シナリオ詳細
超越魔獣が あらわれた!
オープニング
●『想像』の塔、Project:IDEA研究室――練達
エラーにより暴走し、仮想世界『ネクスト』を演算しながら拡大してゆくR.O.O(Rapid Origin Online)。それにより生じた無数の問題を解決するためにローレットの投入が図られた今も、決して『正規の方法によるアクセス』の試みが断念されたわけではない。むしろ、ごく限られたものながら特異運命座標たちのアバターをサポートするために、あるいは少しでもローレットへの『借り』を少なく済ますため、研究者たちの中には今なおR.O.Oへの干渉を諦めていない者たちもいる。
……そんな中。
「ビンゴ! 暗号化パターンがほんのちょっとだけ絞り込めました!」
「ポートが開いたぞ! 何かデータ突っ込んでみるからサンプルデータをくれ!」
てんやわんやする研究室の中では新たな成果が顕れ、実践を確かめる段になっていた。
「わかりました!」
学生がメモリーカードを渡す。このデータが無事にR.O.O内に届いたならば、研究者たちはまたひとつ問題終息への筋道を進んだことになるだろう……と思われたその時!
「データ密度、急上昇中です!」
実験に伴うR.O.O内の変化を監視していたオペレーターが、切羽詰まった悲鳴を上げた。
「何か……恐ろしいものが『ネクスト』内に実体化しようとしています! 情報取得中です……名前は……『超越魔獣』!?」
HP42億9496万7295、攻撃力・防御力ともに6万5535。何もかもデータが大雑把なR.O.Oにおいてもその数値は規格外であり、近くにいたアバターが鎧袖一触ぽんぽこ殺される。
しかも……悪いことに近くには、『サクラメント』――いわゆるセーブポイントが用意されていた。このままではサクラメント周辺のアバターは、復活しては殺され復活しては殺されの無限ループに陥りかねない!
「おい君! この中に入ってたデータは何かね!? 何がこんな代物を具現化させたんだね!?」
「……あっ。すみません今渡したの、趣味で描いてた漫画のデータを入れた私物でした! この超越魔獣の外見……ちょうど俺がラスボスにしようとしてた奴とそっくりです!」
「君ィ……ラスボスってのはただ強ければいいってもんじゃないんだよ!?」
●『伝承』郊外
その巨躯の怪物は、山が丸ごと現れたかのようだった。
金色の毛皮。燃え盛る瞳。吐く炎は高温のあまり青くさえ輝いて、撫でたもの全てを蒸発させる。
終焉をもたらすもの。生ける死の権化。時間さえ十分に与えられたなら、『伝承』はおろか『ネクスト』全てを荒野に変えたとしてもおかしくはない存在……が。
それは元より異物であったが故に、世界の法則に愛されていなかった。本来であれば何人も侵すこと能わぬ肉体が、なんかよくわからない理由で容易く傷を負うことがある。
その傷を負わせる鍵となるのは……『アクセスファンタズム』であった。何がどう働いてそうなるのかはさっぱり原因不明だが、近くで誰かがアクセスファンタズムを使用すると拡大解釈が起こり、超越魔獣の存在を削るのだ!
さあ、特異運命座標らよ……アクセスファンタズムを使用せよ!
この世界の異物から、『伝承』を、『ネクスト』を守るため!!
- 超越魔獣が あらわれた!完了
- GM名るう
- 種別決戦
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2021年05月20日 22時20分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
リプレイ
●暴虐の悪夢
それは何人の都合も歯牙にかけることなきがごとき、生ける理不尽の権化であった。一歩歩めばその脚の下に、木々が纏めて薙ぎ倒される。瘴気の炎によって穢された土地が、どす黒く染まって怨嗟を上げる。
これほど恐るべき存在が現れるとは。実際にその威容を目の当たりにすれば、頭ではこの世界がシミュレーター内の存在と理解してなお冷や汗を禁じ得ぬ者たちを、どうして嘲笑できようか?
「うぅ、どうしよう……!」
頭からすっぽりと黒布を被ったうさみみお化けことわー(p3x000042)が、器用にも空中を舞いながら身を丸くした。片や、数値の限界に挑む超越魔獣。片や、データビルドはおろかアバタービジュアルも空飛ぶちびっこうさうさなこと以外決まってない1レベルだよ! アクセスファンタズム? そんなの作れてると思う?
兎に角、好機が訪れるまで死なないようにしないと。必ず訪れるだろう反撃の機会まで死なずにいられる方法を探り、辺りにきょろきょろと目を遣っていると……眼下に、通らぬと承知で戦いに挑む人狼の姿があった。燃え上がるような黄金の毛を、氷の中へと閉じ込めんとする足掻き。すごく、強い……全力を出しても通らないのはコル(p3x007025)自身とて承知の上で、それでも抵抗するのをやめようとしない。何故ならここが無辜なる混沌であっても、あるいはネクストと呼ばれる仮想世界でも、特異運命座標のやるべきことは変わらないと信じているから。
その時……。
「サクラメントに向かって攻撃が来ますよ!」
『宣告の翼』九重ツルギ(p3x007105)の警告は、超越魔獣が無慈悲に希望を踏みにじる存在であることを物語っていた。ツルギは、『夜明けの求道者』。その右手で大地に触れれば、特異運命座標たちが駆けつけるまで幾度も死に戻りした練達研究者たちの無念が流れ込んでくる……それと同時に彼が知ったのは、今、魔獣が始めたモーションが、研究者たちを一網打尽にしたスキルの予備動作であるというヒント!
