴方の背後に控えていた、あの麗しい方ですか?」
 遊楽伯が紡ぐ人物――それはベネディクトにとって――とても他人とは言い難い程の者であった。
 リュティス・ドゥネーヴ。同じ名を冠してはいるが血が繋がっている訳ではなく……ドゥネーヴ家に拾われた一人の少女だ。
 その彼女が、今ある病に侵されている。
 ――『石花病
 それは美しき花の如き乙女の体をいつしか石に変化させて、一輪の花を咲かせた後崩れていく奇病であった。特効薬は存在しておらず……しかし翡翠にはその侵攻を遅らせる薬や治療法は研究されているとか。
 ……ベネディクトは遊楽伯の問いには、沈黙をもってこそ答えたが。
「残念ですね。美しい華は太陽の光に当たってこそ素晴らしき輝きと未来をみせるもの……お見舞いに伺っても?」
「それはやめた方が良いかと。移らぬとも限らない」
 なんとも、表情からかなんとなく確信を持っている様であった。
 ……とにかくベネディクトにとっても翡翠との交流が途絶えるのは決して看過できぬ事であった。
 もしも彼女が失われれば――己は――
「翡翠との交易が途絶えたままでは困りますので、よろしくお願いしますね。なにせカイン殿下お気に入りの翡翠名産ピーナッツバターが入ってこないとなると……本当に、色々困るものでして」
「……念の為。翡翠へと向かっても、翡翠との交易再開まで確約しかねる」
「無論ですよ。貴方は貴方のままに動いて頂ければ……」
 翡翠がどうなっているかは情報が入ってこない故に現状不明だ。
 ……が、別にいきなり滅んだという訳ではあるまい。隣国の砂嵐が攻め込んだという話も聞かないし、なにがしか大規模な異変が発生した……というような話も耳にしていない。
 恐らくだが。翡翠内部で『何かしらの問題』が発生し、国境線の封鎖を行い始めた――というのが遊楽伯の睨む所である。繰り返すが、あの国は排他主義が強いのだ。いざとなれば鎖国状態なんて簡単にしてしまう所だろう。
「さて。鋼鉄の国では壮大な内乱が頂点に達しているという事ですが……
 今度は西の方でも不穏な動きが出てきましたね」
 視線を落とす。さすればそこにあるは『ネクスト』世界の地図。
 西にある『Emerald』の文字を見据えながら――吐息零すように呟いた。


 翡翠方面のサクラメントが使用不能になっているようです……

これまでの再現性東京 / R.O.O

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM