シナリオ詳細
星海鉄道の夜
オープニング
●ニグラ・カト号
夜を齎す空の闇。
闇には光が明滅し、星々がその在処示している。
その星々の間を移動する鉄道があるのはご存知だろうか。
君たちが流れ星と称している、そのひとつ。
それが星海を旅する鉄道、星海鉄道。
――今日はその列車のひとつニグラ・カト号に案内しよう。
『ご案内いたします。まもなく、星海鉄道が到着いたします。どなた様もお早めにお支度くださいませ。まもなく……』
駅舎へ立ち入れば、そんなアナウンスが聞こえてくる。
辺りを見渡せば、同じ目的だろう乗客たちが、荷物を手にホームへと向かっていた。書生に女学生、成金そうな男にハイカラな女性。様々な見目の男女は今宵の列車旅を楽しみにしているようだ。
――『Nigra Kato』。
そう記された、瀟洒な見た目の列車が1番ホームに停まっている。
受付で渡された『切符』を確認し、あなたはその列車へと乗り込んだ。
●ローレット
「コンセプトホテルって知っている?」
もしくは、コンセプトカフェ。劉・雨泽(p3n000218)がそう問えば、サマーァ・アル・アラク(p3n000320)が首を傾げた。
「知らない……けど、アタシに聞くってことは連れて行ってくれるってこと!?」
「うん、まあそうだね」
コンセプトカフェやコンセプトホテルは、独自のコンセプトを持ち、魅力あふれる空間やユニークな世界観で楽しませてくれる施設の事だ。
「場所は練達だけど、ラサの豪邸体験~みないなところもあったりするんだよ」
「へー!」
「僕もね、頼まれてプランナーをしてみたんだ。だから良かったらいかない? ってお話」
「お世話になった人とか友達を誘ってもいいってことだよね?」
そうだと雨泽が頷けば、早速サマーァは呼びたい人の名前をメモに書き始める。先日、深緑へサマーァを迎えに来てくれた皆。実は神の国へ巻き込まれていたのだと後から教えてもらい、サマーァは少し驚いた。けれども頼れる先輩たちの行動が嬉しくて、お礼をしたいと思っていたところだったのだ。
「ちなみにコンセプトは、寝台列車の旅、だよ」
宿泊施設の外観は普通のホテルのような大きな建物だ。
けれど受付を済ませると、コンセプトにあった貸衣装に着替えることとなる。
そうして着替え終え、案内に従って扉を開けた先は――駅舎となっている。
駅は練達の人からすれば一昔前――ROOの神咒曙光……所謂『大正ロマン』の雰囲気が溢れる佇まい。行き交う人も、物も、列車も、そうなっている。
「実際に列車が発車するわけではないよ。コンセプトホテルだからね。けれど、寝台列車体験が出来るんだ」
本日の宿舎となる列車に乗り込むと、窓の外の風景は宇宙へと変わる。星海鉄道という銀河を渉る鉄道がコンセプトだからだ。寝台車以外では時折『次は、白鳥の頭駅~』や、『右手をご覧ください。◯◯星雲の美しい灯りがご覧頂けます』等の車内放送も流れるのだとか。
「僕は技術的なことは解らないんだけれど、本物と変わらないくらいだって技術者が言っていたみたいだよ。窓からの風景は、展望車からでも食堂車からでも寝台車からでも見られるよ」
「雨泽はどこですごすの?」
「僕はまあウロウロしてるのと……あ、そうそう。リアル謎解きって言うのかな。展望車でそんな感じの協力型ゲームが行われるよ。友達と殺人劇ごっこを寝台車でしてもいいみたい」
それ目当ての客も多いらしい。
「サマーァは食堂車に行ってみたら?」
「美味しいご飯の気配!」
「それは勿論。料理はホテルの一流シェフのもの。あと、スイーツも美味しい」
バニラアイスに、熱々の飲み物を掛けるアフォガード。抹茶やホットチョコ、エスプレッソに紅茶――大人ならアマレットやビチェリン、カルーアなどのリキュールも用意がある。
プリン・ア・ラ・モードは一本足の銀皿に、プリント沢山の季節の果物たち。生クリームもたっぷりで一皿で大満足のひと品だ。
「窓の外が暗いから、早い時間でも深夜のおやつって感じがするのがまた背徳感を感じていいんだよね」
「背徳感……」
サマーァの顔に『よくわからない』と書いてある。彼女は食べたくなったら食べてしまう性質だ。
「そんな訳だからサマーァ。皆を誘って遊びに行こう」
話を聞いていたあなたに気付くと、雨泽は「君も行くでしょ?」と笑いかけた。
●展望車
まだ寝付けないのか。寝る前の景色を楽しもうと、展望車には人が多い。
あなたは座席に腰掛け、ゆっくりとした時間と、列車の揺れを楽しんでいた。
バタン、と大きな音が鳴った。
誰かが荷物を倒したのだろうか。
視線を向けると、何やら他の車輌との出入り口が騒がしい。
「大変です……! 誰か、駅員を……いえ、皆さん動かないでください。これは殺人事件です! この場にいる皆さん全員に容疑の疑いがあります!」
自らを探偵だと紹介した男がそう言って、倒れている――被害者の男性、雨泽を覗き込んだ。
「彼は、名探偵の――。彼を厭う犯罪者は多い。その犯行だろうか……」
偶然に合わせた探偵は顎に指を置き、思案を始めた。
あなたは、何か見ただろうか。
それとも、あなたは――。
- 星海鉄道の夜完了
- 寝台列車で一泊、星海の旅
- GM名壱花
- 種別長編
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2023年08月31日 22時05分
- 参加人数25/25人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 25 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC2人)参加者一覧(25人)
サポートNPC一覧(4人)
リプレイ
●まもなく発車します
ホテルのロビーは駅のホーム。
沢山の人々が所謂『大正ロマン』と呼ばれる装いに身を包み行き交う様は、まるで映画の世界に紛れ込んだかのよう。
「サマーァさん、こんにちは! みゃー」
「あっ、祝音。祝音は書生さん?」
知っている後ろ姿を見つけた『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は姉のヤーガの手を引いて駆けていけば、その人物――サマーァ・アル・アラクはくるりと振り返って笑った。
「あれ、本当だ。祝音は僕とお揃いだ」
祝音の後ろから足音が響き、ひょっこりと劉・雨泽が覗き込んでくる。白髪もお揃いだから「兄弟みたいに見えるかな」と笑っていた。
「む……うん」
「どうしたの?」
「ふふ、祝音君は小さいのが気になっているんだよ」
180cmある雨泽と並ぶと自分の小ささが際立って、女学生姿のヤーガとサマーァとも少し離れている。因みにヤーガは年齢的にモガにしようかとも悩んだが、神秘が秘匿されている練達では尻尾穴のあるスカートなんて無い……ので行灯袴で尾を隠している。
「僕も背丈、おっきくなるよ……多分。みゃー」
早く大きくなりたい! それで皆と並びたい! 少年の願いは切実だ。
「祝音、実は僕は小さい方なんだよ」
「えっ?」
鬼人種だからねと笑う雨泽は「皆には内緒だよ」と零した。
「アラーイスちゃんの衣装はなんていうのかしら? そういう服装も似合うわね、とっても可愛いわ♪」
「モガ、というらしいですわ、ジルーシャ様」
クローシェ帽を被った装いはモダンガール。練達だからとアラーイス・アル・ニールは耳と尾もしまっていて、『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の瞳には新鮮に映った。
「ジルーシャ様の装いは……書生、でしたでしょうか?」
藤色の着物に袴、そしてトンビコート。雨泽はマントだったが、他の者へそう話している所をチラと見たのだ。
普段と違った装いは、インスピレーションを湧かせてくれる。
「残念ですわ。わたくしも着物にすればお揃いでしたのに」
「アラ、それはまた今度お揃いを着るチャンスがあるってことね♪」
「まあ。でしたら、ラサの装いもしていただけます?」
勿論よ、なんて交わす会話はどれも、女子のそれ。
駅のホームを会話を弾ませて歩いて、暫し。アラーイスが「あの」とジルーシャへと声を掛けた。
「申し訳ないのですけれど……」
腕を拝借しても?
