シナリオ詳細
<Autumn Festa>無限秋刀魚~魅惑の秋
オープニング
●今秋の流行り
暑さも和らいで、秋。
幻想国内を蠍が騒がせているが、それでも季節は移ろいゆくもの。
特に流行りに敏感な一部の貴族などは蠍ばかりにかまけていられない。
誰が聞いたか最早定かでないが、旅人から聞いた『ある事』が国さえも越えて広まりつつあるのだ。
曰く──『○○の秋』と称して催し物をする、というもの。
人から人へと伝わっていくうちに内容は変わっているかもしれないが、まあ概ねそのような内容だった。
催しを行う貴族によって規模も内容も様々。当然、集客力も様々である。
沢山集まってるけどイレギュラーズも呼んでもっと賑やかにしようとか。
全然集まらないから客として来てくださいとか。
むしろイレギュラーズだけお呼びしてますとか。
結果──貴族の思惑は色々あるだろうが、催し物は依頼としてローレットへ持ち込まれたのだった。
●海に漂う煙
「へえっ! あんた達、気合が入っているじゃないか!」
『ふらり、ふらりと』青馬 鶇(p3n000043)は海辺でかかと笑う。切れ長の瞳に映るのは白いつなぎ服の男達。頭にはタオル、目元にはゴーグル。
口元はマスクで覆われている。
つなぎ服の背には『秋刀魚』の文字が刻まれ、男達は伯爵の命を受け此処に立っているのだ。
「それにしても、無料で秋刀魚を振舞うなんて粋だね」
鶇は大きく息を吸いながら言った。海辺には大勢の客がテーブルに座り、秋刀魚を食べている。パラソルの下で秋刀魚を仲良く食べるカップルの姿も見えた。
海辺は賑やかだ。勿論、アルコールの提供もある。
男達は横一列に並び、網の上でひたすら大ぶりの秋刀魚を焼いている。男達の額には汗。時折、太い腕で男達は顔を擦る。団扇を扇ぐ度に秋刀魚からもくもくと白い煙が舞う。
「旨そうだねぇ……日本酒に合いそうだ」
鶇は呟く。男達は無言で頷き、手を動かし続ける。
「へいっ、お待ちッ!!!」
男の一人が紙皿を鶇に手渡す。鶇は目を細めて秋刀魚の塩焼きを見つめる。
「お好みでどうぞ!!!」
男は後方のテーブルを指差す。
「ん? ああ」
鶇は納得する。テーブルには薬味があった。
『大根おろし』・『レモン』・『スダチ』・『ポン酢』・『タバスコ』・『マヨネーズ』・『ケチャップ』・『ニンニク』・『ワサビ』・『ソース』・『唐辛子』
「ふーん? ミョウガやネギ、ゴマもあるねぇ!!」
鶇は豪快に笑う。添えられた割り箸で大根おろしを摘み、秋刀魚の身をほぐしていく。
「ああ、脂がのってるねぇ……」
鶇は言い、秋刀魚を食べようとした瞬間、男が現れる。
「ん? なんだい?」
鶇は訝しげに男を見つめると、男はビールジョッキ(700ml)を差し出す。
「秋刀魚グリーンスムージーです! 是非とも鶇様に飲んでいただきたいと思いまして!」
男は笑う。
「はぁっ!? グリーン……?」
受け取りながら鶇は声を上げた。ビールジョッキにはドブのような液体が注がれている。
「……」
鶇は男を見据えた。ジョッキからもわりと刺激臭が漂う。
「生の秋刀魚とセロリ、ツルムラサキ、梨、バナナ、生卵が入っています!」
男は質問していないのにはきはきと中身を答える。
「……」
「鶇様? お飲みいただけないのでしょうか?」
男は鶇の様子に気が付いたようだ。男は悲しそうに両手をジョッキに伸ばした。鶇は男の片手を掴み、首を振る。
「若造、やめな。飲むに決まってんだよ! このあたしに出来ないことなんてないんだからね」
鶇は強気に言い放ち、ジョッキを傾ける。喉を鳴らしながら鶇は秋刀魚グリーンスムージーを半分ほど飲み蒼ざめる。
(かー、まっず! 臭みしかないね!)
