PandoraPartyProject

ギルドスレッド

水面にて。

散歩道

家を持たぬ艶蕗は、暇な時はその辺りをそぞろ歩く。
書籍の類を持っている場合はその辺に適当に座って読む。
ともかく屋外に居る事が多い。

宿代をケチるため。大小様々な悪さをしているので一所に長居するのは少々のリスクを伴うため。そこかしこにいる地縛霊や浮遊霊の類との語らいを無聊の慰めとするため。及び現世の住人とは全く違う視点と立場を持つ彼らの知見を独自の情報網の糧とするため。一人でじっとしているとどうにも暗くなってしまうから。など、と、理由は色々とある。
何にせよ、艶蕗はよく散歩をしている。
昼夜を問わず。国も地方も問わず。水辺なら河童の姿で、それ以外はたいてい人の姿で。

行き会うこともあるだろう。


・RPスレッド
・基本的には艶蕗が一人で上述の様なあれこれをしているだけです。
・もしも気が向いたなら、行き会って話しかけてやって下さい。

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(昼下がりの道端、街路樹の影の前にしゃがみ込んでいる)
……あかんわこれ。理性所か心ももう残っとりゃせん。残骸や。
(ため息と共に呟いて立ち上がり、伸びをする)
こないなって迄まあ、未練がましい……

……いや、人の事言える立場やないか。
(頭を掻く)
貴女、そこの貴女。
(街路樹の陰に立つ貴女の後ろから呼びかける)
あまりそこには近寄らない方がよろしいですよ。あまり宜しくない場所ですもの。
『障り』があると、皆々噂しております。
(気だるそうな瞳が傾いで貴女に注がれる。仕立ての良い服をまとった少女だ。一見して、『きちんとした家』の少女に見えるが、安煙草の甘ったるい匂いが染みついている)
ん?
(声に振り返り)
ひっ御前……あ、いや違うか。全然違うわ……
……何で一瞬そう見えたんやろ。
(一瞬怯えと驚愕の顔をしかけ、けれど直ぐに思い直した様に落ち着いてから少し首を傾げる)
まあ良えか。
あー、いやいや。気遣いどもどもでやんす。
まあでも大丈夫っすよ。これでも一応死霊術師の端くれでやんしてな。
何でもとは言えんけども、この程度の怨念ならまあ。平気の範疇でやすから。
(手の平をヒラヒラさせながら笑って、改めて相手を見て眉根を寄せる)
言うか、其方さんこそ何処の御所の息女様か知らんけど、こないなとこ一人で歩いてて良えんでやすか?
(※未だに己の人間時代の感覚に引っ張られている艶蕗は、先ず当時無かった煙草の社会的な扱いに慣れていない。寧ろ煙の匂い≒御香であり、貴人の趣味兼嗜み(なんせ、あの長い髪の毛、あんまり、洗わない)なため、素で礼拝を身分の高い人だと思って居る)
(貴女の様子に訝し気に首をかしげかけたものの、すぐにその痕跡を消した。自分の考えを貴女に晒すのを避けるように)
まぁ、怨霊。私には何も見えませんが、居るのですね。随分と死を集める場所だと思っておりましたけれど。

……まぁ。
(仕立ての良い服を着ても、路地裏の匂いを纏っていれば現地民は嗅ぎ分けるものだ。
当然礼拝もそれを予測していたが、この対応はまるで貴人に対するもののようではないか)
供をつけて歩くような身分ではございませんのよ、ウォーカー様。
それよりも、私、どんな怨霊が居たのかお聞きしたいです。
ねぇ、『人』は死ねば何になるのかしら。
(ぱちり、と。長い睫毛が上下する。そこに浮かぶのは死を知らぬものの興味。
幼い子供よりも、もっと乾いた空虚、否、観察者じみた好奇心)
……成る程。
(口の中で呟いて内心で少し納得する。目前の女性の本音が見えない、推測する取っ掛かりすら見つけれぬからだ。隙の無い洗練された所作とその在り様に、自分はかつての上司……在りし日には権力の伏魔殿を歩んでいた御前を連想したのだろう)

死を集める場所……ここ、事故でも頻発しとったんでやんすか?
まあ、怨霊が居るとそう言う事もありやすからね……
(傍らの蟠りを横目で見下ろし、少し口を歪めた)
あら、そうなんでやんすか? そりゃ失礼を。
うーん……あっしは本当その辺未だズレとるんやなあ……
(そんな身分では無いと言う言葉に目を丸くし、頭をガリガリ掻く)

