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シナリオ詳細

<星屑綺譚スタアライト>星屑祭

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●星の街
 吐く息が白くなり、ちらちらと雪が降る季節。
 此処、スタアライトでは星屑祭の準備が着々と進んでいた。
 スタアライトには朝というものはない。
 空を見上げれば常に黒い天鵞絨に宝石を散りばめたような満点の星空が広がっている。
 そしてスタアライトには電気、というものもない。空から雨のように落ちてくる星の欠片を拾い集め、それを瓶に詰めたものを灯りとして使っているのだ。
 そして季節が巡り冬、聖夜と呼ばれる日に町の広場に大きなツリーを飾り、そこに各々が集めた星の欠片を飾りつけるのだ。
 朝、積もった雪の中から落ちている星の欠片を探してもいいし、店で売っているものを買ってもいい。それらを好きな形の瓶に詰めて、昼にツリーに飾る。中には思い出として持って帰る者もいる様だ。
 そして夜、聖歌隊の讃美歌をバックにツリーに飾られた星の欠片が灯りを灯す。
 ある者は世界の平和を、ある者は家族の健康を。
 様々な願いを込めて皆、星の欠片に祈るのだ。

●星屑祭
「よう、今回は久々に旅行気分が味わえる依頼が入ってきてるぜ」
 境界図書館にも聖夜という概念はあるのだろうか。ツリーに飾り付けをしていたらしい黒衣、朧があなた方に声を掛けた。
「場所はスタアライトっていう異世界。朝が来ない世界で人々は星の欠片を集めて生活をしているっていう何ともロマンチックな世界さね」
 そうして朧は懐から小さな小瓶を取り出した。
 中には金平糖ほどの大きさの小さな何かが詰められ眩い光を放っている。
「これが星の欠片なのさ、こうやって瓶に詰めるんだと。そんで、お前さん達にはそのスタアライトで行われる『星屑祭』に行って欲しいのさ」
 所謂クリスマス、と言われる者らしく星屑を集めて作った瓶をツリーに飾り願い事をするらしい。
「なあに、そんな肩肘張る事はないさ。いつもどおり緩く息抜き感覚で遊んできてくれや。ああ、そう瓶は持ち帰ってもいいらしいぜ」
 そんじゃあよろしくと、朧はヒラヒラと手を振りあなた方を送り出した。

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして。
 そうでない方は今回もよろしくお願い致します。
 ノベルマスターの白です。
 今回は異世界のお祭りに参加していただきます。カップルでもお友達でもグループでもお一人でも、お気軽にお越しください。
 グループ名の際はタグを、お連れさまがいる場合はお相手さまの名前をお願いいたします。
 今回のラリーは三章構成を予定しております。

●全体目標 
 星屑祭を楽しむ。

●第一章目標
 星の欠片を集めてオリジナルの小瓶を作る
 スタアライトの至る場所には星の欠片が落ちており拾い集めることができます。
 もしくはお店でもいろんな種類の星々が売っているのでそれを買うのもありです。

●行ける場所
 お店
町の至る所にお店があり、様々な星の欠片を売っています。小瓶も一緒に入りますよ。
 広場
まだ飾り付けがされていないですが大きなツリーに屋台の準備をしています。お手伝いをしてもいいかもですね。広場にも星の欠片は落ちてます。
 海
 冬の海で寒いですが、穏やかな波が寄せては返しています。砂浜には雪が積もっていますがよく見るとシーグラスや珍しい瓶もあるかも。
 山
 雪山です、アイゼンを着けて探してみてもいいかもですね。星空に近い場所なだけあって大きいものもあるかも。

●サンプルプレイング
 プレイングにはどこで星の欠片を集めるのか。
 どんな形や色なのか
 どんな瓶に閉じ込めるのかをご記載ください。

 場所:海
 欠片:透き通ったブルー
 瓶:星の形をした小瓶
 星の欠片なんてロマンチックね!
 せっかくだから海に行って集めてみようかしら。星の形をした瓶にリボンをかけたらもっと可愛くなるかなあ

 こんな感じです。それではいってらっしゃい!

