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シナリオ詳細

ゲラッセンハイトの最奥

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 そこはかつて、天文台だった。
 仕切られた筒の中から望遠鏡のように星を覗き、その空を天球儀で探して。そしてマジックアイテムの類で未来を視ていたのだ。
 当時の彼らには今も、イレギュラーズたちもあずかり知らぬ未来も見えていたのかもしれない。それこそいつか訪れる滅び──絶対的破滅確定状況、通称『観測値D』の事も知っていたかもしれないだろう。
 壁に描かれていたのは未来を視るための方法の一部と、恐らくは視た未来の光景。当時の者たちは忘れてしまわぬようにとしたのだ。
「……と、だいだいこんな感じだったのです。現在もゲラッセンハイトは少しずつ調査が始められています」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉にサンディ・カルタ(p3p000438)は相槌を打ちながら、かの遺跡を思い返す。そうか、とうとう人が入り始めてしまったか。
 遺跡に入るための第一難関を突破し、且つ途中までとはいえ探索を進めたのはイレギュラーズである。最後まで自分たちで為せなかったことに悔しさを覚えないわけもなく。
「……ところで。どうしてここにいるんですの? ベンタバール」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の言葉に視線はサンディの知己である遺跡荒らし、ベンタバール・バルベラルへと向けられる。彼はヴァレーリヤの言葉に肩を竦めた。
「つれねぇなあ。遺跡の情報を渡したのは俺だぜ?」
 そう、イレギュラーズたちが遺跡へ侵入できるタイミングを教えたのも──さらに言えば遺跡自体の存在を教えたのもこのベンタバールである。本人が希望さえすれば情報屋へ転職できるのではないだろうか。
 最も彼としては未踏の遺跡へ踏み込む方がロマンがあって良いのかもしれないが。
「皆さんにはラサの方から、引き続きあの遺跡の踏破をお願いしたいと依頼が来ているのです。ベンタバールさんは一緒について行きたいと」
「いいねぇ、あの先のお宝を探しに行けるわけだ」
 キドー(p3p000244)はその眼をきらりと光らせる。彼にとっちゃあ遺跡よりお宝、金である。ベンタバールの同行も、横取りさえされなければ構わない。欲するものがあるのならば依頼も忠実にこなして見せよう。
 その傍らに前回いた相棒はいない。彼女はきっとまだ、亡くした大切な友を想っているのだろう。ウルトラマリンの歌が彼女にどう響いたのかはわからないが、またいつか共に宝を探しにいけたら良い。
「また水が引いている間に行って帰ってくれば良いのかしら?」
 Erstine・Winstein(p3p007235)の問いかけにユリーカは首を振る。今回はベンタバールからではなくラサからの──こう言っては何だが──正式な依頼の為、あちらからも協力者が付くらしい。
「水が引いたら皆さんを遺跡へ入れて、その後入り口を閉めちゃうのです。水が引くごとに、外からタイミングを見計らって入り口を開け閉めするのですって」
 つまりたとえ早く探索が終わろうと、次に水が引くまでは出られない。遺跡内の安全圏、天文台となっていたあの場所で待機という事になる。
「なら、調べるような時間があるかどうかはこちら次第ということね」
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が至極真面目に頷く。彼女としてはそんな時間も欲しい所だろう。けれどエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)という良き友人であり、良きストッパーが一緒だ。
「イーリン。まずは踏破してから、だ」
「勿論わかってるわ」
 踏破して、時間があれば調査もする。いよいよ最奥へという雰囲気に炎堂 焔(p3p004727)がキラキラと目を輝かせる。
「楽しみだねっ! あれだけしっかり守ってるんだもん、すごいものがあるはずだよ!」
「強い敵……いえ、強い守護者もいるようでありますからね」
 頷くエッダ・フロールリジ(p3p006270)はいつもの騎士(メイド)服の裾を揺らす。準備は万端だ。

 さあ行かん──遺跡の最奥へ!