『人』が死んだら何になるか……まあ、ぶっちゃけ人それぞれはありやすけどね。
まして三千世界から万種の人が集うこの混沌の渡世やと……
(一度首を振るも、懐から干し肉を取り出す)
言うてもまあ、この子がどんな怨霊やったかは明白やね。
餓死した子供や。何でこんな所でかは分からん。木の皮を食おうとはしたみたいやけど……。強い苦痛やら未練やら怨みやらが残ると、死んだ後にその残骸が残る。より強ければ魂魄の何れかを保って怨霊と化す。もっと強いか……或いは何かしら運が良ければ、肉体すら備えて化外へと化生する。あっしの知ってる流れはこんなとでやんすね。
(言いながら包みを開けた干し肉をその場に置く。いや、供える)

……言うかあっしが先ずその類でやんすけども。
(軽く笑って振り返り、その目を見てちょっと息を呑み、皮肉な苦笑を浮かべる)
随分な目を、してやすな。旅人殿?
犬猫がよく行き倒れます。偶にそこの街路樹を選んで首を吊る方も。
しかしながら、異常は見えても原因はわからぬもの。
偶然という言葉に縋ったり、ありもしない曰くを捏ねてみたりと……噂の場所なのですよ。
(少女の言葉は一定して平坦で丁寧だ。
謝罪にもいいえと軽く首を横に振るだけで気にした様子もなく受け流し)

……。
(餓死、未練、魂魄、怨霊、そのいずれもが少女にとっては遠く、はるか遠く未知であり――)
『私の世界』では人は飢え如きでは死ねません。
(しかし、この世界では隣人である。
ごく自然にそこにあり、時折自分自身にも手を伸ばしてくる存在。
だが、生まれ持った『常識』がそれを確固たる現実として認識させない。それ故の恐怖という中身のない好奇心)
人は定められた時まで死にません。死ねば魂は鳥となって空へと帰り、地上から約3000m上空をぐるりぐるりと螺旋に回りながら北極を目指すものです。
もっとも、魂無き私にはその様子は観測できませんけれど。

……不意に死ぬのは星から生まれなかった者たちだけです。
つまりは、私の様な。
死体を見るといつも思います。法則が違っているのは知っていますが……。
突如として死ぬ気持ちはいかばかりだろうかと。
定められぬ死とはどのようなものであろうかと。

どうして私の領分が侵されているのだろうかと。
ほぁー、そりゃ縊鬼になり掛けとるんかもでやんすねえ。
言うても自我が残ってなかったら何にもならんけど(何かを撫でる仕草)

もしかしたら別個に原因があって、こいつもその犠牲者の可能性もあるでやすか。
流石にあっしじゃ見ただけでそこまでわからんけども。


『餓え如き』では……定められた時まで……はー
何やそこ。浄土やろか? 確かに姉さん菩薩様もかくや言う美人たけども。
魂の行先はまあ、分かる気はする……ま、千尋の底にすら大人しく沈み切らんかったわ等にはそれも遠い話やねんけどな。
(顎に手をやり少し首を傾げ)
魂無き、星から生まれなかった者……まあ、他の世界の事は良く知らんのやけど。つまり姉さん、式の類言う事やろかな。それもあっしには見ただけじゃよう分からんけども……

ただ、さよか。領分か……領分、な……
姉さんがどう言う事に誇りと自負を持ってるんかは知らんけど。まあ、取り敢えず。
……寒くて、冷たかったな。わの場合の気持ちは。

多分、ちゃんと決められた死の時は。そうでもないんやないかと。そう思うわ。
私もそれ以上のことは知りません。
ただ、なにか普通ではない様子でしたので声をかけさせていただきました。
(自殺なら止めようかと思っただけ、と緩く首を振った。
虚空を撫でる指先にじっと目を細めて)

……浄土であれば、きっと浄土の中にも地獄はあるのでしょう。
ただ、私は思うのです。『我々に任せてしまえばよかったではないですか。』と。
争いも虚しさも我々に任せてしまえば宜しかったではありませんか。
なぜ、人に預けたはずの『領域』に踏み込むのですかと。
(そして艶蕗の最期を聞き、目を伏せた)
……ごめんなさい。一度体験した方に告げるにはあまりに傲慢でした。
ただ我々は、貴方達が満たされぬのが口惜しいのです。その為の道具ですから。
ん……まあ確かにそうでやんすな。
一見何も無い空間に話しかけてるんは傍目に危ない人でやすからね。……まあ、この辺は色んな旅人が居るから、そういう意味で何かそう言う生き物なんやろう的にスルーする人も多いでやんすが。
しかし気遣いには感謝するでやんすよ。あっし見たいな奸濫之輩にゃ、そう言うのは貴重で有難いもんで。やっぱ見目麗しい御仁は気持ちも綺麗やなあ。
(言いながら改めて相手を見やる。相貌よりも何故か足先が気になるのが我が事ながら不思議だったが)

