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シナリオ詳細

再現性東京2010:魔法少女 VS 夜妖 VS 魔法少女(悪)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「そんな、どうして……!?」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)が緩く首を振る。そこには信じたくない――しかし信じないわけにはいかない光景が広がっていた。
「どうして――悪墜ちなんて!」
「『どうして』ですってぇ?」
 そう問い返したのはコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)(魔法少女の姿)である。
 もう一度言おう。魔法少女の姿である。
 何度だって言おう。魔法少女の姿である!!!
「そんなもの、決まっているだろう」
 続けたのはブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)(魔法少女の姿)である。
 彼女も魔法少女の姿である。
 まだ言うぞ。魔法少女の姿である!!!
「うふふ……私、第三期突入しちゃうわぁ」
 そんなことを呟いてヤケ酒かっくらっているのはへべれけ☆あ~りあことアーリア・スピリッツ(p3p004400)(魔法少女の姿)である。
 そろそろ言い飽きてきたし聞き飽きてきたと思う。皆魔法少女だよ。

 魔法少女とは正義の味方。時に可愛らしく時に強く子供達の憧れであり続ける存在である。そう、言わば世界を照らすお日様のようなものである。
 しかして今、この場の様相は少し異なっていた。セララと他3名は真っ向から向かい合う形で対峙していたのである。同じ魔法少女――否、そう考えるにしては3人の纏うオーラはあまりにも異質だ。
「セララちゃんも『こっち側』にくればいいじゃない。楽になれるわよぉ?」
「皆だって魔法少女になれたんだよ!? つまり、魔法少女としての心を持ってるってことなんだ!」
「知らないわよそんなこと!! この年でこんな格好……フフ、フ……!」
 セララの言葉にコルネリアは嗤う。それは凡そ『墜ちた者』らしい笑みで、セララはくっと小さく唇を噛んだ。
 何があって彼女たちが魔法少女から墜ちてしまったのか。けれど、悪墜ちしたから仲間を見捨てる? そんなの魔法少女じゃない!
 なんとしても彼女らを救わなければ――決意をより固くするセララの耳に、ヒトらしからぬ音が忍び込んでくる。
「オオオオ……オアアァァ……」
「あれは……夜妖!? さっき倒しきれてなかったんだ……!」
 迫ってくる複数体の黒いオーラ。それは意志をもってこちらへ向かってきているようだった。悪墜ち魔法少女たちと出くわす直前、あの夜妖を撃退していたセララだったが仲間を連れて戻ってきたらしい。
「魔法騎士セララがんばってー!」
「まけないでー!」
 後方から大人気映画『魔法少女セララ the MOVIE』を知る者たちの声が聞こえる。だが。
(いけない、このままじゃ一般の人たちが……!)
 セララは焦りの色を浮かべる。片や夜妖、片や悪墜ちした魔法少女たち。明らかに分が悪い。一般人を庇ったまま彼女たちを相手取ることができるだろうか?
 しかし、悪墜ち魔法少女たちは夜妖を一瞥するとふんと鼻を鳴らし、そちらへ武器を向けた。束の間ぽかんとしたセララにコルネリアが一瞥をくれる。
「一時休戦といこうじゃない」
 彼女たちにとっても夜妖は邪魔な存在であるらしい。いや、それどころか――一般人にだって危害を加えていない。悪に墜ちたように見せかけて、その心は変わらず魔法少女なのでは?
 何はともあれ、ここで味方に付いてくれると言うならば心強い。クラスカードを手にしたセララの耳に新たな乱入者の足音が飛び込んでくる。
 その、正体は――!

GMコメント

●成功条件
 魔法少女として活躍する(悪墜ちでもOK)
 夜妖を倒す

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。大丈夫です。遠慮なく与太りましょう。

●状況
 参加者の皆さんは正義か悪墜ちかお選びください。魔法少女からは逃げられないので諦めてください。リクエスト4名は以下の通り。敬称略。
正義:セララ
悪墜ち:ブレンダ、アーリア、コルネリア

 上記選択によって前提状況などが変化します。

・『正義』の場合
 セララさんに加勢しにきた魔法少女たちです。背中には未だパフォーマンスだと思っている一般人たちがいます。
 正義の魔法少女力で夜妖を倒し、悪墜ちした魔法少女たちを救ってあげましょう!
 本当に悪墜ちから救えるかどうかは双方のプレイング、あとノリや勢いで変わります。

