シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2020>蒸し芋ホワイトクリスマス
オープニング
●
「――輝かんばかりの、この夜に!」「ゆ」
深緑(アルティオ=エルム)。かつては閉鎖的な風土も強く、2年前のこの時期も「ラサとの友好の為」という大義名分を経て開かれたこの国は、しかし妖精郷の一件の解決やその他多数の国内の諸事の解決を経て、イレギュラーズを大いに歓迎する運びとなっていた。
当然、大樹ファルカウで彼等を盛大に歓迎する運びとなる……ものだと思われていた。少なくとも、そっちのほうが何かと色々な出会いがあるからだ。
……だが、イレギュラーズ達が訪れたのは別の場所だった。具体的に言うと。
「ここがポテサラの村ゆ。ポテサラ信者の幻想種が集落を作ってアレコレ暮らしているゆ。安心するがいいゆ、わたち以外ドがつく菜食主義で話し方も普通だし割と暴力的じゃな……いや何言わせるゆ。わたちは平和主義ゆ」
「パパス、またあなたって子は皆にそうやって強気で迫っているの? 30超えたんだから少しおとなしくなればいいのにこの子は」
「げ」
『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)の故郷、ポテサラ集落(ポテサラの村)だった。
なんでも、毎年この時期は収穫後保管しておいた深緑芋がいい感じに甘味を蓄積させており、ポテサラを食べるのに一番いい時期であるのだとか。シャイネンナハトに合わせ、閉鎖的なこの村も人々を招き入れ、催しを行うことがある……それに合わせて彼等は呼び出されたわけだ。
なお、パパスの背後から現れたのが彼女の母であるがさておき。
「いつも娘がおせわになっております。皆さんのことはパパスから聞いているのよ。芋しかないけれど……ああ、外から持ってきてもらったものを使ってもらってもいいんだけれど、そういったもので楽しんでもらえると助かるわ。わたし達はお野菜以外は余り食べられないのだけれど――」
「わー! パパスのねーちゃんだー!」「“いれぎゅらーず”だー!」「あそんでー!」
パパス母が話しているうちに、村の子供達が集まってくる。物珍しさゆえか、非常に好意的な反応が見える。
子供達によると、森を使ったアスレチック設備などもありそれなりに体を動かす手段に事欠かないとか。
そうでなくても、村の人々はイレギュラーズに好意的だ。少なくとも、村を散策するのに事欠かない程度には世話をしてくれると思われる。
「……ってワケだゆ。わたちはちょっと村の手伝いがあるから行くから適当にしとくゆ」
- <Scheinen Nacht2020>蒸し芋ホワイトクリスマス完了
- GM名ふみの
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年01月12日 22時15分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
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「寒いし芋焼酎の熱燗をね、くいっといってたら天啓が降りて来たの……ポテサラは白い、ケーキは白い、つまりポテサラはケーキ! ってことでポテサラで巨大ケーキを作るわよぉー!