「鶇様? お味はどうしょうか?」
男は訊ねる。鶇は震え、口元をおさえた。込み上げる吐き気と戦いながら胃の腑にどろどろの液体を流し込む。
口元を拭い、「ああッ! 至極、旨いよ……」と鶇は笑う。
「あふん……」
鶇のキメ顔に男は心を奪われる。
「だからさ、あとはあんたが飲みな」
鶇はジョッキを男に押し付けよろよろと男から離れていく。
- <Autumn Festa>無限秋刀魚~魅惑の秋完了
- GM名青砥文佳
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年10月18日 21時10分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●
もくもくと上がる煙。男達は秋刀魚を焼き続ける。そんな中、アランは衣に勝負を挑んだ。
「神埼ィ!! どっちがサンマを多く食えるか勝負だ!」
衣は一瞬、首を傾げるがあっさり受け入れる。
「これが落ちたら開始だぞ」
アランはコインを衣に向ける。
「しゃああァッ!」
弾かれたコインが天高く舞い、衣の頭に落ちる。アランと衣はきょとんとするがすぐさま、秋刀魚を見つめる。アランは焼きたての秋刀魚を掴み腹から食い破り、鋭い骨に悶える。一方、衣は箸を使い普通に食べている。衣は内臓を綺麗に取り除き身から骨を取り口に運ぶ。
「美味しい……」
「遅い、遅いぞ! フフフ、その程度か神埼ィ!!」
アランは叫んだ。
「……負けない」
衣は秋刀魚を手で掴み骨ごと噛み砕く。
「ぬわにぃ!?」
アランは驚愕する。
「うぅ……に、苦い」
だが、衣はすぐに涙目。苦いものが苦手なのだ。狼と勇者は内蔵に苦しみながら秋刀魚を頬張り続ける。
「はい、苦味対策にコンデンスミルク入りだよ!」
「!?」
アランと衣は目を丸くする。そこには白色の秋刀魚グリーンスムージー。
ルーキスはルナールに微笑む。
「海でも川でも、新鮮な魚は塩焼きが一番美味しいよね」
「だな。鮮度がいいなら刺身も美味いが、わざと鮮度のいい魚を焼くっていうのは贅沢だよな」とルナール。
「そうだよね。本当に凄いイベント。ルナは調味料、何がいい? 白身の魚は塩気と柑橘系の味が癖になるんだー」
「柑橘は確かに合うな、俺は醤油と大根おろしがあれば……あ、無ければ同じ柑橘でいいぞ」
ルーキスは頷き、ポン酢を秋刀魚に。
「うーん、大体これぐらいかな。あ、ついでに酒でも頼もうか、ルナは何がいい?」
ルーキスは笑う。ルナールは既に日本酒を飲んでいる。
「魚に日本酒、しかもルーキスと一緒。言うことなしだ」
酒豪のルナールは笑う。ルーキスが一緒なら酔えなくても楽しい。
「流石にこれは身体に悪い気配がするわー。帰ったら運動しないとだね」とルーキス。
「……あー、運動なら俺も付き合うぞー?」
ルナールは言い、「ま、今日は気にせず二人で飲もう。折角だしな」と笑う。 この日をゆっくりと楽しみたい。
下呂左衛門は白米とともに秋刀魚を楽しんでいる。
「うむ、美味い。美味い」
(酒の肴というのも捨て難いが、秋刀魚はやはり純粋な食事という気が致すな)
「ちと、下っ腹が気になる今日この頃ではござるが」
下呂左衛門は腹部をさするが食欲の秋には勝てない。
「そんな貴方にはこれ! 秋刀魚グリーンスムージー!」
「うん? ぐりーんすむーじー? 青汁のようなものでござろうか?」
「そうそう、美味しいよ」
「ほう、健康に良いのならば逃す手はあるまい」
下呂左衛門は一気飲みをする。
「う~ん、不味い。もう一杯!」
下呂左衛門はジョッキを叩きつけ、昇天しかける。
クリスティアンとロクは秋刀魚を味わう。
「王子、王子! 脂のってておいしいよ!」とロク。