モガ姿のアラーイスの足は小さいけれどヒールがあって、普段のラサのぺたんこの靴とは違う。
「フフ、ちょっとした大冒険でたくさん歩いたものね。お手をどうぞ、お嬢様」
「ありがとうございます」
軽くなった爪先は、列車へと向けられた。
「ねーさま見てください! これが大正浪漫というやつなのですね。袴かわいいのです!」
くるりと回れば袴がふわりと広がって、ブーツを履いた足首が見える。『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は、『サメちゃんの好物』エンヴィ=グレノール(p3p000051)に無邪気に笑いかけた。
「メイさんの衣装、とても可愛いわ。豊穣で見た衣装に似てるけど、少し違うのね」
旅のしおりにもあるとおり探偵衣装はないから、エンヴィはトンビコートを羽織っった書生姿。頭にはメイとお揃いの髪飾りが揺れていて、メイは嬉しそうにまた笑った。
「行きましょうか」
「はい!」
ふたりは手を繋いで、ホテル――『列車』へと向かった。
「リーちゃんたちも一緒に楽しめれば良かったんですけれど……」
ホテルへの動物の持ち込みは禁止されているし、練達は神秘の秘匿をせねばならない土地である。しょんぼりと肩を落とした『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)を駅のホーム(ロビー)で見つけて、サマーァが駆け寄った。
「ユーフォニー、今度アタシにも紹介してくれる?」
「はい、サマーァさん! 勿論です!」
「ユーフォニーって猫が好きなんだっけ?」
「そうなんです。ネコさんたちはふかふかで可愛くって」
「それじゃあこの列車、ユーフォニーにぴったりだね!」
雨泽から聞いたんだけど――内緒だよ。
周囲をキョロキョロと見たサマーァはイタズラっぽい笑みを浮かべると、ユーフォニーへ身を寄せ内緒話。――ニグラ・カトって黒猫って意味なんだって。
「そうなのですか?」
「内緒ね! 行こう、ユーフォニー」
ユーフォニーの手を取って、お揃いみたいだねと袴を揺らしてサマーァが笑う。
「ユーフォニーの髪型可愛い。アタシの髪でもできるかな?」
「後からアレンジしましょうか?」
「うん、お願い!」
お腹がいっぱいになったら寝台車か展望車で遊ぼうね!
「お、サマーァ!」
「風牙、来てくれたんだ!?」
ユーフォニーの手を引いてぴょんっと列車に飛び乗れば、待っていてくれたらしい『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)が当たり前だろうと笑った。何せ風牙は先輩だ。可愛い後輩が遊びたいと呼んだのなら、きっとどこへだって駆けつけてくれる。
「あ、風牙もジョガクセーさん? 似合ってるね!」
「お前もな! かわいいかわいい!」
「ユーフォニー、三人で一緒に写真を撮らない?」
練達のカメラってすごいんだって!
ユーフォニーの手を握ってサマーァが告げている間に、風牙はスタッフを見つけて写真を撮るのを頼んでいる。
折角だからとひとりで、ふたりで、とパシャパシャと何枚か撮った写真は、チェックアウト時に現像したものをくれるらしい。
楽しみだねと笑った少女たちはひとまず列車内を探索し――そうして食堂車の扉を開けた。
●ふくふくなひととき
白いクロスが掛かったテーブルを挟むふたりの将校。
星海の窓という背景も合わさってか、通り過ぎていく女性客が思わず振り返ってはきゃあきゃあと楽しげな声を上げていた。
(おかしい、のだろうか)
ちらりと前を見れば、いつもニッと上がった唇はそのままで、『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)は少し悩んでから口を開いた。
「将校服、というのだっけ。見たことはあったが実際に着るのははじめてだな。似合う、これ?」
「似合っているよ。我らはこういう装いを普段しないからねえ。新鮮でいいね」
トキと愛称で呼んでいる義理の息子の京司の言葉へ、『闇之雲』武器商人(p3p001107)は間を空けること無く応じた。二人っきりで楽しむ機会が無かったから、今日は目一杯甘やかすつもりだ。
「我(アタシ)が似合っていない?」
似合っている自信はあるものの、もしかして。問えばすぐにふるりと京司が首をふる。
「いや、僕が着慣れていないから……」
無用な心配だ。武器商人が言い切ると、食堂車の給仕係がワゴンを引いてきた。
「ほらトキ。料理が届いたよ」
テーブルの上に、所狭しと甘味が並んだ。京司が全種類を注文したためだ。他にはエビフライとオムライス。それから珈琲とクリームソーダが彩りを添えている。
「こういうの、大きくてカラッとしたエビフライ久しぶりだな。……半分、食べるか?」
「おや、いいのかい? であれば、こちらのデミグラスソースのオムライスを分けよう。卵がとろとろで美味しいよ」
エビフライはナイフを当てればサクッと美味しそうな音を立てた。サクサクの衣の中はほこほこでプリプリ。一口サイズに切られて武器商人の口へと入っていくのを、京司はじいっと見つめてから自分も食んだ。
オムライスは武器商人が言う通り、卵がとろり。柔らかな黄色に掛かる赤茶のデミグラスソースからはふわりと赤ワインが香っている。
「恋人との生活は思ったより順調だよ。まあ元から生活時間が合いにくい所はあったから、そこの調整は続いてるけれど。商人はどう?」
「そうかい、そいつは何より。我(アタシ)の方はこの間、祭りがあったから小鳥と行ってきてね。あの子がちょうど林間学校に行ってる時だったから――」
なんて近況の会話をしている間にも、エビフライを食べ終えた京司の口へは甘味が運ばれていく。
常ならば目つきが悪いと称される京司だが――彼は甘味の僕(しもべ)である。ニコニコと機嫌良さげな口へ消えていく甘味たちを見遣り、武器商人は静かに珈琲を口にしていた。代金はチェックアウト時に全て武器商人が払うから、好きなだけお食べ、と。
サンドイッチとミルクたっぷりの珈琲の至福の一時。そんな時間を過ごしながら、ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は窓の外へと視線を向けた。
「綺麗な星空だね……僕もこんな星空の光景を作ってみたいなぁ」
広がる星空から目が離せない。
気付けばサンドイッチはお腹に消えていて、デザートはどうしようかとメニューを覗き込んだ。
「んー……オムライスとサラダとスープにしようかな。デザートはプリンと、食後にコーヒーも。サマーァさんは何にします?」
「アタシは……うーん……全部食べたい……」
メニューを握る手に力がこもる。とても真剣だ。
「オレは片っ端から注文するつもりだから、よければサマーァ、一口食うか?」
「えっいいの!?」
「おう、気に入ったら注文してめいっぱい食えばいいし、食べきれなくてもオレが食べてやる!」
「風牙ってば頼もしすぎ~!」
「失礼。私も相席しても良いだろうか?」
それじゃあねぇとサマーァが給仕係を呼ぼうとしたところで、書生姿の『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)がやってきた。女学生三人は書生さんだ~っと目を輝かせ、勿論どうぞどうぞと四人がけの席の最後のひとつへ招待した。
