PandoraPartyProject

シナリオ詳細

白紙の頁に、君を綴る

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 重い木の扉の先、客が一人だけのバー。
 仄かに暗い店内は、壁際に備え付けられた橙色のランプが淡く灯るのみ。
 木目のカウンターにはただ一人、異質な真白の客が居た。ラサの旅人を思わせるゆったりとした衣服は、それでいて色彩鮮やかなラサの衣装とは遠く。真白な髪と服の青年は、黄金の瞳を細めると、小さく「グラスホッパーを」と呟いた。
 バーテンすら不在なはずのそのカウンターには、瞬き一つの内にくすんだグリーンのカクテルグラスが現れる。
 鼻をくすぐるミントの香りと、底に漂う甘さを味わう青年――ゼロが思い返すのは、四人の旅人との出会い。

「君はどうして戦うんだい?」

 そう聞けば、人を守りたいと言った女子高生が居た。
 幸せになる為だと言った悪魔が居た。
 仕事であり、呪いだと言った浪人が居た。
 友と過ごす日々を守りたいと言った少女が居た。
 もっともっと、彼らを知りたい。彼らの物語を聞きたい。
 その欲が尽きないならば――もっと、問うてみようではないか。


「ねぇ、少し時間ある?」
 境界図書館へと得意運命座標が訪れたのは、目ぼしい冒険を見つけにか、単に本を読みに来たか、それとも気まぐれにか。
 理由はともあれ、案内人であるシーニィ・ズィーニィの問いに肯定を返せば「丁度良かった」と彼女は手招きをし、書架の片隅の椅子へと腰掛けた。
 どん、と鈍い音を立てて机に置かれたのは、一冊の真白な革張りの分厚い本。殴れば必殺効果でも付きかねないそれを開くと――開いた頁に、今まさに文字が走っている。
「この本の中に居るのは『ゼロ』って男。彼はね、いつも小さなバーで来客を待っているの」
 その酒に付き合えばいいのか、それとも何か無理難題でも吹っ掛けられるのかと思えば――シーニィ曰く、自分たちはただ彼と会話をすればいいのだと。
「彼はね、色んな世界の、色んな『ヒト』の話を聞くのが好きみたいで」
 前にこの図書館より訪れた四人と過ごした時間が、それはそれは気に入ったらしく、こうしてまた客を招いているようだ。
「安心して、彼の口は堅いみたいだから。普段中々貴方達も大変でしょ? なんでも抱え込み過ぎないで、たまには見知らぬ人に気楽にあれこれ零していいんじゃないかしら」
 出されるドリンクも結構美味しいらしいしね。そう付け加えると、シーニィは得意運命座標を送り出した。

NMコメント

 あっという間に二月ですね。飯酒盃おさけです。
 拙作『What for?』にて皆さんのお話を聞いたゼロが、皆さんからもっとお話を聞きたいようです。
 駆け出しの貴方も、この何年かで沢山のものを抱えた貴方も。
 ゼロとのお話にお付き合い頂ければ幸いです。

●目標
 ゼロと会話をすること

●舞台
 カウンター席だけの小さなバー。
 バーテン不在ですが、ドリンクを頼むといつの間にか目の前にドリンクが現れています。
 ご注文は如何様にでも。おまかせなら貴方らしいもの、が出てくるかもしれませんね。
 お代は面白い話を聞かせてくれたお礼に、とゼロが支払ってくれるようです。
 ただし未成年の飲酒は禁止です。Unknownの方は自己申告でどうぞ。

●ゼロ
 白髪に金の瞳をした青年。
 全てであり、なんでもないもの――と自称しています。
 ここから出ることはできないようですが、何故か皆さんのことをよく知っています。
 掴みどころのない発言をしますが、どんな悪であろうと皆さんの否定をすることはないでしょう。

●話すこと
 A.どうして戦うのか
 B.平和になったら、元の世界に帰りたいか(旅人向け)

 上記2種類から選択し、自由に語ってみてください。
 理由や生い立ち、思い出深い依頼や、混沌で過ごす中での変化。
 こうなりたいという目標、やりたいことでも構いません。
 参照リプレイ、SSがあればタイトル記載やURL末尾の番号等でご指定ください。
 描写量の都合上、沢山羅列してしまうと薄味になりかねないのでいくつかに絞ることをおすすめします。

●ラリーシナリオについて
・このラリーシナリオは一章完結です。
 2/15を目安に、件数問わずその日以降に執筆が途切れ次第完結予定です。
 完結までは積極的に執筆していきますので、お気軽にどうぞ。

・一回のプレイングでA、Bどちらかの描写となります。
 もしどちらにも参加したいという方は、お手数ですが二回参加をお願いします。
 一回目のプレイング内に★印を記載頂ければ、リプレイ返却時点でプレイングが途切れても2-3日間は完結せずに残しておきますね。
 勿論、その後参加取りやめもお気になさらず。

・本シナリオは基本的にはソロ描写となります。
 同行者がいる方は【】やID等記載してください。

・非参加者PC・NPCに関するプレイングの場合、リプレイでは原則的に名前をぼかしての描写となりますのでご了承ください。

●サンプルプレイング
 B
 元の世界に戻るか? 絶対お断りだね。
 オレはあんなスラムなんて御免だよ。幻想のスラムなんてかわいいもんだ。
 それにこっちに来て友達も増えたしな、もう帰るつもりはない。
 こっちでかわいいお嫁さん見つけてのんびり暮らしてーなー。