GMコメント

●成功条件
 ゲラッセンハイトの遺跡踏破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●ゲラッセンハイト
第1弾『ゲラッセンハイトの遺骸』https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2806
第2弾『ゲラッセンハイトの守護』https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2976
第3弾『ゲラッセンハイトへの侵入』https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3184

 これまでの活躍により遺跡侵入、そして仕掛けを起動させた後の最奥へ続く道へ入ることが可能です。今回遺跡の入口ギミックはラサの協力者たちが動かしてくれます。

 入り口から階段を上がり、あるところで階段を降りると天文台たる場所へ辿り着きます。ここにあった天球儀などは既に前作で回収されており、現在は練達で調べられています。星の位置が現在と異なるという事で大盛り上がりでした。

 仕掛け起動後の道は罠が多く仕掛けられており、より慎重さが、或いは大胆さが必要となるでしょう。
 少しばかりの精霊が揺蕩っているようですが、この遺跡特有のものではありません。時間の感覚も鈍いようです。
 道は暗く、いくつかの道に分岐していることがすぐわかります。そこまで複雑な構造ではなさそうです。

●エネミー
 いずれも仕掛けを起動させた後の道で遭遇する可能性があります。

・ガーディアン=キャット
 機械仕掛けの猫。雑魚敵その1です。瞳が光っているので、注意して見れば逆にわかりやすいでしょう。
 反応に長け回避は低く、出血系BSの攻撃をします。

・ガーディアン=バット
 機械仕掛けの蝙蝠。雑魚敵その2です。飛びます。この遺跡の中で唯一神秘攻撃を行う的です。
 回避に長け防御技術は低く、混乱・麻痺系BSの攻撃を放ってきます。

・ガーディアン=ヒューマン
 機械仕掛けの人形。表で戦ったガーディアンよりスリムで、しかし鈍重な武器を持っています。
 この遺跡のボスとも呼べる敵です。今宵も遺跡のどこかで、守るべきものを守っているでしょう。
 反応は鈍いですが、その分攻撃は鈍重です。防無攻撃も行います。
 また、このガーディアンが倒された時は【周りの異変に殊更気をつけてください】。

●NPC
・ベンタバール・バルベラル
 サンディ・カルタさんの関係者。(https://rev1.reversion.jp/guild/1/thread/4058?id=1100295#bbs-1100295)
 ナイフ使いの遺跡荒らし。技術はありますが、本人のいい加減さや調子の良さが災いして発揮しきれていないのか、それともわざとそうしているのか。ローレットの情報屋もあずかり知らぬ情報を先に持ってくるなどということもあり、掴み所がありません。しかしローレットの、というよりサンディさんの味方であることは間違いないでしょう。
 本依頼においては皆さんに同行し、共闘します。近~中距離のアタッカーとしてそこそこ頑張ります。

●ご挨拶
 ご発注ありがとうございます。愁です。
 まさかゲラッセンハイトも4作目になろうとは思いませんでした。調査もほんのり混じっていますが、踏破が成功条件です。今度こそ踏破しましょう!
 プレイングをお待ちしています!

  • ゲラッセンハイトの最奥完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)