「お芋、お芋! ポテサラケーキが新時代を支配する時がやって来ましたわー!!」
「胡椒ドーン! フライドオニオンバーン! なパンチの効いたおこちゃまお断りゾーンを形成するであります。ポテサラはツマミでありましょう?」
アーリア、ヴァレーリヤ、そしてエッダの3名はポテサラをベースに巨大ケーキに仕上げることを提案し実行に移した。判断が早い。酔っ払ったVの者の謎の鼻歌を背景に、女3人は気分よく。
「なんでポテトサラダでケーキを作っているのかは分からねえが……シャイネンナハト、クリスマスだからな。ケーキは必要だろうよ」
義弘は一同の悪ノリに首を傾げつつ、丁寧に芋を潰してマヨと和え、塩コショウとベーコンを混ぜて……とベーシックなポテサラを作って整形していく。生来の真面目さは、こういう時に真価を発揮する。
「これだけでも十分幸せだけれど、折角だからお肉も欲しいところですわね? エッダ、火加減任せましたわ!」
「ハンバーグあれば付合せもいるでありますよな……このザワークラフトを飾り……かざ……少しくらい食ってもバレないでありますな」
「甘いケーキより塩気が欲しいのよねぇ、わーかーるーわぁー!!」
ヴァレーリヤはハンバーグを火にかけて飲み始め、エッダは飾りのザワークラフトを肴に飲み始め、アーリアはぺたぺたとケーキを作りながらちまちまと。
「エッダ、どういうことですの?それもこれも、貴女がちゃんと焼き加減を見ていないから……」
「はー?! どうせお前が火加減間違ったんでありましょう!? いいでありますよ多少焦げてても味だ味!!」
そしてお約束のように焦がすのである。
「なんかあの二人は揉めだしたし、ほっといて義弘さんと先に始めてましょっかぁ」
「なんで深緑でワインじゃなくて芋焼酎なのかって思ったけど、これ美味いな……」
「……あ、二人の分の焼酎もポテサラつまみに飲んでおくからねぇー!」
「「ふざけんじゃねぇ(ですわー)!!」」
「あ、ヴァリューシャだ! ……ヨシ!」
「ヨシでいいのかゆ。一緒に作りに行けばいいじゃねえかゆ」
マリアは大騒ぎの真っ只中のヴァレーリヤ達を見てふふっと笑みを浮かべた。怪訝な目で問いかけるパパスを、彼女の母(以下「ペルナ」)はその尻をブッ叩いて追いやった。
「見守るのもまた情よねぇ」
「うんうん! パパス君のお母さんの得意なポテサラは何かな? 私はやっぱり辛子マヨネーズをたっぷりかけて、黒コショウを効かせたポテサラが好きだね!」
「あたしもレシピが聞きたいわ! ポテサラ村のポテサラってロマンありそうな味しそう!」
「ポテサラづくり、ニルもお手伝いさせてください。前にポテサラのこといろいろと教えていただいたので、ニルもがんばります」
「あらあらぁ、皆勉強熱心なのねえ。マリアちゃん? のレシピは刺激的だわぁ」
マリアとペルナの歓談を聞きつけ、顔を見せたのはエミールとニルだ。前者は知識欲、後者は純粋に手伝いたいという気持ちからだろう。エミールは続けて、蒸し芋が余らないかと聞いてきた。
「十分余ってるわよぉ、どうしたのかしら?」
「マッシュポテトで薔薇を作ろうと思って!」
エミールはそういうと、完成済みのマッシュポテトとまだ潰されていない蒸し芋とを分け、後者にグリンピースを混ぜ込んだ。白い方を薔薇の形に絞って並べ、後者を葉として飾っていき……。
「まあ、面白いわねぇ! 私達でも食べられるのは素敵だわ!」
「ケーキ作ってる連中もいるから独創性パねぇんだゆこいつら」
「もうちょっと言葉遣いをなんとかなさい、パパス。……ああ、レシピだったわね?」
完成した薔薇に感嘆の声を漏らすペルナの傍らで呆れたように呟くパパス。当然のように掣肘されるが、ペルナは粛々とレシピを書き出す。
刻んでから水に浸した玉ねぎ、冷やした生ピーマン、茹でたブロッコリーとほうれん草……見事に緑がかっている。
「ふむふむ……! ありがとう! とても参考になるよ! お礼に子供と遊んでくるね!」
「いってらっしゃい、気をつけるのよぉ」