 それでは、ご参加お待ちしております。

  • 白紙の頁に、君を綴る完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月23日 20時50分
  • 章数1章
  • 総採用数22人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

天之空・ミーナ(p3p005003)
黒花の希望

「なんで戦うのかって、か」
『蒼穹の戦神』天之空・ミーナ(p3p005003)の爪先は、高椅子の足置きにすら届かず――ふらふらと揺らし、「まあ」と小さく前置きして語り出す。
「色々あるさ。こっちの世界で出会った奴らを護る為、単純に相手が気に入らないから」
「随分と血気盛んだね?」
「そっちはほとんどやらないさ。めんどくさいし」
 揶揄するゼロの問いを軽く否定し、カクテルに浮かぶ紅いチェリーを摘まむ。身を食み種だけを出すと、口の中で茎を遊ばせ――結ばれたそれを吐き出した。
 グラスに残る実は三つ。食べたのは一つ。同じ数――四人の愛しい『お嫁さん』を護るのだと。
「うん、愛は美しい。けれど、君がまだ僕に語ってない愛もあるだろう?」
 真白き男は、紅き女のこころの源を知りたいのだと笑う。弧を描いていたミーナの唇は、美しさに似合わぬほど歪み――溜息と共に零されたのは、かつて喪った伴侶のこと。
 神に命を奪われた男にひとり残された哀れな女は、全てを破壊せんと暴れ――ただの女は地に墜ち、そして死の国の姫に『死神』とされて。
「ま。そんでもって色々あって、うん……ようは、殺しちまった人への罪滅ぼしさ」
 伴侶を、そして死を喪った女が出来る自己満足なのだと。
「そういうこと。オッケー?」
 そう笑えば、ゼロも楽し気に「充分だ」と返し――
「ところで、これはどうやったんだい?」
 きつく結ばれたチェリーの茎を、指差すのだった。

成否

成功


第1章 第2節

オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
同一奇譚

「Nyahaha――実に『趣味が好い』店だ」
 ゼロが『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)へ振舞ったのは、金魚鉢を満たすホイップクリーム。甘味の暴力たるソレは、時折『何か』が空気を求め浮いてきて――そんな冒涜的な光景すら、二人は気にすることなく談笑を続ける。
「元の世界に戻りたいか。愛しい彼奴を思えば帰りたくない」
 愛しい緑の瞳。冷たい鉄仮面。その下の温かい血肉――あの存在を手放すはずもない。けれど、オラボナには解っている。
「しかし、我が身は永遠に文字列・インクの蠕動だ」
嗚呼、ならば場を整えるように首を捻るべきだ。グロテスクにも何時かは蓋を開ける時がくるのだと――無いはずの脳が沸騰する。
「我等『※※』の元の世界とはつまり、我等『※※』そのもので在る」
「成程、君に感じた違和感は『※※』だからか」
「左様。故に、今一度その地に足をつけろと命じられたとして――」

『※※』は。
 わたしは。
 存在するのだろうか。

 さて、とオラボナは前置きし問う。
「私が世界なのか、世界が私なのか――教えてくれ給えよ、『何でもない』貴様」
 始まりと終わりの一直線など有り得ず、枝分かれの産物でしかない奇譚は――幾度でも捲られる。
「そうだね、それは君が一番知っているだろう? そんなの――」

 瞬間、壁の橙の灯が、ぷつりと消える。
 後に残ったのは、何も見えない暗闇で――

 ――水掛け論が大好きな貴様等め。

成否

成功


第1章 第3節

シルヴェストル=ロラン(p3p008123)
デイウォーカー

 『デイウォーカー』シルヴェストル=ロラン(p3p008123)が深い紅のワインを喉に流す。
 碧き瞳をすっと細め、愛おし気に、慈しむようにグラスの中の紅を見つめるその姿は――此処が賑わった酒場ならば、光に誘われる虫のように女達が群がっていただろう。
 ゼロの「帰りたいか」の問いに、シルヴェストルは「はは」と乾いた笑いを返し――否定する。
「心残りはあるけれど、帰るのは御免だね」
「おや。よっぽど今の場所が心地好いのかい?」
 それもあるけれど、とシルヴェストルが語るのは『お尋ね者』の過去。
 何処までも貪欲に知識を求め、世界の果てる瞬間を見たいと願った男は、人であることを捨てた。
「大変なんだよ、顔も姿も覚えられてしまったし、よりにもとって聖騎士とかいう鬱陶しい連中に目を付けられて!」
 ただ力を貸してやっただけなのに、と唇を尖らせ拗ねたシルヴェストルに、ゼロも「それは気の毒だ」と笑う。きっとこの男はシルヴェストルのしでかしたことを知って尚、気の毒だと笑うのだ。
「それにね」
 シルヴェストルはもしも、と前置いて語る。
 杭を打たれ灰となるのを救ってくれた、混沌という愛しき世界の為真面目に働いてはいるが――
 もしも、混沌が滅びを迎えるとしたら。
「狂ってしまいそうなほど心が踊る、素晴らしいモノが拝めそうだろう?」
 この話は止めよう、と温和に笑い喉を潤すシルヴェストルの瞳は――グラスの中身と同じ色だった。

