シナリオ詳細
<美しき珠の枝>暗雲払う野分
オープニング
●色なき風
刑部省のとある一室。
中央に置かれた机には、一見無関係そうな様々な物がずらりと並んでいた。
薬研、鋸、鉗子、鍵束、格子の一部、数種類の薬包、美しい珠の枝。紙片から巻物までといった、大きさも形状も違う書類。それらは全て、神使たちが集めてきた『証拠品』であった。
室内には『刑部卿』鹿紫雲・白水(p3n000229)を始めとした幾人かの刑部に所属する者たちがおり、机の中央に広げられた地図を静かに見下ろしていた。
地図上には二箇所に丸印。そして幾つかの駒が配置されている。
既に交わすべき言葉は終えているため、最終確認を終えれば通達や差配のために人が出ていき、白水は文机へと向かう。神使への密書を記すためだ。
姿勢を正して座し、此度のひとつの騒動を終わらせるべく、筆を執る。紙の上を滑る筆の音がさらさらと落ちるのみの静かなひとときが過ぎ、微かな音を立てて筆を置くと白水は墨が乾く間に書面を確かめた。
見慣れた己の字が記すのは、敵の――『九皐会』の潜窟であった。
――九皐会。それは白水が刑部の頭と戴くよりも以前……いつからあったかは定かではないが、深くまで根を張る程度には長く豊穣に蔓延る組織である。幾度も目をつけられることはあっても、咎めを受けさせるところまではいけずに終わっている。――腐敗していたからである。
宮中の全ての官が心正しく帝と国に仕え、民のために心を割く善き者――ではない。出世や様々な我欲に手を黒く染め、または立場を利用して他者を虐げる者も居た。更には九皐会の被害に合うのが鬼人種のみだと知れば、動かぬ者たちが多かった。それも組織の思惑のひとつだったのだろう。
しかし。
既に世は、『時代』が違う。
鬼人種だからと差別してよい時代ではない。
ひとりの民として、平等にひととして扱い、救わねばならない。
救うことが、許される。
(もう「捨て置け」とは言われぬ)
言われぬし、言わせぬ。窮状に目を伏せることもしなくて良い。白水はその位に立ったのだから。
書面を確かめ終えた白水は、慣れた手付きでくるくると紙を巻いていく。巻紐を結び、後は託すだけとなると、ふうと溜息が溢れた。
顎を上げ、窓を見る。暗い夜空にぽかりと青白い月が浮かんでいるのみで、星は見えない。
いつからか冷え込むようになった風が蝋燭の炎を揺らし、白水は静かに瞑目した。
直に一年が過ぎようとしている。早いものだと思う。
来年へ持ち越さぬようにしなくては、と白水は人を呼んだ。
ローレットへと密書を届けさせるために。
●雨雲
先日はお疲れ様。
そんな一言から、劉・雨泽(p3n000218)の話は始まった。
「今回も刑部からのお願いだよ」
言葉とともにテーブルに広げるのは、京の地図だ。
大きく二箇所に、そして小さく三箇所に赤で丸をつけられている。
「今回は時間をあわせて二箇所の場所を同時に攻撃してもらう事になるよ」
まずはと指差すのは、
「盛り場……?」
何度か足が運んだ者たちには、そこが解るのだろう。チック・シュテル(p3p000932)が瞳をまたたかせた。大きな丸は京にある幾つかの盛り場のひとつ、その全体に大きくつけられている。小さな丸みっつは、その中に収まっている。
「そこは『犀星座』ですね」
「ですね……」
「なんじゃ、まだ何かあったのか?」
つい最近『世話』になったばかりである。澄恋(p3p009412)と隠岐奈 朝顔(p3p008750)が即座に反応し、瑞鬼(p3p008720)が顎を撫ぜた。
「ん? そこは、あそこか」
確か、美しい女店主が居た小間物屋。つややかな黒髪と髪に刺したちりめんの椿、目元の黒子が目を引く店主の顔を嘉六(p3p010174)はよく覚えている。日暮・明が連れて行ってくれた場所である。
最後のひとつの小さな丸は、近くを通った記憶はあるがそこに何があったか覚えている者は少ない。ここは酒家だよと雨泽が告げた。
「この三箇所から、地下の賭場へと潜入してほしい」
刑部と共に行動し、この場を抑えるのが目的だ。
地下にあって場所が特定出来るわけではないから、大きな丸は盛り場全体に。そして現在把握している出入り口を有している場所に小さな丸がついている。
「捕物だね。一般のお客さんもいるだろうけれど、全員捕まえても大丈夫。悪事に手を染めていたかどうかは後から問いただせばいいことだから、向かってくる相手は全て無力化して抑えて」
地下の賭場自体に何かがあると掴んでいる訳ではない。けれど『庭師の先生』と呼ばれた新城弦一郎が正丸邸で九皐会との関わりがあることが知れ、その彼が居た賭場が無関係であるとは考え難い。九皐会の重要拠点のひとつと見て、ここを抑えるのだ。
注意点としては、とふたつ指を立てる。
「店から伸びている通路では暴れないこと」
通路が崩れてしまった場合、地上部で何も知らずに過ごしている人たちが被害を受ける可能性がある。勿論、賭場でも広範囲に害の及ぶ行動は控えたほうが良いだろう。
「出来るだけ死者を出さないことが望ましい」
自害をする人は仕方がないけれど、死者はものを語ってくれなくなる。
「あ、あと。ここでも取引はあったと思うから、物も出来るだけ壊さないでほしいかな」
ここに保管されているとは考えにくいが、『薬』も『珠の枝』も喪われて良いとは刑部は考えていない。それらがもしあった際は、当人か遺族へ還すべきものだから。
それじゃあ次ね、と雨泽が指を動かして。
「本丸は、ここ」
残る大きな丸へ雨泽の指が滑る。
そこは、屋敷とは違うが広い土地を有した――老舗の料亭等が並ぶ一角。客層は富裕層のみなのだろう。どの店も土地面積が広く、店と店との間も景観を楽しめるようなゆとりがある。
「ここが『亭主』の居る料亭」
雨泽の言葉に松元 聖霊(p3p008208)の拳が握られるのを、唯月 清舟(p3p010224)だけがチラと視線を向けた。
「居る……と言うよりも、居ると思われる、が近いけれど。でも、長い間刑部は『九皐会』を追っていたらしくて、此処に主が居る、と確信しているみたい」
居なければ所用で出かけているのだろうが、白鴇屋も抑えている今、何事もなければ『居る』だろう。
一度姿を目にしたことのある物部 支佐手(p3p009422)は、彼が酒盛りをしている姿が脳裏に過ぎった。
「作成決行時間前に刑部の人たちがこっそりと周囲を囲んでいって、時間になったら包囲を完成させるよ。君たちは乗り込んで、亭主――焔心を捜索。これを捕縛――は難しいと思う。相手は手練のようだしね」
彼に遭遇したことのある者等へと視線を向ければ、浅い頷きが返ってくる。
手心を加えればきっと、イレギュラーズたちの方が危うくなることだろう。
「あ。ここは確実に一般のお客さんがいるから、それだけは気をつけて」
焔心の『客』もいるかもしれないが、多くは普通に食事を楽しみにきている者たちだろう。犠牲者が出ないように、巻き込まないように注意して欲しい。
それから人相はと焔心の姿の特徴を口にしながら、支佐手の報告から刑部が作成した人相書きを広げる。支佐手が一度人相書きをしたのだが、「似とらん」と清舟に眉を潜められたのは内緒の話だ。
「目立つ人のようだから、影武者でも居ない限り間違えようもないと思うよ」
全て言い終えたかなと指折り数えて確認した雨泽は、支佐手から受けた報告を思い出して顔を上げた。
四人がかりで命を賭して挑もうとも決して勝てぬ相手であると感じた、と言うことを。つまりそれは――
「見つけても、決してひとりで挑もうと思わないようにね」
――彼はきっと、魔種だから。
- <美しき珠の枝>暗雲払う野分完了
- GM名壱花
- 種別長編
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月06日 22時05分
- 参加人数25/25人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 25 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(25人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●紅
――最初に失ったのはなんだったろうか。
空腹に耐えかねて盗んだ、傷んだ野菜。廃棄するつもりだった塵(ごみ)のくせに、俺が伸ばした手を店主は掴み罵詈雑言を浴びせた。汚い言葉だった。よくそんな汚い言葉が吐けるもんだといっそのこと感心したモンだ。腹にも頭にも、汚いモンが詰まってる証だろう。
盗人の腕は切り落とし、虚言者の舌は引っこ抜かれる。地方の法などそんなもの。けれど俺の腕は失われなかった。幼い子供だからと吐くまで殴られるだけで済み、今でもぶら下がっている。
なら、最初に失ったのは――右目か。
『お前には三眼があるんだ。困んねぇだろ』
確か、酷い怪我を負わされた時にそう言われて。抉られ、金になった。暫くの間は食うに困らなかったが……その程度の価値にしかならないのかと思った。
左角は――あァ、「目障りだ」と言われたんだったなァ。囲んでしこたま殴って、俺の角を折って「見栄えをよくしてやった」とか、なんとか。奴等いい気になって嘲笑ってたからよォ、ひとり残らず『お礼』してやった。
誰が悪い?