「超越魔獣――貴方の本性(なかみ)、感じ取らせていただきましたよ!」
コルはツルギの警告を受けて、迷わず自らを研究者たちの盾にした。
たとえ力及ばずといえども、できることならまだまだある。誰かのために身を焦がしたならば、その想いは必ずや次に繋がってくれる!
「その通りだぜ。世界は、俺たちが勝利することを望んでくれている」
じっと魔獣を凝視しながら、『ホシガリ』ロード(p3x000788)が微笑を浮かべた。
「何故なら、俺の『命彩』があいつの姿を、NPCを意味する白で塗り潰してるからな……一方の俺たちは黒――つまり主人公だ。ゲームっていうのは主人公が勝たなきゃいけないもんなんだよ」
するとまるで世界そのものが彼の言葉に呼応したがごとく、特異運命座標たちに力がみなぎりはじめた。対する魔獣は……苦悶を浮かべる。おぞましく、理解し難い悶絶の声……だが魔獣は赤く変わったりはしない。だから多分、まだ聞いても大丈夫なやつだ。
もっとも多少の有利が生まれたところで、超越魔獣の牙城はいまだに崩れる気配を纏わなかった。多少の千鳥足を踏むだけで、仮想世界内の命が無数に散らされる。『エレメンタルエフェクト』で召喚した精霊たちの悲しみに暮れる感情が、『カラミティ・クリエイター』ロロン・ホウエン(p3x007992)にまで伝わってくる!
「仕方ないわね……目立つのは承知で、一気に畳みかけるわ!」
死にたくなければ、倒す道しかないだろう。精霊たちの力を借りて、冷気の巨狼の群れを呼ぶ。彼らに脚を噛みつかれじと、魔獣は炎の息を彼らに向けるが……あたかもその興味を惹くように、ひとつの声がかけられる!
「やっほ~、美少女合成獣(キメラ)のアルスちゃんで~す!」
あっ今めっちゃ可愛かったな俺、と、『合成獣』アルス(p3x007360)の中の人――アルヴァ=ラドスラフはちょっと思った。AIがアバターを自動的に動かしてくれる『モード・オートパイロット』のお蔭で、アバター性別を間違えて作ってしまった彼も自動的に女の子っぽく振る舞うことができる。
(お、もしかしてこのまま自動戦闘もしてくれるのか?)
そうアルヴァが思った瞬間――彼は、炎の息で蒸発させられた。舌打ちしようと思ったら……死亡ダイアログに「マスター、アルスちゃんの強さはマスター依存なのをお忘れですか?」との文字が添えられている。
だとしても、時間稼ぎの効果はあった。
巨狼が魔獣に食らいつく。蹴散らさんと魔獣が片足を上げれば、次にロロンが喚ぶのは超巨大な牛だ。
「派手に決めさせて貰うわね」
彼女が精霊たちに命じたならば、牛の踏み鳴らしが大地をかき混ぜた。それは天災。大自然の怒り。災厄が理外の存在を拒絶する!
「今のようですねマリ家! 準備はいいですか? お腹が空いてたら虎のおやつもありますよ?」
「ふふ! どうやらそのようですねヴァレ家! あ、ありがとうおやつ楽しみー!」
微妙に中の人の素が出た気もする『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)と『航空海賊虎』夢見・マリ家(p3x006685)がポーズを決めると、勇ましい虎騎兵の姿に合体を果たした。
「私……拙者の『コンキスタドール(虎)』と」
「拙者の『虎を名乗る勢力(一人)』」
「「合わせて無敵のアクセスファンタズム!!」」
「いきますわあのラスボスから高く売れそうな素材を剥ぎ取るために!」
「じゃあ私がボスの外殻を削るね! 攻撃は引き受けるから安心して夢のマイホーム資金を手に入れてきてね!」
「「ぬわー!?」」
途中からすっかり素の出たヴァレマリが、そんな上手いこといくわけもなくあっさりと超越魔獣の足に踏み潰された。もっとも、アクセスファンタズムのせいか絆のせいかしばらくしぶとく生き残っていたらしく、超越魔獣はしばらく足をぐりぐりしていたが。
その足を……『山賊』グドルフ(p3x000694)の斧が打つ。無論びくともするわけがなく、山賊の口から悪態が洩れる。
「馬鹿みてえな硬さしやがって。アクセスなんちゃらってを使えば有利になるたぁ聞いたがナンノコッチャらホイだぜ。おい、誰か教えろ!」
「ま、まずはステータスを開くところから!」
睨まれた研究者が悲鳴を上げる。グドルフはニヤリと嗤ってその通りにし……。
「何ィ? 『山賊挽歌:山賊NPCとの戦闘時のみ、身体能力やパフォーマンスが上昇します』だぁ? あんだけ啖呵切っちまったのに何の役にも立たねえじゃ……あ」
しばらく頭を抱えていたグドルフだったが、突然また悪どい表情が浮かんだ。
「なあ……こんだけ俺の縄張りを荒らすお前は山賊だろう!」
……バグだ。『ドラゴンクロニクル』の持ち主たる『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)の瞳には、超越魔獣に『山賊属性』が付与されるバグの瞬間が映されていた。
「超越魔獣だか何だか知らぬが、これでは形無しといったところであるな」
バグがあるなら、突くことができる。彼奴の性能の幾ばくかを奪うことだってできる。進化の象徴たる『ドラゴンクロニクル』の力は十全以上に発揮され、敵の力が敵を撃つ!