・『悪墜ち』の場合
 悪墜ち3人組に加勢しに来た悪墜ち魔法少女たちです。やさぐれてたり悪をキメていたりしますが、一般人に手は出しません。その心根は変わらず魔法少女なのです。
 邪魔だとか気に入らないとか何かしら理由付けて夜妖をボコりましょう。
 悪墜ちから救われるかどうかはその場のノリと勢い、何よりプレイングで決まります。

●練達アイテム『マジカル☆ミラージュ』
 一部のイレギュラーズたちが大量入手し、他者へ押し付k配布したものです。今回の持ち込み者はセララさんかアーリアさんか……或いは他の何者かが……。
 効果は以下の通り。

・魔法少女のお着換えができ、武器もそれっぽいものになります。スキル発動の際も魔法少女っぽくなりますし。
・既に変身バンクやギフトなどで魔法少女になれる場合はちょっとゴージャスでスペシャルな感じになります。
・上記のいずれも装備やスキル、威力などはステータスシートが準拠されます。
・小さなマスコット的存在が1体まで『任意で』付属できます。これはファミリアーに近い存在であり、戦闘はできません。また主から離れることもできません。

●夜妖
・負のオーラ×10
 怨霊みたいなやつです。取りつかれると負の感情が増幅します……が、雑魚です。与太です。いいか、与太だぞ。真面目に戦闘プレなんて書くなよ!!!
 何となく魔法少女力高めて必殺技ぶっ放しておけば倒せます。

●ご挨拶
 愁と申します。魔法少女から逃げるな。
 OPからエネルギー尽きそうなので有り余るくらいパワーあるプレイングをお待ちしています。
 ご参加もお待ちしております。

  • 再現性東京2010:魔法少女 VS 夜妖 VS 魔法少女(悪)完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
※参加確定済み※
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
※参加確定済み※
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
※参加確定済み※
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※

リプレイ



「セララ君、助太刀に来たよっ!
 魔法少女ふわもこ☆アルム、ふわっと参上!!」

 『両手にふわもこ』アルム・カンフローレル(p3p007874)ことふわもこ☆アルムがウェーブのかかった銀髪を風へなびかせ、『魔法騎士』セララ(p3p000273)の横へ降り立つ。尚、180cm越えの長身かつ男性である。だがまあ身長は兎も角として、全く似合わないという風でもないのではないか。
 ふわふわキラキラの衣装を纏った彼は周囲の視線を気にする様子もなく、堂々とした立ち姿で――おっと頬が赤いな。羞恥か? それとも酩酊か?
 何はともあれ、セララ側に1人。しかし悪墜ち側にも加勢者が現れていた。

『さあ、目を閉じるのだわ』
『さあ、夢を始めるのだわ』

 それは彼自身にしか聞こえない、双子姫の言葉。『灰色の残火』グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)の両手首についた華奢な腕輪、その宝石が淡く光り始める。
『『あなたは誰より魔法少女なのだわ!』』
「ええ――ツインズフェアリーとまじかる☆グレイ、自らの使命を果たすのだわ!」
 目を開くグリジオ。傭兵として鍛えられたその体は純白無垢なシスターの衣装を纏う。
 悪墜ち魔法少女が増えたことに、今回の切欠を作り出した女――『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はうふふと笑みを漏らした。

 私、アーリア・スピリッツ。前回は大量流出したマジカル☆ミラージュで怪人ダスクを倒し、平穏な教師の日常に戻った――筈だったのに。
『魔法少女www』
 突如聞こえたその声にぎくりとしながら振り向けば、学園のあちこちに出回っていたのは前回の漫画に、aPhoneの壁紙!?
 心のパンドラを盛大に削った私はガード下でいつ手にしたのかもわからない、黒い焼酎を煽ったの。
 嗚呼、アルコールが喉を滑っていく感覚。これ美味しいお酒だわ――。