地獄があったらそれもう浄土じゃないんやないかとは思うでやんすが……しかし、そんな小理屈を覆すくらいには説得力のある言葉なんがなんともはやでやんすなあ……(溜息を一つ)

(頭を掻いて)
やあ、別に謝る事は無いでやんすよ。言うかそれは別に傲慢でも無いと思いやすし。
姉さんの身上の詳しい所は分からんよって当て推量混じりでやんすが。人を満たす為に作られたモンが、なのに満たされてない有様を見せつけられるのはそりゃ歯がゆいもんでやんしょ。舞手が自分の踊りの前で居眠りこかれてる様なもんや。そりゃ口惜しいのが当然でやすね。言うか怒って良い。
(少し気まずげにヘラリと苦笑)

ま、でも死にたくて死ぬ奴は少ないでやんすから。
何なら自殺する奴だって、もっとキツい事から逃げたいだけで死ぬこと自体を願ってる事は稀やろし。言うかあっしらもある意味それやし。其処は何とか『仕方のない奴らだなあ』位の範囲でギリッギリ勘弁して貰えると嬉しいでやすねえ。
仁愛とは人から出でるものにございますれば。
心に関しましてはただただ親が良かったのでしょう。
体に関しましては、北神祭の最高傑作のうちの一つ、沁入の内の礼拝という号を頂いたものでございます。
美しいでしょう、美しいでしょう。
(そうっとスカート越しに己の足を撫でつけてその裾を僅かに引く)
特に私は足を重視してデザインされた個体。気になるのも無理ない事かと。
(足首が外気に晒される。細くきゅっとすぼまったシルエットは表面の凹凸から関節の皺の一本一本まで名工が魂を注いで彫り上げたかのような気配。
それ故の自信。それ故の視線の敏感さ)

私の知る人間は単に死ねないだけでしたので。
飢えも痛みもあれば、罪を犯すものもいるそうです。
死ぬことなく、死せるその時が来るまで病に蝕まれるものも。
(極楽とは悪心のないものが行く、苦役のない場所でございましょう?と小首をかしげ)

ま、あ。その様に言っていただけるとは幸いです。
そうですね、私たちはもっと貴方達に自由になってほしい。ただそれだけなのです……。
親が良かった!
(破顔して手を軽く叩き)
そりゃ良え事でやんすなあ。凡そ一等良い事の一つやわ。
親ばかりは誰も選べんさかいに、そこで玉を得れるんは正味自慢して良い事や思うでやんすよ。

体に関しては……最高傑作言うんは良いを通り越して凄いでやんすね。
……礼拝、礼拝か……つまり神仏に届くほどか、或いは捧げるに値するほどの出来栄え言う事やろかな。名付けからして物凄い自負と自信が見えるでやんすね……
(感心した様に顎に手を当てうんうん頷いてから、言葉に誘われる様に目線を向けて)
………ぁ……ぅ。
(露わにされた美に対し、女性の肌が殆ど晒されぬ宮中から全裸も普通の妖物と、極端から極端の環境を経験している筈の怪異は。けれど明瞭な言葉もろくろく吐けぬままに、ただ酷く赤面した)

…………ううん、うん(咳ばらいで気を取り直し)

………ぅぅん、うんっ!(けれど取り直し切れず、チラチラと再度目線をやってしまって慌てて再度咳払い。加えて首をブンブンと振る)


死なないだけ……でやんすか。なるほど……
そら確かに極楽とは言えんでやんすな。人道は所詮人道。
……実際、中々。身に欲が留まる限り、自由は遠いでやんすからなあ。
生み出されたものである限り、親というのは選べないものですものね。
私は恵まれております。何もかも与えられた上に、愛情深い方々に育てて頂けましたもの。
勿論、それが私という作品をより理想に近づけるためと知っていますが、尊いものでありました。

(持ち上げていたスカートの裾から手を放すと、幕が降りるように白い足首が隠される。
鈴の音の様な笑い声が転がって、鏡の様な黒い瞳が微笑みの形をして貴方を見ていた)
……言葉を尽くすよりも、こうする方が分かっていただけますでしょう?
ふふふ、不思議でございますね。足首をまろびだして走る小娘など幾らでもいるのに貴方は目を離せない。
動機や切欠は案外大事でも無いでやんすからなあ。
理と情は相克描かず割と気軽に入り交じるもんやし。
(なあ、と傍らの空間の方を向いて。ちょっと間を置いてちょっと溜息を吐く)
……本当に欠片も残っとらん。散らしてまうか。