俺が悪い。弱い俺が悪かった。
価値が無いのは弱いせいだ。奪われるのは弱いせいだ。
ふつふつと沸く怒りは己へ向けたもの。
――現状をひっくり返せるだけ強くなればいい。
聞こえた声に耳を傾ければ、それは簡単に得られた。
窓から月夜を見上げ、男はひとり酒杯を傾ける。
「彼奴、結構つれねェんだよなァ」
ひとりごちるのは、用心棒として雇った新城弦一郎のこと。
焔心は楽しく酒を呑める相手が欲しいと言うのに、いつも必要以上に接触しようとはしない。
つれない男だが、その分腕は本物だ。
気を抜けば首を獲ろう、と狙っているのを隠さぬところも気に入っている。
けれども。
「潮時だろうなァ」
このシマでの『賑やかし』も飽いてきていたし、狗も鼠も嗅ぎ回っている。此処へもじきに辿り着くことだろう。『そうした』のだから。
「せいぜいに派手にいこうや」
早く逢いに来いという言葉を酒で流し込み、男は空けた盃を月へと掲げた。
●土遁
ローレットのイレギュラーズたちは刑部が知らせたみっつの入り口に別れ、その時――作戦決行時間を待っていた。
中でも一度イレギュラーズたちが通った『小間物屋』には一等多く集まっており、5人ものイレギュラーズたちが集っていた。
(……やっと、なのね)
静かな面持ちで隠し木戸を見つめる『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の視線は、常よりも鋭い。
これまで、彼は沢山の人々に出会ってきた。潜入捜査時によくしてくれた使用人たち。鶸茶屋の遊女のたち。それから、ジルーシャや師匠を信じてくれた隠れ里の人たち。間接的に被害にあっている者や直接的な被害者の顔を思い浮かべると、何故だか右目が疼くような感覚があった。
「――後悔させてやるよ」
彼らしからぬどすの利いた声に、何名かの仲間の視線がジルーシャへと集まる。
それをこほんと咳払いをしてやり過ごすと、ジルーシャは視線を上げた。
「時間ね、行きましょう」
その言葉に、一行は顎を浅く引く。正確な場所が解らぬように幾度か折れた通路の行き止まり、そこにある扉に見張りがいることは事前に『のんべんだらり』嘉六(p3p010174)等からの情報で周知されている。
一行は静かに通路を進み、そして番をしている男たちが見えたところで足を止める。
『俺が行く』
手で合図した嘉六は闇の帳を纏い、静かに男たちへと近付いて――。
「よう、ニイさん方」
「!?」
接近に気付いて居ない男たちへと声を掛ければ、その声に驚いた男たちの眼前に突然現れた嘉六が現れる。驚いた隙きに嘉六が小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら一人を伸すと、素早く駆け寄った『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)が残る一人が味方を呼ぶ前に倒した。
「……運が良ければ死にはしないでしょう」
かなり手荒い一撃ではあり、当たりどころが悪かったため、男はその一撃で絶命していた。……運が悪かったようだ。
気絶させた男を縛り上げた『特異運命座標』白ノ雪 此花(p3p008758)は後方を振り返る。すれ違うのも難しい隠し通路のため、イレギュラーズの後には一列に並んで刑部兵が続いている。
人数は、各隠し通路での渋滞を防ぐためにイレギュラーズの頭数と合わせて均等になるよう此花が振り分けた。小間物屋は、此処を選択したイレギュラーズたちが多かったため、5名。
「別の場所の出入り口を発見したらそこを抑えてください」
「中に敵が多いかも知れません。戦ってもらった方が良いのでは」
待機中にすり合わせていなかったのか、ここで意見が割れる。
しかし既に作戦決行時間となっているため、ハインが3名を率い、此花の命で動くのは2名でと素早く『黒き葬牙』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が決断を下し――
「こちらも精鋭が揃っているとはいえ、油断は出来ん。今回はあの男もこの場に居るだろう」
弦一郎だけには下手に手を出さないようにと刑部兵等に伝え、地下賭場への出入り口を蹴破った。
「――御用改めだ! 神妙に縄へついてもらうぞ!」
ジルーシャ等が踏み込む少し前に、『酒家』から入ったイレギュラーズたちは先に地下賭場へと到着していた。各入り口から賭場までの距離が違うため、多少の誤差が生じるせいだ。
「年貢の納め時だよ! 死にたくない人は地に伏せて震えててね!」
盛大に押し入った『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)の声と姿に、賭場に居た客等はざわめきたった。
「はいは~い。慌てないでちょうだいね~♪」
カインとともに入ってきた『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)が保護結界を張り巡らせながらぼうと炎を掌に浮かばせれば、客と思しき男がヒィと悲鳴を上げて腰を抜かした。
戦えない、ただの賭場利用者は、押し入ってきたイレギュラーズと刑部兵の姿に慌て、腰を抜かしてその場に大人しくしている者、それから慌てて何処かへと走ろうとする者たちで分かれる。
「おっと、おいでなさったな。そんじゃ、暴れるとするか!」
炎は止めた方がいいかもな。――空気が限られている地下で燃やせばどうなるか。きゐこへ軽く注意を促して、早速武器をチラつかせた男や騒ぎを聞きつけて顔を出した男等へと視線を向けた『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)が動く。
通常の地下よりも広い空間とは言え、地下という限られた空間。範囲のある攻撃は仲間や賭場客も巻き込むことになる。素早く、そして正しい判断を下した獅門は逃げようとする客は刑部兵に任せ、荒事が得意そうな男へと幻想を穿つ竜撃の一手を放った。
「そうね。火の術が好きだけど、やめておきましょう」
きゐこも進言は素直に受け止める。保護結界で燃え広がらなくとも、火のついた敵が悪意を持って他に火を移す可能性とて無きにしもあらず。
それに――。
「うっ」
「それなりの血の味ね。まあもっと健康的に過ごすと良いわ!」
きゐこが得意なのは火の術だけではない。『棺屋』の男の血で濡れた口元を手の甲で拭えば、其れを見ていた客たちが恐怖に震えた。
「さて、死にたくなければ大人しく縛につくんだな!」
酒家から入った面々から少し遅れ、『犀星座』地下牢奥の隠し通路から入って歩んできた『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は賭場に姿を現すと、直様状況を把握して立ち回る。
(逃げ出そうとしているのもいるが――動けずにいるのは賭博客たちか)
