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シナリオ詳細

<光芒パルティーレ>汽笛前のパッセッジャータ

完了

参加者 : 38 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●汽笛の前に、優雅に歩いて
 シレンツィオ・リゾート――その空を彩る青は、この世界のどこよりも高く澄んだように見える。
 その青を映したような大海原も、まるで揺り籠のように優しく揺れている。
 シレンツィオの中心地ともいえるフェデリアの玄関口におりてみれば、汚れ一つない白亜の石畳がどこまでも続いている。
 コロニアル様式の建物を覗きながら歩いてみれば、身なりの良い観光客が、穏やかな午後を過ごしているのが見えるだろう。
 かつて絶望の青と呼ばれた海域。今や静寂と平和の海と姿を変えたこの海は、豊穣・海洋・鉄帝三国を主とした貿易拠点として、唸るほどの金と呆れるほどの富を生み出す海の楽園となっていたのである。
 さて、あなた――つまりローレット・イレギュラーズ達は、この島に招かれていた。
 というのも、この、今や呆れるほどに平和となったこの島で、何やらトラブルが発生したというらしいのだ。
 その解決のための依頼――些か緊張の面持ちで進むあなただが、この島の、にぎやかなな雰囲気には、些か……うずうずとしてしまうものだ。
 ここは一番街プリモ・フェデリア。行政を主に司る地区で、一番最初に開拓のはじまった地でもある。フェデリア総督府を中心として作られらこの街は、各国の大使館や、それ向けの商業施設、そして芸術的見地からの評価の高い役所等、行政区と言えど、そこは華やかなりしリゾート地という事か、ここでも十分に観光の欲は満たせるだろう。
 とはいえ、そのような誘惑に乗っては仕方ない。あなたは誘惑を抑えつつ、フェデリア総督府の建物へと入る。何度か増改築を行ったであろう総督府は、今なお美しく白い大理石が映え、これまで総督府が背負ってきたであろう苦労を感じさせぬほどのものだった。
 受付の優し気なお兄さんに要件を告げると、丁寧に4階へと案内される。これまた綺麗な階段を上っていくと、窓からは遠くの港湾都市が見えた。あれが二番街サンクチュアリだろう。港湾労働者や、現地民……つまり、このフェデリアに住まう人々が生きるための、下町のような場所だ。
 別の窓から見てみれば、大きな休火山と、公園が見える。となれば、あそこが四番街リヴァイアス・グリーンだ。この街の自然残る、憩いの地区だ。
 高いビルのような建物も見える、豪奢なエリアは……三番街セレニティームーンだ。文字通りの超高級リゾート地。ここが金を生み富を生む場所である所以たる場所だ。
 もう少し遠くを覗けば、蒸気の煙が見えるだろう。五番街リトル・ゼシュテル。言葉通り、鉄帝の文化の強い地域だ。
 そんな光景を確認しながら、案内されていた会議室に入る。そこには、多くのイレギュラーズ達が詰めているはずである。あなたは最初に来たのかもしれないし、後から来たのかもしれない。いずれにしても、あなたの後にも続々とローレットのイレギュラーズ達が入ってきて、今日この場に集められた理由を確認すべく、待機している。
 やがて、ほとんどのイレギュラーズ達が入ったであろうという所で、入り口から幾人かが入ってきた。先頭に立つ男――エルネスト・アトラクトスは、今はフェデリア総督府にて業務に努める男だ。
「あー、どうも、ローレットの諸君。お集まりいただき感謝する」
 エルネストが声をあげる。
「……『赫嵐』の姿もあるな」
 イレギュラーズの一人が、小声でそういうのが聞こえた。『赫嵐』、つまり『赫嵐』ファクル・シャルラハ。海洋王国の軍人である。
「あっちのはサンブカス=コン=モスカね。コン=モスカの代表が直々なんて……」
「隣にいるのはゼニガタ・D・デルモンテ。アクエリア総督府の管理者だ。どうやら、シレンツィオ・リゾートの大物がこの場に集まっているらしい……大事かもしれんぞ、この仕事は」
 イレギュラーズ達がひそひそというのへ、あなたもわずかに緊張感を持ったかもしれない。
「まず。我々の置かれた状況を説明したい……所だが。いや、今日は良いか? 諸君」
「ああ。今回イレギュラーズ達にやってもらいたいのは……観光だ」
 ゼニガタがうんうんと頷くのへ、はぁ? と、気の抜けた声をあげたイレギュラーズもいた。どういうことなのか……とあなたも思ったかもしれない。
「そのような顔をしないでいただきたい。これもまた、任務の一環だと思ってほしい」
 ファクルがそういうのへ、エルネストが肩をすくめた。
「お前は相変わらず固いな……まぁ、確かに仕事と言えば仕事ではあるのだが。そうだな、まずはお前達にやってもらいたいのは、シレンツィオ・リゾートの今を知ることだ」
「今を知る事?」
 イレギュラーズの一人がそう尋ねるのへ、頷いたのはサンブカスだ。
「諸君が経験したあの戦いから、この地域は特に変わったんだ。僕たちコン=モスカの領域も、半ば観光地のようになっている。
 僕も驚いているところだが……これも時代の流れかね」
「そういう事である。まずは貴殿らには、フェデリア・アクエリア・コン=モスカの今を、しっかりと体験してもらいたいという事だ。
 リゾートとして発展した今のシレンツィオは、貴殿らにはなじみが薄いだろう」
 ファクルが言うのへ、ゼニガタが頷いた。
「仕事の前には、その地の状況をしっかりと理解しておくことが重要だ。
 だから、まずは今のシレンツィオを体験し、今後の仕事に活かしてくれ」
「ああ、固く言ってるが」
 エルネストが言う。
「救国の英雄様に、一日の休息を、って事だ。
 明日には本格的な依頼……ダガヌ海域での調査依頼が齎されるだろうが、ひとまずそれは置いておいてくれ。
 深緑やらアーカーシュやらで大変なんだろう? 本格的なバカンスはサマーフェスティバルからになるだろうが、その前に、な。
 もしかしたら、意外な友人と会えるかもしれんぞ? 今回の観光の費用は出してやる……が、あんまり使い込まんでくれ? 一応好景気とは言え、こっちの財布にも限界はあるからな」
 エルネストが笑ってそういうのへ、イレギュラーズたちは頷いた。
「フェデリアだけでなく、アクエリア、僕たちコン=モスカの地も、門戸を開いているよ。
 コン=モスカは歴史的な資料を良く集めているからね。是非学びに来てほしい」
 サンブカスがそういう。どうやら今回は、広くシレンツィオ・リゾートを体験できそうだ。
「以上、今日の所は終わりだ。じゃあ、ひと時の休暇を、ごゆっくり」
 エルネストの言葉に、イレギュラーズ達は頷いた。
 さて、ここから、あなた達、イレギュラーズの休息が、はじまろうとしていた。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 シレンツィオ・リゾートでの休息です!