成否

成功


第1章 第4節

白夜 希(p3p009099)
神は許さなくても私が許す

 グラスの中で融け始めてしばらく経った氷が、白夜 希(p3p009099)の手元の琥珀をゆるりと薄めていく。
 実の所、希は融けて薄まるのを待つ程酒に弱いわけでなく、むしろ酒豪の域にいるが――ゆっくりと甘やかな梅酒で唇を軽く湿らせる。
「帰る場所は、ない」
 正確には、帰りたい場所がないのだと付け足す。
「どうして? 嫌な思い出でも?」
「……多分、もう全部なくなったから」

 今は何度目の旅だろうか。もう、両の指を何回折ったって覚えていない。
 此処ならば、と居場所を探した。
 旅の中で沢山の人に触れて、出逢って、別れて。
 そうして旅人は、何時の間にか迷子になった。
 どれ程時間が経ったかも忘れ果て、戻りたいと思っても戻れない。

「それに」
 乾く喉を、もう一度梅酒で潤し――希は続ける。
 世界というのは人間で、人が居ればそこにその人の世界が生まれるのだと。
「でもね、私が居てもいい世界はあまりなかったってだけ……居て欲しいと求められることがあまりなかった、というべきかな」
 それはこの世界でも変わらない。だから、自由に出ていけるならそれもいい。
 けれど、希望を抱いてしまう。
「私の旅も、そろそろ終わりが欲しいな、って」 
「旅を出来ない僕には、羨ましすぎる話だ――ああ、君がいつか旅を終わりにしたくなったら、此処を選ぶといい」
 出せる物はお酒位しかないけれど――そう力なく笑って、ゼロは希へ暖かい梅酒を差し出した。

成否

成功


第1章 第5節

黒影 鬼灯(p3p007949)
零れぬ希望

『鬼灯くん! 見て見て、とっても綺麗よ!』
「ああ、章殿。君の召し物と同じ」
『これは鬼灯くんの瞳の色!』
「ふふ、仲睦まじいことだ」
 小さなレディが届くように、とゼロが差し出したクッションを膝上に挟み、『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)がその腕に抱いた『お嫁さん』と掛け合う声が、店内にからからと響く。
「どうして戦うのか――そうだな、俺が欲深いからだな」
「欲? 地位や名誉、金でも手に入れたいのかい?」
 鬼灯はそれを否定し――唯一表情が読み取れるその目元に、燃ゆる炎を灯す。
「俺には護りたいものが沢山あるのだ」
 この腕に抱く章殿も、十二の月の名を冠し自らを頭領と慕う暦も、共に笑い合った友も。
「それに、俺はもう護るべき『里』の主となったからな」
 男たるもの、一国一城の主となれば――故に俺は戦うのだと、息を吐く。
「君は――うん、随分と抱えているものが多そうだ」
「そうだな。何度も死にかけ、章殿を怖い目に合わせ、多くの命を傷つけ奪ってきたが……」
 それでも、闇を纏い、黒き影に潜み――鬼となり糸を操り、護るべきものに光を灯す。
 それが太平の世を作るのだと、鬼灯は信じている。
「だが、章殿は優しい方だ。これ以上辛い思いをさせる前に何方かに預けた方がいいかもしれんな」
 そう零せば、ぺちんと腕が叩かれる。
『嫌よ、私も着いていくのだわ! 奥さんだもの』
 その優しく強い言葉には――全く、勝てやしない。

成否

成功


第1章 第6節

シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

 まだお酒飲めないんだよねぇ、と眉を下げ笑う『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)にゼロが差し出したのは蒼と、白が二層に重なるノンアルコールカクテル。
「きれいだねぇ、名前は?」
「何だろう? 君を見たら思いついた」
 そう返すゼロは、透き通った青緑のカクテルを飲んでいる。
「元の世界に帰りたいか、って話だよねぇ……結論から言うと、わたしは帰らなくていいかなぁ」
 わたしね、とシルキィが愛おしげに紡いでいくのは思い出の糸。
 ただのカイコガだった彼女は――混沌という世界で、沢山のものを貰ったのだと。
 だから、もしも叶うのならば……このままずっと、混沌の中で。
 
 今を生きる友達が居る。せんせい、と慕う生徒だって出来た。
 夏の日差し、汐風、真白なわたしと、真逆の真っ黒なキミ。再開の約束をした。
 月明かりみたいにあたたかくて、力になると誓ったあの子。

「たとえ遠く離れてしまっても、絆は消えないものだけれど」
 真白な水晶を指先でつつけば、声が聞こえそうで。けれど、やっぱり――傍にいて、言葉を交わせるのなら。
「支え合うことができるのなら、それが一番だと思うんだぁ」
「そう、そうか――ありがとう。十分すぎる。そうだ、お酒が飲めるようになったらまたおいで」
 これを君に飲んで欲しいんだ。
 ゼロが指さしたグラスに入るのは、テネシー・クーラー。
 付けられたカクテル言葉は――「あの日の約束」。