「このまま倒してしまってよいのであろう?」
悪食竜の息吹と咆哮が、超越魔獣を縛めていた。このまま続けば、悪食竜の勝ち――だがそう上手くはゆかないことを、『R.O.O tester?』アイ(p3x000277)の『叡智の魔眼(偽)』は読み取っている。
「バグも喰らい過ぎてるネ。これ以上は彼自身も保たなくなるヨ」
「成ル程。伝えて置コウ」
えっ今影から声がした? 驚いてアイが振り向くと、そこには『ただの風』による非実体化から戻りつつあった、『_____』Gone(p3x000438)の亡霊じみた姿が目に入った。風の存在である彼はこうして神出鬼没に動き回ることができるし、声なく誰かに囁きかけることもできる。確率的ながらも視界内の任意の情報を読み取ることのできるアイとのシナジーは、地割れなり炎なりで容易く互いを分断されてしまう戦場内では情報共有の手段として大きな価値がある。
それは多くの手助けを、 絶望に抗う者たちへともたらした。
魔獣とて獣である以上、腹や目など、獣としての弱点は有効であること。
彼の吐く致死の魔炎は、秘められたる祈りの呪文により力を削がれることを。
ならば魔獣の弱る速度が増して、運よく一撃死を免れる者が現れはじめるのも道理であったろう。。
ならばもう、特異運命座標とは踏みつけられるだけの小石の名ではない。同行者の疲弊を完璧に把握できる『どこまでも側に』ミドリ(p3x005658)の『フォローサイト』がある限り、死にさえしなければ難を逃れうる!
「……って、その『死にさえしなければ』が難しいんですけど!?」
そうミドリが悲鳴を上げた時、彼女を安心させる声が響いた。
「確かにあれは大きすぎる。おかしくなった世界とはいえ尋常じゃない。……が、あれには正面から対抗しなくてもいいんだろう? だったら、話は簡単だ」
『君の手を引いて』ディリ(p3x006761)は口許に余裕の笑みさえ浮かべ、武器を担いだまま立てた指先を二度ほど自分に向けて曲げてみせた。取るに足らぬはずの存在による挑発に、超越魔獣は怒りを隠さない!
「ォォォオオ!」
激しい憎悪の獄炎が、ディリをすっかり覆い尽くした。誰もが絶望するだろう紅蓮の中で――しかし、ディリは斃れない。
「俺の……ロールはタンク。『ロイヤルガード』はまさにそのためにある」
同時にミドリは、魔獣の脚を駆け登る。自ら奇跡を招いたディリには、もう幾ばくかの猶予が残されている。ならば彼が斃れるその寸前まで、彼女も敵を切り刻む!
「……ってしまった! ここじゃパンドラ復活できないんだった!」
今度は慌てて自分がディリを護ろうと駆けるが、振り下ろされる魔獣の脚のほうが早かった。もう駄目だ……思わず目を瞑ろうとした瞬間、横あいからディリへと迫る装甲車。
「ボクにとっては笑い話みたいな敵かもしれないけれど、それに大切なものを奪われる人がいるって言うならね」
すんでのところでディリをミドリに届けた装甲車からは、『ヨハン=レームのアバター』ゼロ(p3x001117)の声が聞こえてきた。それもそのはずこの装甲車、ゼロが『Evolution』により変化したものだったからだ。
さあ、次はこの世界の人々を助けにゆこう。だって、ゼロにはこれが単なるデータには見えないんだから。今こそ魔獣を蜂の巣にせんと、幻影の刃を砲口から射出する!