●成功条件
 シレンツィオ・リゾートを目いっぱい楽しみましょう

●名声に関する備考
<光芒パルティーレ>では成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の二つに分割されて取得されます。

●プレイング書式
一行目:【向かう場所】(数字でご指定下さい)
二行目:【グループ】or同行者(ID) ※なしの場合は空行
三行目:自由記入

例:
【2】
【ラーシア食べ歩き】
 こ、こんな高級なごはんが、今日はタダ……!?

●シレンツィオ・リゾートとは?
 元々は『絶望の青』に閉ざされていたフェデリア海域。しかし大号令の成功と、東に発見されたカムイグラとの活発的な交流の狭間で急速に発展した観光地――それがシレンツィオ・リゾートです。
 所謂リゾート地。詳細は特設も是非是非ご覧ください!
 特設:https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●いける場所
【1】フェデリア島
 シレンツィオ・リゾートの中心的な島です。
 1~5の数字を割り振られた『〇番街』という区画に分けられており、それぞれ以下のような特徴があります

 『一番街』行政区。フェデリア総督府や軍施設、大使館やローレット支部等が存在します。
 『二番街』労働者街。この地に住む人々による下町で、安価に親しみやすく異国情緒を味わえます。
 『三番街』高級リゾート区。この島の看板です。ホテル、ビーチ、カジノ、オペラ座、映画館、オークションハウス……様々な娯楽がここにはつまっています。
 『四番街』自然区。島の大きな火山や、リヴァイアサンが眠っているという岬、自然公園などがあります。
 『五番街』鉄帝区。リトル・ゼシュテルと呼ばれる、鉄帝文化の強い区画です。VDMランドフェデリアや、鉄帝租界と言った場所があります。
 『無番街』所謂スラム。地図に載っていない場所で、フェデリアからはじき出された者たちのたまり場です。ある意味リアルを味わえます。ワダツミというギャング団が仕切っており、一定の秩序はあります。