へたり込んでいる者等にはそのまま下手に動かぬようにと魔眼で睨みを利かせると、素早く式符を懐から取り出し、展開させる。符が鍛造せしは魔鏡。運命を漆黒に塗り替える。
「こいつ等……神使か」
「違いない」
「差しで相手をするな」
集団戦に慣れているのはイレギュラーズたちだけではない。
刑部の兵も、棺屋も、各個撃破されぬようにと仲間の欠点を補う形で立ち回る。
「どうして、アンタたちは――!」
香炉が収まる杖を揺らし、ジルーシャは眉を潜める。
敵対してくる男たちはみな角が生えている――鬼人種なのだろう――からだ。
同じ鬼人種なのに、眼前の男たちは『傷つける』側の人間なのだ。
どうして、どうして。
その答えが返ってきたとしても、ジルーシャが真に理解出来る日はきっと来ないことだろう。
「どうしたのです。『九皐会』とやらも大したことはありませんね」
普段は見えづらくなっている角と前髪を分けて三眼を晒した此花が、同じ鬼人種でありながら立場が違うとでも示すように挑発的に笑むと、一部の男たちがざわめき立つ。
男たちは目配せをしあい、此花を囲んで倒そうとするが――。
「コノカさん、ありがとうございます。さあ、数には数で応じましょう!」
もちろん、向かってくる相手よりも多い人数で!
他班からも手の空いている数名の刑部兵を借り受けたハインが向かってくる敵とこちらの人数を把握した上で、一斉攻撃の合図を出す。ハイン自身は敵の動きが鈍るように立ち回ってなるべく此花へ攻撃が行かぬようにし、此花は刑部兵やハイン等が攻撃に巻き込まれぬよう立ち回った。
「助太刀するわね!」
刃が届きそうになった刑部兵を庇うように、きゐこががぶりと棺屋の男の血をすする。やっぱり『それなりの味』だ。
「きっと野菜が足りていないのだわ。それとも労働環境が悪いせいだわ」
「確かに労働環境はよくなさそうだよな! どいつもこいつも湿気た面しやがって」
は、と笑った獅門は、仲間や刑部兵が体力を削った相手を蹴り倒し、確実に落としていく。
「あんたとあんた。倒れた奴を頼む」
きゐこが窮地を救った刑部兵に、獅門は倒した相手の撤去を願う。乱戦の場合、気絶した相手をそのまま足元に転がしておくのはよくないからだ。うっかりと範囲攻撃で巻き込んでしまって止めをさしてしまったり、踏まれて絶命……など、せっかく殺さないように気を付けたのに水泡と帰してしまいかねない。
「気を付けて、その人はまだ意識があるよ!」
倒れて意識のない振りをして好機を狙おうとしていた男に、カインが気がついた。得物を握り締める煌めきへと向かい、命中力を高めた聖なる光を放って対処する。
「ありがとうございます、助かりました」
「お礼は大丈夫。場所を移動させた人から縛っていこうか」
僕は結構直感が良い方なんだ。
笑みを見せたカインは常に不測事態を警戒し、仲間たちのサポートに回る。その方が、倒れた振りをした敵も、無害な客と見せかけた敵も、見逃さないよう意識を配るのに適しているから。
「……っと、まだ来やがるか」
「コノカさん、シモンさん。僕は庇わなくて大丈夫なので、この調子で続けていきましょう」
奥の扉が開いたことに気がついた獅門に、ハインがそう口にする。
数名の男が先に出て、ひとりの剣士がゆったりとも思える足付きで歩を進めてくる。ゆったりとしているように見えて、その実此処に居る誰よりも隙のない動きであった。
「来たか」
低い。しかしながら不思議とよく通る声が、地下の空気を震わせた。
――新城弦一郎!
幾人かのイレギュラーズたちの意識が瞬時に彼へと向けられ、真っ先に動いたのはベネディクトだった。そのすぐ後を広い視野から味方が動きやすいようにサポートに務めていた『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)が、残りの棺屋たちは仲間たちで何とか出来ると判じて彼に追従する。
そんな冬佳の眼前でギンッと火花が散った。
「此処は俺たちきっちり方を付ける。行ってくれ!」
「――ッ、ありがとうございます」
「さあ、あんたらの相手は変わらず俺たちだ。俺の修行になるくらいには立ち回ってくれよな!」
回復を担っていた冬佳を狙う凶刃を受け止めた獅門は追わせぬように射線を塞ぎ、冬佳は仲間たちを信じて振り返らず、ベネディクトを追って真っ直ぐに弦一郎の元へと向かった。
「手合わせを願おうか。新城弦一郎」
「……終わらせましょう、こんなものは」
ベネディクトが騎士らしい凛とした佇まいで剣の切っ先を向け、冬佳も強い意思を宿した瞳を弦一郎へと向ける。
対する弦一郎は片頬を緩く持ち上げ、嗚呼と吐息にも似た言の葉を吐いた。
「幾度か見た顔だ。俺に刀を抜かせるのだ、覚悟は――」
「心配するな。戦場に立つ以上、命が惜しいなどという心算はない――!」
「私も、全力で参ります」
死合いを望むのなら、それ相応の覚悟と応酬を。
ふたりの表情に楽しげに目を細めた弦一郎は――目にも留まらぬ素早さで刀を抜いた。
(殺すは……しない)
喉に手を当てて、『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)は真皓の歌を紡ぎ、白焔を灯す。動きが鈍くなったところを抑えてもらうよう刑部兵たちに頼んであり、彼等とそして仲間たちが敵の体力を削りきり、通り取り押さえてくれていってくれる。
視線を空間の端へと向ければ、幾人か――イレギュラーズたちが入ってきた場所ではない――出入り口へと駆けていって賭場客を取り押さえている。狭い通路に逃げ込まれる前に抑え込んだのだろう、カイン等酒家組の刑部兵だ。
(あっちは、大丈夫そう……それから……)
次に視線を向けるのは、鐡の音が幾度も響く場所。
鐡と鋼がぶつかって、離れ――弦一郎から付かず離れずを保つベネディクトが、彼の意識を自身に向けさせており、弦一郎も弦一郎で自身の後方――退路は抑えたまま一歩も退かずにやりあっている。
棺屋たちが減れば、加勢するイレギュラーズも増えることだろう。
(それなら、おれは……)
歌を止め、見透す力を瞳に宿す。
土を木で塞いだ壁の向こうには通路と、部屋が幾つか。幾つかの通路は既に刑部兵が抑えているし、仲間たちも上手く立ち回って捕縛を進めて敵戦力を削っている。かなりの人数のイレギュラーズが賭場に来たため、荒くれ者たちは全て捕らえるのもそう時間は掛からないはずだ。
(可哀想な人、いるかも……しれない)
許されないことだが、賭けの対象となっている人もいるかもしれない。
自由に動けて透かし視ることの出来るチックは、ひとつひとつ部屋を覗いていくのだった。
「よっと、俺も邪魔をさせてもらおうか」
「俺を殺してもいいぜ色男。だが殺される気はさらさらねえんで、とことんやろうや」
弦一郎と切り結ぶベネディクトが離れたタイミングで錬が式符を飛ばし、嘉六が魔弾を打ち込んだ。其れ等を躱し、或いは刀で受け止め、打ち返し、弦一郎は尚も其処に立っていた。
悠然たる佇まいは、まるで『こんなものか』と告げるようでもあり、嘉六は思わずひゅうと口笛を吹いた。