  • <星屑綺譚スタアライト>星屑祭完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月31日 21時50分
  • 章数3章
  • 総採用数26人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

「朝の来ない世界。ここなら、睡眠のいらない私も、夜の孤独を感じることが少ないのかもしれません」
 静まり返った夜の海で白い息と共にグリーフ・ロスは誰に言う訳でもなく言葉を吐き出した。
 言葉が波の音に飲まれ、グリーフは緩く頭を振る。
 気を取り直して星の欠片を探す。一面の銀世界だが星の光は眩く、落ちているであろう場所は容易に特定できた。
 傷つけてはいけないと、そうっと丁寧に雪を除けていくと赤と青の欠片が互いに寄り添うように光を放っていた。その色はまるで、自分の瞳と――彼女の瞳の様であった。
 自分も本当ならその青色の筈だったのに。愛されることも無く悲嘆の名を抱いて眠りについたのは何時ぐらい前だっただろうか。
 そして傍らに落ちていた飾り気の無いありふれた瓶を拾い上げる。
 綺麗な模様があるわけでも、精巧な細工が施されているわけでもないソレにぽとりと欠片を落とし入れた。星空を透かす様に瓶を掲げて静かに揺らすと、赤と青の光が重なって優しい紫の光に変わる。

「……さて、どんな風に飾りましょうか。明けない夜。波の音を聴きながら、ゆっくり考えてみるのも、いいかもしれません」
 リボンを結んでみようか、模様を描いてみようか。それともほかの飾りも入れてみようか。
 ありふれた瓶、という事は言い方を変えればどんな風にも飾ることが出来るという事だ。
 模造品だった「ワタシ」が個である「私」に変わりつつある様に――。

成否

成功


第1章 第2節

ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士

 星屑に照らされた海辺はシャイネンナハトを彩るイルミネーションによく似ていた。
 砂浜を覆い隠した白雪の上を、星の欠片を踏んでしまわぬ様に裸足で歩く影が二つ。
 ヴィクトール=エルステッド=アラステアと散々・未散であった。
 宛ら御伽噺から抜け出してきた騎士と姫君のような二人は静かに凪いだ海の音を聞きながら小瓶とそれぞれの星の欠片を探していた。
「ああ、そうだ。星屑を入れる瓶も探さないと」
 きょろきょろと辺りを見渡すと、虹っぽい色のかかった透明な丸い瓶が落ちている。
 ヴィクトールはソレに既視感を覚え、やがて嗚呼とその答えに至る。
 今まさに傍にいる彼女の髪の輝きによく似ているではないか。
「この小瓶とか、チル様に似合うのではないでしょうか?」
 壊してしまわぬ様に慎重に拾い上げてヴィクトールが未散を振り返ると、すでに彼女は潤んだ赫を金色の蓋で閉じ込めた丸い瓶を持っていた。両手で可愛らしく小瓶を抱えた未散の顔はとても嬉しそうな、どこか誇らしげな顔をしている。
 ならば、とヴィクトールは足元に落ちていた蒼く透き通るような星屑達を掬い上げて、さらさらと小瓶に詰めた。自身の瞳と対を為すような冷たくて、それでいて何処か深い慈愛を湛えた雫を零さぬ様に閉じ込めて。
「どうでしょうか、チル様の色だと思いますが」
「まぁ」
 愉しくて仕方ない、という風に未散はからからと笑った。
 そうして今度は自身が持っていた丸い瓶をヴィクトールの前にずいと差し出す。
「綺麗でしょう?」
 大切に拾い上げたその赫は、目の前の不器用な人と違って効率的に自身を彩る光の放ち方をよく識っている。気が触れたかのように爛々と輝くその色は泪の形。
 なのに何処か親しみやすいのは、屹度、何時も見上げている色だからなのだろう。
「ね、ぼくは。屹度、ヴィクトールさまが泪を零すのならこんな感じなのだと思うのです」