【2】アクエリア島
 かつての戦いは、絶望の青において中継基地とされていた場所です。
 今はフェデリア同様、リゾート地となっています。
 ここには『アクエリア宝石洞』と呼ばれる美しい水と水晶の洞窟や、かつては島を聖域化するために利用された『アクエリア大聖堂』、環礁地帯に建設された、サンゴ礁と熱帯魚たちが踊る美しいビーチ『アレグロ・ビーチ』と言った南国の観光地のような光景が広がっています。

【3】コン=モスカ島
 かつては絶望の青に挑む者達に祝福を与えていたという一族の住まう島です。
 今はシレンツィオ・リゾートの一角をなす観光地としての側面が強くなっています。
 高級リゾートというよりも、元々が聖域ですので落ち着いた感じです。
 かつての戦いで命を落とした者たちを祀る石碑や、絶望の青に関する書物を集めた図書館、絶望の青での戦いの記録を残した『大洋モスカ博物館』等があり、他にも様々な国家のアーティストの芸術作品を集めた美術館など、学術的に価値の高い資料の多い、学術都市となっています。

 以上となります。
 それでは、シレンツィオ・リゾートへの、皆様のご到着を心よりお待ちしております。

  • <光芒パルティーレ>汽笛前のパッセッジャータ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2022年07月13日 22時05分
  • 参加人数38/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 38 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(38人)

ギルオス・ホリス(p3n000016)
燈堂 廻(p3n000160)
掃除屋
アンドリュー・アームストロング(p3n000213)
黒顎拳士
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)
花に集う
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
武器商人(p3p001107)
闇之雲
古木・文(p3p001262)
結切
寒櫻院・史之(p3p002233)
若木
蜻蛉(p3p002599)
曙の花
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
不壊の盾
津久見・弥恵(p3p005208)
銀月の舞姫
道子 幽魅(p3p006660)
成長中
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
カモミーユの剣
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
ネーヴェ(p3p007199)
ただひとつのオーロラ
鹿ノ子(p3p007279)
夏の残照
恋屍・愛無(p3p007296)
戦飢餓
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
しろがねのほむら
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
綾辻・愛奈(p3p010320)
つまさきに光芒
アンリ・マレー(p3p010423)
亜竜祓い
雑賀 千代(p3p010694)
立派な姫騎士
アインス・レオ・ロクシナ(p3p010707)
幻想の冒険者

リプレイ

●フェデリアの朝
 抜けるような青空と、さわやかな風が吹き抜ける。
 かつて絶望の青と呼ばれた地。今は希望と人々の笑顔が集うリゾート地、シレンツィオ・リゾート。
 その一つ、フェデリア島では、カイト・シャルラハが朝早くとから飛び回っていた。
「くそ~! リリーとハネムーン……なんて考えてたのに! 親父め、完全に軍人モードの目じゃねぇか~~!!」
 伝令として、あちこちに飛び回るカイト。カイトに雑用を押し付けたのはファクルだが、当のファクルは総督府の建物の中から、彼の活躍を見守っている。
「まぁ、あいつの事だ。しばらくしたら遊びに行くだろうさ」
 くっくっと笑いながら、ファクルはエイヴァンへと告げた。
「だが、あいつには、海洋国としての、シレンツィオ・リゾートの事を知ってもらう必要がある。いずれ背負う可能性のある、この世界をな」
「成程、子育ては大変だ」
 エイヴァンが笑う。
「それで、イレギュラーズとしての活躍の話を俺にききたいって事か。
 ま、それなら、河岸を変えよう。休みの日まで堅苦しい軍部に居たくはないからな」
 エイヴァンの言葉に、ファクルは肩をすくめる。その眼下では、カイトがひいひい言いながら伝令係を務めあげていた。そんなあちこちに走り回るカイトの姿を見かけたのは、リリーと、リトル・アーサーだ。
「あの人が、リリーの結婚相手、か」
 感心したようにアーサーが言う。
「まさか結婚してたなんてな……良い男じゃないか?」
「……えへへ、良いでしょ。仕事してる姿もかっこいいもん。
 でもまさかリリーが告白されるなんて思ってなかったよー」
「……え、告白された側……?」
 アーサーはびっくりした顔をしつつ、咳払い。
「そう言えば、皆こっちに来てるんだ。会うだろ?」
「もちろん!」
 リリーが笑って頷く間も、カイトは一生懸命に走り回っていた。
 そんな騒がしい一番街の石畳の道を、シルフォイデアとイリスが歩いている。
「あれからもう二年経ったって信じられない位よね。
 しかも、知らないうちにここまでリゾート化が進んでたし……」
 イリスが苦笑するのへ、シルフォイデアが頷く。
「そうですね……。
 父様も、お忙しいのでしょうね」
「これからリゾート本番の季節だしね。それに、近くの海域で問題もあるっていうし……。
 ひとまず、今日はお休みの日にしましょ! シルフォイデアはどこに行きたい? 私は二番街かな……?」
「そうですね、お姉様に合わせますが……五番街も、文化的に気になります」
 二人は地図を覗き込んだ。フェデリアは五つのエリアに区分けされていて、総督府のある此処は一番街だ。では、順番にエリアを見ていこう。