(……パパス様のおかあさま。家族。なんだか、変な気持ちです)
ニルは各々のやりとりから「家族」について再考する。そのぬくもりややり取りに求めるものがある今の気持ちが、彼女のいう「空腹」なのかも、と感じつつ。
「さーて! 今週も始まりました『芋を握って握力を鍛えよう』のコーナーです! キンタ先生ぐらいになれば、素手でポテサラが作れ熱ッッッヅッッッッ!」
「たりめーゆ。クソ熱に蒸した芋を素手で握る奴があるかゆ」
キンタは生芋を芽つきで潰そうとしたので、蒸し芋にすり替えられ大やけどを負った。優しい村民が治療したのでことなきを得た。衛生問題がね、あるからね。
「シャイネンナハトに芋……芋? 私は米派なんだが……」
「芋も米も第5群ゆ。つまりポテサラは餅みてーなもんゆ」
「なるほど……? まあ、真っ当なお祭り騒ぎの日に、暴君でもなんでもない女王の冠を奪う趣味もなし。ポテサラ作りなら手伝うぞ?」
舞妃蓮はこの村の風習に疑問を持ちつつ、パパスの口車にのせられつつあった。論理は滅茶苦茶だが言ってることは一部正しいのが厄介だ。
「ぶはははっ、こう見えてこのオークは料理修行中の身……ポテサラに特化したこの村のポテサラを味あわせて貰うことで参考にさせてもらうぜ!」
「あらあらぁ、皆元気なのねぇ。是非お願いしたいわ」
「わたしもお祭りだし、ちょっとがんばっちゃおうかしら?」
そして、そこに加わるのがゴリョウとアルフィンレーヌ。ペルナはやる気のある若者達(ペルナ基準)の登場に酷く喜んでいるし、村人達も彼らと連携して情報交換やレシピ交換を名刺交換感覚でやっていたりする。
「わたしはサンドイッチ、コロッケ、スパニッシュオムレツ、ポテサラの蒸し饅頭なんて作ってみようかと思ってるわ」
「俺はポテサラをベースに幾つか……それでペルナさん、ものはひとつ相談が」
「どうしたの?」
アルフィンレーヌは中々多彩なレシピを……実用性の高いものから作っていく。ゴリョウは調理に取り掛かる前に、レシピを手にペルナに頭を下げた。
「深緑(おたく)の芋とか焼酎とか、定期購入が出来るか伺いたいのですが……」
「村長に聞くことになるけれど、私は問題ないとおもうわねぇ。供給自体は別に困らない……はずねぇ」
ゴリョウの問いに首を傾げつつ応じたペルナは、概ね問題なさそうな反応だった。村長の気分次第だろうが、彼の働きぶりを考えれば問題なさそうだ。
「パパスさんのお母さん、調理以外でもなにかあればお手伝いします!」
「ペルナでいいわよぉ、それじゃあ皆が作ってくれたものを配って貰えるかしら」
パパスの素性に興味津々のエルは、ペルナの作業を手伝いつつも過去に依頼であった出来事をつらつらと話していく。彼女が散々な目にあった件についてはペルナのめがひかった。
「そういえば、パパスさんはどんな子だったんですか?」
「変わった子、ねえ。普通はこの森から出てあちこち行く方が珍しいんだけど、15で家を出てから練達に行って戻ってきたなんて聞いた日には卒倒しそうになったわ」
「色々大変っすねー。あ、自分にもポテサラとコロッケくださいっす」
「フィーも沢山ポテサラが食べられると聞いて来た。違うのか……?」
「はい、今お持ちします」
パパスの過去はさておき、エルはアルヤンとフィラ、そしてルーチェへと皿を運んでいく。アルフィンレーヌやゴリョウの作った料理しかり、エミールの芋の薔薇しかり。
アルヤンはコードを器用に使ってスプーンをファンカバーに近づけると、中身が忽然と消失した。否、『食べた』らしい。
「いやぁ、美味しいっすねー。イレギュラーズになるまでは故郷の練達で過ごしてたっすけど、こんなシャイネンナハトも悪くないっすねー」
「うむ。味の良し悪しは上手く表現できんが楽しいのは間違いないのじゃ」
「聞けばシャイネンナハトというのは、争いなどのない一時ではあるものの平穏な日……であったか。不思議なものだな」
アルヤンとフィラの会話を傍らに聞きつつ、ルーチェは空をぼんやりと眺めた。