成否

成功


第1章 第7節

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

「へっ、どうして闘うかって?」
 ジョッキに並々と注がれた茶色のそれ――恐らくはチョコレート味のプロテインだろう――を軽く飲み干すと、口元を拳で拭い『新たな可能性』郷田 京(p3p009529)がゼロの問いに目を丸くする。
「別にアタシ、誰より強くなりたいとか、そういうんじゃないんだよねー」
「それは意外だ。君は鍛錬を欠かさない武人のように見えていたから」
「いやいや、鍛えるのとか面倒だし!」
 京がうんと伸ばした腕は、貧弱なゼロのそれなら片手で捻れそうで。椅子から投げ出される脚も、しなやかに鍛えられている。けれど、京のそれは天賦の才が授けたもの。
 故に、華の女子高生である京が思い描くは見知った顔たち。。
 暑苦しいのはアニキ――無冠の拳帝であり、混沌で尚最強を求める男や、いっちゃってる人たちがやればいいのだと。だから、京は思う。
「ほら……たとえばあなたがさ、見過ごせない悲劇とか、悪党とか、理不尽とかに出くわしたとするでしょ?
 そんな時に無力な自分じゃいたくないから、アタシは空手やってたの」
 だってさ、そうじゃなきゃムカつくあんちきしょうをぶっ飛ばせないじゃない――身体を前へと倒すとカウンターに拳を打ち付け、京はにぃ、と笑ってみせた。
「あれ、これ答えになってる?」
 要するに、納得いかないから戦うのさ、アタシは!
 そう笑い二杯目を要求する京を、どう護衛として口説き落とすか考えていたゼロだった――

成否

成功


第1章 第8節

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
謡うナーサリーライム

「ごきげんよう、ゼロ」
『妖精の祝杯』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)がとスカートを摘まみ恭しく一礼する。
「ごきげんよう、素敵なお嬢さん」
「ワタシは鹿のポシェティケト。こちらは相棒の――ほら、クララシュシュルカ、ご挨拶してちょうだいな」
 外套からひょっこりと顔を出した金色の妖精は、真似して一礼をしかけバランスを崩し、ころんと外套の中に逆戻り。真白な二人はふ、と同時に吹き出した。
 つい最近はじめてお酒を飲んだ――そんな彼女に出されたのは、シンプルで、丁寧に作られたジントニック。
 ポシェティケトはそっと話し出す。
 最初はただ生きていただけ、けれど今は。
「最後まで立っていたいから、って思うの」
 だってね、と口を尖らせ――それでいて、たっぷりの愛を込め話すのは『頑張り屋さん』な仲良しのあの子のこと。いの一番に駆け出し、おやすみなさいと告げる彼女。
「あの子、時々たくさん怪我をしていてね」
 でも、友達には怪我をしてほしくなくて。だから、隣で立ち続けて手を差し伸べ、頼ってもらえるように。それは、国も世界も関係ない、鹿の願いなの、と。
「……うふふ、秘密よう」
「勿論。それじゃあこれは僕からのお礼に――君のグラスに、魔法をかけよう」
 ぱちり、とポシェティケトが瞬きひとつ。グラスのジントニックには、薄切りのキュウリが浮かんでいて。
 こんなカクテルもあるんだよ――そう、ゼロは笑っていた。

成否

成功


第1章 第9節

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
汚い魔法少女

「なんで戦うかなんて、そんなの人を傷つけたり、殺したりするためよ」
 それ以外ある? と、『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)はゼロの問いに即答する。
 それはまるで、愛らしい少女が甘いスイーツが好きな理由を問われ「そんなの美味しいからに決まっているじゃない」なんて答えるように。
「そうか。ああ、うん、そうだ。君みたいな可愛らしい子の口からは可愛らしい言葉が出る、なんて決まっていないからね――面白い、もっと聞かせてくれないか」
「別に面白いことなんてないわよ。わたしは元の世界では特別だったから、逆らう奴を痛めつけて、気に入らない奴をボロボロにして、邪魔な奴を排除してたんだけど」
 わたしの欲しかった髪飾りを持ってたあの子も、指図なんてしようとした大人も――最初はただそれだけだった。けれどメリーは、気が付けばその手段こそが目的になっていて。
「そうしてる内に、痛めつけたり殺すこと自体が楽しくなってきたのよね。
 だから今は逆らわない奴も痛めつけるし、邪魔じゃ無ない奴も殺すわ」
 だって、楽しいんだもの――溶けたバニラアイスが浮かぶフロートを、ぐるぐるとストローで掻き混ぜる。
「それなら君にとって、人を殺しても世界を救える世界は最高かい?」
「それが微妙なのよね。この世界は殺しにくい人が沢山いるんだもの」
 メリーはといえば、今度こそ子供らしく――弱い奴がいいわ、と頬を膨らませた。

