境目はどこか。そもそも存在するのか。そんなもの。 時々思う。自分は本当に河童だったのだろうかと。

かつては人であった。
時の栄華を極めた一族に連なり、書と戯れただ安穏と暮らす。
莫迦で、嫉妬深く、猥褻で、図々しく、うぬ惚れきって、残酷で、虫の善い動物。
故にその末期は道理であり。
そうして命潰えて……怨霊として化けて出た。

本当に？

書に聞くに。河童とは水死体の喩えとも覚え聞く。
血の気失せた肌、髪の抜け落ちた頭頂、苔生した背。
自分はそれだったのでは無いだろうか。
憎き奴儕の世に仇為す日々は、惨めな遺骸の見た夢に過ぎなかったのでは？

不安、という訳ではない。
諦念、とも少し違う。
ただ、少しだけ寒いのだ。この水と空のあわいは。


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