元の世界では見ることのなかった空の色は、果たして他の者にとっては「いつもの空」なのか、それとも。
「ところで僕としてはシャイネンナハトのご馳走といえばシュトーレンなんだよね。そう、人を殺せる硬さのあれ。
そして、唐揚げにはレモン、酢豚にはパイナップルと言うくらいにお約束ってあるじゃん?」
魔力を通して故郷を感じている(ぼっち)系のルフナは、マッシュポテトを前に訥々と語り始めた。割と言ってることは正論だ。
「入れてやるよ、ラムレーズンを、シロップ浸のミカンを、シャキシャキのりんごをさあ!」
つまりシュトーレン風のポテサラを作ろうとしたらしい。パパスが「あー」みたいな顔しているが知ったことか。
「……芋じゃん。甘い芋じゃん」
「そりゃそうなるゆ」
●ホワイトロマンス(芋的な意味で)
「ベーク! ポテサラでスイーツ作るわよ!!!」
「ポテサラ……シャイネン…………ポテサラ……? なぜシャイネンナハトに……?」
タルトの唐突な提案に、ベークはすっかり混乱していた。が、ノり気な相手に無理ともいえない。取り敢えず、手伝ったほうが吉と出た。
「まぁはちみつと砂糖入れて混ぜた後にみかんの粒をバラしたものを混ぜ込むだけなんだけどね♪ これがい~~~感じの甘さで美味いのよ!」
「はぁ。蜂蜜に蜜柑。蜜柑? こういうのって林檎がメジャーだと思うんですが。いえまぁ、確かに甘そうですね」
蜂蜜と砂糖ときたらたしかに林檎が定番だが、蜜柑を入れる層も少なくない、らしい。だからこそ美味しいのかもしれないが。
「これならベークが食べても甘いたい焼きのままで安心ね☆ あとはまぁ、ここの人たちもこれなら美味しく食べられるんじゃないかしらね?」
「はい。まぁ……貴女が僕のためにと言うのであれば、喜んで食べますよ」
此処の人達のためにも、と食べつつゆっくり動き出したベークをタルトは見逃さない。
「ポテサラが終わったら! デザートのベークをいただきまsh」
「……クソっ!やっぱり僕を食べる気ですね!? もうその手には乗りませんよ!!!」
「ちょっと! 逃げるのが早いわよ!!!」
どうやら、この2人のいつものやり取りはこの日も変わらないらしい。
「なんだろう……この妙に親近感の沸く村は……」
「健康的でいい村だからかな、ポテトとも相性がいいのかも」
ポテトの感じた親近感を、リゲルはいい感じに解釈して理解し、解決した。なるほど? といった風の表情をしたポテトは、村人達に野菜を配って回る。
「野菜がメインとのことで、今朝収穫してきた野菜持ってきたので宜しければ皆さんでどうぞ」
「そのまま食べても甘くて美味しい程に新鮮ですよ」
「いやいや、丁寧なご夫婦さんだこと。ありがたく頂くよ」
村人の冷やかすでもない素直な感想は、2人の顔を赤らめるには十分だった。
「リゲルは何か食べたい料理あるか? 頑張って作るぞ」
「ポテトの作ってくれたものならなんでも美味しいよ。有難う」
雪だるま風に整形した揚げ芋を子供達に振る舞いながら、リゲルはポテトの問いににこやかに応じる。
その顔に何も言えなくなったポテトは、手元の芋を思う様使って汎ゆる芋料理に手を出してしまった。
「蒸かし芋にヴィシソワーズ、揚げたてのポテチにマッシュポテトのコンソメゼリー乗せ……」
「おいしー!」
「おねえちゃんすごーい!」
やりすぎ感はあるものの、概ね好評だったのでよし……ということで。
「ポテサラ村なんていう超絶ピンポイントすぎる村があるのは初耳ですけど! 食べざかりなんで、お腹いっぱい食べられるならなんでもいいです!」
「白に飲まれよっ! ……パパスさんみたいな人が集まった村なのかと思ったら皆とっても良い人だったねっ!」
ポテサラ村という存在に驚くしにゃこと花丸(の後者の余計な一言)にパパスは鋭く目を光らせたが、最終的に何事もなくスルーされた。それはそれとして、花丸はポテサラの山を指差す。
「それじゃ、しにゃこさんっ! あそこでポテサラを作ってるのが見えるよね? 今回はどっちがより沢山ポテサラを食べられるか勝負だよっ! 勝った方は今度美味しい物を食べに行くときに支払いをするって事でどうかな?」