(足首が隠されたのを見てようやくホッとして顔の向きを戻す)
そ、そうでやんすな。確かに、思い知らされたわ。
(笑い声にちょっと悔しそうな顔で黒い瞳を睨み返し、けれど直ぐに視線を巡らせスカートの裾を眺める。ほとんど無意識に、最早見えない筈の足先の方に視線をやっていると言う事に、自覚は無い)
不思議……言うか。まあ、それが『美』やって事何でやしょな。
どんな珠も鏡も、名歌を添えた折り枝も、その白肌一目に勝て無さそやなあ……
結局世界を彩るのは主観による観測に過ぎませんものね。
他者の言う条理も不条理も私が感じた世界を濁らせるに値しません。
私は正しく作品であり、道具であり、しかして只の無力な小娘なのですから。
(ちらと艶蕗の視線の先をたどる。そこにいるのだろうか、魂の残骸が。
散らしてしまうか、という声を聴けば僅かに眉が下がり)
吹き飛ばしてしまうのですか?灰のように。

(時折この小娘は大店の奥方のように傲慢な顔をする。
あら、これって貴方にはこんなにも価値があるものだったのね、と見下ろすような顔だ)
……その通りでございます、とは言い切れないのが悲しい所です。
(それも一瞬の事、すぐに「事実」を思い出した調子で息を吐き)
混沌の感性とは多種多様。
……それに他の何かに既に魂を奪われてしまった方には通用しません。
貴女も、狂いきる程に心を奪われた何かがあれば、きっと私の足の……只の物質としての輪郭が見えたかも。
道具で無力……
自分をそう言う風に言う女人ほど恐ろしかったでやんすからなあ……
(かつての日々を思い出すように少し目を細めて)
逆に、そうやって己自身を見据えて決めてるからこそ、強くて怖いんかも知れんでやんすが。

そ、散らしてまう。……言うか。世界に溶かす?
あっしにも良く分かって無いんでやんすけどね。供え物への反応も殆どないし、こうなったら真っ当に成仏させるのは無理。その内視えるもんにもただの黒い染みにしか見えんような位形も崩れ切って、それでもずーっと此処に蟠ってるだけになりやす。まあ、そうなりゃ害も殆ど無くなるんでやんしょけどね……
傍で見てて流石に気分が悪い言うか……
(傍らを見下ろす表情を見やれば、痛まし気な色が明白に映っている)


……ッ(その視線に、またゾクリとして少し肩を跳ねさせる)
…………あ、ああ。そそそうでやんすな。
そもそも女性の美醜の価値観すら人それぞれでやんすもんね。あっしも髪より顔かたちを重視する価値観にゃ最初は随分戸惑ったもんでやんす。

狂いきる程……確かに無いでやんすね。
好やったり傾倒した物位ならあるけど、そこまで、その程度……
(呟くその顔は、少しだけ悔しそうだった)
身の程を知っているだけでございますよ。
出来る事と出来ない事、して頂ける事として頂けない事。
(歌うように嘯くが、軽妙な調子もそこにあるはずの魂の行く末を聞けば曇ってしまう)
……供え物があればよろしいのでしょうか。
今からでも、誰かが祈れば真っ当な終わりというのを与えられるのでございましょうか。

(肩が跳ねたのを確認すれば、クスリと小さく微笑みを作り)
……その方が救われる方法が多くてよいではありませんか。
狂いきればもはや彼の方を救う方法はたった一つだけ。
ええ、たった一つだけなのです。それが破滅であったとしても。
いいえ、救いとすら言っていいのか。他にどうしようもないから、そうするしかないのです。
その『身の程』を知ってる言うのが強いんでやんすよ。
権力しかり、腕力しかり、そんで美もまたしかり。何かしらの価値を確保している人程、自分の領分を測り違えてまう。そうして、届かん物に無理に手を伸ばして……伸ばして、未だ伸ばして……最後はブチン。正に風前の塵の如し、やわ。
(何かを捻り千切るしぐさをして皮肉気に笑う)

……ぅ
(その美しいかんばせが曇ったのを目の当たりにして、仕方のない事と割り切って退けれるほど精神力の強い妖怪では無かった。グヌヌと唸って少し考え)
……そうでやんすねえ。徳の高い僧とか、神職とか。聖職者?
もし知り合いにそう言う人が居たら、そう言う人に手伝って貰えたら或いは……
(ええとと説明の言葉を探すように指を回して)
死んだ後に改宗させて弟子入りさせて苦界から解脱させる。そう言う即席強制救済を。
(※地球日本で長らく行われている仏教葬式のプロセス)
……まあ、試す価値位はあるやろかなあ。