「ふふふ、そうだね。こちらに来てから初めての秋だけども、この秋刀魚というのは本当に美味しいね! お酒と共に秋刀魚が進むよ!」とクリスティアン。
「はい! これ! 秋刀魚のはらわたあげるね! わたしはいらない!」
「ロク君、これは一体……」
皿の端には秋刀魚の内臓。
「え、はらわただよ!」
「うん、秋刀魚の内臓だと言う事は僕もわかるのだけどね……」
「はい、これ! 秋刀魚のはらわた!」
「やめておくれよ、ロク君!」
クリスティアンは叫ぶがロクはひたすら、内臓タワーを作り上げていく。
「やだー。王子、顔真っ青だよ!?」
ロクは真っ青なクリスティアンに驚く。クリスティアンは内臓を頬張っている。
「の、飲み物を貰えないk……」
「はい!」
「ありがとう! って、なんだい? このドロドロの液体は」
「秋刀魚グリーンスムージーだよ、王子!」
クリスティアンはネーミングにぞっとしつつジョッキを傾け、美しく失神する。
マリネは幼馴染のオリヴァーを誘う。
「へー、木の棒で食べんだ……」とマリネ。
「ん……木の棒が、二本……? これで……掴む、の?」
オリヴァーは箸を握ってみる。
「んー……えと、難しい……けど。……こう?」
オリヴァーは上手く箸を使い秋刀魚を食べ始める。
「うわっ、全然つかめねーし。リヴはー? って、え、どうやって使うの?」
マリネは驚く。
「こう? 違う? リヴ、どう? こんな感じでしょ?」
マリネは箸で秋刀魚をぐちゃぐちゃにする。
「……リネ、食べ方……汚い……」
「ねっ、フォークない? ねぇな……」
マリネはフォークを探すのを止め、手掴みで秋刀魚を食べ始める。
「お、うっま! ん?」
マリネは秋刀魚グリーンスムージーの存在に気が付く。
「すげー匂い! 下水道にレモンの酸味が加わったような感じ!」
マリネはすぐに飲み、笑う。
「まっず! うけるー! ほらほら、リヴも一口!」
(……あんまり、飲みたくない、けど。……リネが飲んだ、なら……)
「……おえ」
オリヴァーは舌を出す。
「うぅ……リネ、これ……まずいよ……」
オリヴァーは首を振り秋刀魚で口直しをする。
クロバは男達に混じり秋刀魚を焼いている。
「じゃんじゃん焼けー!」
クロバはご機嫌だ。
「お、秋刀魚ブレードッ!」
酔いどれのクロバは生秋刀魚を両手で掴む。クロバは左回転をし片足で着地し秋刀魚を突く。風切音、空気を斬る。気分が高揚したクロバは海辺を駆け、男の娘に衝突する。
「おっと、大丈夫か?」
クロバははっとし男の娘を見つめる。背は高いが可愛らしい顔立ち。
「……良ければ一緒に秋刀魚を食べないか?」
酔っているクロバは軽い口調で男の娘を誘う。
ジョセフは秋刀魚を見つめている。
「よく脂が乗った身の甘み。塩を纏いパリッと焼けた皮の塩気。ほんのり残った肝の苦味もいいアクセントになる……どうするべきか」
ジョセフは調味料を何度も手に取り惑う。そして、気付く。焼き魚を綺麗に食べた試しがない。
「くっ、私は秋刀魚を味わい尽くしたいだけなのに……む? 秋刀魚グリーンスムージー? そうか……あれならば余すことなく食べられる。よし!」
つるりとした仮面の口元が開く。ジョセフは地獄の飲み物を口にし、前のめりに倒れ込んだ。全身が痺れ始めていく。
牛王は猫のおはぎとアルクとともに歩く。
「おや、あの緑の飲み物は……『秋刀魚ぐりーんすむーじー』?」
牛王は呟く。
(げっ、何だ。あのドロドロで生臭い飲み物!? 俺は見なかった! 秋刀魚だけ食べるんだ……!)
「牛王、行くぞ」
「なんだか珍妙な名……せっかくなので頂きましょう」
アルクは蒼ざめる。牛王はアルクの様子に心配しつつ、平然と飲んでいく。
(えぇ、大丈夫かよ……うっわぁ……全部飲みやがった!)