四人で一気に注文するとテーブルの上に乗り切らないことが予想されたため、甘味は後で。まずは熱い内に食べたいものをと、ハンバーグやエビフライ。
「ほう……」
ゲオルグが切ったハンバーグから、溢れる肉汁。切った瞬間にふわりと立ち上がる湯気と肉汁は、旨味を逃さずしっかりと閉じ込めてある証拠だ。
「あれ、ゲオルグ食べないの?」
首を傾げるサマーァは風牙からハンバーグを一口分けてもらって「アツアツっ」と言いながら頬張ったところだ。
「……少し熱を逃している」
一流シェフが作った料理。本当ならば熱々の状態をゲオルグとて口にしたい。
しかし……如何せん彼は猫舌なのだ。ハンバーグを冷ましている間にエビフライにナイフを入れて冷ましている。
「ハンバーグはデミグラスソースが肉の旨味を更に引き立てていて見事。エビフライはサクサクとした軽い食感の衣に包まれた肉厚でぷりっぷりの海老……タルタルソースも手作りで具材の食感があり、いくらでも食べれてしまいそうだ」
ゲオルグが大満足な顔をしていると、今度はスイーツたちがテーブルを埋めていく。大きな銀の台に乗せられたプリンに果物、ホイップクリーム……ホテルのプリン・ア・ラ・モードはとても豪華でそれだけで満足出来る一品で、ゲオルグもユーフォニーも唸らせた。
「ゲオルグ、今大丈夫だよ」
「ああ」
辺りをちらりと見たサマーァが、人が来そうだったら言うねと告げた。
こっそりと、ゲオルグはぬいぐるみのフリをしてじいっとよいこにしている『ジーク』へとプリンを与える。手乗りサイズのジークは動かなければ神秘が秘匿されている練達でもぬいぐるみでも通る――のだが、流石に食べてる姿を見られる訳にはいかない。
冷や冷やとはするが、それでもジークが幸せそうな顔をしてくれるからゲオルグの苦労は報われる。
「そういや、サマーァは鉄道自体は初めてだよな。これは実際の車両じゃないけど、どうだ、感想は?」
「実際はこの大きなのが動くんだよね? ラクダよりも早いんでしょ? すごくて楽しい」
「今度は本物の電車に乗って、どっか遊びに行こうぜ!」
「でしたら今度覇竜にも来てください。めいっぱい案内しますね」
「うん、行きたい!」
皆でプリンを頬張り、甘くて美味しい幸せのひとときを共有し合うのだった。
●星海を往く
ガタンゴトン、列車が揺れる。
それが『再現された』ものだと知っていなかったら、本当に列車に乗っているようだと『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は思った。
ルチアが座る座席の向かい側に座った『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)は窓の外の星よりも眼前のルチアを見つめていた。だって仕方がない。今日のルチアは女学生さんなのだ。可愛い。ものすごく可愛い。そして自分が学ランにマントの学生風で、夫婦で『一揃い』なのもポイントが高い。
「ルチアさんは星とか詳しいんですか?」
「星? 昔アテナイで学んだ時に、天文学は一通り修めてはきたけれど……」
「僕は……夜に活動することはあってもこんな風に星空を眺める、なんて発想はなかったので……そもそも鏡に星空が映ることも少なかったので、あまり知らないんです」
知っていることと言ったら……と、うーんと少し鏡禍が天井を仰いだ。
「星座というのがあるのは知ってますけど、実際に星が繋がってるわけではないんですね」
ちらりと窓の外へと視線を送っても、星と星の間に線は見えない。
「そうね。昔むかし、世界の文明が今よりもずっと拙かった頃、夜空を見上げた人が星の並びに意味を見出して、夜空に絵を描いたのが星座だからね。祈りを捧げることだってあるわ。そうやって、私たちは貴方たちのような存在を生み出したのでしょうけれど」
「確かに何かの形っぽくは見えますけど、人に見立てたり動物や道具に見立てて、背景の物語を作るなんて、本当に人間にしかできない素敵な能力ですね」
人間の想像力のたくましさに鏡禍は舌を巻く。妖怪である鏡禍は人と感覚が違うから、そこに何かを想像して描いたりするのは不思議な感覚がした。見たままの、ありのままを捉えてしまうのが常だから。
「ルチアさんが星になったら、きっとあの赤い星みたいに赤くてきれいに輝く星なんでしょうね」
鏡禍が指差す先には、赤い星――アンタレス。
勿論彼女をひとりで星にさせるようなことなんてしないから、自分も星になる方法を考えないとと鏡禍は密やかに……本気でそう思う。
けれどルチアは、鏡禍が常日頃から離れたくないと思っていることを知っている。
「さそりの心臓を現す星よね。離れ離れになりたくない、っていうならぴったりの選択ね。ほら、よく見て頂戴な。あの星はふたつの星が連なって成り立っている星ですもの」
ルチアの指先は赤い星の隣を指さして、鏡禍をえっと驚かせる。
「え、この星、ふたつ連なって出来てるんですか?」
赤い色にルチアを見出しただけだったのに、そんな嬉しい偶然が重なって。
――もしあの星のようになれたのなら、何万光年もともにあれるのだろうか。
鏡禍は羨ましげに、いつかそうなりたいと星々を眺めていた。
「わあ、すごいです……」
展望車の座席へ並んで座ったメイはぺたんと窓に顔をくっつける。窓側をメイに譲ったエンヴィは彼女越しに星海へと目をやった。
展望車で口にできるのは、竹筒の水筒に入った水か冷凍みかんくらいだ。駅のホーム(ホテルロビー)にあった売店もしっかりと駅の売店の形をしていて、なるほどコンセプトホテルとエンヴィを唸らせた。
「ねこさんたちがいないのは残念ですね」
「そうね」
でも、仕方がない。列車は動物のお客様は乗れないものだし、ホテルでも動物の連れ込みは禁止されているものだ。ここは練達だから、チェックもしっかりされている。
「練達には猫さんたちと泊まれるホテルがあるそうよ」
「そうなのですか!?」
「メイさんもいってみたいかしら?」
「はい! ……あ。できればねーさまといっしょに……」
お泊りしたいな、なんて。
少し恥ずかしげにチラッと見るメイが可愛くて、エンヴィは勿論一緒に行きましょうねと微笑んだ。
「あっ、見て見てアラーイスちゃん! まるで本当に星の海の中を走っているみたい……!」
「空は天にあると言う感覚が強いので、不思議な感じがいたしますね」
小声できゃあきゃあはしゃぐジルーシャへ、アラーイスが蜜色を柔らかに蕩けさせる。あの星は何という星かしらとはしゃぐジルーシャの方が、アラーイスには面白いようだ。
「わぁ、すごい……星空の中を走ってるんだ……!」
見て見て、お姉ちゃん!
「本当だ、走ってるね……星々が綺麗だ」
窓にくっついて星を見入る祝音が可愛くて、ヤーガはずっと微笑ましげに笑っていた。
「本物も、こんな感じなのでしょう、か」
覗く窓には列車内の明かりが仄かに反射して、角に大きなリボンを結んだ『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)の姿が映っている。薄紫の花模様の着物も映りこんでいて、メイメイの口角が当たった。……受付ではコスプレを先にしてきているのかと問われて付け角だと言い張り、少し生暖かい視線で見られたけど。めえぇ。
ともあれ、座席に用意されている銀河地図を開いて車内アナウンスで現在地を確認するのは楽しくて――耳がぴるると震えそうになるのを我慢するのに忙しい。『付け耳』が動いてはいけないのだ……!