すると苦痛の咆哮を上げた超越魔獣は、闇雲に手足をばたつかせはじめた。『妖精勇者』セララ(p3x000273)の召喚した嵐の聖騎士が砕かれる。
……が、特異運命座標たちの損害はそれだけだ。あれだけ無闇に大地を破壊したにもかかわらずそれで済んでいるのは……セララ自身が『幸運の妖精』だからだ。
「そういえばログイン前に作者の人に聞いた設定は、『主人公は強い意志とほんのちょっとの幸運の力で超越魔獣に勝つ』だったっけ。ここでは、ボク自身がみんなに幸運をもたらせるよ! あとは、みんなで意志を貫こう! いくよ必殺のギガセララブレイクっ!」
もしも超越魔獣が原作の力というものに左右されるなら、こちらも原作の力を当てれば原作同士の力量差が現れるに違いない。
幸いにも『組織の刺客』シャドウウォーカー(p3x000366)とは、アクションゲーム『サイコウォーズ』のキャラクター名。アクセスファンタズム『インビジブル』を起動する。すると……学生の三流小説の敵が、ゲームで慣らした奇襲強襲と一撃離脱の戦法に勝てるわけがない。しかも、こちらはエレキダガー――強力だが使い勝手の悪いクソ武器を使いこなすにまで至った達人だ!
「これがワタシのスタイルだよ」
そのスタイルに対抗しようと思うなら……超越魔獣自身も同じ能力を手に入れるしかなかった。恐るべき存在が自らをさらに悪辣にするために、自身の居場所を周囲の者たちごと暈す進化を開始する。
が、それもすぐさま無力化された。何故ならこちらには、相手の所属を割り出す『所属看破』の持ち主たる『ガジェッティア』雀青(p3x002007)がいるからだ!
ただ敵味方を識別するだけのはずのアクセスファンタズムにてバグのある空間を凝視したならば、所属マーカーだけが幻惑に影響されずに表示されていた。つまり、見えぬはずの敵味方の位置が丸わかりということだ。
「バグ利用で戦うのもゲームの醍醐味だ」
あとは……前奏たる赤の剣(プレリュード・レッドミスト)にて終章の始まりを奏でてみせるだけ!
超越魔獣は今日幾度めかの激昂をした。その怒りを……『朝霧に舞う花』レインリリィ(p3x002101)には留める術はない。
「……でも、ボクは泣いている人には手を差し伸べるんだ」
たとえ手の届く範囲だけでも。そして彼女の『Reach Out-Marionetta』は、魔獣のバグの影響を受けて一時的に進化する。すなわち本来は10mの射程が大幅に伸び、視界内なら誰だって助けることができる!
……もっとも敵の意表を突く味方救助の代償は、手足が外れた胴体を動かす術がないことだ。魔獣は勝ち誇るかのように嘲笑い、レインリリィの胴体をぺろりと平らげる……その瞬間に彼女の下に飛び込んだ、『雑草魂』きうりん(p3x008356)とともに。
「そんな……!」
『聖少女』ティリス(p3x008499)の瞳から涙が溢れた。ああして食べられてしまった以上、もう、彼女の『簡易聖域』も届かない。
失意と、聖域を通じて肩代わりした味方の負傷と疲労が、彼女の足の動きを止める。そこに、天変地異のごとき魔獣の炎……避けられぬ彼女はすぐにでも地獄の業火に身を焼かれるのであろう……いや。
そんな未来は、訪れなかった。
彼女の代わりに松明と化したのは『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)。
どうして? それは彼が『万能役人システム』の一部であるからだ。自身の命などまるで何でもないかのように、彼はこのように語ってみせる。
「あー、役人というものは、これでも常に組織効率化を考えているものなのですよ。私も支援をいたしてはおりましたが、貴女のほうが効率的だ。貴女を先に殺されるくらいなら私が犠牲になるべきですよ」
とはいえそれも、次の攻撃までの僅かな時間稼ぎにしかならないだろう。
……と、誰しもがそう思っただろうが、未来はその予測を覆してみせた。この中に食べられるきうりんの首周りをよく見た者がいただろうか? 彼女の首元は見事な羽毛の襟飾りで彩られていた……けれどもそれは彼女の服のパーツではない。『聖餐の天使』パルフェタムール(p3x000736)が自らの羽毛を、勝手に彼女に突き立てていたものだ。
「さて、そろそろ『救いなき聖餐』が効いてきた頃じゃないかな?」
全身に麻薬成分を有する彼女は、羽毛まで強い毒性を帯びている。アクセスファンタズム製の劇物は、さしもの超越魔獣をも幻覚へと誘い込む……急に虚空めがけて攻撃しはじめた彼は、はたして何を見ているのやら?
あれだけ恐ろしかった終末の獣も、犠牲を孕みながらではあるが着実に討伐へと近付いていたに違いなかった。そのことが『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)にも勇気を与えてくれる。
(僕はR.O.O初心者で、敵はとても強そうで。何だか凄く場違いだけれど、僕もできることを精一杯やればいいんだ!)
この少年なら恐怖に震えるだろう心を奮わせて、胸いっぱいに深呼吸。『みんな笑って』――作れる限りの笑顔を作って呼びかける!
「さあ、皆笑って。笑ってよ。大丈夫だよ。みんなで力を合わせれば、レイドボスだってやっつけられるさ!」
すると『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)の周囲を囲んでいたテディベアたちが、一斉に剽軽な踊りを始めた。『ドールズマスター』たる彼女の力と、純真無垢な空想の力。クマさんたちの能力は確かにハルツフィーネ本人に依存するかもしれないが……超越魔獣を相手取った際には、比例係数も対象数も普段とは桁違い!