アルクは驚愕し牛王は中身を全て言い当てる。
「見た目より美味しいです、アルクもど……」
アルクは首を振り、ビールと秋刀魚を掴む。
「牛王もこっちにしろ。ジュースもあるぞ!」と顔をひきつらせる。牛王は頷き大根おろしで秋刀魚を食べジュースを飲む。
「おはぎ、秋刀魚だぞ」
塩の少ない部分をアルクはおはぎに。
「お、美味かったんだな」
「良かったですね。アルクから頂いて」
牛王は嬉しそうに鳴くおはぎを撫でる。
「後でちゃんとお礼を言うのですよ」
牛王は微笑む。
そして、食べ終えたアルクは紫煙をくゆらし、牛王とおはぎと一緒に海を眺める。
ハイデマリーは物珍しそうに秋刀魚を眺める。
「マリーのために今日はボクがご飯を作ったよ。塩焼き秋刀魚のおろしポン酢と白米なのだー」
セララは張り切る。
「……和食でありますか」とハイデマリー。
「そうだよ。食べて食べて。それで和食の良さを体感してね」
「少し酸味があってさっぱりしているけど脂がのってて……ふむ……美味しいね」
「白米と一緒に食べるとより美味しいよ」
「そうでありますか?」
ハイデマリーは慣れない箸を使いながら美味しいと目を細める。
「だよね! 良かったのだー!」
セララの心が温まっていく。一方、ハイデマリーは和食を食べ続けたらセララみたいになれるのだろうかと思いながら「………あーん」と何気なく、秋刀魚をセララへ。ぱくり。
「……美味しいね!」
セララは笑う。ハイデマリーは驚きながら口を開く。
「そういえば他にも薬味ありますが相性いいのでありましょうか?」
「あ、薬味はこれがオススメだよー」
セララはネギ、ゴマをおろしポン酢の中に入れ、微笑んだ。ハイデマリーとセララは充実した時間を過ごし心と胃の府を満たした。
エマは秋刀魚を見つめる。
「ありがたくたくさんいただくとしましょう! 焼いて食べるとおいしいんですよね、確か! いくらでも食べられますよ!」
エマは目を輝かせ大根おろしをかける。
「うっわ、美味しいですね! さぁ、ラァナさんもどんどん食べましょ!」とエマ。
「うん♪」
カタラァナはマヨネーズをつけ、エマは酢橘を。カタラァナはふと、スムージーに手を伸ばす。エマはぎょっとする。
「え、のん……ええっ。な、何ともないんですか? ぐ、グリーンスムージー……。これを飲めと? ほ、ほ、本気ですか。明らかにイタズラアイテムですよこれ」
「エっちゃん♪」
カタラァナは執拗にスムージーを勧める。
「あううう……わかりました。飲んでみましょ」
エマは困り顔でジョッキを傾ける。
「くっさッ!」
エマは椅子から転げ落ちた。カタラァナはエマの様子に満足しながら秋刀魚に未経験のわさびを塗る。
(緑でツンとした匂い?)
「えひゃっ!?」
カタラァナは声を上げる。苦手な味。
(……バレないよね?)
カタラァナがかぶりを振ると、スムージーにわさびを追加するエマの姿。
「今度はラァナさんの番ですよ!」
「ひゃああっ!?」
ここからエマの逆襲が始まる。
ニミッツは一人、海に浮かんでいる。
(このまま、歌をゆったり歌いたい、かな……)
「お、溺れている方が!?」
弥恵が目を見開き、海に駆けていく。
「つ、つめたっ!? ク、クラゲの触手が全身に絡み付いてっ! んっ、そこは駄目ですってば!」
(クラゲ……美味しそう……)
ニミッツはふわふわと泳ぎクラゲを捕食する。
「大丈夫……?」
「あ、溺れてなかったんですね……」
弥恵は安堵し陸に上がる。
「そういえば、何をしていたんです?」と弥恵。ニミッツは海の中。
「秋らしい歌を沢山、歌いたくてね……」
「それなら一緒に歌いませんか?」
ニミッツは頷く。弥恵はカップルに近づく。
「津久見弥恵と申します♪ 魅惑の秋を彩る月の舞と、オータムソングをどうぞご覧くださいませ♪」
水を滴らせながら美脚を振り上げ華麗に肢体を乱す。遅れてニミッツがバラードを歌う。美しい声。弥恵も歌い、集まっていく視線に応えようと脚を振り上げる。その瞬間、クラゲを踏む。
「あぎゃっ!?」
弥恵は大胆に転び砂まみれに。ニミッツは声援を受け、観客の為に歌い続ける。
歌声が聞こえる。スペルヴィアは彷徨う。仲間の姿はない。