(プリン……アラーイス様はご一緒してくれるでしょうか?)
車内案内のパンフレットでは食堂車の案内もあったから、とっても気になる。他の席に座っているアラーイスをこっそりと窺い、後から聞いてみようと思った。
「わ~! フラン、ハンナ、ウィリアム! 来てくれたんだ~!」
「えっへへ、当たり前だよサマーァちゃん!」
三人を見つけたサマーァが走りたい気持ちをグッと押さえてトタタと早足で近寄ってきてから、『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は腕を広げて抱きとめる準備万端!
えいっと腕の中に飛び込んで、クルクル回るふたりは女学生さん。偶然にも矢矧柄の着物と袴とお揃いの色のリボンがお揃いで、同じ学校に通っているようでふたりは嬉しくなった。
「わあ、サマーァ様。とても似合ってますよ。フラン様も可愛いですね!」
可愛い+可愛いは大正義! パッと笑顔を見せる『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)もふたりと同じ装い。だから同じ学校のお姉様のよう。
「みんな、良く似合っているよ。とても可愛い」
「ウィリアムもすっごく似合ってる!」
かっこいいとサマーァに言われて穏やかに微笑んだ『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は着物の下にシャツを着込み、袴と下駄の書生さん。席に移動しようかと姦しい少女たちを誘導して歩き始める。
「ねえ、後から皆で写真撮らない? ホテルのサービスであるんだって」
「えっ、本当? 撮りたい撮りたい!」
カラコロと下駄が鳴って、サマーァは猫みたいにじいっと見つめてウィリアムの足を追いかけていた。
「あっアラーイスさんだ! こんにちはぁ……じゃなかった! ごきげんよう……うふふ」
展望車へとやってきた『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)がアラーイスを見つけて声を掛けた。
「ごきげんよう……と、あら。フラーゴラ様、お揃いですね」
ロングスカートに帽子にネックレス、手袋に扇子のモガスタイルのフラーゴラ。
アラーイスは扇子ではなく日傘を窓際に立てかけているが、色違いの似たような装いだ。後から写真をご一緒しませんかと問うアラーイスへフラーゴラは勿論! と元気に頷きかけ……「よろしくてよ、また後で」と上品に笑ってみせた。
「きれいな星空……」
列車内を堪能してから展望車へとやってきた『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、昨年友人から教えてもらった星を探していた。
星海の景色は穏やかで、気分もゆっくりと落ち着いてゆくようだった。イレギュラーズは大抵常に忙しいものだから、こういったゆっくりとした時間も必要である。
ある、のだが――。
●そしてだれも
「大変です……! 誰か、駅員を……いえ、皆さん動かないでください。これは殺人事件です! この場にいる皆さん全員に容疑の疑いがあります!」
自らを探偵だと紹介した男がそう言って、倒れている――被害者の男性、雨泽を覗き込んだ。
「彼は、名探偵の――。彼を厭う犯罪者は多い。その犯行だろうか……」
この場にひとりきりの探偵姿のスタッフ――探偵がそう口にして、居合わせた者たちは現場を荒らさないように、また疑われないように移動ができなくなった。
「エンヴィねーさま。メイはささささつじん事件とか怖いのです!」
隣に座るメイがピトッとエンヴィへとくっついた。
(そういえば受付でそんな話を聞いたわね)
ショーがあり、対象は一人で来た客人たち。対象者には『◯時にショーがあるので展望車へとお越しください』と案内が出ており、その他の客へは『もしかするとショーに居合わせる場合がありますが、全てフィクションですので驚かず普段通りお過ごしください』と案内された。
だからメイにもこれが件のショーなのだと……本物の殺人ではないのだと解っているし、参加者ではないふたりが巻き込まれないことも解っている。
「大丈夫よ、メイさん。これだけ人が居れば、犯人はすぐに見つかるでしょうし……人が居る場所なら、被害に遭う事も無いわ」
けれども殺人という響きは少し怖いのだろう。メイの震える肩を抱いて、エンヴィは成り行きを見守った。
「あら、殺人事件? 怖いわね。ところで、死んだのなら……あ、死んでない? 振り? そうなのね……悲しいわ」
大きなリボンを付けた女学生の『屍喰らい』芳野 桜(p3p011041)がそう口にした。彼女の傍らではのんびりと列車の揺れを楽しんでいるのだろう、グレーの軍服の老紳士『利幸』が言葉無く座している。
つい直前までは文学へと思いを馳せていたのだが、大きな音にそちらへと視線を向け、桜はつまらなさそうな顔をした。本物でないのなら……と思ってしまう桜だが、ここは練達。桜には何かと不便が多い土地だ。
「利幸、お茶を飲みに行きましょう?」
利幸を――本体の桜が出ているからただの肉の塊である利幸を伴い席を立とうとして、桜は気がついた。
「そういえば『動かないで』と言っていたわね」
参加者の資格がある『同行者のいない』者は受付で参加を済ませているためひとりずつ呼ばれるだろうが、本人だが『同行者のいる』利幸と桜は終わるまで席に座っていなくてはならない。
ここは練達だ。途中で桜が出て来ることは出来ぬし、着替えは乗車前に行われるため、桜は利幸から出たまま一晩を過ごしてチェックアウトも一緒に行う必要がある。
「仕方ないわね、ゆっくりと待っていましょう」
同行者が居る者は参加できないのは、同行者が居るとアリバイとなるためと、このショーはお一人様利用でも宿泊を楽しめるように、と催されているイベントだからだ。利幸というアリバイのある桜はのんびりと観客を楽しむのだった。
「おやおや、殺人事件とはねぇ」
ひとり静かに読書を楽しんでいた令嬢――『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)がパタンと本を閉じた。裾を少しあげた着物にブーツ、そして窓際の壁に立てかけた生絹の日傘と良い家の才媛らしい出で立ちで、静かに騒ぎが起きている方へと視線を向けた。
(ふむ、探偵はひとり。そして被害者もひとり。だが――)
袂に忍ばせた何かを押さえてから瞳を伏せ、それから艶やかに微笑んだ。
「やれやれ、解決しなくてはゆっくり旅を楽しむことも出来ないじゃないか」
聞いてくれればなんでも答えよう。協力するよと探偵へと視線を向けるゼフィラ。
「まあ殺人事件だなんて……落ち着いて旅行も出来ませんわ」
役になりきって、フラーゴラはうんざりな顔をしてみせる。
「ちょっと人が死んだだけでしょう? それなのにこんなに騒いじゃって」
「おや、君は驚かないのかい?」
「ワタシは実家がお肉屋さんなんですの。だから刃物の扱いも解体もお手の物……おっとワタシとしたことが。今のことご内密にしてくださいね? 容疑者に思われたら嫌ですわ」
それに、田舎者だと思われても困りますもの。
ノリノリなフラーゴラに、ゼフィラが楽しげに笑った。
「ええっ!? だ、大丈夫!? ど、どーしよ!」
急に殺人事件が発生して、アレクシアは驚いた。
(あ、もしかして……これがショー?)