成否

成功


第1章 第10節

モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Meteora Barista

「おや、従業員は募集していないのだけれど――失礼。お客様か」
「今日は飲みたい気分でね。何かロックで任せるよ」
『Stella Cadente』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)も、今宵この場所では一人の客にすぎない。
 ロックグラスの中は、丸い氷と透明の液体。ふむ、と手に取りモカが香りを嗅げば――ほんの少し、香草のフレーバーが鼻を突く。
「フレーバード・ウォッカかな」
「命の水さ」
 お気に召して頂けたようで何よりだよ、とゼロは満足気に笑みを零す。
「元の世界に帰りたいかって? ……お断りだね」
 何せ帰った所で、組織と警察両方から追われる身だ――そう語るモカは、数多の『仕事』を追憶する。
「あの世界に戻ったって、こうしてゆっくりお酒も飲めやしない」
 モカがグラスの向こうに見るは、愛しい箱庭。
 旅人達が集う再現性東京――学園で気まぐれに講師をし、その帰りに寄り道し、良き食と酒を楽しむ。その位が気が紛れ、丁度いいのだと。
「それに、私には夢がある」
「どんな?」
「Stella Biancaという店を混沌各国に出店して、大往生することだ」
 傭兵の集うあの国でも、緑に囲まれたあの国でも、もっともっと。
 そうして最期は、できれば戦場以外で――そう夢を語るモカ。
「いつか、君の作った一杯を飲ませてもらいたいね」
「ああ、お客様はいつでもお待ちしているよ」
 店の名刺を滑らせて――モカは「お代わりを」と呟いた。

成否

成功


第1章 第11節

ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯

「まあ、まあ……こんにちは、まっしろな方」
 ふかふかの尻尾をゆらりと揺らし『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)はゼロの隣の椅子へと腰掛ける。
「おいしいの、お任せで頼みますわ」
『お酒がいくらでも飲める』なんて素敵な世界を紹介されて――いえいえ、けれど勿論お話をすることだって忘れていませんとも。
 真っ青で甘酸っぱいカクテルを飲みながら、ゼロに問われた「どうして戦うのか」の答えをぽつぽつと話し出す。
「わたし、実は戦うお仕事はほとんど参加していなくて」
 修道院のお手伝いとか、魔法を子供たちに見せるとか。そういうお仕事ばかりでしたわ、と。
「それは……戦うのが苦手とか?」
「いえ、わたしのおししょーさまから言われているからですわ」
 大魔女様と、ゾーンブルクの魔女のお師匠様。ミディーセラにとってすべて『だった』人が、そう言ったから。
「……ちょっと前までなら、それだけでしたねえ」
 けれど、と――グラスに添えられた果汁を、青のそれに流し。紫に変わった水面を、慈しむように眺める。
「待っていてほしい、って言われたんですもの」
 大切な理由。大事なひと。帰ってくる場所。
「『おかえりなさい』って、守らなきゃいけないんですもの」
「――それはとても大事な戦いだね」
「ええ、とっても。ほらほら、じゃあもっと飲みましょう?」
 お酒がぜんぶなくなってしまうかもしれませんわ――なんてね。

成否

成功


第1章 第12節

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
月夜に吠える

「……あ゛ぁ?」
 瞬き一つの間に転送された『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は、その光景に胡乱な声を零す。初めての境界世界、ただ話だけすればいいというのは楽だが――ただで聞かせるのも癪に障る。
「酒の一杯くらい奢れよ」
「勿論、それがお代さ。何がいい?」
 自分と真逆の色をしたゼロという男は、口調すら自分と真逆で。酒ならなんでもいい、と告げれば、ウィスキーにアマレットの甘い香りが混じった一杯が振舞われる。
 香りに反して度の高いそれを、ルナは淡々と飲み進めた。
「……旅人ってのはいいよな」
 酒の合間に零れるは、別の世界から来たという旅人達へのほんの恨み事。
「君は、混沌で生まれ育ったのだっけ」
「ああ。旅人はてめぇを知ってる奴のいねぇ世界で、しかも自由を保障されてよ。
 しかも行動は全て『運命』様が肯定してくださるってんだ。殺しまくろうが、盗みまくろうが、何しようが帰ったらそれで終わり。知ってる奴はいねぇ」
 じゃあ、俺たち純種はどうなんだ――吐き捨て、グラスを握る手に、強く力が籠る。
「生きてきた世界で、普通に過ごしてたら突然『特異だ』『運命だ』なんてよ」
 特異故に『異質』と忌まれ、排除され。やがて、ルナは群れを離れ――こうして運命に選ばれてしまった。
「少なくとも、俺ァ、群れに帰るつもりはねぇな」
 見つめるのは、過去か、未来か。運命への燻った感情を――ルナは琥珀で流し込んだ。

成否

成功


第1章 第13節

ヴェルグリーズ(p3p008566)
全てを断つ剣

『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)に出されたのは、淡いイエローグリーンのショートカクテル。
「俺は元々戦うための『武器』だからね」
 だから、どうして戦うのかなんて質問自体の答えにはならないかもしれないけど――そう困ったように笑うヴェルグリーズ。
「それでも、『君』の理由はあるだろう?」
「……そうだね、強いて言うなら。生きる為、かな」
 俺を握った人――主人達は、大抵そうだったなあ、とヴェルグリーズは遠い記憶を呼び起こす。生きたいように生き、力を得る為に振るわれ。武器を握る理由なんて、それ以上でも、それ以下でもないのだろう。

 舞姫と貴族の痴情の縺れで、腹を切り裂いた。
 呼び声に『応えてしまった』女に置いて行かれた。
 次の主は俺を楽しげに手入れしてくれたというのに――その女の手で、俺が命を奪った。
 長い旅の終わり、呪いを断ち切った。
 人ではなく、肉や野菜を切った事もあった。
 ――ああ、本当に。沢山の主人が、俺を握っていた。