「おお、おお。おっかねぇなァ」
「……酔狂者だな」
それだけの腕前があれば、と錬は思う。
弦一郎にどのような過去があるのか、彼の種族すらも解らないが、それでもそれだけの腕前があればその腕前を披露する場も、みなで高め合う場もあるだろうに、と。それなのに敵方につくのか、と。
しかし。
(そう、ではないのでしょう)
鎌鼬が如き剣風で切り裂かれ、着物に赫を散らしながらも、冬佳の心と瞳は凪いでいた。
弦一郎が求めるのは『死合い』。模擬戦などという生ぬるいものではない。
首の皮一枚で繋がるような、命と命を掛けた渡り綱。
そして、その先にあるものだ。
響く剣撃と男たちの声の中、冬佳はただ思う。
望むのなら、全力で応えるまで――と。
その男――弦一郎が動く度、真冬の最中に身を置いたかのようだった。
刀の切っ先が空を切るたびに、背筋に緊張と寒気が走る。
一刀一刀が命を奪わんとするそれで、対するイレギュラーズたちは息を詰めた。
「……惜しいな。それだけの実力があれば、貴様は俺よりも多くの物を守れるだろうに」
血を吐きながら見据えるベネディクト。
しかし解っている。弦一郎の剣は『殺人剣』だ。生かすための剣ではない。
「俺はまだ立っている。戦いはまだこれからだ、弦一郎!」
ふと吐息で笑うような気配に、気迫を漲らせて啖呵を切った。
――その時。隠し通路の出入り口を守っているはずの刑部兵が、賭場へ駆け込んできた。
「伝令。『料亭』にて動きあり!」
その言葉を最後まで聞かずに弦一郎は、まるで旋風が如くベネディクトたち一刀の元に吹き飛ばす。
「向かうだけ無駄か」
手を貸すことか、それとも首を取ることか。そのどちらに対する呟きなのかは解らぬが、賭場へと出てきた際に使用していた戸へと歩んでいく。
「――好い時間だった。またまみえることがあれば、殺りあおう」
ひとつ言葉を残し、弦一郎は木戸の奥へと消えた。
「追うか?」
「いや、追わなくていいだろう。それよりも……」
「料亭で何かあったようですね」
仲間たちの心配が小波のように広がった。
料亭へと赴いた仲間たちのことは信じている。けれど。
「皆様、ご無事だとよいのですが……」
最後のひとりの棺屋を縛り上げ、此花は睫毛を震わせる。
傷をある程度癒やしたらこの場の事後処理は刑部兵へと任せ、イレギュラーズたちは料亭へと向かうことにするのだった。
●焔と踊れ
奪われることが避けられないのなら、奪えばいい。
お高く止まってる貴族なんかも、みな。皮を剥げばただの獣(けだもの)だ。
繕える分だけ性質が悪い。小賢しい――己を賢いと思っている愚かな獣。
そんな奴等がなァ、踊るんだ。
安全だと信じて。信用しきって。
俺の掌の上が猿芝居の舞台だとも知らず、莫迦みたいによォ。
誰が悪い?
世界が悪い。この国が悪い。法が悪い。
鬼人種だからと虐げる精霊種が悪い。
手を出す度胸も無いくせに見て見ぬ振りをする奴等も同罪だ。
ふつふつと沸く怒りはとうに俺を焼き、周囲をも焼いた。
俺はずっと――右目を失ったあの日から燻り続けている。
この国が無くなるまで、憤怒の炎が消えやしねェんだ。
高天京に幾つかある一等地。その一角に古くからある老舗料亭『朧月』。建物の歴史は古く、何代もの帝も訪れたこともあるとされており、非常に風光明媚な佇まいで、主が変わっても人々から愛されている料亭である。
そんな料亭の主が『焔心』に変わったのがいつの頃だったか。それを知る者は居ない。長寿の者が多いこの地で、それは然程重要ではないからだ。料理の味が落ちず、もてなしが変わらなければ良いのだ。長く続く家であればあるほど、『変わらぬもの』を好むのだ。法事を行うならば此処で、祝事を行うならば此処で、と一家で代々愛顧され続けていた。
現在イレギュラーズたちは、作戦に備えて料亭近くに控えている。試してみたことの報告をしている最中なのだが、古すぎるが故に図面はなく、更に増築もされており、老舗故に雇用も客にも門扉は狭く……どの行動も成果は得られなかった。
「一応試してみたのだけれど」
一度も接敵していない『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)は、不思議な決め事『如何なる場合も怪しい行動をしてはいけない』を犯してみた。料亭を囲む道で、忍び歩きをしてみたのだ。結果は暫く後に用心棒らしき者等の見回りがあり、レーダーを持つ者が居るのだろうと仲間たちに告げた。レーダーの範囲は広い。料亭の敷地面積と周囲の道も視ているのだろう。
「かなり大きな料亭ですね」
昼間に、散歩をしている一般人の振りをして『厄斬奉演』蓮杖 綾姫(p3p008658)とともにぐるりと料亭の外周を歩いて回った『夜を裂く星』橋場・ステラ(p3p008617)が呟いた。地図上からも大きさは知れるが、やはり歩いてみるとその大きさを身で感じることが出来る。
「この大きさでしたら、3桁は人が居るでしょうね……」
客と、それから従業員。広間や個室で楽しく過ごすのならば、芸者も呼ばれていることだろう。それに加えて敵勢力もあるのだ。軽く越えているだろう。
不味い、と綾姫は思った。賭場へ向かったイレギュラーズは11名。20名もの刑部兵がともに乗り込むというのに、賭場へ戦力を割き過ぎている。
しかし、それはもう詮無きことだ。決行時間は目前。やれることをやるのみだと、太陽が沈んだ暗い空の下でイレギュラーズたちはその時に控えていた。
「……行きます」
結構時間になるやいなや、イレギュラーズたちは料亭『朧月』へと踏み込んだ。
「お、お客様!?」
「ご予約はなされているのでしょうか? 困ります、当店は――」
押し入ってきたイレギュラーズたちに、何も知らない従業員たちは大いに困り、何とか入り口で押し留めようとする。
けれどその中で、微かに。人々の声や音に紛れるくらい、微かに。チキ、とまるで濃い口を切るような音が響いたことを、『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)は聞き逃さない。
滑らかに刀を抜き、二撃。
「……見ての通り、『討ち入り』だ。押し通る!」
従業員に紛れて凶刃を抜かんとした『庭師』の男を斬り伏せた。
だくだくと、玄関に血が広がっていく。
「ひっ……」
息を呑む従業員をそのままに、イレギュラーズたちは敷地内に散らばった。
イレギュラーズたちが乗り込み、幾らも経たぬ内。それは発動した。
ドン! と建物全体を揺らすような地響きに蹈鞴を踏んだ『瞑目の墓守』日向寺 三毒(p3p008777)の脳内に、即座に『不味い』と言う言葉が浮かんだ。
暫くの時を置いて、悲鳴が響いた。「火事だ!」と。
豊穣での火災は恐ろしい。木造住宅がひしめき合うこの国では、炎は全てを飲み込んでしまう。それが広がらないように火消したちはまだ燃えても居ない家屋を取り壊し、燃え広がるのを防ぐくらいだ。
火の恐ろしさを知っている民たちは一気に慌てふためき、人を押しやり、イレギュラーズたちを押しのけ逃げようとし、人の波という暴力が現れた。