「超越魔獣? ラスボス? そんなの関係ありません。私のクマさんこそが最強に決まっているのです」
無数のクマさんたちから放たれたクマさんビームが集中し、燃え盛る魔獣の片目を焼いた。世界から異物が退いてゆく感覚に、草木も、土も喜び勇む。否、彼らを次々に駆り立てているのは『クレイジーメイド』アリシア(p3x004649)の踊りだ!
〽秩序、使命、解き放たれたいの
そんなユメを 適えてくれる 素敵なR.O.O
そんなポップでキュートな歌詞から始まったアイドルソングは、けれども可愛いだけじゃない。
〽激おこ マジギレ 破壊衝動☆
開放っ!! 開放っ!! 開放っ!!
よっしゃああぁぁァアアアーーーー!!!!! 殺しあえーーーー!!!!
突如としてデスメタルへと変じる殺戮ステージが、『バーサーク☆アイドル』の真骨頂だ。HEAVEN IS DEATH!! 辺りは決戦の舞台に早変わり!
「なら僕も……『サモンカード』! いでよドラゴン……超越魔獣をぶちのめせ!」
そんな『カードファイター』ヴァルツ(p3x004384)の呼びかけと同時、彼の掲げたカードから、描かれていた火竜が具現する。本来ならばイメージとして浮かびあがるのがせいぜいのはずの札術が……今は魔獣と取っ組み合いする、強力な味方になってくれている。これがR.O.Oなのか!? あまりの迫力にヴァルツ自身も巻き込まれないようにするのが大変だ。死んじゃったら……多分、ドラゴンも消えてしまうだろうからね。
ではそんな、破壊と破壊が衝突し、周囲の地形ごと互いを喰らい合うような戦いを前に……『よう(´・ω・`)こそ』ジョージ(p3x007332)は何ができるだろうか?
「本来、戦闘能力はないはずなんだが……この魔獣相手ならひょっとするかもしれんな」
いでよ、コミカルなペンギン姿の『眷属召喚』。行くぞ、と眷属ペンギンたちに号令をかけたなら、彼らはウォータージェットで離陸する!
「ペンギンの心意気ってもの、見せてやりますぜボス!」
「あれしきの炎、俺っちたちの水流の前には恐るるに足らずだぜぇぇぇぃ!」
砲手に、火竜に、歩兵に、航空戦力。ようやく正気に戻った超越魔獣は、いつしか自分が危機に陥っていたのを知った。炎が効かぬなら毒の瘴気で。それも弾かれるのなら肉体の大きさで。魔獣は、天に向かって吼える。あたかも自分こそが世界の支配者であるかのように。
でも――『新たな自分』空梅雨(p3x007470)の『コードヴィジョン』は“知っている”。それは魔獣の行動パターンの変化を示すモーションなのだ、と……何故なら魔獣を構成するフラグ変数のひとつが、吼えるほんの少し前に変化してるから。そして、ひとたびそうと解ってしまえば……。
「全体攻撃の衝撃波が来ます! 全身の毛が完全に白く光る前に総攻撃してキャンセルさせて!」
空梅雨本人は護国の姫君っぽく祈ったつもりだったのに、傍からは何故かあざとく目を潤ませたように見えた。これこそ天然の姫プレイヤーの実力か。
当人にとっては不本意な誤解。だが『不明な接続エラーが発生しました』譛晏?芽!動(p3x007193)にとっては眼福パワーの源だ。
「可愛い女の子たちの薄絹のような衣装! うなじ! 脇! ヘソ! もも! パンツ!! こんなにも滾っているのにあんな目でお願いなんてされたら……ん~♪ アガってきたねぇ!!」
絶頂に達した感情の昂ぶりが『カ■■レ■エ■ェクト』を発揮して、彼の中からおびただしい量の赤黒い靄が噴き出した。終いには巨大な人形を取った靄は激しく魔獣を乱打して、全身の光を奪い去る。
その影響で、魔獣の動きがすっかり止まる。その隙に、『シラスのアバター』シラス(p3x004421)は腱へと斬りつける。
「アンタはすげえボスだったよ。第一に、漫画のデータが実体化するなんて時点で驚きじゃないか。
でも……そんなもので俺が諦めるとは思わないでくれよ。確かに俺にはまだアクセスファンタズムだってない。それでも……誰かと連携することまでアンタは止められないさ! 陽炎……だったか? 今だ、やってくれ!」
「承知致しました」
まるでシラスごと魔獣を包み込むように、戦闘アンドロイド、『No.01』陽炎(p3x007949)の影が伸び上がった。本来ならば広がるほど薄くなり、必然、拘束力も低下する『影牢』。しかし今陽炎を照らしている光の源は、全身の光を掻き消された分を、口の中の炎で補おうと顎を開いた超越魔獣だ。超越魔獣自身が生んだ強烈な影が、超越魔獣を閉じ込められぬ道理などはなく。しかも拘束から逃れようにも腱は傷つけられて、脚を動かすことにも苦痛を帯びる!
