PandoraPartyProject

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日華に隠れ、白日の下に

 鋼鉄の国の勢力争いは混沌とし始めた。
 元より皇帝ブランドが暗殺されて以降、群雄割拠とも言うべき事態に陥っていたが『この世界では』帝位に付いていないヴェルスがゼシュテリオン軍閥を掲げ。次いで軍神と称えられしザーバが何かに精神を侵されたかのように闘争を求め始め。
 そして皇帝争いなどには興味を一切示さぬと思われていた――ラド・バウのガイウス介入という報まで流れ始めた。
 ――鋼鉄三強がそれぞれに動き出す。
 鋼鉄の国を襲う混乱を収束させたい者制覇したい者乗じたい者
 いずれの思惑がこの国を最終的に覆う事になるのか……
 民の関心も、そう遠くないであろう激突の日に思いを馳せており――

「アタシね、見たのよ」

 しかし。
 その片隅で決して無視してはならぬ言の葉を紡いだ者がいた。
「ふふ。馬鹿にしないで聞いて頂戴ね――アタシは本気よ。狂ってないわ。
 その上で聞いて頂戴。アタシは見たのよ……ええ。
 『アタシ』が皇帝ブランドを殺す――その場面を」
 それはビッツ・ビネガー。R.O.Oの彼はこの世においてもS級の闘士であり……しかし皇帝暗殺騒動以降『避暑』と称して暫く中央を離れていた人物であった。
 それ自体は別に不思議な事ではない。鋼鉄の国では強者程『皇帝を暗殺したのではないか』と疑われ、場合によっては次代の皇帝を担いたい者から狙われるという動きもあった――そうしてヴェルスは己が身を護る為にも軍閥を立ち上げたのだから。
 ……が。ビッツに関してはおかしい事があった。
 それは彼を狙う不届き者達が『かつての皇帝の近衛』だったのだ。
 殺害された皇帝の犯人捜しをしている、にしても些か厳つすぎるのではないか。
 それに彼らは何やら『真実』がどうだのこうだのと言っていた……つまり。
「おいおいまさか……なんてな。アンタが此処でそんな嘘をつく意味がなさそうだ」
「つまり真実として――もう一人のビッツさんがいるという訳ですか」
 ビッツの言っている事は真実なのだろうとシラス(p3x004421)は頷き、フラッシュドスコイ(p3x000371)もまた思考の中で反芻する――

 皇帝ブランドを殺害したのは『もう一人のビッツ』だと。

 ……その仔細は今の所分からない。が、このR.O.Oの世界ネクストでは何が起ころうと不思議ではないのだ。例えばこの世界に住まうもう一人の自分が平然といたりするように――或いはこれもバグの影響だろうか――?
「アタシは『アタシ』から逃げたわ。
 マリアの事だって巻き込むかも知れない。だから、ここに来たのよ」
「おじさん……」
「……そうか。ビッツさんはお強いのにどうして此処まで、と思ったけれど……」
 ビッツが語り掛けるのはこの世界のエクスマリアだ。ビッツは彼女の他、妖精騎士ジュリエット――つまりこの世界のジュリエット(p3x008823)――を供に連れ中央を離れた。自らを追う者がいれば、自身にとっても大事な者達に危害が及ぶかもしれないから。
 ……結果としては追手がここまで追ってくる事態になってしまった訳ではあるが。
 しかし全てはビッツの見せた優しさだったのだと現場・ネイコ(p3x008689)は悟りて。
「あの『アタシ』がなんなのかは知らないわ。ただ、間違いない……
 皇帝ブランド――――を殺したのは『アタシ』。それは見た私が断言するわ」
「…………」
 証拠は出せないけどね、と。苦笑いするようにビッツは紡ぐ。
 さすればその様子を見据えているのは九重ツルギ(p3x007105)だ。彼は――己がアクセスファンタズムの加護をもってして思念に触れた。倒れ伏していた近衛兵士より読み取ったその情報は。

 ――何よ、あれ。
 ――どうしてアタシが居るの? ……『父上』? アンタたち、何よ。ちょっと、やめなさい!

 皇帝とビッツの――知られざる関係性の事であった。
 あくまでもツルギだけが見据える事が出来たモノであり第三者に通ずる証拠とは言い難い。しかし、これが真実であるならばビッツは……
「ビッツさん。もしも鋼鉄に帰らないけどここから離れる時があればギアバジリカに来ません? ゼシュテリオンです。イレギュラーズは顔のいい人が揃ってますし、自分の事を撫でたりモフモフしてもいいんですよー!」
「ふふ。気持ちだけ受け取っておくわ。アタシ、ヴェルスにはあまり関わりたくないの」
 ともあれそれならばと梨尾(p3x000561)が提案するものだが、それは穏やかに断られた。軍閥に属せば戦いに積極的に巻き込まれてしまうという危険性もあるからだろうか――?
 なんとも彼をどうすればいいか吹雪(p3x004727)は困った表情で見つめるものだが。
「それじゃあね、エクスマリア。なにか困りごとがあったらいつでも呼んで」
 しかしもうこの場で出来る事はないのだろうと――ザミエラ(p3x000787)はビッツや、その傍にいるエクスマリアに言葉を紡いで踵を返す。
 ――この騒乱は元々『誰が皇帝を殺したのか』が分からないが故に続いている。
 ならばこの騒乱を『終わらせる』手があるとすれば……

 今、彼らは鋼鉄の国に平穏を齎す糸に――指をかけたのかもしれなかった。

 ※R.O.Oのビッツ・ビネガーにより皇帝暗殺に関する新情報が齎されました……!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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