「ほぅ……しにゃに大食いバトルを仕掛けるなんて笹木さんも命知らずですね!? いいでしょう、受けて立ちます! 絶対にご飯奢らせてやりますよ!」
軽快な煽りに即座に乗っかるしにゃこ。両者は山盛りのポテサラを前にスプーンを取ると、猛然とかき込み始めた。
「おっと、笹木さん!手が止まってるようですがもう限界ですか!? ギブアップするなら今のうちですよ!」
「大丈夫だよっ、しにゃこさんには負けないんだからっ!」
相手を煽りつつも表情が怪しいしにゃこ、調味料を駆使しつつも苦しげな息を吐く花丸。果たしてこの勝負は無事に――。
「こりゃ引き分けだゆ。ちょっと落ち着いて水を飲めゆ」
は終わりませんでした。ポテサラ村謹製の即効の胃薬を飲みながら、2人は悔しげに顔を見合わせた。
「なーなーフランー、おもしろそーだしオイラたちもポテサラ作ろうぜ! どうせならみんながあっと驚くようなすっげーポテサラつくってみてーよな! フランなんかいいアイデアねーかー?」
「そうだねワモンさん、多分自分で作った方がもっと美味しくなるもんね! うーん、さすがにチョコとかクッキー入れたらだめだよね、ワモンさんもあたしも好きなもの……お魚入れよ!」
ワモンとフランのポテサラ作りは、思わぬ方向へと転がりつつあった。多分魚は火を通すんだろう。そうに違いない。
そして、2人が芋をどう潰すのかと思えば……まさかのガトリング。フランは合いの手のように芋をどんどん追加。ワモンはどんどん潰していく。
「ふっ、簡単時短テクニックはデキる女の人の条件だね……」
ワモン以外は簡単にできちゃまずいテクニックなんだよなあ。それはさておき。
「魚とかをまぜまぜして……なんか楽しくなってきたぜー!」
「ここに焼いた魚を……あれっ、スターなんとかパイみたいになっちゃった!」
アジ、イワシ、タコにイカ。適切に処理されていればサラダにも合うが、不安しか残らない。……果たして味は。
「「んまーい!!」」
いやまあ、2人が美味しいそうなら成功か、そうか……。
「ポテサラ信者……? 宗教でしょうか? 異教徒の俺がここにいても大丈夫なら良いのですが」
「ポテサラを深く愛してる方達ですから、きっと同じくらい深い慈悲の心でブラッドさんの事も温かくて受け入れて下さいますよ……!」
ブラッドとアイシャは、村の人々に大して完全なる勘違いをしでかしていた。が、村人達は2人のボケですらも愛嬌とツッコむ気はないらしい。ツッコミ不在って怖い。
「それではブラッドさん、ポテサラを作っていきましょう! ちゃんとやればちゃんとしたものが出来ますよ!」
「そうか、『適当』というものはわからないが、ちゃんとすれば……アイシャの言う通りならいいんだな」
「そうです! 素直でいいですね!」
ブラッドはこくこくと頷きながら、アイシャの説明に従ってポテサラ作りに取り掛かる。ベースとして作ったポテサラと生食用の野菜とを組み合わせて積み上げていくその姿は……ツリーだ。ポテサラツリー。ここもまたポテサラがシャイネンナハトを侵食した一例となってしまった。
「真剣に作るとなかなか細部が気になるものですね、芋焼酎も水かと錯覚するほど喉を通る飲みやすさです」
「ブラッドさん……今日は楽しかったですね……ふふっ、このポテサラは不思議な食感ですよ……」
ブラッドがするすると芋焼酎を喉に流し込む傍ら、アイシャは人参を噛み砕きながらポテサラツリーに話しかけていた。彼女は酒気に酷く弱いらしい。
……そしてその事実に気づかないブラッド。なんとも、こう。ツッコミ不在って怖い(2回め)。
「ねえ、舞、お芋の潰し方ってこれくらい? まだ足りないかなぁ?」
「ええ、良い感じよ、イーハトーヴさん。このくらい潰せたら少し手を休めましょうか」