 ――と、こんな感じで悪墜ちしたのであった。今回で記念すべき第三期『魔法少女へべれけ☆あーりあ もう一軒』の始まりである!
 などとやけくそテロップを脳内で流しているが、悪墜ちの勢いのままにいくつか押し付kもらったマジカル☆ミラージュをやっぱり皆に押しt配布したのは彼女である。
(正義の魔法少女……貴女達は眩しすぎるのよ)
 具体的に言うと、夜通し飲んだ後の朝日くらいに。
「魔法少女、ぷりてぃ★みーな! 皆の願いに応えて今再び参上!」
 新たに現れた『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)、じゃなくてぷりてぃ★みーなは一見やる気なさげに見えるけれど、セララたちと共に戦う気満々で――。
(やだよ参上したくねーよ、つい最近やったばっかじゃねーかよ何でもう1回やるんだよ!!!)
 ――はないかもしれない。ふわふわで魅惑的な生足の目立つ衣装を纏った彼女は、見た目こそ若く可愛らしい女性であるがその実年齢は4桁を数えている。これからで最も悪墜ちの可能性があるかもしれない。
 それでも、こちら側に来ると言うのならば。それはすべからく求められた手を差し伸べたい者なのである。
(そう、剣の巫女として誰が為にと振るう刃が勤め。姿と衣装は問いません)
 雑念も悩みも、そして誰かの煩悩と苦悩は置いておくとして。
「魔法巫女少女、ブリーズ・ブレイド紗夜! 刃の煌めきと共に、邪悪を斬り祓います!」
 アレンジのきいた巫女装束を纏った『剣閃連歌』冷泉・紗夜(p3p007754)が悪墜ち魔法少女と夜妖と相対する。いつもと変わらぬ立ち姿のはずなのに、胸やら足やらへ目が行きやすいのは衣装か。衣装のせいか。
 何故ノースリーブで胸を強調するのか。
 何故ミニスカ袴にニーハイなのか。
「問うても判らぬ事は御座います故、ただ、ただ義と信念に基づいて刃を振るうのみ」
 自信に満ちた言葉である。例え身の内でどれだけ疑問に思っていても、それを出さなければ疑問などないと一緒だ。
「さあ行こう! 俺たちの力を合わせれば、悪に堕ちた彼女たちも、巻き込まれそうな一般市民たちも、絶対助けられるさ!」
「ねえ皆、正義の魔法少女だったあの頃を忘れちゃったの?」
 ふわもこ☆アルムに頷いたセララが悪墜ち魔法少女たちへ声を張る。返ってくるのはくすくすという笑い声だ。
「当然でしょう? 覚えてなんていないわよぉ」
「なら……思い出させてあげる!」
 その瞬間。まじかる☆グレイ以外の3人が「え?」と間の抜けた言葉を異口同音に発した。セララがすかさず取り出したのは何枚かの書類だ。
「そ、それは……?」
「これは皆が正義の魔法少女の時の報告書(リプレイ)だよ!」
 ひっと小さな悲鳴が悪墜ち魔法少女たちから上がる。そして更なる追撃。
「ボクが参加した依頼のは漫画版もあるから、イラストもばっちり! この場で読み上げて、活躍する姿を見せてあげればきっと正義を取り戻してくれるよね!」
 止める間もなく彼女からドリームシアターが展開される。瞬間的にその場へ以前の――へべれけ☆あーりあ第二期の光景が幻影で映し出される、が。
「待ちなさぁい!」
「わぁっ!? 駄目だよ、ちゃんと見てくれなきゃ!」
 へべれけ☆あーりあがセララを捕まえようとして集中力が切れ、幻影が掻き消えた。凛々しくも美しい正義のへべれけ☆あーりあと、彼女を応援する子供の声が霧散する。
「み、み、見る訳ないじゃない。今の私は悪の魔法少女、正義へ引き戻そうなんてそうはさせないんだから!」
「ハーッハッハッハッ!! そう、アタシたちは悪!! 正義なんざクソ喰らえなのだわ!!」
 へべれけ☆あーりあの言葉に『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)ことコルネ★アリアが嘲笑した。墜ちた者がそうやすやすと戻って溜まるものか!
「絶望を抱いたままアンタも堕ちるんだよセララァ!!」
「くっ……!」
 唇をかみしめるセララ。そこへ突如と乱入者が襲い掛かるが、まじかる☆グレイが容赦なくキラッキラな籠手で殴り飛ばして事なきを得た。
「そうだ、夜妖!」
「夜妖……? 仕方ねぇ、忌々しいが今は休戦ね」
 夜妖の1体を引き続き攻め立てるまじかる☆グレイ。あの勢いならば1人でもそこそこやれるだろうが、如何せん数がいるようだ。そして正義の魔法少女たちは1人きりに戦わせるなどできるはずもない。
『負の感情なら私たちの方が上なのだわ!』
『得意分野なら負けないのだわ!』
 双子姫がそう張り切っている声も聞こえるはずなく、一同から見ればまじかる☆グレイは孤軍奮闘なのだった。
「ボク達も加勢しよう! こうなったら正義の魔法少女たちが戦う姿で本来の心を燃え上がらせるんだ!」
 セララの言葉に頷く魔法少女たち。そこへ不意にブラック★ブレンダ――『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が呟いた。