 その綺麗な赫の瞳から零れ落ちるのならば、その形は。色は。屹度綺麗なのだと思う。
「……ベタな口説き文句ですかね」
 と未散は小首を傾げた。その仕草にヴィクトールは目元を緩める。
「泣いたら、ですか」
 屹度、己の身に。心に。黄金の呪縛が纏わりつく限り、決して泣くことは無いのだろう。
 愛を抱けぬ呪い、愛せない呪い。いいえ、いいえ愛とは壊し、壊される物なのだ。
 だから、とヴィクトールは小さく息を吸った。
「泣かないボクの代わりに、涙を詰め込んだ小瓶を持っててください」
 泣かないボクの代わりに、という言葉。
 それを聞き届けて、自分を見下ろす其の赫をじっと見つめてから、未散はヴィクトールの手元に目を遣った。
「ぼくは――嗚呼、そうだな。じゃあ、其の蒼をぼくだと思って大事に持っていて、下さいますか」
 自分に似合うのではないか、と言ってくれたその透き通る瓶の中に煌めいている蒼い星屑。
「良い事あるかも識れませんし。あなたさまの手の中でなら、うんと輝けるから」
 

成否

成功


第1章 第3節

武器商人(p3p001107)
闇之雲

 愛しい小鳥の為に。今年の聖夜の贈り物が決まったから。
 武器商人はスタアライトの海岸へと足を運んだ。
 しんしんと降り積る雪に埋もれて光を放つ星の欠片。
 あのコも連れてこようかと思ったけれど、偶にはサプライズだってしてみたい。
「きっと喜ぶに違いないね、あのコは星が大好きだから」
 さァ、どれにしようかと細い指で雪を崩して星の欠片を探す。
 空からの贈り物はどれも綺麗で、瓶に入れたくなるものばかりだ。
 小瓶を片手に、あれはどうか。これはどうかと悩み続ける。
 摘まみ上げては戻し。また摘まみ上げては戻しを繰り返し。
 ふと白い雪の中からちらりと何かが見えた。
「……この銀色をほんのり散りばめた、星空そのものを思わせる欠片ならきっとあのコも気にいってくれるに違いない。」
 決して派手ではないけれど、控えめに。けれどここにいると主張する星の欠片を瓶に詰める。
 月のアクセサリーで着飾った小瓶は、まるで夜空そのものを閉じ込めたようだ。
「そうだ。せっかく海に来たのだから、シーグラスも探してコロコロ入れてみよう」
 そうしてまた海岸をゆったりとした足取りで歩いて今度は海からの贈り物を探す。
 そして爪先にこつりと当たったソレを拾い上げた。
「おや」
 蜂蜜のような黄色と、柘榴のような赤色の硝子。
 とろりと潤んだその色合いは、愛しい小鳥が自分を見つめる時の恍惚とした目にそっくりでとても綺麗だと武器商人は笑み零した。
 

成否

成功


第1章 第4節

ラビア・マーレ・ラクテア(p3p008448)
海を漂う蒼白星

「お星様を拾うんですよね! お空にいっぱいありますよね! 取りに行くならきっと空に近い所じゃなきゃダメですよね! 山は初めて登ります!」
 と、意気込みを語ったのが約一時間前。