慌てるなと叫んでも、火の恐怖に支配された人々の耳には入らない。
その上、「扉が開かない!」と言う悲鳴も入り口方面から聞こえてきた。何も知らない客等は錯乱状態だ。
「皆さん、落ち着いてください」
外からの侵入を防ぐ仕組みにもなっていたのだろう、従業員の装いで仕掛けを作動し、それを操る仕組みを破壊した『庭師』の男が逆手に握った短刀を閃光で穿ち、『善悪の彼岸』金枝 繁茂(p3p008917)が落ち着いた声で促す――が、その閃光ですら取り乱している客たちには恐怖の対象だ。
(……どうして気付けなかった)
三毒を始めとした数名のイレギュラーズたちは先日、目の前で敵が火を放とうとしたのも見たばかりだと言うのに。
敵は死を恐れていない。要らなくなった物を切り捨てることへの躊躇いがない。そんな敵の根城に『鼠』が大勢攻めてくればどうするか――勿論、根城も惜しまずに捨てる。ついでに出口を塞いで、証拠も鼠も、諸共炎で焼き尽くせば世話がなくて良い。
「ああ、煙が……煙が此処にも来たぞ……」
「早く逃げなきゃ、早く」
「雛子は? ねえ、あの子を知らない? 雛子、何処に居るの!」
「大丈夫、安心してください。必ず私が探します」
「でも、扉が開かないって!」
繁茂の穏やかな声に、子供と逸れてしまった女性が金切り声を上げて詰め寄った。
その隙を狙うように迫る、庭師の男。
「危ない……!」
間に滑り込んだルーキスが、その凶刃を弾き返す。
「この場は俺が抑えます! 繁茂さんは彼等を安全な場所へ……!」
剣を構え、数人の従業員姿の兇手たちからジリ……と距離を取りながら、ルーキスが叫ぶ。心得ましたと顎を引いた繁茂は失礼と断ってから女性を抱え上げる。
「ひとまずは入り口へ向かいましょう。歩ける方は着いてきてください。閉じた戸は、私が必ずなんとかします。さぁ、お早く!」
一般客が普通に寛いでいる場での乱戦。そうなることは解っていたはずなのに、有事の際に客の命と焔心の命、どちらを優先するかを気にかけているイレギュラーズは居なかった。
人質を取られるかもしれない、くらいの覚悟をしていた者は居た。『庭師』ならばそうするだろう。けれど、違うのだ。『亭主』にとっては、この料亭の敷地内にいる人の命『全て』が人質だったのだ。敵も、ただ今日を特別な日にするために来た客も、イレギュラーズたちも、全て。
(くっそ……!)
炎が壁を張っていく、人々が悲鳴を上げている。何の罪もない幼子が泣いている。
いくつもの痛みと恐怖を訴える声が、『医神の傲慢』松元 聖霊(p3p008208)を呼んでいた。
奥歯を噛み締める。絶対に仇を取るのだと決めていた。
拳を握り締める。この拳で何が何でもぶん殴ってやると決めていた。
しかし。しかしだ。
松元 聖霊は、医者なのだ。
此処で人命を優先しなくては、聖霊は医者を名乗れなくなる。
(……くそ)
聖霊は医者の象徴たる白衣を翻す。
「俺は医者だ! 煙を吸わないように気をつけろ。身体を低くして……そう、出口は向こうだ!」
決して命を取りこぼしなどしない。偉大な父のように、必ず救ってみせる。
「想像していたよりも多いな……」
敵前に姿を踊らせればサンディは敵方に敵と認知され、エネミーサーチが反応する。逃げ惑う人々や客の振りをした敵からの凶刃を防ぎ、ざっと見回してみるが――どの敵もサンディよりは強くはない。
しかし、一等にに厄介なのは、この火事だ。烟る視界で人々が逃げ惑っている。
できるだけ奥の人を救うべく店奥へと進んではいるが、人や敵、炎や煙によって思うように進めず、時が経てば経つほどそれが難しくなる。
「僕は奥の人たちを助けにいく」
「雨泽さん、俺も行きます」
それでも真っ直ぐに、人命をひとつでも多く救うことを諦めない。
続いたルーキスに雨泽は「荒事はよろしく」とこんな時でも小さく笑い、ルーキスもまた「はい、任されました」と几帳面に応えた。
「……こちら、だと思いますが」
火の粉の舞う中、そう口にする綾姫の言葉は不確かだ。突入してすぐは繁茂のテスタメントが効いていたが、一分など向かってくる敵や慌てる人々を躱している間にすぐ過ぎてしまう。
突入後すぐに見えたのは、大きな危険に人々が慌て戸惑う姿だった。それはすぐに現実となり、今、炎に怯えた人々が逃げ回っている。逃げ惑うだけの人々は――きっと助からない。
人命を優先するか、焔心を優先するか。
その二択は幾度もイレギュラーズを悩ませる。
「綾姫さん、行ってください」
だからステラは綾姫を送り出す。
怯える客たちを盾にするように、刃を手に突撃してきた幾人もの敵を素早く鮮血で染め上げた。それを見た一般客がヒィと腰を抜かし、錯乱して炎へと這っていこうとする。それを押し留めながら、ステラはここは拙がと請け負った。
今姿が見えない仲間も、きっとそうしていることだろうから。
謝辞を短に告げて去っていく背中を最後まで見送ること無く、ステラは得物を構えた。
――別の場所で同じ選択をしたのは、『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)と『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)であった。
広い建物内に仲間は散っており、背を預ける仲間は居ない。それでも多くの命を救い、焔心の元へと向かう仲間の背が狙われないように焔心の配下たる庭師たちを討たねばならない。
やらねばならないことが多いのに、人手が足りていない。
「瑞鬼様?」
足を止めた瑞鬼に、『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)に抱えられた『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)が首を傾げた。
鬼血の匂いは察せど、嗅覚が優れている訳ではなく、既に他者の血と建物の焦げる匂い、咽る煙と血が焦げる匂いで鼻は機能していない。頼るのは勘のみだ。けれども彼女の勘は――執念は、正しいのだと英司を信じ込ませるだけのものがあった。
瑞鬼足を止めた理由は、すぐに知れた。
「……ちちうえぇ、ははうえぇ――……」
何処かで子供が泣いている。焔心だけに心を向けていた澄恋は遅れて気づき、ハッと息を飲んだ。今、まさに、豊穣の未来ある子が不幸に染まっている。
この料亭に食事に来た者たちは、何も知らない。何も知らずに今日と言う日を祝い料理を口にして楽しんで、幸せに日々を過ごしていくはずだった。幼子ならば誕生日だろうか。それとも七五三だろうか。家族の長寿祝いや法事かもしれない。
彼等の不幸は、そんな日にイレギュラーズたちが来てしまったことだ。……別の日であろうとも、不幸になる誰かが変わるだけなのだが。
「案ずるな、澄恋。わしが往く」
だからおぬしは気にすることなく前へ進め。