『ん? 秋刀魚と書かれているな』とサングィス。数分後、スペルヴィアは秋刀魚の味に満足し何かを見付ける。
「へぇ……食べ物を粗末にするのは感心しないわね。ねぇ? 自分でしっかり味見しないといけないわよね? それとも、亜鉛が足りていないの?」
スペルヴィアは元スラム出身。愉快には思えない。
『……少し雰囲気が違わないか? 我が契約者殿よ……?』
呪具はツッコミ、男を盗み見る。
『……』
男はあろうことか鼻の下を伸ばす。
リナリナは簡素な衣装をまとい、秋刀魚を手掴みで味わう。調味料は不要。そう、原始時代から来た野生少女だから。
「おーっ、この魚旨い!!」
リナリナは嬉しそうに秋刀魚をどんどん食べていく。リナリナは内臓も骨も気にせず綺麗に秋刀魚を平らげる。
「おい、少女と言えども侮れんぞ! 俺らもじゃんじゃん焼かなくては!」
謎の対抗意識。秋刀魚を焼く男達は団扇を大きく扇ぎ、秋刀魚を負けじと焼いていく。
メルナは目を細めた。
「んー、美味しい……! 味も私の世界とあんまり変わらないっ……ふふ、なんだか懐かしい。こういう風に、お母さん達とお兄ちゃんと、一緒に秋刀魚を食べて。あれももう何年前か……」
メルナは思い出に浸りすっと表情を消し、はっとする。叫び声。
「あ」
メルナはティスルと目が合う。目の前には秋刀魚グリーンスムージー。
「情報屋さんがすっごい顔しながら飲んでたのは遠目に見てたから、こそこそしてたんだけどね……」
「そうなんだ」とメルナ。
「あああ、やっぱり飲み物がしてちゃいけない色してるし、え? なんか生臭……」
「生の秋刀魚が入っているみたいだよ」とメルナ。
「えっ!?」
ティスルはぞっとしながら息を大きく吸う。飲んでみるしかない。
(おえええっ! でも、私はお残ししない主義なの!)
口内汚染の後、ティスルはジョッキを起き、静かに失神する。メルナはティスルの様子に驚きながら底に残ったスムージーを指先で拭い、口に含んだ。
「うっ、あ……苦くて臭い」
メルナは顔をしかめた。
ゴリョウは秋刀魚に大根おろしにポン酢をかけ、秋刀魚をぱくり。
「くぅう! たまんねぇなぁ! 白飯と一緒に頬張りたいぜぇ!」と叫び、日本酒をあおる。だが、そこに白米は無い。ゴリョウはその事実に驚愕する。
「なっ! 残酷すぎるだろう、そいつぁ!? 一寸待ってろ、俺がたらふく白飯炊いてやるからよぉ!」
ゴリョウは駆け出し頭に三角巾を巻いてエプロンを身につけ人々の前に現れる。抱えられた大釜。
「ほらよ!」
そこには葵。葵は大根おろしで秋刀魚を楽しんでいる。片手にはビール。今日は何もかも忘れ楽しもうと思っている。
「え? これはなんです?」
葵はきょとんとする。
「白飯だ! 炊き立てで美味いぞ、秋刀魚と一緒に食ってみろ!」
「白飯ですか?」
「おうよ!」
ゴリョウは笑い、葵は秋刀魚と白米を食べすぐに目を輝かせる。
「とっても美味しいです!」
「だよな! みんな一緒に炊き立てご飯と一緒に腹いっぱい秋刀魚食おうぜ!」
ゴリョウは白米親善大使となる。
マルベートは秋刀魚を黙々と食べている。持参したナイフとフォークで身を切り、腹から味わう。内臓の苦味が癖になる。マルベートは瞬く間に骨も頭も食べてしまう。
(命をひとつ、綺麗に全部味わわねばね)
秋刀魚を綺麗に食べ、葡萄ジュースを一口。
「こちらもまた味が深いね」
「ご一緒しても宜しいかしらぁ~?」
アーリアの手には秋刀魚とグラスの日本酒。マルベートは頷く。
「うふふ、良かったわぁ~」
アーリアは微笑む。秋刀魚にきゅっと酢橘を絞り、その身を口に。
「あぁ、幸せねぇ」
吐息を漏らし日本酒を。
「内臓も新鮮なようだよ」とマルベート。
「へぇ? それは素敵ねぇ。あ~、苦くて美味しいわぁ!」
アーリアは日本酒のおかわりを頼み、驚く。そこにはスムージー男。男は微笑む。
「は? ノンアルコールの飲み物が入る胃袋の隙間はないもの! 要らないわぁ、って、え? お酒が入っているの?」
マルベートは逃げるつもりがジョッキを覗き込み、咳き込む。ラム酒の香り。だが、飲むわけにはいかない。アーリアとマルベートは男の隙を突き、走る。残された男は葵を見つける。
(ひやっ!?)