「そうか。君には沢山の想いと、願いが込められているんだね」
 長い過去を、ゼロは味わうように酒と堪能する。
「俺自身も……そうだね、俺に最初に込められた想いは、戦いとは関係ない願いだったけど」
 最初の主人。ヴェルグリーズを形作った、一人の騎士と、一人の姫が言った言葉。
「愛している」と。
「生きろ」と。
 その言葉を胸に、今日も戦うのだと――ギムレットを飲み干した。

成否

成功


第1章 第14節

ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
竜撃

「戦う理由、ねえ……」
 琥珀の中で溶けていく角砂糖をマドラーで突き、『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が杯を煽る。ほろ苦さと甘さが混じるそれ――オールドファッションドが、身体を廻る。
「悪い、正直言って考えたこともねえな」
 傭兵の家に生まれた。戦う事は仕事であり、生きる手段そのものだった。
 ――別に理由なんて、と思ってきた。
「ただ……そうだな」
「何か変化でも?」
「ああ、まあ。イレギュラーズとして活動してる意味って事ならあるのかも知れねえ」
 世界が滅びるのが困る。勿論それはあるが――ルカは「笑うなよ?」と釘を刺して。
「物語の英雄になったみてえで、嬉しかったんだよな」
 ラサの太陽よりずっと熱く燃える赤の瞳は、夢を語る様な少年のようにきらきらと輝く。
「ガキみてぇだろ? でもな、そいつは俺に取っちゃあデケェ事なんだ」
「いいや。男なら、物語の英雄は永遠の憧れさ」
 だな、とルカは返し言葉を続ける。
 傭兵だったら「金払いが悪い」「仕事だ」と見捨てなくてはいけない事も、手を差し伸べたっていい。
 誰かを助けて、気に食わねえ奴は殴ってぶっ飛ばしたっていい。
「そんなの、生まれ変わったみてえじゃん」
 手に掴んだ運命。追いかける背中。交わした約束。憧れのあの竜。
 そして。
「一人でつまらなそうにしてる女を笑わせる為にも、世界を救わねえとな」
 ダンスに誘ったって笑いやしねえあいつを――いつか、笑顔に。

成否

成功


第1章 第15節

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

「ふむ。これは……ウォッカでありますか?」
「ウォッカ・マティーニだよ。君からは何処か、ウォッカの香りがしてね」
「なんと。まだ素面でありますよ」
『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は、オリーブ入りの透明なカクテルを傾ける。冬の北部行軍中に暖を取る為スキットルで飲むウォッカとも、友と「命の水だ」なんて騒いで飲むウォッカとも違うそれは、ゆっくりと身体を廻る。
「なぜ戦う、と。存在するということは戦いと不可分だから、でありましょうか」
 鉄の国に生まれたエッダは、生存とは即ち戦いだとその身で知っている。その戦いは、剣や弓を取るだけではない、もっと原初のもの。何かの犠牲無く生きる者など居ないのだとエッダは語り――とはいえ、と唇を結ぶ。
「その覚悟を万人に強いるのもまた違う」
「戦わなければ存在できないのに?」
「人は怠惰で自分勝手ではありますが。それ故に優しさというものを抱いて生きていける」
 エッダが生まれ持った罪は、慈愛。捨て去れないもの。
「ある意味で戦いの自覚とは、罪の自覚でもあります」
 戦える自分が、戦えない者の分までそれを担えば――
「世界はもっと、優しい人で溢れる」
「優しいね、君は」
「それほどでも。殺し合いは、それが好きな人間同士でやれば良いだけであります」
 酒代くらいにはなったか、と問えば十分だと返されるから――今日はもう少し、此処で静かに飲んでいこうか。

成否

成功


第1章 第16節

セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」

「わたしが戦う理由、かぁ」
『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)は、ゼロの問いを小さく繰り返す。グラスの底に沈んだオレンジのジュレを、くるくるとストローで掻き混ぜる。
「みんながいる日常を守る為、かな……?」
 語尾がどこか弱くなってしまうのは、彼女の中にぽっかりと開いた空白の時間のせいか。
 ――けれど、小さな決意の火は確かにセリカの中に灯る。
「大切な人が居なくなっちゃうかもしれない、って頭によぎったら、凄く不安になって……」
 それは嫌だと、セリカはきゅっと拳を握る。
「君には大切な人が居るのかい?」
「うん!」
 握った拳を解いて、ゼロに話すのはセリカの大切な友のこと。あのね、その子は――なんて話をしたら止まらない。
 特別な何かなんてない、いつものそんな何気ない時間は、かけがえのない大切なもの。
 もしそれが戦いで一つでも欠けたとしたら、大好きな笑顔はきっと失われてしまうから。
「だからね、わたしはいつも必ず戦う時に願ってるの――『みんなで無事に帰って来れるように』って」
 でもまだまだわたしは『守る』じゃなく『手助け』くらいだけど。そう微笑むセリカに、ゼロは「大丈夫だよ」と笑みを返す。
「守る事も、出来るようになっていけるかな?」
「ああ、きっと。守りたいものがある子は、強くなれるさ」
 そっか、とセリカは照れくさそうに微笑んで――指先でストローを弄るのだった。