焔心を前にして支えられないのは残念だが、判断が遅れただけ人命は失われることだろう。瑞鬼は言い置くとすぐに子供の姿を探し、炎と煙の中に姿を消した。
「私も諸悪の根源ぶん殴りたい気持ちは山々ですが……焔心は先輩方に任せました!」
力強く、元気に。ぐっと拳を握った朝顔が笑顔でそう言うと、頷きひとつ。英司が澄恋を連れて立ち去った。話すとこほこほと咳き込んでしまう口を割いた袖で覆い、朝顔もまた炎の中を駆けていく。
「朝顔、こっちじゃ!」
瑞鬼が呼ぶ。
「もう大丈夫じゃ。よくがんばったの。強い子じゃ」
押入れに隠れて出れなくなった子のために燃える襖を素手で取り除く瑞鬼は瞳も声も優しい。しかし、ゆらりと現れた敵影に気がついていない。
「っ、先輩、危ない!」
懐刀を素早く抜いた朝顔が、恋する乙女の渾身の一撃を見舞うのだった。
イレギュラーズたちは違う場所で己がなすべきことを選択し、己の戦い方で戦う。
ステラと別れた綾姫は炎の揺れる階段を駆け上がり、そうして――
「見つけました、――焔心!」
一足先に焔心を発見した綾姫がピィィィと甲高く笛を鳴らした。
響く笛の音に、『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)は素早く反応した。
「支佐!」
直様踵を返す黒衣に、幼馴染の娘が声を上げる。
ついてこようとしている。それが解るから支佐手は彼女に応えず走る。
ついてこないほうがいい。泥を被るのは己だけでいい。
『支佐! 気張りどころぞ!』
決行時間直前、『白蛇』神倉 五十琴姫(p3p009466)はそう言った。過去の鬼人種への仕打ちが心の棘となって居ることを知っているからか、直前まで緊張に眉を寄せていたのに……彼女は支佐手を元気づけようとした。
(わしを置いていくな、支佐!)
安全なところで守られるだけの花でも、甘い蜜を吸うだけの蝶ではない。
「支佐!」
五十琴姫が追おうとする。荷物を分けて欲しいと訴えるように。
しかし、その肩を押し留めた者が居た。『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)だ。
「支佐手のことはわしに任しちょけ。おんしはおんしが一番にやれることをしてくれや」
五十琴姫は癒やし手として此処に来ている。その癒やし手が守れるのはイレギュラーズだけではなく……イレギュラーズたちよりもか弱い存在の助けを求める声がずっと耳朶に届いている。
ひとりでも多く、救うこと。
「必ずじゃ。必ず、支佐を――」
「ああ。わしはおなごとの約束は違わねぇ」
守備範囲ではないから倒れずに済んでいる清舟は炎の中へ身を翻し、その背に頼むぞと強い念を送った五十琴姫もまた、身を翻す。
逃げ遅れている人を見つけ、救うために。
ひとつでも多くの命を救うため、時に刃を交えながらもイレギュラーズたちは炎が激しさを増す中で奔走していた。
「ととさまぁ、けほ、かかさ、ま……」
身なりの良い幼い少女が、炎の中に取り残されて泣いていた。腰が抜けてしまっているのだろう、蹲って、ふくふくとした頬を煤だらけにして、噎せながら泣いている。
炎は既に柱を伝って天井をも燃やし、今にも崩れ落ちそうだ。
駆けながら炎の中に笠を捨て、救命に奔走していた雨泽は手を伸ばす。しかし、気付くのが遅かった。天井を支えている木材が焼け、ぼろりと崩れた。
(……あ)
ダメだ、間に合わない。手を伸ばしたって、届かない。
諦める癖がついたのは、いつからだろう。
奥歯を噛み締め、諦めそうになる心を叱咤した。引っ込めようと握りかけた拳を開き、己の限界に逆らう。伸ばせ伸ばせと念じた手首に巻かれたアミュレットが光りを放ち――弾け飛んだ。
がらがらと焼け焦げた木材が炎とともに落ち、ふたりの姿が隠された。
焔心の元に辿り着けたイレギュラーズは、僅か5名。
戦力として足りていないことは既に理解している。
それでも、切り結ばねばならない時がある。
「よォ、遅かったじゃねェか」
「……っ、皆さん!」
その場に焔心を留めておくためにも先に戦闘を始めていた綾姫は、既に膝をついている。
「此処までご苦労さんなこったなァ。
……それで? どうだった? 俺様からの『贈り物』は」
此処に来るまで、何人を見殺しにしてきたんだ?
愉悦を含ませ、金色の三日月が輝く。
明らかにイレギュラーズたちの反応を見て楽しんでいるその姿に、沸き立つものを抑えていやぁと笑ったのは支佐手だった。
「先日はすみませんでしたの。わしだけでありゃ、一献傾けてもえかったんですが」
「よぉ鬼の旦那、前は折角の宴会断って悪かったのう」
焔心の言葉を無視して支佐手が言葉を紡いでも、焔心は気にしない。続く清舟の言葉にふたりへと視線を向けて顎を撫で、にんまりと笑う。
「今日は野暮は言いっこ無し、だろうなァ?」
「モチのロンじゃ。――一杯、付き合ってはくれんか」
「ええ。――土産にその首、頂けるのなら」
ふたりが気を引いている間に綾姫は足を引きずって後方へ下がり――それを焔心が許し――、澄恋は蹌踉めきながら英司の腕から降りている。清舟と支佐手が同時に地を蹴り、刹那、新たな火花が散った。
「旦那。宴会は盛り上がってナンボだろ? 俺も混ぜてくれよ」
「ハハッ、いいぜェ。騒げ! 踊れ! 歌え! 俺様を楽しませろ!」
真っ直ぐに仕掛ける清舟に、絡め手で攻める支佐手。その合間に黒い――まるでヴィランのような――姿に変身した英司が滑り込む。
澄恋が儚げに佇むが、焔心の関心は澄恋には向かない。庭師ならば質としたかもしれないが、誰かひとりを盾にするなど、焔心は力量差的にも必要としていないからだ。それに、焔心の人質はこの料亭内の全ての命であるため、それは既に叶っていると言ってもいい。
「何のためにこんな事を? 金なんぞ欲しいとも思っとらんでしょう」
激しい攻防に、支佐手の肉が裂ける。ぐっと喉奥に苦味を感じながらも、支佐手は苦しさを見せずに言葉を吐いた。
「何のため? おい、本気で言ってんのか?」
焔心が余裕を崩さずに大きく血で作られた刀を振るい、攻め込んでくるイレギュラーズたちを吹き飛ばし、それと同時に散弾するようなダメージが入った。
その刀にはいくつもの目がついており、それぞれがギョロリと動き、イレギュラーズたちの全身は常に重い。
「楽しいからだ。それ以外に、何があるっていうんだ?」
それはきっと、本心――でもあるのだろう。
しかし。
(こん人の本心は)
きっとそれだけではないだろうことを、支佐手は感じていた。
澄恋が動く。弾かれる。
英司は常に澄恋の前へと惜しむこと無く身を晒す。行き着く場所は同じと決めているから、澄恋も戦いにおいては彼が傷つくことに心を揺らさない覚悟を決めている。
自身の傷を癒やさず、綾姫は仲間たちの傷を癒やす。
その間も炎はごうごうと燃え広がり、空気を焼き、部屋を焼く。
いつまでこの場が保つのか、いつまでこの身が保つのか。
命を代価とした賭博(チキンレース)。
さあ、張った張った。鬼が嘲笑う。
――お前たちはどこまでその身を削れるんだ?