「……」
 雪の積もった山道をラビア・マーレ・ラクテアは歩いていた。最初は軽快だった足取りが重くなり、荒い呼吸が白く変わって消えていく。
「大丈夫かい?」
「や、山……大変……ですね……が、頑張る、ですが……」
 ラビアは身体が強くない。冬の山に登ると聞いて、心配で着いてきた朧だが、どうやら正解だったらしい。
「お星様……とっても……遠いところに……あるんですね……」
 もう限界とラビアはその場にへたり込んだ。
 山頂まで行けなかったのは残念だけれど、此処に落ちている物だってとっても綺麗なのだからとラビアは周囲に煌めく星の欠片を集め出す。
 フラスコに欠片をいれて、水を注ぐ。最後に自分とお揃いの青いリボンを結んだ。
「出来上がりです! はいっ、どうぞ!」
「俺にくれるのかい?」
「朧さんってあまりお外に出てるイメージ無くて……お星様をプレゼントしたかったんです!」
 満面の笑みで差し出されたら断れる筈もなく、朧は受け取った。軽く揺らすと水中を泡雪の様に星の欠片が舞う。
「こいつはいい。ありがとよ、大事にすらぁな」
 いつもより柔らかい声色にラビアが斜め下から彼を見上げる。今日こそは顔を見るのだと。
 星に照らされ、僅かに見えたその顔は――。

成否

成功


第1章 第5節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「ねえ見て、オフィーリア! これは、気持ちよく晴れた日の空の青! 海の深い青、硝子越しの青……」
『そんなに青色が好きだったの?』
 広場でイーハトーヴ・アーケイディアンはオフィーリアを抱え、様々な青色の欠片を手に取っては心をときめかせていた。弟の様子に姉は意外だという風に問いかける。ふふ、と微笑んでイーハトーヴは手の中の青を転がした。
「召喚されてから、俺、色んな色に出会ってきたんだなぁ」
 編んだミサンガの青
 リキュールに浮かんだ花弁の白。
 まだまだあるけれど、出会ってきた色は誰も大切なものばかり。
「オフィーリア。君にはついこの間も、一つ一つの世界に入れ込みすぎるなって注意されたばかりだけど。俺、混沌の、それに外の世界の人達の営みが好きなんだ」
 イーハトーヴは星空へと手を翳す。
「例えば、この世界はね、夜だけの世界だから余計に、星屑の光が綺麗に、尊く感じられるのかもしれないとか、新しいものに出会う度に、沢山のことを考えるんだよ」
『それはいい事だけれど……』
 アンティークに囲われた様々な青を見つめる瞳には星が散ってとても綺麗だ。綺麗な世界に囚われて、彼が戻って来ないのではないかと。そう、思ってしまうほどに。
「見て、オフィーリア! とっても綺麗に出来たよ!」
『……ええ、綺麗ね。イーハトーヴ』
 何か手伝える事はないかと町人に声をかけるイーハトーヴの腕の中で、オフィーリアは唯その声を聞いていた。

成否

成功


第1章 第6節

シェリオ・アデラ(p3p007986)
癒やしの魔法人形

「わーいお祭りー! それにしてもお星さますっごいきれい! あんなにたくさんあるから、夜でもどこか明るく感じるの? それとも、ここの人が楽しそうで明るいから?」
 シェリオ・アデラは見たことのない夜の世界に心弾ませ踊っていた。
 楽しそうなシェリオの様子に優しそうな貴婦人が声を掛ける。
「あら、観光の方かしら。そうねぇ、星屑祭の日ですからねぇ」
「星屑祭?」
「ええ、星の欠片を集めて瓶に詰めて飾るんですよ」
「……? 欠片を集める? おれもやる!」
 この国、スタアライトでは至る所で星の欠片を集めることが出来るらしい。
 賑やかなところが好きだとシェリオが言うと、それなら広場がいいだろうと貴婦人はシェリオに道を教えてくれた。
 ストーンタイルの床にはうっすらと雪が積もってその合間にキラキラと星の欠片が輝いている。
「きれいな欠片がたくさんで迷うな……あ、そうだ。魔女と、アルセリアと同じ目の色の欠片にしよ!」
 落ちていた彼女の瞳と同じ薄藤の欠片を拾い上げる。
 小瓶は広場に売っていたフラスコの小瓶を買って、少しずつ欠片を入れていく。
 宛らその姿は薬を作るために分量を量る魔女の様だ。
「どんぐらい詰めたらキレイかなぁ、このぐらい?」
 半分くらい入れて揺らしてみる。フラスコの中で小さな欠片が揺れて涼やかな音を立てる。
「アルセリア、喜んでくれるかなぁ」
 早く彼女に渡したいとシェリオは大事そうに小瓶を胸に抱えた。