成否

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第1章 第17節

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼

「元の世界に帰りたいかって? そんなの当然、帰りたいな!」
『揺るがぬ炎』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は、ふわりと毛を靡かせ胸を張る。
「そうか。何か未練でも?」
「そうだな……置いてきた、というか。謝らなきゃいけない人だな」
 思い描くは、愛する息子――梨尾のこと。異界よりの失礼極まりない客に、父である自分は無慈悲な戦士だと上書きされた。
 頭から聞こえる声に、目の前の子を手に掛けようとして――とうさん、と呼ばれたんだ。

 愛する息子。
 俺を殺した息子。

「最後に見たのは、泣き顔でな――子を泣かすなんて」
 だから、謝って、そしてあの子に感謝を伝えなくてはならないのだ。
「泣いていれば慰めたいし、こっちでの土産話もしたいんだ」
 面白い生物が居た。有り得ないことが起こった。沢山、話したいことがあるんだ――けれど、とウェールは懐中時計の盤面を見つめる。
「本音を言うと、向こうに戻ったら……俺は幽霊として、気付いてもらえない」
 運命に選ばれ、そして元の世界に戻った者が「どうなる」のかは解らないけれど。自分の墓の前で泣く息子に、何一つ声が届けられないとしても。
「どれだけ侮蔑されていても、いいんだ」
 この魂が擦り切れて無くなるまで、血は繋がっていたとしても――父親として、傍に。
「いつか、戻れるよ」
「なんだ? 未来が見えているのか」
 見えないけれど、そう思うんだ――そう、ゼロは目を細めた。

成否

成功


第1章 第18節

虚栄 心(p3p007991)
伝 説 の 特 異 運 命 座 標

 両手で握ったマグカップに、息を吹きかける。立ち上がる湯気は、甘いミルクの香りがした。
『伝 説 の 特 異 運 命 座 標』虚栄 心(p3p007991)は、縁にそっと口を付ける。
「熱っ」
 まだ飲むには熱すぎか。飲めるまでの手慰みに、と心はゼロの問いに答える。
「得意運命座標の名に恥じない実力を身に着けるためよ」
 当然でしょ、と言わんばかりに心の口角は大きな弧を描く。
 ゼロはその笑みがただの「運命に選ばれた誇り」ではないことは勿論見抜いていて気付いていて――実力か、とそれは楽しそうに笑っていた。
「特異運命座標だからって、戦闘能力に長けているとは限らないけどね。
 たとえ弱くても、戦えなくても、全ての特異運命座標には計り知れないほどの価値がある」
 マグカップを握り続けた心の指先は、血が通う赤へと緩やかに色を変える。とくい、うんめい、ざひょう。
 その言葉は「選ばれた」あの日、心の身体に血の如く駆け巡った。
 私は特異で、その辺で息をするだけの凡庸な純種――凡種とは違うのだと。けれど、凡種は馬鹿だから。心は片側の口角を思い切り歪ませ吐き捨てる。
「あいつらは強さでしか特異運命座標の価値を計れないから」
「だから、君は戦うんだね?」
「そういうこと。そういう奴らにナメられないように、受けるのは戦闘も環境も過酷な鉄帝の仕事が中心ね」
 生温いのはお断り――ホットミルクが冷めきる前に、心はそれを飲み干した。

成否

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第1章 第19節

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者

 平和になったら。その仮定に、『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)は口元を覆う包帯に指をかける。
「――っ」
 小ぶりのグラスに注がれた鮮やかな緑のリキュールは、口内に強烈な苦みをもたらす。
 狼狽えたルインに、ゼロは「強いだろう」と悪戯気に微笑むと、グラスに銀のスプーンを渡らせた。角砂糖が乗ったそれに、ゆっくりと不思議な形の水差しから一滴ずつ水を垂らすと――スプーンの底面から溶け出した砂糖水が、緑をゆっくり、濁った白に染めていく。
「これが見せたかったのか」
「まあね。アブサン――禁断とも、破滅を呼ぶともされた酒だよ」
 破滅、の言葉に包帯の隙間から覗く目元がぴくりと動く。
 あんなにも破滅と戦乱に満ちた世界であろうとも、ルインの故郷である事には変わりなく――それに、あの世界には。
「俺の恋人がいたらしいんだ。意外だろう?」
 混沌に召喚されしばらく――二年程前までは、すっかり忘れていたその面影は、靄がかかる。嗚呼、だから。
「……帰りたいさ」
 けれど、それが叶わないだろうことも解っている。
『破滅を滅ぼす破滅』は、いつかあの男を破滅に導き――そしてやがて、自分自身という破滅すらも滅ぼす。
 それは当然であり、因果応報だと、R.R.という男は知っているから。
 合間に飲み進めたアブサンは、男の身体を廻る。
 ひとつ大きな欠伸をすると、ゆっくりと舟を漕ぎ始めて――静寂の中「おやすみ」の声が響いた。