イーハトーヴと舞の2人もまた、ポテサラ作りに勤しんでいた。奇をてらったり独自の好みに先行する仲間達とは打って変わって、こちらは何の捻りもない普通のポテサラ作りだ。が、普通であるからこそ清である、とも言うわけで。ゆっくりながらも確実に完成に近づきつつあった。
「お友達とお料理って、初めてだけど、想像してた通りとっても楽しいんだねぇ! それに、舞の好きなポテサラを作って食べられるのもとっても嬉しい!」
「あら、こんな家庭料理で良ければ、何回だって付き合うわよ」
イーハトーヴの純朴な言葉に、舞も思わず破顔する。
舞の作るポテサラは人参やグリンピースの入った鮮やかなもの。グリンピースが潰れず入っているのが食感のポイントでもある。
「えへへ、一緒に食べるのが楽しみだなぁ」
「そうね、牛スジ煮込みも芋焼酎もあるし、楽しく飲めるのは嬉しいわ」
拙いながらも料理に向き合ったイーハトーヴへの報酬として、それらはとても真っ当な報酬である……と、舞はつくづく思うのだった。
「三國、突然声を掛けて済まない。……子供達と遊そぼうかと思って居たんだが、俺一人ではその力強さに負けそうでな……」
「わーい、遊んで遊んでー!」
「あしょんでぇー」
誠司は、気づいたらマナガルムと共に子供達の相手をしていた。させられていた、というほど強制的でもなく、無碍に断れるほどの状況でもなかった。
(なんだこれ、乙女ゲーか?)
「……この様な感じでな。力を貸して貰えないか、三國」
(イケメンの上に優しいとか、乙女ゲーか?)
乙女ゲーじゃないし攻略対象でもないが、優しいいい大人であることは間違いないマナガルム。
全身にひっつく子供達のなかには、どこか独占欲を覗かせている女の子もいる……末恐ろしい。
「おにーちゃんもあそんでー!」
で、何故か誠司は雪玉をぶつけられる役に回る。かなしい。
「おうチビども、僕はそこのナイト様のように優しくないからくぁ~くごしろ」
「「きゃーっ」」
だが付き合いはいい。なんだかんだで彼も優しいのだ。
「助かった。子供達も三國が来てからはもっと楽しそうだったな」
「ベネディクトさんが優しいからですよ」
誠司はひとしきり子供の相手をしてから、コーヒーを渡して腰掛けた。どちらから話すでもなく、互いの世界の話をちらほらと……やはり自分とは違う世界を知っているこのイケメン相手とか乙女ゲーなのでは? と誠司は思ったが、しかしマナガルムは最後まで彼の内心の混乱に気づかぬままだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
いつの間にかパパス母に名前がついたりラブというか(食べ物への)ライクが強いイベシナでした。
こういうのもっと書きたいですね。ご参加有難うございました。
GMコメント
ポテトサラダは白い。ホワイトクリスマスは白い。つまりホワイトクリスマスとはポテサラの隠喩では? (ふみのは狂っていた)
●達成条件
深緑ポテサラ村でシャイネンナハトを楽しむ
●深緑ポテサラ村
パパスの故郷です。彼女が特段にアレなだけで、基本物分りがよくて温和な気風です。「ゆ」もつきません。
パパス母が大体のホスト役です。子供達もパパスよりかは物分りがいいです。
アスレチック施設があるほか、中央ではポテサラを作る準備が着々と進んでいます。
なお、妖精郷に入るゲートが「いまさら」発見されていますので来る可能性はあります。
酒の話はやめろ。芋焼酎しかねえぞ。
※そこそこ二人きりになれるスポットもあります
●深緑公式NPC
原則としては登場しません。例外的に、ルドラさんとかは警備してるのでふらっと出てくる可能性があります。
ほか、担当つきの深緑NPCは管轄外となります。
●プレイング
行動に対してとくにタグは設けませんので、ある程度自由にしていただいて大丈夫です。
ただ、同行する参加者(名称省略はかまいませんがID必須です)、多数の場合グループタグなどを入れて頂ければ幸いです。
(同行者、タグは1行目を強く推奨します)
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