けれどもチェックインの時にショーに参加するかどうかを問われたことを思い出し、時計を確認する。うん、確かに告げられた時間を少し過ぎた頃だ。ショーなのだろう。
「劉さんが……そんな……!」
「大丈夫だよ、祝音君」
チェックインの時に、ショーがあるという話しを小耳に挟んでいる。一人で来た客が楽しめるようにとの計らいで対象者は一人客なのだが、ヤーガの三角のお耳はしっかりと聞いていた。
「もういいかな? よいしょ」
「あっ劉さん動いた……良かった、生きてた……」
「ふふふ、そうだね、祝音君」
一喜一憂する弟の元気な姿が楽しいのか、ヤーガは楽しげだ。
「……ね、アラーイスちゃんは誰が雨泽を殺したと思――……元気に歩き回ってるわね、あの死体……」
「雨泽様は、リビング何とやらなのでしょうか」
多分、違うと思います。
「は、犯人が……この近く……車内の何処かにいる、という事です、よね……恐ろしい、です」
ぷるぷると震えて、メイメイは如何にも怯えています。そんな演技……だが実際には、動き出した『死体役』の自由さに笑いを堪えていた。
「雨泽さんが起き上がった! ギャー! サマーァちゃんゾンビだよ! 逃げなきゃ!」
「フラン落ち着いて! 大丈夫だよ、これは受付で言っていたショーだよ、たぶん!」
「はっこれはショーだった……ひ、一人パニックになっって恥ずかしい!」
「恥ずかしさは手柄で巻き返そうよ、フラン! 頑張って犯人さがそー!」
おー! とサマーァとフランは腕を振り上げた。やる気も元気もいっぱいだ。
「なんです、こりゃあ……」
どうぞ、と探偵役のスタッフに示され、『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)が最初に動いた。慌てた様子で雨泽が寝転がっていたところへ駆け寄った支佐手は「雨泽殿!」と転がるように指示を出す。
ドクターバッグを手にしたスーツ姿の――医者である。バッグの中には薬や医療器具が入っているため、自ら鞄を開いて探偵へと遠くへ往診にいくのだと示した。
「まさか、雨泽殿が……」
「お知り合いですか?」
大抵の場合、此処で返ってくる応えは「彼は名探偵でしょう? 讀賣で知っています」といったところだが、支佐手の応えは違う。
「ええ、雨泽殿とはそれなりに長い付き合いでしての」
「同郷の方ですか?」
探偵の問いへ顎を引きながら、支佐手は雨泽を見ていく……のだが、当の雨泽は笑いを堪えるのに必死でブルブル震えている。
「……犯人の目星は、付いとられるんですかの? わしにできることがありゃ、何なりとお手伝いさせて下さい」
「ええ、医者の方が居てくれて助かります」
またお呼びするかもしれませんが、その際は……。
「犯人ってどなたですか?」
「直球過ぎない?」
「ふふ、考えるのが苦手で」
探偵に呼ばれて検証や証言をしに動いたハンナは、ついでにそんなことを雨泽に尋ねてにっこりと笑った。
死体役をしていない時の雨泽は探偵の側に居たり空いている席に移動したりしているから自由に話しかけることが出来る。時折車両の外に出ていくこともあるから、きっと裏方的なことをしているのだろう。
(なるほど、自由に動き回ることで『ショーですよ』って周囲の人にちゃんと思わせているのか)
此度の客たちの中で真意を汲んだのはウィリアムだった。『◯時にショーがあります』と受付で告げられたって、楽しく過ごしていると時間なんて忘れてしまう。そんな中で突然殺人事件が起きれば『本当』と思う者もいることだろう。客への無駄なストレスや騒ぎを避けるためにも、雨泽は確りと『ショーですよ』を示しているのだ。
「ほれ雨泽殿、疲れたでしょう」
「わ、ありがとー」
売店で売っていた冷凍みかんを支佐手に差し出されれば、雨泽は喜んで受け取った。
「普通、ちいとは遠慮するでしょう? コレ、さっきわしが自費で買うたやつなんですがの」
「そうなんだ」
「……それだけですか」
「まあ、後から食堂車に付き合ってあげてもいいよ?」
事件が終わったらねと笑って、雨泽がまた席を外した。なんだかんだと、彼は忙しいらしい。
「そこのお嬢さん、あなたは何か見ましたか?」
「えっ、わたしですか!? 何かって……!?」
突然探偵に尋ねられたから、メイメイは吃驚!
わたわたとしている間に探偵の目がすうっと細くなる。
いけない、これはアレだ、怪しまれている!
「えっと、その」
「事件の時なにしてましたか? 星見てた?」
アレクシアにさり気なく誘導され、メイメイはハッとした。
「あっ、そうです! そうです、星。星を見ていました!」
「そうだよねー、キレイだもん!」
どの星が気に入った? なんて、アレクシアはメイメイの隣に腰掛けて話し始める。わたしはあの星が。私はあの星が。そんな話をしていれば、いつの間にかふたりは会話の方に夢中になって犯人探しを忘れてしまった。
「この事件の犯人は――」
ついに探偵の考えが纏まったのだろう。
探偵の言葉に、場はシンと静まった。
シーン。
シーン……。
シーン…………。
……溜めが長い。
「犯人はあなたですね、支佐手さん」
「わし!?」
ビシッ! と指をさされた支佐手が、ガーンっとショックを受けたようなポーズで後ずさる。ノリノリだ。
「わ、わしが犯人などと……おかしな言いがかりは止めてくれませんかの」
医者として死因を突き止めようと頑張っていたし、その努力は他の皆だって見ているはずだ。いくら元々の知り合いとは言え、疑うのは酷いと支佐手が訴えた。
「支佐手さん、あなた――」
「な、なんですかの」
「被害者に借金をしていましたね?」
ぎ、ぎくぅ!
「なっ、い、言いがかりです」
そもそも何故知っているのだとか、証拠はどこだとか、支佐手は探偵を非難した。
「証拠ならありますよ」
ひらりと探偵が取り出すのは、借用書だ。
トイチどころでは済まない利率から始まって、猫カフェに連れて行けだの食堂車でプリンが食べたいだの関係の無いことが記されていて、日頃からあれやこれやと足元を見られているのに違いない! と探偵が口にした。
「(……おんし、席を外したかと思ったら小道具作っとったんですか!?)」
「(なんのことかなー)」
最後には項垂れながら支佐手は白状し、適役だなーなんて雨泽は思った。
――勿論、参加者から犯人を選んだのは雨泽である。支佐手は後からアフォガードを奢ってもらえることだろう。
事件は一件落着――と、思われた。
「えっ!? フラン? フラン!」
少し前から静かにしていた――全然犯人が解らなかったから糖分が必要だー! と展望車から出ていこうとして止められて不貞腐れていた――フランに「犯人見つかったね、プリンでも食べに行く?」と問おうとしたサマーァの声であった。
「ふ、フランが……し、ししし死んでる……」
窓に頭を預けて力を抜き、瞳を閉ざしている彼女の手には『死んでます』の紙。『起こさないでね』みたいで、何人かが笑いを堪えて震え――いや、新たな殺人への恐怖で震えている。
「えっ、いつの間に? どうしよう、アタシ全然気付かなかった……あっ、アタシは犯人じゃないよ、本当だよ!?」
あわわ、と慌てるサマーァの気配に、フランは心の中でペロッと舌を出した。
(ごめんね、サマーァちゃん!)