成否

成功


第1章 第7節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂

「朝の来ない世界……か。俺は吸血鬼だからなァ。夜の空気の冷たさや月明かり、星の瞬きは心地よい」
 吐き出した煙は何にも邪魔されることなく真直ぐに冬の夜空へ昇っていく。
 白い吐息と共にレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインはそれを見送った。
「星屑祭、ね。折角だからな、また乗らせて貰おうか」
 空から落ちてきた星の欠片を拾い集めて瓶に詰めて飾る。
 変わったこの祭りにレイチェルは興味があった。
 星の欠片を拾い集めるなら、一番険しくて。一番空に近い場所が良いとレイチェルが選んだのは雪山だった。
「……寒いのは苦手だけど! 厚着してきたからな! 遭難はしない筈」
 外套のフードを目深に被り、それでも隙間を塗って入り込む冷気に身を縮こませながらもレイチェルは歩みを止めなかった。雪山の天辺を目指して唯只管登り続ける。そうして漸く山頂へと辿り着いた。
 見下ろせば星の灯りで彩られた街が小さく見えて、見上げれば満天の星空が手を伸ばせば触れられるのではないかと錯覚する程に近く感じられた。
 山頂ということもあり、先程から見かけていた星の欠片より大きく輝きが強い星の欠片が転がっている。瓶の蓋を開けてレイチェルは満月の様に冷たく輝く金色の星の欠片を詰め込んだ。
 シンプルで飾り気の無い瓶はその色と輝きをより引き立ていた。
 透かして見ればその色は愛しい魔剣の彼、その瞳と同じ色で。
「やはり、俺は彼の色に惹かれるンだ」
 
 

成否

成功


第1章 第8節

マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー

「いらっしゃいませ」
「こんにちは!」
 カランコロンとベルを鳴らし、暖炉の焚かれた暖かい店内にマギー・クレストは足を踏み入れた。
 ぱちぱちと火が薪を燃やす音を聞きながらマギーは店内を歩き回る。
 星の欠片と瓶を扱うこの店は星屑祭の為に買い物に来た客が何人かいる様だった。
 パステルカラーの可愛らしい物からどんどん色が変わる変わった物もありマギーはどれにしようかと、ショーケースの前で迷っていた。そうして何度か指と目を迷わせているうちにふと強い光に惹かれてそちらを見る。
「あ……これは、素敵ですね」
 一際強く白く輝くその星の欠片はまるで空に輝く一番星の様。
 そっと持ち上げればマギーの手の中でさらに強く輝いた。
「あの、これをください!」
「はい、ありがとうございます」
「あの、この場で詰めてもいいですか?」
「勿論ですよ」
 香水の様に洒落た小瓶へ慎重に詰める。ちかちかと瞬いて強い光を放つソレはマギーの目指す先への道を示すカンテラの様だった。
「これはお守りにしましょう。ツリーに飾るのは……可愛いのがいいです」
 瓶に収まり切らなかった欠片は可愛い猫の形の瓶へと収めて真っ赤なリボンを結ぶ。
 リボンに縫い付けられた鈴を鳴らせば、ちりんと愛らしい控えめな音が響いた。
「ふふ、にゃんこさんが一緒にいるみたいです。どんな風に輝くか楽しみですね」
 早く飾りたいと言わんばかりにマギーは瓶を抱いて広場へと駆け出して行った。