 まずは二番街。ここは島の住民たちが住むエリアだ。住宅エリアでもあるため、リゾート地のような綺麗さはないが、その分異国情緒を手軽に味わえるエリアであるともいえる。
「まさに『異国』なのですね」
 愛奈は楽し気に微笑みながら、港近くを行く。船乗りたちが気勢をあげて、今日の漁の成果を市場へと運んでいくところのようだった。貿易船も近くに停泊しており、大小の荷物が運ばれている。実に活気のある景色だ。
「こういった市場の近くには、労働者向けの食堂や売店などがあるはず。気になりますね」
 まずは朝食をとってから、歩き回ろうか。そう考える愛奈から視線を外せば、市場で品物を品定めする武器商人の姿があった。
「なぁるほどねぇ、外からはこんなものをリゾート地に送っているのかい」
「なんだい、アンタも商人か?」
 船乗りがそういうのへ、武器商人は頷いた。
「アァ、我(アタシ)もせっかくのリゾート、支店の一つも出そうって思ってねぇ。
 リゾートに卸すのもいいけど、二番街で商売をするのも面白そうだってね。
 どうだい、その辺の詳しい人、知らないかい?」
「ああ、そしたら馴染みの酒場を紹介してやるよ。上品な店じゃないが、その方が二番街を知れるってもんだろ?」
「ありがたいねぇ。仕事が終わったら酒場においで、お礼にいっぱい奢らせてもらうよ」
 まずは地道に。地固めをする武器商人が、にぃ、と笑った。

 そのまま視点を、二番街の中心地へ。地元住民用の商店が並ぶエリアを、カイトとアンドリューが、ガイドブック片手に歩いている。
「ま、『タダ』だって話だが。高級料理より、食いなれてそうな奴の方がいいだろ?」
「ああ! あまり格式高い所は筋肉が見せられないからな。丁度良い!」
 むふー、と息を吐くアンドリューに、カイトは苦笑した。
「相変わらずだな。でも、鉄帝とは違う感じで面白いだろ?」
「うむ、鉄帝は寒い地方だからな……まあ、夏はあるが。こうして常夏の場所に来ると、楽しい気分になってくるな。
 ……む! 俺の右大胸筋が反応したぞカイト! 近くにいい筋肉を作り出す、美味いメシがある!」
「マジか、アンタのそれ、なぜか当たるからな。早速行くか!」
「うむ! 異国の筋肉を喜ばせる料理と出会えるのが楽しみだ!」
 そう言って、二番街の雑踏の中に、二人は消えていく。さて、三番街に視点を移そう。ここは高級リゾートエリア。コロニアル様式の建物が多く、豪奢さと開放感を両立ている。そんな建物から外を覗けば、目の前にはまっさらなビーチが広がっている。どこまでも青い海は、かつて絶望と呼ばれたそれだが、今は人々に安息と安寧、そして少々の刺激を与える青だ。
「それにしても、凄い豪華なリゾートだねぇ……思わず目移りしちゃいそう」
 シルキィがそういうのへ、廻は頷いた。
「たしかに、凄いです。建物も海もすごく綺麗ですし」
 波打ち際で、足元をさらう波。本格的な海水浴の準備はしていなかったが、こうして簡単に遊ぶくらいはできるだろう。
「こうして三人で観光地を巡るという経験も悪くはない。燈堂は純和風だからな。こうして如何にも「リゾート地」という場所に来ると旅行に来たって感じがするよ」
 愛無がそう言って、少しだけ微笑した。非日常感も、旅行のだいご味だろう。
「ふふふ、海の水、綺麗だよぉ。ほら!」
 ぱしゃ、と水を救って、シルキィは二人にかけた。廻と愛無は、
「わわっ、しょっぱい……お返しです!」
「ふむ、こういうのは知っているぞ。良い経験だ」
 などと笑いあいながら、お返しに水をかけて見せた。少しだけ、子供のように。重い責務を背負ったもの達には、ひと時の開放は、素敵な思い出になるはずだ。