成否

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第1章 第20節

星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

「あ、その、未成年だから適当にジュース……」
『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)は、眼鏡のレンズ越しに澄んだ空色の瞳を覗かせる。
 召喚されてこの方、少しずつ別世界へ行く事も、混沌の各国で仕事をする事も増えたが――引きこもりがちの身には、バーの空気は緊張するもので。
「拙者が戦う理由……か」
 それは、もう一つの問いである『元の世界に帰りたいか』にも繋がる。
「母さんに会う為に、かな……」
 そうして思うは、母――星影 向日葵という仇花のこと。
「母親、か。どんな人だったんだい?」
 そうだね、と昼顔は語る。
 恋に破れ、それを諦めきれず、間違った愛し方で気持ちをぶつけた人だった。
 そうして彼女は、愛する人との間に『昼顔』という愛の結晶を設けた。
 周囲には悪と断定され、面影に狂い、それでも愛した男を否定しなかった。
「小さい頃は、僕を父親の代わりにしてたらしいけどね」
 ひるがお、と呼ぶとろける声。優しい手。それから、それから――
 母親として『僕』を愛してくれた人。
「たった一人の、僕の家族だから」
 一人召喚されてしまった僕は、親不孝で。だから早く世界を救って、母さんに再会しなきゃいけない。
「そうか。再会できるといいね、うん」
 せめて、彼女もこの混沌に喚ばれていれば――罪を咎める人もいないのに。
 拙者の話は終わり――そう、昼顔は締めくくる。
 ゼロにはレンズの下の眼が、何故か琥珀色に見えていた。

成否

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第1章 第21節

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
汚い魔法少女

 どろどろになったバニラアイスが、残った氷に纏わりつく。
「今度はストロベリーがいいわ」と『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)がグラスを掲げ、瞬き一つの間に今度は真っ赤なソーダフロートが手の内に。
「それじゃあ君は、殺しやすい……弱い人が多い元の世界に帰りたい?」
「最近よく分からないのよね」
「分からない?」
「ええ。最初はもちろん帰りたかったけどね」
 この世界では欲しい物も簡単に奪えない。気に入らない奴も簡単に殺せない。
 前は、ケーキが自分の前で売り切れたなら殺して奪った。けれど、最近はほんの少しその不便さが楽しいとすら思う自分が居た。食べられなかったならまた来ればいいなんて――昔の自分なら有り得なかった。
「苦労して目的を達成した方が喜びも大きいでしょ?」
 まあ、本当は喜びが小さくていいから楽な方がいいんだけど――合間にアイスを口に運ぶメリーの表情は、少女らしく愛らしい。
「前はその辺の人たちが生み出した成果を横取りするだけだったけど、最近は自分が成果を生み出して分け与えることも覚えた」
「それは随分と『大人』だね」
「そう? 人から感謝されるのも悪くないなーって思っただけよ」

 ――でもまぁ、本当は感謝されなくてもいいし、憎まれてもいいから奪うだけの方がいいんだけど。
 そう言うと、メリーは隣の男のフロートに乗ったチェリーをひょいと奪い――こんな風にね、と口に運んだ。

成否

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第1章 第22節

マリア・レイシス(p3p006685)
雷はただ前へ

「わ、なんだいこれ?」
 ぴり、と舌に感じた苦みに『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)は声を漏らす。
 お任せでと頼んだそれはオレンジがかった濃い赤で――そう、愛しい彼女の色。ただでお酒が飲めるなんて言ったら、すぐに此処に来たがるだろうか――なんて思ってしまう。
「スプモーニ。使っているカンパリは薬草のお酒だからね」
 へぇ、と飲み進める内、ゆるりと廻るアルコールにマリアの口は軽くなる。
「どうして戦うのか、か……昔と今では違う答えになってしまうね」
 顔をカウンターの中に向けたまま、目線をほんの少し左へとやる。思うは生まれ育った世界で、国と人々を守っていた頃のこと。それが軍人として、『雷光殲姫』として当たり前だった。
「強いて言うなら、より良い世界の為に……だったのかな?」
「今は?」
「今は自分と、自分の大切な人の為に戦っているよ」
 ゼロの方へと顔をやり微笑むと、今度は目線を右へ。思い描く未来は、より良い世界の為でも、皆の為でもなく――二人の未来。
 優しくて素敵で、沢山傷ついたのに気丈に笑う人。
「その人に出会って、私はもっと自由に、自分らしく生きてもいいんだって思ったんだ」
 もう十分世界の為に、誰かの為に戦ったから――だから、今度は。
「ここでの私は最高に我儘に生きるのさ!」
「うん、それがいい」
 じゃあ、次は二人で来るねと言えば――沢山お酒を用意しておくよ、とゼロは笑っていた。

成否

成功


第1章 第23節

 一人きりに戻った店内で、ゼロはほう、と息を吐く。
 普段はゆっくりと酔える強いお酒を飲むけれど――今日は沢山話して喉が渇いた。
 無骨なジョッキに入った黄金のエールを、一気に喉を鳴らして飲み干す。度数はいつもより弱いはずなのに、その一杯はやけに身体を酩酊させて。
 カウンターに突っ伏したゼロは小さく「いいな」と零す。

 誰かの為にと戦う人が居た。
 自分の為にと戦う人が居た。
 帰りたいと言う人が居た。
 新しい出会いの為に帰らないと行った人が居た。

 ずっとこの場所で、誰かの話を聞くだけの自分も――いつか手放したくないようなものが、できるのだろうか。
 出会いの中で、少しずつ自分が変わっていくことを感じて――ゼロはそっと、目を閉じた。

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