「なんで私がこんなことを……そもそも、少女じゃないだろ」

「「「グハッッッッ!!!!!!」」」
 自分に向けた言葉が全方位へ火の粉を散らす。夜妖をフルボッコにしているまじかる☆グレイを除いた悪墜ち魔法少女たちは勿論ながら、正義側でも……ぷりてぃ★みーなの心に深く突き刺さったようだ。
 しかし時間は待っちゃくれない。ブリーズ・ブレイド紗夜は全力で夜妖へ切り込みにかかった。
「誰が為にと、夢と希望の為にその身を戦いに投じるが魔法少女の……巫女の務め!」
 ふわりと可憐に『ミニスカの』裾が膨らむ。見えるのは太腿に少し食い込んだニーハイからむっちりとして滑らかで艶やかな肌、もといふともも。快適な風がブリーズ・ブレイド紗夜の下方から優しく吹き上がり、見る者そそるチラリズムを発揮する。
 嗚呼、早く、終わってくれ!!
「我が名はブラック★ブレンダ。悪の魔法少女となりし者。貴様らも鞭の虜になるがいい」
 正義の魔法少女たちが一般人を背へ庇う中、悪墜ち魔法少女たちが敵を挑発する。しかし当のブラック★ブレンダは内心かなり焦っていた。
(く、口が勝手に! なんだこの名乗り口上は!)
 『敵』と呼べるものを前にして魔法少女たるスイッチが入ったか。しかしなんというか、悪役らしい台詞である。魔法少女の夢も希望もあったものではない。
(私より似合う者にやらせろ! こんなの、学園の関係者に見られたらどうするんだ――!!)
 心の叫びは、聞こえない。
「この子達は私の肴、貴方達に頂かれるわけにいかないのよぉ」
 へべれけ☆あーりあも割れた酒瓶(武器)を突き付けてにんまりと笑う。お楽しみを取られる訳にはいかないのだ。それは正義の魔法少女であっても夜妖だったとしても変わらない。
「おねーさんが、ぜぇんぶつまんじゃうんだから」
 くすり。笑みひとつ、傍に居た黒ひよこのマスコットをちょいと摘まむ。早くやけ酒したいわって思いを込めて。
「ぴぃっ」
 その鳴き声がどこか聞き覚えがあるような気がするのは、置いておいて。
 彼女は引き寄せた夜妖へ酒瓶を振りかぶり、食べたい肴を叫びながら振り下ろす。
「鮭とば! 枝豆! お刺身! 生ハム! アヒージョ! ナッツとチーズの盛り合わせぇ!!」
 ……こちらもブラック★ブレンダとは違う意味で魔法少女らしくない。
 しかし悪墜ち魔法少女が前線へ出てくれたこともあって正義の魔法少女たちは一般人を庇いながら戦いやすくなった。セララフィールドを展開させたセララは聖剣を手に駆け出す。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!
 皆の応援がボクたちの力になるよ、いっぱい応援してね!」
 前方へ名乗り上げることも、後方へアピールすることも忘れない。大人気映画に出る魔法少女セララの生身の姿に一般人たちが沸き立った。
「回復は俺に任せて!」
 アルムはそう告げ、前線へ赴くとへべれけ☆あーりあとブラック★ブレンダの近くで天使の羽根を舞わせる。触れた癒しの力にブラック★ブレンダは視線を向けた。
「どういうつもりだ……?」