 さて、五番街に向かったイレギュラーズ達もいる。ここは鉄帝の管轄するエリアであり、その生活様式なども、まさに『南国に存在する鉄帝』である。
「いやぁ、常夏のゼシュテル……って想像できなかったですけど! こうなるんですね!」
 千代が目を丸くしながら、そう声をあげる。鉄と蒸気の風景こそ変わらないが、その大半が暑さをしのぐために使われているのが、本国と違う所かもしれない。また、本国では見ないような南国の食料が出回っており、よく似ていても、ゼシュテルとは違うのだな、という事を思い起こさせた。
 ペットのミサキちゃんも、楽しそうに触手をにゅるにゅるさせている。
「よーし、今日は楽しんじゃいましょう! 南国鉄帝料理に……VDMランド・フェデリアもあるんですよね! 早速行ってみましょうか!」
 話題にあがったVDMランドフェデリアに視点を移そう。本国のそれとは違い、海を前面に押し出したのがVDMランド・フェデリアだ。レインボー・スプラッシュコースターや、とらぁ君の深海探検隊、と言った水と海に関するアトラクションは、本国では楽しめないものだろう。
「ごくり……こ、ここがVDMランドフェデリアか……。
 くっ……まさか海洋までVDMランドが出張してくるとは思わなかったぜ……」
 と、ワモンがそういう。とっかりリゾートの参考にしたいと思った所だが、色々なアトラクションには目移りしてしまう所だろう。
「今日は目いっぱい遊んで、リゾートうんえーってやつのコツを勉強するぜ!」
 とらぁ君トラ耳帽子などを被りながら、ランド満喫に目を輝かせる、ワモンであった。