建物が燃えている以上、この戦いは期限付き。それもイレギュラーズたちには不利な方向で。
ならば、誰かが賭けねばならない。今以上の対価を。
(ここで! 必ず! わたしが!)
「御無礼!」
澄恋は全てを掛けた。奇跡を願った。
――しかし、潤沢な運命力の前では奇跡は起こらない。易易に起きないからこそ、奇跡は奇跡足り得るのだ。
「おっ、と……」
それでも、足元の開いた傷口鬼血を纏った澄恋の一撃が焔心の脇腹を抉った。
それを男は愉快そうに笑う。今の一撃が今宵の中で最高に酔い痴れた、と。
「そろそろお開きか」
天井を支える梁が炭化してバラバラと落ちてくる。
炎は室内を舐め尽くし、既にイレギュラーズたちの衣や髪にも着いていた。
この部屋も、すぐに崩れることだろう。
「じゃァな。縁があればまた遊ぼうぜ」
「待て!」
支佐手が手を伸ばすも、焔心の姿はごうと燃え上がる炎の中に消えた。
「支佐手!」
そのまま追いかけていこうと炎の中に飛び込もうとする支佐手の肩を清舟が掴む。この男は必ず帰してやらねばならない。そう、支佐手の幼馴染に約束したのだから。
追うも留まるも、果てにあるのは炎に飲まれる死だろう。
「……英司様」
「ごほっ、ぐ、……澄恋」
いつかの逆ですね、なんて揶揄る余裕はないけれど、澄恋を庇い続けた英司に澄恋が肩を貸す。しかし、彼女の足は赤く染め上がっている。傷口を抑えながらもふらりと自力で立ち上がった綾姫がふたりを支えようとしたその時――イレギュラーズたちの足元の床が崩れたのだった。
「それらしい遺体はなかったようだぜ」
密かに侵入していた青い衣の鬼人種の言葉に、そうかとサンディは顎を引いた。数多の人命を質にすれば、救助活動のために騒然となり刑部の囲いにも綻びが生じる。警察職である以上、彼等は民の命が最優先とされてしまうせいだ。
「本当に無茶をしおって……」
澄恋を助け出した瑞鬼は小言を言いながらも彼女の傷を癒そうとしていた。
今は空元気も出ぬのか、澄恋の視線はただ静かに傍らに横たわる人へと向けられている。
横たわり気を失っている英司は炎に飲まれる時、最後の力を振り絞って澄恋を腕の中に閉じ込め、そうして意識を失った。おかげで仲間たちが発見した時も、澄恋は他の皆よりも火傷が軽傷であった。
(――髪、)
炎で縮れた水色の髪を摘む。
好きだと言ってもらえた髪。大事に櫛を遠そうと思った髪。
「聞いておるのか、バカ娘」
澄恋は放心したまま、はいと小さく答えた。早く彼が目覚めますように、と願って。
「支佐手! 怪我はないか?」
三毒と繁茂によって運ばれてきた支佐手と清舟を視界に入れるやいなや、治療の手伝いをしていた五十琴姫がまろぶように駆けてくる。
その声に意識を浮上させた支佐手が悔しげに唇を歪めるのに気付いたけれど、五十琴姫はそれには触れない。
「なっ! こんなにも怪我をしおって……! この大馬鹿者め! わしが居ないとすぐに無茶をするのは支佐の悪いところじゃぞ」
キャンキャンと吠える子犬のような五十琴姫に何も言い返せずにいる支佐手に、清舟が吹き出した。
「綾姫さんも意識を取り戻しました……!」
ステラの声が喜色に跳ねる。
英司は目覚めていないが息はしており、イレギュラーズたちの命はひとつも失われなかった。
そうして動ける者たちが事後処理を始めた頃、地下賭場の面々も、火事の報せに料亭へと駆けつけてきた。
こと豊穣での火災は恐ろしい。懸命な消火活動が行われているが、炎に照らされた赤い顔でただ魅入られたように見つめて動けずにいる客たちがぽつりぽつりと広い通りに残っている。しかし、料亭の敷地が広いこと、そして一等地であるが故に密集していないため、料亭の敷地外への燃え広がりは起こらないことが不幸中の幸いであろう。
(……雨泽は)
消火活動を助くるべく駆けていく仲間たち。炎に照らされた人々。痛みに喘ぐ人々。苦しげな声に、悲しみの声。その中で、チックは苦しげに眉を潜めながら目立つ笠を探すけれど、見当たらない。
夫婦と思しき男女が泣きながら感謝を告げる声が聞こえてそちらに視線を向ければ、白い髪に赤い角を生やした男が幼子にひらりと手を振ってから此方を見た。
「チック、お疲れ様」
近寄ってくる彼の頭上に思わず視線が行くも、いいんだと小さく笑まれ、チックもそれ以上は口にはしない。
「これ……」
地下賭場で見付けたのだと布包みを差し出せば、煤に汚れた手を軽く払ってから雨泽はその包みを受け取り、そっと開いて中身を確認した。
変化は一瞬。思わずと言った様子で見開かれた灰色の瞳に、驚きの色が浮かぶ。小さく息を呑んだ雨泽はすぐに包み直すと、そこにあるのはもう『いつも通り』。「刑部に渡しておくね」と笑みを浮かべていた。
――知った人の角だったのかもしれない。
そう、思ったけれど。
チックはただよろしくねと微笑んで、友の無事を喜んだのだった。
「重傷者はこっちへ運んでくれ! 俺が診る!」
衛生面を考えればその場での手術等はしない方が良い。が、緊急性の高い者を助手として動いてくれるアネストに差配を任せ、聖霊は次々に運ばれてくる患者たちを視ていた。
広い料亭だ。敵も従業員も客も、仲間も、救助途中で負傷した刑部兵も。症状の差はあれど全てを合わせれば、患者は三桁にも及ぶ。
運ばれてきた時には既に手遅れで、手の施しようもなかった命もある。けれどもイレギュラーズたちの救護活動で救われた命も確かにあった。救おうと動いていなければどうなっていたか――多くの黒焦げの人型の前で慟哭をあげていたかもしれない。
(あの野郎、次に会ったら――)
焔心は炎の中に消えたと、仲間たちから知らされた。焼け爛れた患部にアネストがすり潰したばかりの苦い匂いの生薬を塗りつけ、怒りを原動力に聖霊は治療に当たった。
今はただ、懸命に。ひとつのでも多くの命と痛みを掬い上げるために。
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
マスコメでよくよく話し合うことを推奨していたとおり、様々なヒントが過去リプレイや個別あとがきに散りばめてあったかと思います。
焔心には逃げられてしまいましたが、ひとまずの脅威は去ったため、今回の豊穣での騒ぎは一旦これでお終いとなります。
その後の刑部の調査でも彼の行方は知れないので、国外に出てしまっている可能性が高いことでしょう。
倒し切ることはできませんでしたが、あなたたちは沢山の命を救い、沢山の悲しみと不幸に寄り添いました。
脅威を追い払ったこと、そして救われた人々が沢山居る点で、あなた方の勝利と言えましょう。
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
お待たせいたしました。<美しき珠の枝>の続きとなります。
成功すれば最終回となり、次回アフターシナリオ予定です。
●成功条件
焔心の撃破
●失敗条件
上記の失敗
●これまでのあらすじ
鬼人種虐待絶対許さないマンが刑部卿に就任しちゃったのであら大変★
叩けば出る出る、豊穣に蔓延る鬼人種が被害にあっている悪事の数々!