第一発見者は怪しまれることが世の常だ。しかも隣りに座っていたのだから、仕方がない。
「サマーァ……」
「サマーァ様……」
ウィリアムとハンナの視線が物言いたげで、サマーァは「本当にアタシじゃないよ!?」と慌てている。
と、そこで。
「きゃあああ!」
もうひとつ、悲鳴が上がった。
車両内の全員の視線が、今度は悲鳴を上げたフラーゴラへと向けられた。
「し、死んでいますわ……」
なんと! 新たな死体が発見されたではないか!
フラーゴラの視線の先では、ゼフィラが迫真の演技で事切れていた――!
実家が肉屋である話をゼフィラだけでなく探偵にもしてしまったフラーゴラへも探偵からの鋭い視線が向けられ、「ワタシではありませんわ!」と賢明に手を振った。
そうして、死体が三体に増えてしまったのだった……。
車両内は混乱をきたした。
事件解決まで車両から離れられない乗客。
飛び交う推理。
場の騒乱に逃げようとする犯人支佐手。
暇だからと食堂車のプリンの話を始める雨泽。
まさか第二第三の殺人が起きるとは……と頭を抱える探偵。
アタシ本当に犯人じゃないよと涙目のサマーァ。
肉屋の娘だけど違います! と主張するフラーゴラ。
――そうして、最後に。
「まさか、そんな……ふたりが」
参加者たちの会話、そして探偵の推理によって導き出された新たな犯人。
「ごめんね、サマーァ」
「ごめんなさい、サマーァ様」
それがまさか、ウィリアムとハンナのふたりだったなんて! 信じてたのに!
少女の心の叫びは置き去りに、盛り上がりを見せたショーは沢山の拍手と笑顔に包まれて無事に終わった。
「楽しかったですわ」
「次は犯人役になれたら嬉しいな」
盛り上がりに協力できたとゼフィラとフラーゴラが笑みを交わしている。この後もふたりで会話を弾ませるのだろう。
「犯人、全然わからなかったよ……」
「そうですね、まさか第二第三もあるだなんて……」
メイメイとアレクシアは顔を見合わせ、うんうんと互いに大きく頷きあっている。
「良い余興だったよ」
観客であるグレーの軍服の老紳士と彼の連れ合いの女学生が席を立ち、車両を移動していく。
居合わせた多くの者たちは食堂車へ行き、そこで熱い珈琲や紅茶をいただきながら歓談と洒落込むのだろう。
●いなくならなかった
――種明かしをしよう。
実はこのショーには『ハンドアウト(Hand Out)』と呼ばれる物が存在した。
一人客へは受付で参加の有無が聞かれ、参加する場合は『◯時に展望車にいてくださいね』と案内がある。そうしてから参加希望者には『準備が出来てから専用の』一人用更衣室へと案内され、人によってはそこにハンドアウトが存在した。
【HO1:あなたは雨泽を殺した犯人です】支佐手
【HO2:あなたは第二の被害者です】フラン
【HO3:あなたは第三の被害者です】ゼフィラ
【HO4:あなたはある人を殺す犯人です】ハンナ
【HO5:あなたはある人を殺す犯人です】ウィリアム
そう、事件は更衣室から始まっていたのだ。
つまり、フランが出ていこうとしたのも演技である。被害者になれるように隙を作ることがフランのやるべきことであった。
追加の犯人役であるHO4とHO5のハンドアウトには『あなたと同じ髪色の人間を殺すために列車に乗り込んだ』とも記載があった。これは主催側が参加者を把握しており、似たような髪色(オレンジも含む金髪)の人間が4名であったことから定められた。そういった意味で『準備が出来てから』の更衣室への案内である。
しかしチェックインは別だったが、偶然にもHO4とHO5が当たったふたりは兄妹だった。そのため密かにふたりで殺し合いが勃発したのだが「待ってハンナ、僕も犯人だよ?」「え?」みたいなやり取りがあったのだ。自ずと自分たち以外の……と、彼等の標的はフランとゼフィラに定まったのだった。
「いやぁまさかいきなりターゲット以外が死んで始まるとは思っていなくて」
吃驚したよねと口にしたウィリアムに、うんうんと同意を示しながらハンナはサマーァの口へとプリンを運ぶ。
四人は無事にお開きとなった後、食堂車へと来ていた。主に大いにショックを受けてヘソを曲げたサマーァのご機嫌取りと美味しいプリン・ア・ラ・モードのためだ。ここの料金はウィリアムとハンナが出してくれるらしい。
突然雨泽が死んで始まったから、殺人を犯さねばならないふたりは大いに慌てた。下手に動けば関係ない殺人の方を疑われてしまい、目的を達成することができなくなってしまうからだ。
「あたしもびっくりしたんだよ。突然ハンナに『グサッ、フラン様は死にました』って小声で言われたし」
「ふふふ、ごめんなさい。条件に合うのがフラン様とゼフィラ様だったので、シャハルとじゃんけんで決めました」
「アタシだけ仲間はずれだったよー! もー! すっごい疑われたし!」
「すねないでサマーァちゃん。はい、あーん」
「むぐ。むぐぐう」
アタシはこんなことくらいじゃご機嫌になんてなりませんからね!
そう告げてくる瞳から険が取れるまで、そう長くはかからなさそうだ。
●星海の夜
窓の向こうで星々が流ていく。ガタゴトと言う音と振動はまるで本当に列車が走っているようで――それが星海を、というのだからなんとも不思議な話だ。
雨泽がやりたいことと、それを叶えられるだけの練達の技術力。そのふたつが合わさって、此度の宿は作り出されている。驚いたなという声にすごいねと返したのは、列車らしい狭い通路を歩く夫婦のうちのひとり。着物姿にブーツという和洋折半な姿で『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が振り返れば、すぐ後方には彼女に合わせて同じく着物姿とブーツの『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)の姿。
ルーキスがそのままくるりと回れば、袖が微かにひいらり。結婚しているから振り袖ではないけれど、衣服の裾が舞うと少女心めいたものが胸をくすぐる。
「ははっ、そんなに回ると目が回らないか?」
楽しいよと告げるルーキスの肩をルナールが止めて抱き寄せる。
ふたり並んでは歩けぬ列車の通路。前方から人が来たよと伝えながら相手を見た。どうやらスタッフのようだ。駅員の姿をしたスタッフへふたりはついでに撮影を頼み、そうしてから寝台車の個室へと入っていく。
「ルナール先生はどういう立ち位置なんだろうね? 文学生?」
「うーん、年齢的に文学生ってのはどうかな……とはいえ、若旦那って柄じゃないしな?」
「まあどれにしたって、私の旦那様なら大体なんでも似合うよね」
「褒めすぎじゃないか?」
「キミを褒めちぎるのは癖みたいなものだよねー」
くすくす笑うルーキスに、ルナールは苦笑しながらも唇を寄せた。
ふたりっきりの空間だ。周りの目を気にする必要なんて無い。
寝台列車に似せた作りの室内は、向かい合う形で座席に模したベッドがある。ベッドとして使わないのであれば、窓からゆるりと星海が見られる座席だ。
「ほらほらー、お兄さんも座って座って」