●アクエリアの青
 アクエリア島。かつては絶望の青攻略の中継地であったこの場所も、今は静寂のままにリゾート開発が進んでいる。アレグロ・ビーチに視線を通してみれば、アインスがさわやかな笑顔でナンパにいそしんでいた。
「海よりも、君の方が美しいのでつい見惚れてしまった。どうかな、この後?」
 ……それが成果につながったかはここでは記さないが、さておき。そんなビーチの風景を、上空から眺めるのはアンリだ。
「綺麗な所だなぁ。こんな風景は流石に初めて見るよ」
 ビーチに降り立ってみれば、足元をくすぐる砂と波の感触が心地よい。アンリはくすりと笑いながら、もう一度空に飛びあがった。
 そんなビーチでは、水着の弥恵とラーシアが、波に身を任せながら談笑していた。
「お誘いありがとうございます、弥恵さん」
 ラーシアが微笑むのへ、弥恵もまた微笑んだ。
「いえ、此方こそ。楽しんでいただけたなら幸いです」
「とっても楽しかったですよ! サンゴ礁に、可愛らしい魚たち、とても綺麗で……。
 私も色々旅してきたつもりですが、まだまだ見たことのない景色ばかりですよね」
 そう言って目を輝かせるラーシアに、弥恵は微笑んだ。
「ふふ、ラーシア様も、負けないくらいにお綺麗でしたよ。
 いつか、一緒に踊りたいものです」
 そういう弥恵に、ラーシアは頬を赤らめた。
「そ、そんなこと……でも、そうですね。その時は、踊り方、教えてくださいね?」
 そういうラーシアへ、弥恵はもちろん、と微笑んだ。
 そんなビーチにパラソルと椅子を置いて、サイズは身体の修復に努めていた。
「正直やすんでる暇はない……奇跡の代償は、確かにこの身体に刻まれているけど、それでも……」
 いまは、休んで、調子を戻すべきだった。ぼんやりしていると、ネガティブな事を考えてしまう。
 悩んでも、答えは出ない。ただ、いまは、次なる何かに備えるべきなのだろう……。
 視線を海に映せば、シャルティエにしっかりと抱きついて、ネーヴェは海に、その身体を委ねていた。
「その……離さないで、ください、ね?」
「は、離しませんけど! 離しませんから、も、もう少し、その」
 離れても……と小声になっていく。しっかりと身体を抱きとめている分、その距離は近い。それがシャルティエをどぎまぎさせていた。
「あぁ……水はとても澄んでいて、ふわふわで、冷たくて……そらに、浮かんでいるみたい、ですね」
 不安がとけたのか、ネーヴェが笑う。そんなネーヴェが楽しんでいる様子が嬉しくて、まだドキドキするけれど、この距離を離さないようにしよう、とシャルティエは思った。
 同じビーチには、誠司とミルヴィの姿もあった。水着の二人は、出店で軽食とドリンクを購入していた。
「こういう時は……男が出すもんなんだろ?」
「セージってば、デートの奢りってのは下心ある時か恋人同士でするものなんだよ? アタシとつきあいたいの?」
 と、腕に身体を寄せてからかうように言うミルヴィに、誠司は顔を赤らめた。
「なっ!? いや、そうじゃなくて……!」
「あはは、冗談、冗談。ご馳走様」
 くすくすと笑うミルヴィに、誠司は、
「からかわないでよ……」
 と肩を落とす。そんな様子に、どこか胸に甘酸っぱい感情と、相反する諦観を抱きつつ、ミルヴィはくすりと笑った。