狂いきったら、まあそうでやんしょね。
狂ったそれに向かって直走るしか無いでやんすね確かに。
その先が崖でも針の山でも火の池でも……
(少し目を細めてから、少し首を傾げ)
でもまあ、それは。それで。幸せなんやないかな?
……。
(俯いて考えこむしぐさを見せる。
頭の中では目まぐるしく聖職者それどころか宗教関係者の名前まで掘り返されているが……
果たして女を買う聖職者は「徳が高い」と言えるのだろうか?)
……私の、身の上では難しい、難しい事にございます。
元よりこちらの宗教観で「ケガレ」に近い身なれば、私は……。
(霊がいると思しき場所にそうっと手を伸ばす。
姿は見えない、そこに居るという情報を何も感じない。
しかし、何も取りこぼされず永遠に魂が循環し続ける世界から来た者としては、世界に溶ける散っていくという結末はひどく寂しいものに思えてならない)
してあげられることが、あればよかったのですが。

辛い事ですよ。「そうせねばならない」という事は。
(細めた目元には疲労の様な、堆積した何かがある)
先ほど「身の程」のお話のお話をしましたけれど、まさにその通りなのです。
届かないものに手を伸ばして、手を伸ばし続けて……それで手に入れられればいい。
如何なる努力も研鑽も、全て徒労で終わる事のなんと多い事か。
狂気とはそれでも夢見る事ができる力ですが……。
(小さく息を吐き)
いったいどれほどの可哀そうな彼らが、本物なのか。
……?
(悩んでいる風な事に気づき、少し目をパチクリとさせる)
穢れに近い……傍目にゃそうは見えんでやんすけど……
少なくともあっしが生前教わった宗教の場合、どんな立場で身分で性根のもんであっても往生を遂げさせるのが仏の教えやそうでやんすよ。だからこそ尊いんやとか。
(手を伸ばす仕草を見やって眉根を寄せ、溜息を一つ吐いて)
まあ……袖すり合うも他生の縁でやすしなあ。ちょっとツテ当たって見るでやんすよ。あっしの知るやり方だけやのうて、この混沌ならではの色んな方法を漁りゃ、どれか一個位は多分出来るでやんしょ。

血反吐吐きながら走り続ける様なもん言う奴でやんすか……
終点に辿り着く保証も、そもそも終点が存在するかも分からんままに言う。
(ちょっと神妙な顔をするが、不意に片眉だけを器用に上げ)
……ああ、でも。真贋で言うなら全員本物な気もしやすわ。
少なくとも走ってる間は。
止まって初めて偽物に堕ちる。もんや無いかなあ。
ブッディズムでございますね。ええ、ええ、その信仰の在り方は存じております。
ですが、混沌の土着宗教では私の様な娼婦は「よくないもの」とされておりますので。
(続く言葉に今度はこちらが驚く番だった。
 自分には手の届かない事柄だと思っていた。諦めるのが筋であると)
……よろしいのですか?ありがとうございます。
あの、もしよろしければお名前を聞かせてはいただけないでしょうか。
私は礼拝、この辺りでは足女とよばれております。

ああ……きっとそうなのでしょうね。
空を飛んでいる限り皆同じ鳥であるのでしょう。
……貴女は、鳥になりたかったのでしょうか?
重力(常識)より逃れて遥か彼方、あるとも知れぬ高みを見たいと、そう思われたのでしょうか。
ああ、あっしは艶蕗。ツワブキの花の色の目の艶蕗でやんすよ。
……あ、いや、今は白か。まあ、死して人から変じ成り果てた分際で、人に化ける化生の類でやんしてね。本性の方では(己の目を指さし)、我ながら中々艶やかな黄色何でやす。

定職も無くふわふわと浮き草の様に渡世を渡る与太者でやんすから。外道を踏む事と同程度に、切っ掛けがありゃ功徳も積みやんす。道端で拾った子猫や亡霊の世話程度、何の事やありゃしませんわ。
(ケヘヘと少し照れ隠しの様に笑う)

足女。……ああ成る程。確かに二つ名に相応しいおみ足で……
(思わず言ってしまってから慌てて口をつぐみ頬の朱を濃くして目を逸らす)

鳥になりたいとは……そんなには。
それよりは、人で居たかったやろかな。沈みたくはないとは……あの時。確かに。

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