そこへ早速腰掛けたルーキスが傍らをポンポンと叩いてルナール呼んだ。ふたり並んで寝るのは難しいけれど、ふたり並んで座ることは出来る。
「うーん暇だ」
旅行というものは総じて――例外はあるが一般的に、仕事や日常から離れるものだ。魔術だ新術だって研究ばっかりなルーキスは、窓から外を眺めてのんびりとするよりも、仕事が無いことに物足りなさを憶えてしまったようだ。
「ワーカーホリックが抜けませんねぇ、これはいけない」
「こればかりは仕方ない。普段からまともに休まない弊害ともいうな?」
「ということだからルナール先生、構ってくれない?」
隣り合った肩へと顎を乗せて笑えば、ちらりと見た情熱的な色を宿した瞳が三日月に細められて。
「わ」
脇の下に腕を通されて持ち上げられれば、降ろされたのはルナールの膝の上。
「うちの可愛い奥さんはこれで満足か?」
「ずっと見ていてくれるなら?」
「俺は元より奥さんしか見ていないが?」
くすくす、くす。笑う声は星の囁きにも似て。
またそっと唇が触れ合った。
「あっ、ココア、いけません!」
いつもと違う装いが気になるのか、桜の刺繍が散る袴へとすりっと頭を寄せた『ココア』を『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)は慌てて抱き上げた。貸衣装に(本物の猫ではないが)猫の毛がついてしまったらきっとホテルの人が困るだろうし、ホテルに連れ込むのは『部屋から出さないこと。ホテルの人に絶対に見つかっては駄目だよ』と雨泽にも言われている。
「ニルが可愛いからココアも気になるのですね」
「テアドールの格好も、かっこいいのです!」
どちらかというと可愛いと称されてしまう衣装にいつもは袖を通しているテアドール(p3n000243)の今日の姿は軍人さん。ピッシリと決まった装いを愛らしい女学生姿のニルに褒められると、テアドールは嬉しげに微笑んだ。
「寝転がりながらお星様が見られるそうですよ」
まだ少し時間は早いけれど、そういうことならとふたりはころんと寝転がる。
「あれがベガとアルタイルとデネブですね、夏の大三角」
「どれとどれとどれですか?」
「すごく光っているみっつの星です」
ニルは星のことが詳しくなくて一生懸命に光の強い星を探した。
「あ、ありました! テアドールはとても物知りです」
「僕にも知らないことは沢山ありますよ」
同じようなことを雨泽も言っていたのを思い出し、けれどもふたりは物知りだとニルは思うのだ。物知りで、すごい。
「……ねえ、テアドール」
「なんでしょう、ニル」
内緒の話をするような心地で、ニルは小さく「ニルの杖の事なのですが」と切り出した。
「この間会ったひとに、秘宝種のコアだって言われたのです」
ニルが体を起こしたからテアドールも体を起こし、座席を模したベッドで通路越しに向かい合う。
ニルの杖なのに、ニルはそこに嵌っている宝石のことを何も知らない。
けれど見つめれば暖かな気持ちになれて、ともに戦場にあれば背を押してくれるような……そんな気持ちになれる大切な杖なのだ。
「これが本当にコアなのか……コアなら誰のものなのか……テアドールは調べられたりしますか?」
誰に相談すればいいのかも解らなくて、押し殺していた不安。
そろりと伸びた手は、いつの間にかきゅ、とテアドールの袖を摘んでいた。
「わからないのが……ニルは、こわいのです。誰がどうして……こんな……」
「一緒に探してみましょうニル」
研究所に来たことがあるコアなら、何かデータが残っているかも知れません。
テアドールはそっと優しくニルを抱きしめて、窓の向こうに降る星々へと願った。
どうかニルの心が軽くなりますように。
たっぷり遊んで、消灯時間。とはいえ眠りにつくにはまだ早い。
寝台列車の作り――座席を模したベッドへと横になれば、消灯した室内には星だけが瞬いて。この前は海の宝石を見たな、なんて『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)は思った。
暗がりには慣れっこだから、暗いのが怖いだなんて思わない。
……はず、なのだが。
(なんだろう)
星空が近いからか。それとも俺が弱くなったのか。
何故だかこの暗がりに吸い込まれそうな気がした。
「サン……――ッ」
サンディ君見て、星が凄く綺麗だよ。
そう紡ごうとしたシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)の言葉は、ずきりと奔った痛みに止められた。。
(……君の隣に、私はあとどれくらいいられる?)
沢山の綺麗な思い出を共有したいのに、爪痕ばかりを残しそうで怖くなる。
「シキ?」
「……まだ起きてるって聞こうと思って」
「起きてるよ」
シキの声は裏返ったけれど、どこかぼんやりとしていたのだろう。サンディは気付かない。
「ねえ」
横を向けば、そう離れていない場所にシキの顔。
瞳がかすかに濡れているように思えたけれど、星の煌めきのせいかもしれない。
「手を繋ごう?」
「ああ」
伸ばせば届く距離。ぎゅうと繋がれた手は温かくて――シキの頬には熱が灯り、サンディは安心感にホッと息を吐いた。
「星が綺麗だねぇ」
「ああ、綺麗だな」
そんな顔は互いに見せられないから、視線は窓の外の星々へ。
(さっきと変わらない星なのに、何か、暖かい夜空みたいだ)
シキにもそう見えていればいいと少し手に力を籠めれば、同じ強さで握り返される。
(サンディ君、憶えていてね。私が居なくなっても、憶えていて)
この熱を。この温もりを。一緒に見た美しさを。
大好きで特別な君に憶えていてと呪いをかけられているのを知らず、サンディはこの暖かさをずっと忘れないと手の熱を確かめた。
座席に似せた作りのベッドに腰掛けて窓から星海を眺めていた『雨を識る』チック・シュテル(p3p000932)は、扉の開く気配と同時に視線を向けた。
「おかえり」
「……ただいま」
少しだけの間を空けて応じた雨泽はトンビコートを外し、次に外した角カバー付きの学生帽でパタパタと扇ぎながらチックの向かいへと腰掛ける。コートと帽子を外した雨泽は、チックとお揃いのようだった。
(雨泽も、お手伝いとお勉強、する人)
手伝いと勉強をしている姿の自分を想像するだけでも嬉しいのに、一緒に勉強もしている姿を想像して、チックは凄く嬉しくなった。
「先に寝ててって言ったのに」
「うん。でも……雨泽とお話、したくて」
「明日でも出来るのに」
明日でなくともその次の日だって。チックが望めば僕は時間を作るよ?
予定が入ってなければの話だが、こてんと首を傾げる雨泽に小さくチックは笑った。いつでも会えるのは嬉しい。……だって最近の雨泽は。
チラと雨泽を見る。吸血等、顔を近付けなければ解らないが、彼の虹彩が暫く前からおかしいことにチックは気付いていた。
――何か悪いことが起きそうで、不安だった。
姿を見られてホッとする気持ちを隠し、「星、すごく綺麗だよ」と微笑んだ。
(こんな日が、いつまでも続く……しますように)
知っている星はあるかと尋ねる声が優しくて、食堂車や展望車での体験話が楽しくて。
それをずっとと願うのは欲張りだろうか?