 さて、フェデリアの有名観光地と言えば、アクエリア宝石洞だ。名前通り、すんだ水と、美しい宝石のような石たちがおりなる幻想的なシンフォニーが、この観光地の目玉になる。
「アクエリア宝石洞デスか! なんか高く売れそうな水晶とか取れないデスかね!」
 わんこがそういうのへ、コルネリアが頷く。
「なぁるほどねぇ。ちょっと探してみましょうか? お互い、目の届く範囲でね?」
「合点! ……それにしても、姉御が無事で本当に良かったデス。
 かの竜とやり合って帰って来るなんて凄いデスヨ!」
 水晶に目をやりつつ、そういうわんこに、コルネリアは笑ってみせた。
「凄いでしょう? 周りの連中も全力だったからね、連携の賜物よ」
「帰りに、お祝いがてらの見に行きまショウカ!」
「いいわね。でも、その前に、アンタの化粧道具、探しに行くわよ」
 そういうのへ、わんこはびっくりした顔をみせた。
「さぁ、Lumilia。手をどうぞ。
 万が一、愛しい君の綺麗な肌に傷でもついたら一大事だ」
 マルベートがそう言って手を差し出すのを、Lumiliaはとった。
「ありがとうございます……わぁ、素敵な光景……」
 少しだけ順路から外れて、高い所に登ってみる景色は、水の青と、宝石の星々に抱かれた、幻想的な風景が踊っている。Lumiliaは目を輝かせ、胸に手を当てた。フレーズが思い浮かぶ。歌。唄。詩。
「確かに素敵な光景だ。まるで花のようで、星のようでもある――けれど、私を見てくれないのは、嫉妬してしまうかな?」
 おどけるように言うマルベートに、Lumiliaはくすくすと笑った。
「……ふふ。誘って頂いた身ではありますから、一人心身に熱を帯びるのは少々申し訳ありませんが……。
 これが旅の吟遊詩人の性分なのです。マルベートさん、お許しくださいね」
 そういうLumiliaに、マルベートは微笑を浮かべた。
「もちろん、だからこそ、君だ」
 二人は身を寄せ合うように、宝石の天地に視線を委ねた。
「揺れるからあんまり身を乗り出しなさんなよ、嬢ちゃん」
 縁は小舟に乗って、宝石洞の中を巡る。隣には、蜻蛉の姿もあった。傍に会った宝石に触れようと、蜻蛉が手を伸ばしていた。
「大丈夫、ちょっとだけ……あっ!」
 わずかに揺れる、身体。縁にフラッシュバックする光景。水の中に落ちてく、少女。女。あの――。
 気づけば咄嗟に、抱き留めていた。強く、力を籠めすぎたかもしれない、と自覚したのは、しばらくしてから。
「ったく、言わんこっちゃねぇ……ただでさえ短いおっさんの寿命を、これ以上縮めんでくれや」
「わ、わざとやないんやから……! ほんまよ。触り心地が気になって」
 とっさにそういう蜻蛉も、でも二人の間に満ちる空気は、嫌ではなかった。いつものもの。かわらないもの。いつも通り。装うのも、そうであるのも。
 ――一緒にいてくれて、ありがとう、と。
 お互い、言葉に出さないまま、でも、心ではそう言っていた。
 レジーナがふと、傍らの幽魅へと視線を向けてみると、見知らぬ男に幽魅が声をかけられているようだった。幽魅はおどおどとして、追い返すこともできない。レジーナは、ふむ、と頷くと、幽魅の前に、盾になる様に立ちはだかった。
「あら、誰の許可を得てその娘に声を掛けているのかしら?
 我(わたし)の機嫌が悪い事は汝(あなた)達にとってデメリットでしかないと思うのだけれども。
 具体的には、最前線で振るわれる殺戮技巧、体験してみる?」
 美しいレジーナであったが、その言葉にのせられた怒りに、気づかないほどナンパ男も間抜けではなかったようだ。男は気まずそうに謝罪すると、何処かへと去っていった。
「あ、ありがとう……ございます……」
 幽魅がそういうのへ、レジーナは、ふふ、と笑った。
「災難だったわねぇ。気分直しに、お店に宝石でも買いに行きましょうか?
 ふふ、ゆみにはどんな宝石が似合うかしら?」
「は、はい……!
 あっ……お、お礼に……素敵な……宝石……プレゼントします……!」
 そういう幽魅に、レジーナは楽し気に微笑んで見せるのだった。

●コン=モスカの静穏
 シレンツィオ・リゾートを形成する一角となった、コン=モスカ島。かつて、絶望の青に挑む者たちに祝福を与えるもの達の住まう島だったここは、絶望の青が解放されたことを契機に、この島もまた、少しだけ外に向けて開かれていた。
 これまでと、これから。それらを学ぶための知識と資料。それらと、別種の芸術作品などをまとめ、多くの博物館や図書館、資料館などの揃う、学術都市のような、新たな一面を、今は人々に見せ始めていた。
「凄いな……絶望の青だったころなんて思い出せないくらいだよ」
 文が言うのは、そんなコン=モスカ島の大博物館だ。中に入ってみれば、様々な蔵書と共に、狂王種についての情報展示や、絶望の青内の動植物の標本展示が行われている。
「凄い、まさに知識の宝庫だ……ああ、どこから回ろうかな。図書館の方も見てみたい……これは、とても一日じゃ回り切れない……!」
 幸福な忙しさに、文の顔についつい笑みが浮かんでしまう。心残りと言えばここまで様々な知識を収めた場所でも、鮭が降ってくる理由がわからずじまいなことだったけど。
「俺もカンちゃんもあの戦いにはそれなりに関わった身だけど……もうこんなになってるのか、なつかしいなあ。
 時の流れは早いね、カンちゃん」
 そう、睦月に言うのは、史之だ。あの戦いをミニチュアで再現した光景を見ながら、呟く。あの戦い。ミニチュアの無数の船。強大な魔と、竜。
「あ、しーちゃんがいる。『大号令の体現者』だって。そういえばそう名乗ってたんだっけ? え、イキってたの?」
 くすくすと笑う睦月に、史之は苦笑してみせた。
「あの戦いで俺は……とにかく夢中だったな……。
 リヴァイアサンが出てきた時はどうしようかと思ったね」
「あの戦いで、しーちゃん廃滅するかもだったんだよね。
 ……ねえ、どこにもいかないでね?」
 そういう睦月に、史之は頷いた。
「うん……そうだ、戦没者慰霊碑、見るのに付き合ってもらえるかな。
 どうしても……やっぱり、見ておきたいんだ」
「もちろん、だよ。僕も元かみさまとして祝詞を唱えましょう」
 微笑む睦月に、史之は、ありがとう、と微笑った。