「影の牢屋は心地よいですか? ……おや、お気に召されませんでしたか。それは残念。……では、此方は如何でしょう?」
影は今度は触手と化して、ますます魔獣を縛めてゆく。ええと……これ見てもいいやつ? 『新米P-Tuber』アカリ(p3x008467)の視界の一部に、『パンドラ☆フィルター』によりモザイクがかかる。
「……というわけで視聴者のみんなにもやさしくなったよ! 汝SAN値ピンチモンスター罪ありき! あの触手は弱点を強調するように魔獣を縛ってくれてるみたいだから、モザイクのかかっていない場所が弱点だよ!」
みんながんばれ私もがんばる。『擬神暗器』によりアカリのものとなった『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)を振るい、超越魔獣を斬りつけてゆく。今の壱狐は超越魔獣殺しの太刀だ。一本一本が腕ほどの太さのある体毛をひと薙ぎにて切り払い、壁のごとき皮と肉を斬り裂いて、遥か奥底にあるはずの内臓へと達する真の業物。
「ただの刀と甘く見ましたか? 残念、すごい刀でした!」
口を開けばすごい残念な刀だった壱狐とアカリはハイタッチ!
「いやー今日の私とても活躍してるよ、取れ高マックスだよね!」
「今日の私はなんやかんやあって超越魔獣にも大ダメージを与えますからね!」
すっかり意気投合したらしい一人と一振りを……超越魔獣は許しはしない。アカリらごと厄介な者たちを一掃するために、魔獣は重ねての足掻きを試みる。
拙い――『白竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)の『電子妖精Fevnir』が、魔獣内のバグ内包量が大幅に増してゆくのを検知した。
「Fevnir。情報を集めて、皆に攻撃への対抗手段を教えてくれるか」
だが……答えは『手段なし』。魔獣は戦いの中で成長し、未知の進化を遂げようとしている!
仕方なかった。何故ならベネディクトはこの世界について、まだ知らないことのほうが多いのだから。
だがいつか、本当に退けない戦いが来る。その時には手段がなくとも切り拓く必要がある。
では、何がそのピースとなってくれるのか――そんなベネディクトの思索は突然、ピンク色の声に妨げられる!
「ひめにゃこはー、今日も~超絶カワイイー☆」
その声に抗えずに『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)のほうを向いたのは、決してベネディクトだけに限らなかった。何故なら今の場違いな台詞は、ひめにゃこの『超絶美少女的特異点☆』のトリガーだからだ。
誰もが彼女に注目してしまう。たった今憎悪を吐き出そうとした超越魔獣でさえもが、彼女から目を離せない。
「お、こっち向きましたね……って、え……」
周囲全てに向けられるはずだった憎悪が、不幸にもひめにゃこに一点集中させられる。
「お、お前にしちゃ中々体張った技だなー。ナイス囮」
『赤龍』リュカ・ファブニル(p3x007268)の感心した声に抗議をするももうどうにもならず、ひめにゃこ、ついにブチ切れる!
「くそ、こんな魔獣に殺されるなら自害してやります! 自爆スイッチ連打ぁぁぁぁ!!!」
ちゅどーん! 超越中の技は対象を見失って不発に終わったが、そのディレイタイムは失われなかった。
この好機を逃すまじ。『竜血解放』。リュカに流れる竜の血潮が、赤く体を覆いゆく。
「視野も竜人のものに変わるし、体も熱くなるのがまだ慣れねえが……」
それからベネディクトへと僅かな合図。応じ、Fevnirが敵の残り硬直時間を告げて、リュカは魔獣のいまだ健在な側の目へと飛翔する。
「……テメェをぶちのめすには不足ねぇ!」
魔獣は、それを凝視した。いまだ最強の存在に立ち向かう愚か者へと、引導を渡してやるために。
が……次には、彼の瞳は竜人を見失う。何故なら彼の視界は唐突に、無数の桜の花弁で満たされたからだ。
「舞い散る桜の舞踊――『桜舞絢爛』」
桜吹雪の中に佇む『夜桜華舞』桜陽炎(p3x007979)の囁きは、普段であれば春の喜びを彩るだけのものだったろう。
だが……桜、桜。歴史、世界。それは舞い散る桜とともに。ならば舞い踊れ、桜の刃。つい今しがたまでは隠蔽と防御の手段であった桜吹雪はその濃さを増し、刃と化して魔獣を切り刻む!