葵は全力で目を逸らすが男は葵の視界に執拗に入り込む。
「ぐっ……可動域に限界がっ! わわっ!?」
葵は椅子から転げ落ち、男の餌食になる。
クーアは取り乱しながら秋刀魚を味わう。
「美味しい、美味しいのです!」
ノンアルコール焼酎をぐいと飲みながら秋刀魚をかきこむ。
「はい、お待ち!」
「は? へ? えっ、いや、待っていないのです! え、え、え? その結構なのです……生臭いのです! せめて火を通しやがるのです。無理ならせめて……にゃああああああっ!!?!?」
ジョッキが口元へ。その瞬間、嗅覚が鋭敏なクーアはダウンする。
「はぁ、あぁ!! い、生きた心地がしないのです……」
パンドラ復活を遂げたクーアは喘ぐ。紳士が倒れている。また、一人、犠牲者が増えていた。
ヨルムンガンドは会場を見渡す。
「君達は焼き魚の神様なのか……?」
ヨルムンガンドは男達を見つめ大袈裟に言い、男達は豪快に笑う。
「えへへ、味付けも全部制覇してやるからなぁ……!」
ヨルムンガンドは網の前で待機し尾を振っている。
「じゃあ、ボクも一緒に待機しよう♪」
ミルキィが笑う。数分後、ヨルムンガンドとミルキィは会話を楽しみながら秋刀魚を食す。
「ん?」
先に異臭に気が付いたのはヨルムンガンド。
「それも美味しいのか……? 是非飲ませてくれ!!」
ヨルムンガンドはスムージー男を見た。
「え? 秋刀魚グリーンスムージー? 面白そう!」とミルキィ。ヨルムンガンドは嬉々と一気飲みしミルキィはスムージーを飲む。
「……美味しいかどうか? そうだな……」
ヨルムンガンドはおもむろにジョッキをギフトの効果で食べ始め「ジョッキの方が美味しいかな」と呟く。
「わぁ、中にスティルトンが入っているんだね……」
涙目のミルキィは男から内容物を聞く。
「うーん。中身を生秋刀魚、長ネギ、しょうが、味噌、大葉、バニラアイスを入れたらどう?」
ミルキィの提案に男は狂喜乱舞し、催しが終わるまで延々になめろうスムージーを振舞い続けたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
皆様、ご参加いただきましてありがとうございました。青砥です。
秋刀魚を堪能していただけましたでしょうか?わたくしも参加したかった……秋刀魚の塩焼きに日本酒。是非とも錫のグラスで飲みたいですね。熱くなった身体を海風で冷やしてまた、日本酒を。わー!延々に飲めますね。あとですね、醤油が会場に無かったのは伯爵が醤油を使わないタイプでしたので、ついうっかり、用意するのを忘れたようです(小声)
そして、秋刀魚グリーンスムージーで気絶した方はきっとえげつないものが混ぜられていたのでしょう(そっと目を逸らす)また、年齢がUNKNOWNの方にはアルコールの提供はしておりません。ジュース等に変更しております。
では、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。また、皆様とお会いできますことを。
GMコメント
ご閲覧いただきましてありがとうございます。さぁ、秋刀魚を堪能し会場をより盛り上げてください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●依頼達成条件
盛大に楽しむことです。
●依頼人
とある伯爵。自らの知名度を上げる為に今回の催しを行いました。ただし、伯爵はリプレイには登場しません。
●場所
ネオフロンティア海洋王国に存在する海辺。海にはクラゲがいます。海辺には大勢の客が各々、楽しんでいます。振舞われるのは秋刀魚の塩焼きです。沢山、食べて楽しんでください。アルコールやジュースも飲めます。ちなみに『秋刀魚グリーンスムージー』は男が勝手に作って目についた客に振舞っているだけです。気分によって中身が変わりますが、秋刀魚は必ず入っています。
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アドリブを入れると思いますがNGの際や注意事項がございましたら必ず、明記ください。情報屋の青馬 鶇も海辺におります。
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