 博物館を出て、さらに島を巡る。島には、かつて絶望の青に挑み、命を落とした者たちを祀る石碑、慰霊碑が設置されている。その石碑に前にたたずむのは、鹿ノ子だ。
「僕自身も参戦した身ではありますが……”彼女”との接点はありませんでしたし、激戦区にいたわけでもありませんからね。
 大切なひとたちのために自らを犠牲にする覚悟……如何ほどのものだったのでしょう。
 ……それとも覚悟など要らなかったのでしょうか」
 尋ねるように、石碑に刻まれた名前を見る。あの大海嘯の内に消えた者達。
「僕は……僕にはできるだろうか。
 大切なひとのために自分を犠牲にする、それが、その大切なひとを傷付けるかもしれないと分かっていても……。
 僕は、それを選ぶことができるだろうか」
 呟きに、答えを返すものはなく。それは、いつかきっと、自分で導き出さなければならない答え。石碑は語らず、しかし見守るのみだ。

 石碑を見てから、図書館にうつる。図書館では、ハリエットとギルオスが、閲覧室で分厚い本を眺めていた。
「うーん。この辺とか、読めない字が多いな。
 まだまだ勉強が足りな……」
 呟くハリエットの隣から、覗き込むように、ギルオスが顔を近づける。
「どれどれ? ああ、これは古代文字だからね。意味は分かっても、発音や読むのは難しい。
 辞書みたいなのがあるんだ。僕も持って居るから、今度貸してあげるよ」
 そう言ってほほ笑むギルオスに、ハリエットはわずかに頬を赤らめて、
「……近い」
「へ? あ、ああ! ごめん! 無神経だったね、ハハ!」
 ギルオスは慌ててごまかすように笑い、姿勢を正した。
「でも……ありがと。今日一日、付き合ってくれて。楽しかった。
 お夕飯はご馳走させてくれないかな?」
 ハリエットが言うのへ、ギルオスは笑って、
「はははっ。楽しい時間を共有させてもらったんだ――むしろ僕に奢らせてくれ。或いは、折半しようか。
 海洋だからね、おいしい魚料理が食べられる店がいいかな。苦手じゃないないかい?」
 そういう。ハリエットは、こくりと頷いた。もう少しだけ、楽しい時間は続きそうだった。

 コン=モスカ島。観光地化した、懐かしき場所。わずかに頬を膨らませて、クレマァダは呟いた。
「まったく。いや、良いのじゃよ。
 モスカの教えとは即ち海と共に生きることじゃ。
 それが身近になるのは良い。
 じゃが、なー?
 礼と節度が足りておらんと思うのじゃよなあ」
 少し見ぬ間に、すっかり観光地化した聖地に、クレマァダは苦笑した。或いは、自分を置いて変わってしまう懐かしき景色に、寂しさを感じたのかもしれないが。
「まぁまぁ、クレマァダさん。お父様も、熟慮の上でのご判断でしょうし――」
 そう言ってなだめるフェルディン。クレマァダはむっとした様子で、
「わかっておる、わかっておるが……というか、なにを持っておるのだ!」
「これですか? 『クレマッツォ』です。有名なスイーツらしいです、おいしいですよ?」
「す、スイーツ販売まで……」
 クレマァダが頭を抱えた。
「ええもう、我慢ならぬぞ。
 お主までそういう態度なら我にも考えがある!
 ゴミのポイ捨てを撲滅するぞ!
 観光地なら観光地なりに、その枠の中で信仰を守ることこそ祭司長のつとめぞ!」
 と、すたすたと歩いていくクレマァダに、
「って、ああ……! 拗ねないで下さいクレマァダさん!
 ゴミ拾いならボクも手伝いますから……!」
 と、フェルディンもついていく。

 変わるもの、変わらないもの。
 見守っていくもの、先へ行くもの。
 様々なモノと思いが重なって、リゾートの一日は、すぎていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 どうかささやかな休息を。

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