リプレイ


 部屋が動く。天が動く。まだ青空の見える天を『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は仰いでいた。それに気づいた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)もまた空を見上げる。
 あの青空の向こう側では、恐らく星が絶えず輝き続けている。星の光、その知識はどこででも──船乗りや果ての見えない砂漠を行く者、雪野原を行く者であっても──必須と呼べるスキルであろう。故に、こうして天文台を作り星を見る行為は当然あっておかしくない。
「見るところ、ここに求められていた機能はそれ以上のようでありますが」
 次いでエッダが視線を向けたのは壁画だ。そこには以前探索した時に見つけた儀式の一幕が描かれている。天球儀と何かの球らしきアイテム。そして星に祈る人々。
 エクスマリアもまた、エッダと同じように壁画へ視線を向ける。
「この探索で、かつて見た未来は、どこまで見えるのだろう、な」
 未来視、あるいは過去視の儀式がされていた場所だ。その名残もまたどこかに示されているかも知れない。先人たちが守ろうとしていたものがそれらなのか、全く異なるものなのかは分かりかねるけれど。
(星を見る人は何を守ろうとしたの。何を望んだの)
 語られない真相が、どうかこの先にありますように。そう願うイーリンの耳に、仕掛けが留まる音が響いた。
「長かったけどあともう少しだね!」
「ええ、ここまで来たからには最奥まで調べてしまいましょ!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の言葉に『Ultima vampire』Erstine・Winstein(p3p007325)は頷いた。この遺跡に関わること早4回。最初に訪れた時はこのような未来は予想だにしていなかった。もしかしたら先人は視ていたのかもしれないが──それがどのような未来だったとしても、Erstineたちは成功へと突き進むだけである。
「天文台って聞くとお宝ってのは少し薄そうだが、」
「何言ってますのサンディ! これだけの仕掛けと守護者で守っているのだから、この先にはすごい物が隠されているに違いありませんわー!」
 『ラド・バウC級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)へ『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が熱く語る、その瞳にお金が見える気がするのは──気のせいだろうか?
「今回は時間制限も気にしなくて良い。思う存分調べ放題だ」
「ベンタバール、抜け駆けは厳禁ですわよ?」
 ヴァレーリヤの視線にサンディの既知である遺跡荒らし、ベンタバール・バルベラルが「勿論だ」とウィンクする。
「……ま、何はともあれ。帰るまでが盗掘でありますよオメーラ」
「盗掘じゃありませんわよエッダ」
「チッ……細かいことを気にしないのであります」
 エッダとヴァレーリヤの会話を耳にしながら『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は1歩を踏み出した。相棒には土産でも持って帰ってやろう。彼女に一緒に行けばよかったと言わせられるように──なんて。

 カツン、カツンと一同の足音が響く。序盤は前回通ったため罠も解除済みだ。焔の神炎が視界を明るくし、ヴァレーリヤは進んだ歩数を記録に残しながら地図を作っていく。Erstineが持つメモは彼女が可能な限り調べつつ進む中での覚書だ。
「お、ここは前に戦ったところだな」
 焔の炎に照らされ、ベンタバールがひょいと前を見て声を上げる。そこに転がっていたのは以前倒したガーディアンだ。
「ということは、この先からか……」
 サンディは辺りを見回す。ここまでも注意深く観察したが、特段変化したような場所も見受けられない。時間で通路が変化していくような場所ではないのだろう。
「サンディ。他の気配は、どうだ」
「ああ、ちっとも引っかかりやしない」
 エネミースキャンも働かないと首を振るサンディ。エクスマリアはまだ暗い先へ青の瞳を向けた。
(警備すべき場所は、決まっているということ、か)
 ここからが本番。先頭に罠解除役であるキドーとイーリン、そしてシーフぴよちゃん──盗賊の心得があるひよこちゃんらしい──を配置し、ひたすらに罠を解除しまくって進むのだ。
 最初の分岐点にイーリンが小型ナイフを刺して目印をつけ、また別の同じナイフで罠を調べる。
「罠は前回と同じかしら。どう、キドー?」
「ああ、みてえだな」
 以前も罠解除を担当していたキドーはイーリンの問いかけに頷き、自らもまた仕掛けられていた罠をシーフぴよちゃんとともに解除したのだった。
「……いるぜ。その暗がりの先だ」
 分岐点を右に進み、暫く。不意にサンディが敵の感知を仲間へと知らせる。そっと覗き込んでも猫の目は光っていない。
「ということは蝙蝠でありますな」
 その身を暗がりへ躍らせるエッダ。その耳は羽音を拾い上げた。同時に焔の炎が視界を明瞭にさせ、機械仕掛けの蝙蝠を浮かび上がらせる。3体は機械の翼を器用に羽ばたかせるとイレギュラーズたちへ牙を剥いた。脳に響く音波に何名かが顔をしかめる。
「何ですの、これ……ああもう!」
 顔をしかめたヴァレーリヤのメイスが火を噴く。すぐさま焔が戦乙女の呼び声で正気づかせ、同じように混乱させられていた面々も自己治癒で体勢を立て直した。
「戦闘は任せてちょうだい!」
 エッダの引きつけたガーディアンへErstineが肉薄し、格闘術も織り交ぜた至近戦闘でその余裕を剥ぎ取っていく。重ねるようにベンタバールのナイフが飛び、それでも逃げ惑うガーディアンへエクスマリアの視線が──合った。
「エッダ、奥から増援来てるぜ!」
 弓による一矢を放ったサンディがさらに奥の暗がりからやってくる猫の眼に叫ぶ。承知であります、とエッダはガーディアンに対して受け身の姿勢を見せた。
 イーリンの声援により仲間たちの士気が上がり、バットと猫を1体ずつ確実に仕留めていく。そこに幾らかの運命が煌めいたものの、まだ余裕は残されていた。
 戦闘を終え、さらに先へと進んだ一同は行き止まりの部屋に到着する。何もない──強いていうのならば机と椅子があるのみだ──部屋には特段調べるような場所もなく。
「一旦引き返しましょう。休憩もした方が良いわ」
 通常ならば遺跡でおちおち休んでもいられないが、ここには安全地帯と確約された天文台がある。イーリンの言葉に一同は頷き、元来た道を引き返した。