「さあ、道を拓いて! 花弁が燃えてしまわぬうちに!」
「わかったよ☆ ボクのアクセスファンタズムの出番だね☆」
両目の視力を奪われた超越魔獣が、『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)の喚び出したものを目にすることはなかった。最初はちょっとばかり素が出て真剣に『星猫召喚!僕の望みはそこにある?』の設定をしていたが、それが終われば彼の呼びかけとともに、彼は流れ星に乗った猫で物事を導く純真で可愛らしい魔法少年に変わる。少なくとも見た目は。
「流れ星よ、猫よ、弱点まで案内してー☆ それからボクも……発動、『星と猫のダンス』! 星よ、猫よ……気の向くままに踊れ踊れー☆」
その流星はナハトスター自身のみならず、『11勝25敗5分』入江・星(p3x008000)さえ導いてくれた。
「あまりご無理をなさいませんよう」
「人形遣いさんのお蔭で助かったわ。でも、ここからは私の出番やね」
黒騎士の人形を操る『人形遣い』イデア(p3x008017)のついでの操糸に引っ張られ、辛うじて魔獣の攻撃の余波を回避した星は、これまでは攻撃の機会すら得られなかった。
だが今は、夜ならざるも空に流れ星が輝いている。
(夜まで逃げ回らんで済んだのは僥幸やね。空に星のある今なら『流星』が使える――ずっと頭に叩き込んできた敵の動きを全部計算し尽くして……ここで一気にキメるで)
ならばこれまで共闘という形になっていたイデアも以心伝心。『Acta est fabula(偽)』――黒騎士を主、自らを従と変え、AIサポートによる電子人形劇を開始する!
どちらも時間こそ限られているが、僅かな時間を力に変えた。手足の骨が、あるいは装甲が軋む。超越魔獣の胴に穴が空き、おびただしい量の血が大地を濡らす。
(ですが……こちらも限界が近付いています)
自動行動の中で冷静に思考するのは、けれどもこれで自分の限界を知れるという満足。そう。今限界を知ることにより、R.O.Oでの無茶のやり方が判るのだぁ!
「最ッッッッッ高だなぁオイ! リアルじゃぜってー戦えねぇバケモンと戦れるんだからよぉ!」
……いや『蛮族女帝』トモコ・ザ・バーバリアン(p3x008321)の場合はそんなクレバーな考えとは無縁かもしれない。神器ネアンデルタールをぶん回し、負傷も恐れず兎に角攻める!
「アタシの『原始の直感』もさっきから痛ェくらい鳴り響いてやがる! 視える……視えるぜェ……どうだ、お前らにもうっすら視えてきたんじゃねーか? 死ぬ気で避けなきゃこっちが殺られる、ヤバすぎるからこそ視えるデカブツの攻撃の予兆ってやつがよォ!」
拡大されすぎたトモコの第六感は『どうぶつ』クロア(p3x008405)にまで同じものが視えるほどだったから、ただでさえ小さなハリネズミにすぎない彼女は難なく超越魔獣の懐まで潜り込んでいた。
そして……『シュレーディンガーズアニマ』。クロアがそうあれと願った途端、彼女の体は拡大を開始する。30cmから1m、3m……アクセスファンタズムにバグを起こす超越魔獣の傍らでのそれは、本来の上限を大幅に超えて魔獣と同サイズまでクロアを成長させる!
ぶうんという強烈な前足パンチが、超越魔獣をよろめかせた。魔獣も同じようにクロアを殴り……。
「おっと、下手に触ると棘で怪我をしますぞ。ふぉっふぉっふぉっ」
しかもクロアはすぐにまた小さくなって、今度は魔獣の後ろを取るのだ。この世全てに対するものかとさえ思わせる、狂おしいばかりの魔獣の怒り。そりゃそうだろう、と『虚花』リラグレーテ(p3x008418)は憐れむ。
「馬鹿みたいにパッと出現させられて、よくわからない理由で倒される。その思いの丈全て、解放すると良いですよ――貴方の心、咲き誇れっ!」
『フロース』。身を焦がすほどの憤りがさらに何倍にも増幅されて、魔獣はついに自らの全身を炎で包みはじめた。彼が、しまったと自らを省みることはない。何故なら彼自身、彼を灼く炎を止められぬのだから。
崩壊する巨体。哀しげな叫び。まるで彼の最後を彩ろうとでも言うかのように、焼けて崩れ落ちた肉の中から、胡瓜の蔓が伸び上がる。
「……ふぅ。ここまで伸びるのは大変だったよ!」
緑色に茂る蔓の根本から、不意にきうりんが顔を覗かせた。確かに食べられたはずなのに……? 他者の視界内に入れるはずもない魔獣の胃袋の中では、視界外でアバターを再生する『リボーンベジタブル』による繁茂が無尽蔵なのだ。
「R.O.Oの冬虫夏草とは私のことだぜ!ㅤさっさと死体になりな!!」
きうりんが勝ち誇ると同時、ぼろぼろと剥がれ落ちてゆく超越魔獣の肌。それらは大地に落ちる寸前に……何故だかきゅうりをトッピングした冷やしうどん膳へと変化した。
『きつねうどん』天狐(p3x009798)の『麺神の手』の仕業だ。これまで彼女が手数で超越魔獣を傷つけた数だけ、幾つでも幾つでもうどん膳は降ってくる……それらは傷ついた者たちを癒やす。そして何より、美味しい。
「超越魔獣に引導を渡す時は近づいています。そしてその時にはきっと、えも言われぬ至高のうどんがドロップするに違いありません! さあ、皆さんも『うどんの神様』を信じましょう!」
果たして、特異運命座標たちの中にうどんの神様を信じることにした者がいたのかは判らない。だが一つだけ確かな事実が含まれているのだとしたら、それは超越魔獣が斃れる瞬間は今や刻一刻と近づいているということだ。
「クラッシュだねブレイクだねデストロイだね!」
『世界終焉機構最終番』ルイン(p3x008578)の『破壊者の神眼』は今や、はっきりと超越魔獣の肉体を破壊するための道のりを捉えるに至った!