成否

成功


第1章 第9節

エドガー(p3p009383)
タリスの公子

 目の前にずらりと並んだ様々な色の星の欠片に様々な形の小瓶たち。
 さてどうしたものかとエドガーは顎に手を遣り考えていた。
 元の世界に居た頃は騎士団を抱え、執務に追われ外交に追われ、こういった物を集めたことが無かったのだ。公子という立場上、買い物に気軽に行ける身分ではなかったというのもあるのだが。
「よくサーシャが……友達が、自室に持ってきてくれたものだ」
 身分を気にせず対等にエドガーに接してくれた隔たりの無い貴重な存在。
 どういえば彼女は元の世界でどうしているだろうか、息災だと良いのだが。
 今は遠き故郷へと思いを馳せ、エドガーはもう一度並べられた星の欠片と向き合った。
「とりあえず、一通り買ってみようか」
 どれも綺麗で決められないからと、ひとまず目に留まったものを端から手に取っていく。
 薄いピンク、青、白……カラフルで小さな星の欠片を沢山取ったら、今度は瓶を探す。
 変に気取らず、シンプルで丸い形の小瓶を選んだ。
「懐かしいな、確か……そうそう、こんな感じの小さな瓶に、とにかく綺麗なものを詰め込んで……」
 様々な彩の小さな星の欠片を詰め込んだ瓶は金平糖と言われる菓子に似ている気もする。
 蓋をしっかり閉めて、小瓶を控えめに振ると光を反射して欠片が煌めいている。
「……うん、どうだろう。きらきらと輝いて……素敵じゃないか?」
 ――ええ、とても!
 今は傍に居ない筈の友の声が聞こえた気がした。

成否

成功


第1章 第10節

三國・誠司(p3p008563)
一般人
アイシャ(p3p008698)
スノウ・ホワイト

 大勢の人が集まる広場の中央に設置された大きなツリー。リボンがついたをベル取り付ければちりんと小さく音が鳴る。
 足元に置かれた木箱から一つ、また一つと飾りを取り出して丁寧に取り付けていく。
「私、ツリーの飾り付けって初めてです。大きくて綺麗ですごい……!」
 自分の背丈の何倍もあるツリーを見上げてアイシャは目を輝かせた。ライトアップこそまだだが、たくさんの飾りを着けて堂々と聳え立つその姿は圧巻である。
「そっか、アイシャは初めてなんだ」
「はい! こんなに素敵なんですね!」
 るんるんと鼻歌を歌いながら、宝物を扱う様に丁寧にツリーに飾り付けを施すアイシャに三國・誠司は目元を緩めて自分の手元を見た。
(ああうまくはできないよなぁ)
 もうちょっと、なんとかならなかったのか僕。
 と思ってしまうくらいには雑な飾り付けが目について、ちょっとだけ微妙に手直しした。結局歪んだのだけれど。
 ツリーの飾りつけは順調に進み、あと残すのは一つぽつんと寂しい木の天辺だけ。
「いやー、やっぱり一番はツリーのてっぺんでしょ」
「わっ!」
 誠司はアイシャ残して腕の下に手を差し入れ、高く飛び上がった。優しく持ち上げられ、一瞬驚くもすぐに笑顔がアイシャに戻る。相手が他ならぬお兄ちゃんだからこそ安心して身を委ねられるのだ。
(皆が幸せになれますように)
 そう願いを込めて天辺に一際大きな星を飾りつけた。
 願いに応える様に途端に降り出したのは星の雨。
「わぁ…….お兄ちゃん、とっても綺麗な星空ですね! お星様がシャワーみたいに降ってきますよ!!」
 幼い子の様に空を指さすアイシャに本当に純真な子だなあと思いつつ、誠司はもう一つの目的を思い出した。
「そうだ。僕らも瓶作らなきゃ」
 アイシャを降ろして誠司は降ってきたばかりの欠片を拾い集める。欠片はうっかり見落としてしまいそうなほど透き通った白い色をしていて、気づかなければ壊してしまいそうだ。慎重に小瓶に入れていく。小瓶には細工が施してありパッと見ただけでは透明な、なんの変哲も無い小瓶だが、中を覗くと夜空の様に黒く染まるのだ。その瓶の中で、真っ白な欠片は流星の様に強い輝きを放っている。ある程度詰めたところで誠司はアイシャに欠片を手渡した。
「はい、お裾分け」
 まぁ、と嬉しそうにアイシャはその欠片を受け取りはにかんだ。
「お兄ちゃん、ありがとうございます。私からもお裾分けです」
 アイシャが選んだ星の欠片は鮮やかで儚さを感じさせる色とりどりの物。
 大きな雫の形をした小瓶に詰められたそれらは黒から青にかけて変わるグラデーションの硝子と相まってあの日二人で見た花火の様であった。チェーンついたそれはネックレスの様なっていて、首につけるとアイシャ鎖骨の辺りで光を反射して輝いている。
「白い欠片をいっぱい集めましょうね」
 ふわりと微笑んだアイシャの表情は夜空の星に負けないくらい煌めいていた。