 引き返した皆の前に並ぶのはエクスマリアと焔の持参した弁当や、探索慣れしたイーリンの携帯物。
「干し肉に蜂蜜にチョコレート、どれがお好き?」
 ひょいひょいと次から次へ取り出していく彼女はまるで魔法使いのよう。それらを食べながら一同はこれまでの情報を整理していく。
「扉にも壁画のようなものはなかったわね」
「ああ。罠が仕掛けられている割には、大した施設構造でもなさそうだしな」
 Erstineの言葉に下の階層を思い出すサンディ。探索自体にそこまで時間はかからなそうか。
「ま、休めるときには休んどかねえとな」
「焦らずじっくり調べられるのは良い事よね」
 キドーはErstineに同意しながら煙草を取り出そうとして、ふと上を見やる。あの天井は外に抜けているのではなく、ガラス板で塞がれているはずだ。空気がある以上、どこかに通気口があるのは間違いないだろうが──風通しが良いなどとは言えない。ここで火をつければ顰蹙を買うことだろう。
 仕方なしに煙草をしまい、改めてキドーは空を見上げる。焔もまた同じように頭上を見た。
「ここなら綺麗にお星さまが見えるのかな?」
「さてな。俺には星なんてよく分からねえ話だ」
 キドーたちの見上げる空はもうすぐ夕暮れだ。もう暫しすれば星も瞬くかもしれないが、そこまでのんびり休憩しているわけにはいかない。
 とある世界では、広い虚空に浮かぶ石や岩を星と呼ぶ。
 とある世界では、世界同士を隔てる膜に開いた穴から漏れる光を星と呼ぶ。
 ならば混沌の星は、一体何なのだろうか。そんなことを考えていれば、休憩の時間もあっという間だ。
「さあ皆、仮眠は大丈夫?」
 イーリンの言葉に一同が頷く。誰も仮眠はしなかったが、それも惜しいほどに興奮しているのは確かだ。
 長い長い探索の終止符を打ちに、一同は再び下階層へと向かっていった。