「人々を守る愛の力に、正義も悪も関係ない。俺はみんなを助けるよ!」
「ああやだ、眩しいったら」
 嫌がる素振りを見せるへべれけ☆あーりあだが、そこから離れる様子はない。もらえるものはもらっておこう、とでも言うのか。
「私の歌をき……聞かなくてもいいや。むしろそのほうが有り難いかもしれない」
 そう呟いたぷりてぃ★みーなは魔力を流行りの歌へ乗せ、冷たい呪いを夜妖たちへと齎す。その声も、魔法少女へのなりきり――というか魔法少女なんだけど――もクオリティは高く。彼女が残して欲しくないのはどっちかというと声より姿の方であった。齢4桁のフリフリ少女チックな衣装。一般人たちがミーナの年齢を知らないのが救いである。
「天より流れる極光よ、友を傷付けし我等の敵に矢と成りて地を穿て! マジカル★スウォーム!」
 コルネ★アリアの詠唱、からの技名と共に煌めく光の矢が空より来る。……本当は詠唱なんていらない。技名を唱えればいいだけなのだが、素直にマスコットの言うことを信じたコルネリアは不眠でこの詠唱をうんうんと悩みつつ考えたそうな。
 故に、その事実を知ればこの反応も当然で。
「え? 詠唱が要らな……あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 愕然としたコルネ★アリアがその場へ崩れ落ちる。夜妖が追い打ちをかけるようにぺしぺしと黒い塊を投げつけてきたが、その攻撃は不気味な笑い声で止まった。
「ふ、ふふふふふ……こぉんのくそがぁぁぁ!!! これ以上怖いモンなんてあるかぁ!! 全て破壊し尽くしてやるわぁ!!!」
 怒りに燃えたその瞳が夜妖を映す。ねえほらここにいいサンドバッグがあるじゃないの。
「そうなのだわ! 魔法少女だからってキラキラ輝かしい面だけだなんて思わないで欲しいのだわ!!」
 野太い声で悪の魔法少女を力説するまじかる☆グレイの右ストレートが夜妖を消滅させる。きゃらきゃらと笑う双子姫の声を聞きながら――認識している華はさておいて――まじかる☆グレイは次の標的を見定める。
 しかし。
「きゃっ」
 不意の攻撃にまじかる☆グレイは悲鳴を上げた。一応述べておくがここだけ可愛いなんてことはない。ここまでも台詞もここからの台詞もあのイケボを思い出しながらご覧ください。姿は心の目で見ればどうにかなる、かもしれない。
「さあ、この鞭の味を知れ!」
 ブラック★ブレンダの武器がしなる。動きを止めるような鋭いそれに込められたのは、この状況に対するただの八つ当たりだったりするのだが……まあ、倒さなければいけない存在には変わりあるまい。
「神秘を込めし言の葉よ、邪を祓いし力でかの者へ満たせ! マジカル★AKUヒール!」
 コルネ★アリアの声が仲間を癒し、士気を上げる。うろちょろとする夜妖はそこそこ手ごわいが、あともう少しだ。
「あ、危ないっ!」
 セララが唐突に駆けだす。皆を回復していたふわもこ☆アルムは目を瞬かせ、遅れて襲い掛かってくる敵の存在を認識した。
 回避? 間に合わない。
 セララが庇う? それも同じく。
 ぎゅっと思わず目をつぶったアルムは、不意にふわりと酒精の香りを感じた。