成否

成功


第1章 第11節

リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

 木製の扉を押し開けると、ギィと小さく音が鳴る。
 ゆっくりと押し開けてベネディクト=レベンディス=マナガルムとリュティス・ベルンシュタインは主従揃ってスタアライトのとある店を訪れていた。
 店内は聖夜の為に飾り付けが施され、壁に取り付けられた棚には星の欠片が眩く輝いていた。
「これが星の欠片か、想像していたよりもずっと小さな物なんだな」
「大きかったり、小さかったりと……ですが、売り物だけあって形は整っているのが多いですね」
 物珍しそうに欠片を手に取り呟いたベネディクトにリュティスも同意する。
 同時に今回のお目当てである欠片はどれにしようかと並べられた商品をじっくりと眺めていた。
「ふむ」
 イメージを膨らませては上書きを繰り返しベネディクトが手にしたのはうっすらと蒼く輝く、大きな欠片。自身の瞳にも似た色のソレを試しに瓶に入れてみる。
 シンプルなデザインだが光の当たり方によって色を変える不思議な瓶の中で、蒼の輝きはさらに増したような気もするが、なにか物足りないような気もして。
「大きな欠片を自分とすると――」
 今度は目についた様々な色の欠片を幾つか入れてみる。
 大きな欠片の周りを囲う様に散らばったそれは、まるで過去と今と……自身に関わってくれた者達の様だとベネディクトは目元を緩めた。
 満足そうな主人の様子を見て、微笑んだリュティスもまた自身の瞳でもある赤色の星の欠片を集めだす。
 ――いつまでも御主事様の元にいられますように。
 願いを込めて小さな銀細工のアンティークのガラス瓶へその赤を詰める。
 星の加護を、なんて大層な物ではないが、ちょっとしたお守りになれば良い。
「リュティス、良かったら、お互いに完成した物を交換しないか? 俺の願いは幾つもあるが、この星の欠片はリュティスが幸福である様にと願って集めた物だから」
「交換ですか?」
 突然のベネディクトからの申し出にリュティスは一瞬目を丸くした。
だが、この世で誰よりも尊い方からの申し出を、恐れ多くも私の為にと考えて集めてくださった物を断る理由などあるだろうか。少なくともリュティスはそれらを持ち合わせていなかった。
「私も丁度そのように考えておりましたので、是非お願いします」
 そうして、ベネディクトからは大きな蒼い星の欠片と様々な色の小さな欠片がリュティスへと。
 リュティスからは透き通るような赤い星の欠片がベネディクトへと手渡される。
 最初から其処に収まるべきだったのだと言わんばかりに、互いの手の中でさらに星の欠片は輝きを増した。
「そうですね、お守り替わりに使って頂けると嬉しいです」
 大切に頂いた小瓶を胸元に仕舞い、リュティスはスカートの裾を摘まんでゆったりと恭しく傅いた。
「いつまでもお守り致しましょう」
 黒狼の二つ星は常に共にある。
 時には主従として、時には戦友として。
 守り、戦い、傷ついたとて、いつまでも貴方の傍に――。

成否

成功

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