刑部卿「この機に洗いざらい綺麗にするから覚悟するがいい!」(意訳)
――という訳で、少しずつ動いていっていました。
隠れ里への蹴撃阻止、仲間と囚われの鬼人種の救出、『犀星座』の活動阻止、そして前々回救出した元花魁『雫石』から齎された情報。
それにより、刑部は『九皐会』を掃討すべく、同時刻に二面作戦を結構することとした。
夜、神使たちは動く――。
【関連シナリオ】
『美しき珠の枝』でリプレイ検索してください。
※読む必要はありませんが、読むと詳しくなれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的です。
様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。
●プレイングについて
一行目:行き先【1】~【3】いずれかひとつを選択
二行目:同行者(居る場合。居なければ本文でOKです)
一緒に行動したい同行者が居る場合はニ行目に、魔法の言葉【団体名+人数の数字】or【名前(ID)】の記載をお願いします。その際、特別な呼び方や関係等がありましたら三行目以降に記載がありますととても嬉しいです。
例)一行目:【2】
二行目:【やったるぞい!3】※3人行動
三行目:仲良しトリオで連携するよ。
※※※
一部、これまでの結果でヒントを握っている方も居るかと思います。
人数配分、役割をよくよく話し合ってくださいますと幸いです。
戦闘や探索、いろんな事に手を出すよりは、何をメインとして何をサブとするか、行動を絞ってあらゆる対策をして臨んでください。
誰か一人に頼り切ってしまう場面等ありますと、それが失敗した場合――成り立たずに総崩れ、となる可能性もあります。
【1】老舗料亭『朧月』
ある時から焔心が『亭主』となった老舗料亭です。
土地面積は広く、風光明媚な庭と離れも有しております。
一見さんお断りの店なため、紹介が無くては客としても入れません。
また、この料亭では『何も知らない一般客からしたら不思議な決め事』があります。それは『如何なる場合も怪しい行動をしてはいけない』――非戦スキルを使用してはいけません。レーダーを使用できる者が居ます。
中の情報はありません。外から見える範囲での情報では、ほぼ二階建てであることと、一部が三階となっていること。ぐるりと周囲を回るとかなり広い……ということが解ります。
作戦決行時間前にバレてしまった場合、焔心は料亭から居なくなって『自動的に失敗』となります。
作戦決行時間になると、料亭とそこに面した道を塞ぐ形で刑部側の配置が完成します。刑部側で対処しきれない問題が発生しない限り、逃げ出てきた人の保護はしてくれます。が、それに乗じて敵方も出てきては包囲が崩れることとなります。
作戦決行時間となり、押し入ってしまったらバレてOKです。此処が山場です、盛大に参りましょう。
一般客がそれなりの数居ます。彼らの生死は失敗条件となりませんが、刑部としてはひとつでも命が喪われないことが望ましいです。また、敵方は人質等を取ることに躊躇いはありません。
こちらへの参加者の目的は『焔心』を倒すこと、です。
<敵>
・『亭主』焔心
魔種であり、今回の親玉。本作戦の標的です。
神使に遭遇した際も宴会に誘うなど、どこか読めない性格をしています。
彼の気を引き止めるのは難しい……と対話をした神使は思っていることでしょう。
血で作った刀の存在を、遭遇したことがある神使からの報告を得ています。
料亭内の一室に居ます。一等豪華な部屋とは限りません。
作戦決行後、すぐに気付きます。が、特に慌てることもなく、折角宴会を開いてくれたようだし辿り着いたヤツくらいの相手はしてやるかァと神使たちを待っています。
・『庭師』配下…人数不明
使用人、用心棒、その他……として、老舗の敷地内に複数名おります。
一般的な破落戸よりも強く、最高練度の神使であれば1対1での苦戦は早々しないでしょう。
【2】地下賭場
盛り場の地下にある賭場です。一部の神使たちは一度行ったことがあります。
判明している三ヶ所の入り口から侵入し、地下の賭場へと向かいます。
下記味方の刑部兵以外の刑部所属の人たちが出入り口を守ってくれるので、後方から挟み撃ちになることはありません。
賭場までの地下通路は細く、細身の人ならギリギリすれ違える、といったくらいです。此処で暴れてしまうと崩れる可能性があり、地上部の盛り場にいる何も知らない人に犠牲が出る可能性があります。
賭場からはいくつもの出入り口があります。いくつかは部屋があり、上客用であったり詰め所であったり、色々です。広間的な中間スペースで暴れれば、ワッと出てきてくれるでしょう。
作戦決行時間前にバレてしまった場合、新城弦一郎は地下賭場から居なくなります。
作戦決行時間になったら入り口から侵入予定です。
新城弦一郎は戦闘の時間経過で撤退します。が、料亭側の作戦が成功するまで留めておけなかった場合は焔心と合流し、焔心撃破が非常に困難になります。
こちらへの参加者の目的は『新城弦一郎』の相手をしてこの場に留めること、地下賭場を抑えること、です。
・出入り口
『犀星座』は地下牢の奥に隠し通路。『小間物屋』と『酒家』は床下の隠し木戸。
階段を下ったり通路を何度も曲がると屈強そうな男が居る扉に辿り着きます。通常は合言葉等を言うのですが、倒してしまって大丈夫です。
<敵>
・『鬼閃党』新城弦一郎
焔心に用心棒として雇われています。所属は『庭師』、精鋭護衛。
彼が焔心に雇われているのは、いずれ斬り合う約束があってのこと。
今は焔心よりも神使等の力量の方が気になっており、彼の居るところまで辿り着けば刀を抜くことでしょう。命を懸けた死合いを望んでいます。
・『棺屋』配下…30名ほど
焔心の部下の荒事担当の鬼人種たちです。
『庭師』ほど腕はたちません。
<味方>
・刑部省の兵…20名
地下賭場を取り押さえることが任。それに伴う行動(戦闘、捕縛等)を行います。
指示がありましたら従います。
戦闘面では棺屋であれば、1対1でなら引けを取りません。
【3】その他
基本的には2箇所に別れることとなるかと思いますが、別のことをしたい人はこちら。
(「今! すごくしたい! 時間空けたくない!」でなければ、アフターシナリオが出る予定なので、そちらでも行動できます)
●EXプレイング
開いています。必要に応じてご利用ください。
●同行
弊NPC、劉・雨泽(p3n000218)が【1】へ同行します。
やってほしいこと等ありましたらプレイングにお記しください。可能な範囲でお応えします。特に無ければ焔心戦まで着いていきます。
※種族を知られることを嫌っています。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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