「この『眼』、元と比べれば機能はすっごい削ぎ落とされてる……でも、今はそれで十分なんだ! ボクの破壊技術をぶちこんであげる! さあ、神造兵器にして終焉機構の最終番が力を、とくと目に焼きつけてね!」
これによりただでさえ崩壊を続けている全身が、次々に破壊されてゆく。炎に包まれる魔獣を慰めるものがあったとすれば……それは氷であっただろうか?
だがそんな彼を包み込んだ氷は、氷でありながら燃え盛っていた。『零度の焔』――『氷嵐怒濤』カメリア(p3x009245)が纏う、氷にして焔のアクセスファンタズムだ。
彼女はその焔を噴射し飛翔しながら、幾度となくヒット・アンド・アウェイを繰り返す。右に左に。前に後ろに。それからもちろん――上に下に。それができるようになった理由など知る必要はない……要は、上手く使えさえすればいいのだから。
カメリアは、見事その焔を使いこなしてみせた。縦横無尽な彼女のラッシュを、魔獣はじっと耐えるほかはない。
が……耐えても、彼の忍耐の時間は終わらない。どういうわけか攻撃の速度は増す一方だ。
ふう、とその原因――『にゃーん』ネコモ(p3x008783)は半ばまで息を吐いた。彼女の『とんずら』による4倍速モードは戦闘中には効果を発揮しないはずなのに、この通り、何度も魔獣に昇猫拳を当てている。
(相手が相手だけに戦闘行動じゃなくて、デバッグ作業としてみなされてるニャ……?)
だからとんずらモードが切れるまでの間に全てを叩き込むべく、ネコモは引かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! だニャ! 敵のHPバーはあと僅か、疲労した手足に鞭打って、最後の瞬間まで気力を振り絞る――。
●悪夢の終わり
――全ては、哀しい物語であった。
魔獣とて、かつては人であったのに。
だが、嫉妬深い魔女は兄に呪いをかけた。
憎らしいほど睦まじかった彼と妹の兄妹愛も、兄が姿を変えただけで失われるほど脆いものだとせせら笑うために。
結果は――魔女の思い通りにはならなかった。妹は、兄への愛を失わなかった。
『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)の『究極妹力』は運命そのものを書き換えて『妹になる』アクセスファンタズム。超越魔獣相手にならそんな物語を勝手に挿入することくらいわけはない。
「なぁ、にーちゃん、元に戻ってくれよ!!」
妹は、残るは電子の藻屑になる運命の兄の額にキスをした。
すると光がふたりを覆う……愛だ。魔女の呪いすら凌駕する『希望』――。
――そうしてなんかいい話っぽく手を繋いで未来に向かって踏み出した兄妹の姿を、木陰からこっそりと眺める人影がひとつ。
「なるほど、あくせすふぁんたずむ……って結局なんなんですか!」
こういったゲームみたいなものとは無縁でわからない分、自分のアクセスファンタズムを決める際の参考になるんじゃないかと目をきらきらさせて全てを観察していたAlice(p3x007295)は、悲鳴にも似た叫びを上げた。
「ううっ、マッドハッターさま、私にゲームは百年早いです……だって、天義にそんな文化はなかったもん……!!」
うん……正直、練達人でもわかんないと思う。
何故ならここはR.O.O。バグから生まれた世界なんだから。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
超越魔獣、その後は人間NPCとしてささやかに暮らしてるらしいですよ……どういうこと……。
GMコメント
さあ……いきなりレイドボスバトルだ!
●つまり?
アクセスファンタズムお披露目シナリオです。プレイングにて『自分のアクセスファンタズムがどれだけすごいのか』をアピールしてください。
その上で、それがどんな理由で超越魔獣にダメージを与えるのかをご記載ください。アクセスファンタズムが変質して直接ダメージを与えるのでも、アクセスファンタズムが何らかの弱点を露わにさせることで通常攻撃が通るようになるのでも、風が吹くことで桶屋が儲かるのでも、どんな方法でもかまいません。ただし、皆様が超越魔獣の反撃を受けて『死亡』してしまうかどうかは、方法次第で違ってくるかもしれません。
アクセスファンタズムが未承認の方はそのままでは攻撃できませんが、弱点を露わにさせるアクセスファンタズムが使用された際に攻撃を手伝ったり、超越魔獣の攻撃からサクラメントや研究者たちのアバターをかばったり(多分死にますが)といった行動が状況に変化をもたらす可能性はあるでしょう。
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。特に本シナリオは、ちょっとでも油断するとぽんぽこ死にます。
……が、『死亡』した場合もキャラクターはロストしないのでご安心ください。アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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