「ふあ……あ、ごめん」
「……眠たい?」
「……うん」
疲れちゃったと眠たげな声が紡ぐのを聞いて、チックは互いの間にカーテンを降ろし、子守唄も紡いであげる。
「……俺ね」
小さな声が届いたけれど、チックは子守唄を紡ぎ続ける。
「人が多いのって、本当は苦手なんだ」
大勢の人の中でいつも笑っているのに。
小さな弱音を受け止めると、珍しくすぐにすうすうと寝息が聞こえてきた。
「……おやすみ。良い夢を見る、出来ます様に」
星海鉄道は星海を往く。
もし本当にこの列車が空にあったとしたら、地上の人々からは流れ星に見えたことだろう。
『ご案内いたします。まもなく、終点。どなた様もお早めにお支度くださいませ。まもなく……』
チェックアウトの時間が近付く頃にアナウンスが流れたのなら、星海の旅路も終わりの時間。
最後に入った車掌からの挨拶は、とても短い挨拶だった。
――みゃーお。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
大正こそこそ壱花話。
実はインバネスコートとトンビコートは形が違います。
背中もケープのヒラヒラがあるのがインバネスで、背中までないけれど着物の袖に合わせてケープが長いのがトンビです。海外から来たインバネスコートには袖がありますが、着物社会ではコートの袖に着物が収まらないため、袖を無くしてケープを長くして寒さ対策されたのがトンビです。
リプレイ中にも出てますが、列車の名前の意味は『黒猫」で、車掌さんも猫さん、という設定です。(挨拶アナウンス)
良い旅となったでしょうか?
降車の際は段差がありますので足元にお気をつけください。
どなた様も楽しい一日をお過ごしできますよう。
それでは、またの乗車をお待ちしております。
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
コンセプトホテルに泊まりに行きませんか?
●目的
コンセプトホテルで楽しく過ごす!
●プレイングについて
一緒に行動したい同行者が居る場合は一行目に、魔法の言葉【団体名(+人数の数字)】or【名前+ID】の記載をお願いします。その際、特別な呼び方や関係等がありましたら二行目以降に記載がありますととても嬉しいです。
「S1:寝台車、S2:グループ」でごっこ遊びに興じる際も団体名とともに目的として記してください。抜けてる場合は生じない可能性があります。
●ドレスコード
入場時(ホーム到着前)に貸衣装がございます。
練達で『大正ロマン』と言われる装いに着替えて頂きます。
あなたはどんな装いで参加しますか?
(探偵/駅員はスタッフ衣装/制服です。なので用意されていません。)
●NPC
御用がございましたらお気軽にお声がけください。
↓に居ない壱花NPCを希望の際は推薦機能をご利用ください。可能な際はお応え出来ます。
・劉・雨泽(p3n000218)
書生は世を忍ぶ仮の姿。実は名探偵……だが、邪魔と見なされ殺されてしまう。……という役どころ。事件は偶然居合わせたもうひとりの探偵(スタッフ)が解決してくれるので大丈夫!
死体役をしなくてはいけない時以外は【1】or【2】をウロウロしています。【3】で眠るのも可能です。
・サマーァ・アル・アラク(p3n000320)
ハカマ! ハカマを着たよ! ジョガクセーさんって言うんだって!
これも着物っていう服なんでしょ? わー、お姉ちゃんに見せてあげたい!
初めての練達! 初めての列車(ホテル)! お泊り楽しみー。
列車内では【1】~【3】に居ます。食堂車が特に気になっています。
●サポート
イベシナ感覚でどうぞ。
同行者さんがいる場合は、お互いに【お相手の名前+ID】or【グループ名】を記載ください。一方通行の場合は描写されません。
シナリオ趣旨・公序良俗等に違反する内容は描写されません。
●EXプレイング
開放してあります。
文字数が欲しい、関係者さんと過ごしたい、等ありましたらどうぞ。
可能な範囲でお応えいたします。
●ご注意
公序良俗に反する事、他の人への迷惑&妨害行為、ホテル内を汚したり物品の破損、未成年の飲酒は厳禁です。年齢不明の方は自己申告でお願いします。
舞台は練達となります。神秘は秘匿されねばなりません。
下記は選択肢と、それに伴う説明です。
《S1:行動》
select 1
あなたは何処で過ごしていますか。
【1】食堂車
大きな窓から星海を眺めながらお食事ができます。
テーブルには白いクロスがかかり、お洒落なレストランと変わりません。ひとつ違うとすれば、どの席も通路を挟んで左右の窓(壁)に面していることでしょうか。
・お食事
ハンバーグ、ステーキ、エビフライ等の各種洋食
サンドイッチ、ハンバーガー等の各種軽食
アフォガードやパンケーキ、プリンが人気
・ドリンク
練達にあるアルコール・ジュースを各種
香り豊かな珈琲や紅茶
生クリームたっぷりのココアやクリームソーダ等
お冷はレモン水
【2】展望車
大きな窓の外は黒い闇にキラキラ輝く星々。
星海を掛ける列車の窓から宇宙を眺められます。知っている星を探したり、他の人の邪魔にならない声量でおしゃべりしたり、のんびりと過ごせます。
ソロ・ペア・グループの場合、↓に居合わせても大丈夫ですが傍観者(ショーを楽しむ観客)になります。「まあ殺人事件ですって。怖いわ」とか、乗客になりきって過ごしてください。
<S2:マルチ>の場合
殺人事件(ショー)が起こります。
傍観者として楽しんでもいいですし、事件解決に動いても良いです。そこに偶然居合わせた探偵(スタッフ)が事件を解決します。
雨泽が死にます。……死体役は暇なので、ウロウロしたり椅子に座ったりと動き回りますが気にしないでください。暇なんです。「現場検証するから来て!」と言えば「はーい」と戻ってきます。
皆さんは好きに推理をして大丈夫です。雰囲気を楽しむショーです。
最終的に探偵(スタッフ)が事件を解決するので!
・EXプレイング
【実は】…事件を起こそうと列車に乗り込んだはずだった。
でも先に殺人が起きてしまった。どうする!? をしてもいいです。
【被害者希望】…展開によっては第二の殺人が起きる可能性があります。
(可能性は高くはありません)
【3】寝台車
二名、もしくは四名が寝泊まれる客車。
四名用は二段ベッドになっており、二名用は二段目がないため広く感じられます。その他設備等は同じですが、ホテルであるため普通の寝台列車よりは寝やすく、広々とした設計。
ベッドの頭側には部屋とほぼ同じ大きさの窓があり、流れる星々を寝転がりながら見ることが可能です。ビロードのカーテンを降ろせば室内は暗闇に包まれ、列車の揺れと音を感じながら眠りにつけます。
また、部屋の中央にカーテンを引くこともできます。
<S2:グループ>で3名以上(通常参加枠2名以上+α)の場合
寝台車内で殺人事件(ごっこ)を起こしても良いです。
お手洗いに行って帰ってきたら――皆起きて! みたいなやつです。
犯人はあなたたちの中に居ます。が、居ないと信じてもいいし、疑心暗鬼にギスギスするごっこ遊びをしても良いでしょう。
注意点は、その部屋以内で全て完結させねばなりません。外で騒ぐと他の宿泊客の迷惑になります。
《S2:交流》
select 2
誰かと・ひとりっきりの描写等も可能です。
どの場合でも行動によってはモブNPCが出る場合はあります。
【1】ソロ
ひとりでゆっくりと楽しみたい。
【2】ペアorグループ
ふたりっきりやお友達、関係者と。
【名前+ID】or【グループ名】をプレイング頭に。
一方通行の場合は適用されません。お忘れずに。
【3】マルチ
特定の同行者がおらず、全ての選択肢が一緒で絡めそうな場合、参加者さんと交流。
同行している弊NPCは話しかけると反応します。
【4】NPCと交流
おすすめはしませんが、弊NPCとすごく交流したい方向け。
なるべくふたりきりの描写を心がけますが、他の方の選択によってはふたりきりが難しい場合もあります。(特に『寝台車』)
交流したいNPCは頭文字で指定してください。
ひとりなら【N雨】【Nサ】、複数なら【N雨・サ】でも通じます。
(サポート招待NPCさんとの行動は【2】を選択してください。)
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