「――まだまだ甘いわねぇ。まったく……おねーさんがいないとダメなんだから」

「アーリア君!」
 肩越しに微笑んだへべれけ☆アーリアは懐から取り出した透明なカップ酒を煽る。髪へ浮かんでいた黒は失せ、憑き物が落ちたような表情で。
「さあ、そろそろおイタはお終い。もう暴れちゃ『ダメ』よ?」
 正義へ転じたへべれけ☆アーリアの言葉が魔力を帯び、ハート上の鎖となって夜妖を拘束する。今よ、という言葉にぷりてぃ★みーなのアンコール曲が響き、それを耳にしながら紗夜が動いた。
「見たモノは全て敵。邪念抱けば全て斬る……ただそれのみ」
 ふわりと風が靡く。主に、下の方から。嗚呼、この風があくも煩悩も吹き散らしてくれたならいいのに!
「ボクも行くよ! ギガセララ――ブレイク!!」
「輝け、光の翼よ……! 正義に愛を、悪に裁きを。明日へ続く光を羽ばたかせん――光翼乱破!!」
 辺り一面が光に包まれる。やがて戻ってきた景色に夜妖の姿はない。
(……ああ、幾ら嫌だとわかっていても)
 くるりと振り返るぷりてぃ★みーな。そこには一般人、もとい純粋無垢な子供達がいるわけで。大人ならばちゃんと『らしい』対応をするべきで。
(それをやっちまうのが悲しい性って奴なんだよなぁ)
「みんなー、応援ありがとう! 悪者はやっつけたよー!」
 自分の声をどこか遠くに聞きながら、ぷりてぃ★みーなは思ったのだった。

 どうか忘れて。未来永劫思い出さないでくれ、と。



「あー……終わったわねぇ。さ、今日もキツめのお酒を飲みましょ」
 アーリアは視線を明後日へ向けながらそう呟く。何のお酒がいいだろうか。ちょっと高めのお酒でパーッといってしまおうか。
 しかし。
「できたー! 今回の漫画だよ!」
 セララのはしゃいだ声に動きを止めたアーリアは、ぎぎ、と音のしそうな動きで振り返る。セララが手しているそれは、それは――ミラクルコミック!
「せ、セララちゃーん? それを、ええと、どうするつもりなのかしらぁ?」
「え? 勿論、街の皆に配るんだよ! これでファンがいっぱい増えるはずだよ!」
 無邪気なセララの笑み。しかし今回の切欠を思えばどうにか流出を止めたいところである。
 ――まだアーリアは気づいていない。切欠を思えば、ここで流出を止めたとて手遅れなのだということに。
「これで魔法少女がもっと増やして、混沌世界を正義の魔法少女でいっぱいにするのだ。えいえいおー!」
「あー……えっとぉ……」
 どう説得したものか。悩む背後でグリジオとアルムが正気付く。
「「はっ」」
「俺は……」
「俺達は今、一体何を……?」
 なんか近くに居たので思わず顔を見合わせる。わからない。なんか誘われて酒を飲んでいたような気もするのだが、飲み過ぎたのだろうか。そしてどうしてこんな場所にいるのだろうか。
 困惑する2人の間で、双子姫たちは楽し気に笑った。
 さて、悪墜ちしたままのブレンダはと言えば、ミーナからの説得によりすんなり正義へ戻ってきた。元はと言えばアラサー前にして魔法少女なんてやらされたからやさぐれていただけなのである。この説得でミーナがセルフダメージを負っていたりもしたものの、『マギカ☆ブレンダ』となったブレンダはふりふり衣装に赤面した。
「なっなんだこれは……これで魔法少女? いやこれが魔法少女!?」
「そうだよ」
「――もうやらんぞ!!!!」
 決意を固めるブレンダ。その腕に怪我を目ざとく見つけたコルネ★アリアが手当てをする。帰宅後の経過観察を念押しする甲斐甲斐しさである。
 が、こほんと咳ばらいをした彼女は一同を冷めた目で見た。そう、彼女だけ悪墜ちからは戻らなかったのである。
「これで勝ったと思わない事ね、光ある所にAKUありき! 次こそはアンタ達全員悪堕ちさせてみせるのだわ!」
 その言葉に気を引きしめる一同。そうだ、次は彼女を救ってやらねば。しかし自らのマスコットへ声をかけるコルネリアは尚去り台詞を続けるのかと思いきや、
「帰るわよ、タイムセールに間に合わなくなるじゃないの! 鶏挽肉安いのよ!」
「「……」」
 すごく平和そのものな台詞で。一同は思ったのだ。

 ――彼女、あの感じが素なだけで悪でもなんでもないのでは?

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯
天之空・ミーナ(p3p005003)[重傷]
貴女達の為に
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)[重傷]
慈悪の天秤

あとがき

 お疲れさまでした、魔法少女たち。
 悪が世に蔓延る限り、魔法少女は不滅です。それを忘れず、明日からも魔法少女としていそしんでくださいね。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

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