 ここは、と誰かが呟いた。
 呟いた声は想定よりも響いた。
「ビンゴだ」
 キドーの声が笑っていた。道を変え、行き止まりについては引き返し。焔の鳥が偵察役を担っていたためさしたる時間ではないかもしれないが、罠を解除することもあって気は常に張っていた。その努力がとうとう、何度目かの選択によって報われるのだ。
「最後の難関、だ」
「ええ」
 エクスマリアとイーリンは部屋の中心にいるガーディアンに武器を構える。その後方には小さな扉。小部屋があるようだ。
「ここまで隠し部屋はないようでしたけれど、あそこはいかにもって感じですわね」
 メイスを手にしたヴァレーリヤにサンディが、そしてベンタバールが頷く。エッダが服の裾を揺らして──。
「──おいでなさいませ。自分は、貴方の献身を称える者であります」
 ガーディアンはその言葉に、弾かれたように動き出した。振るわれる武器は重く、エッダの足を沈みこませる。けれどこれが相手の使命とあれば、それを迎え撃つことこそ守護者の誉れであろう。ただ誰もこない場所で朽ちるよりずっと良い。
 だから引かない──引けない。引くわけにはいかない。
「遺跡を守っているところごめんなさいね……!」
 その懐に入ったErstineの大鎌が守護者の首を狙う。硬い感触。けれども僅かに傷つけて彼女はその大鎌を引く。代わりにそこを狙うのはベンタバールのナイフ、そしてキドーのフォースオブウィル。意思という不明瞭なものに阻まれたか、守護者が挙動不審な一面を見せる。
「今のうちに!」
「頼むぜ。あとはくいしばって耐えりゃ、こっちのモンだ!」
 エッダと壁役を担うサンディ。守護者の攻撃を食らうたび、風が守護者に傷をつけていく。自己回復力も合わされば強靭なる要塞だ。
 彼の言葉に焔は苛烈な攻撃でもって応える。彼らの負担を少しでも減らすためにはよりダメージを与えていかなければならない。
「遺跡外のゴーレムの上位種、だな」
 エクスマリアはその叩き込んだ攻撃の手応えにそう呟く。あの時は複数いたが、こちらは1体。その強さはおして図るべしだ。
 けれども数ではイレギュラーズが勝り、そして運命を自らのものとする彼らの強い煌めきはその先にだって手を届かせる。その先へ手を伸ばすことがどれだけ厳しくとも、しぶとく諦めない気持ちが彼らを後押しするのだ。
「まだよ、お互い終われない、でしょう?」
 守護者に語りかけながら、同時にイーリンは仲間を応援する。あともう少し、あともう一押しと。
『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え──』
 聖句の一節を口にしたヴァレーリヤのメイスから衝撃波が放たれ、鈍重なる武器の重心に押されたか守護者がよろける。その一瞬に彼女の瞳が光った。
 硬い敵ならそれ以上の威力でもって打ちのめせ。そう、鉄帝人らしく!
「どっせーーーーい!!!!」
 炎を纏ったメイスが思い切り振り下ろされる。ばき、と砕ける音が響いた。
「よし、畳み掛けるぜ!」
 イモータリティで自己治癒したサンディに隣のエッダが動く。ひび割れへ向けた徹甲拳に焔の火焔となった闘気が、Erstineの動きを先読みした暗殺術が襲いかかった。キドーは仲間たちを支援せんと神の呪いをかけ、それが長く守護者を苦しませんと取り巻く。
 もう一押し、けれど手を抜けばまだ立ち上がる。そんな状況にイーリンとエクスマリアは視線を交錯させた。
「やるわよ、盟友」
「ああ、任せろ、盟友」
 蛇のように雷がうねり、味方を避けて守護者を狙う。その直後を狙って青の瞳が細められた。
 直後、守護者の全身を飲み込んだ魔砲。それでもなお立ち続ける守護者は、けれど本当にあと一撃。そこを畳み掛けたのはヴァレーリヤの殺さぬ衝撃波だった。

 ──さて、どうなる、か。

 訪れた静寂、停止した守護者にエクスマリアは目を細める。何も起きなければそれで良い。けれど最後の防衛機構たるゴーレムが崩された時、先人はそう易々とこの先にある宝を侵入者へ渡すつもりだっただろうか?
「鳥さん、道の様子を見て来てくれる?」
 その考えは焔も同じであったらしい。使役する鳥は命じられるなり飛び立っていく。
「さて、お宝とご対面ってな」
 サンディが扉の前に立ち、それを押しひらく。キドーの琴線に触れるような罠もなく、それはいとも簡単にヒトを招き入れた。
「水晶、かしら」
「綺麗……」
 安置されていたものにヴァレーリヤとErstineが見惚れる。向こう側が透けて見えるようなそれの中には、何かが渦を巻いているように見えた。
「おい」
 不意に声をあげたのはキドーだ。その声音は硬く、一同へ厳しい視線を向ける。
「何か、来てるぜ。嫌な予感……いや、」
 すぐそばまで迫り来るそれはもはや確信だ。キドーの閃いた直感に続き、遠くから轟音が近づく。その音はまるで、滝を落ちる水のような──。
「……水?」
「まさか、」
「とにかく出るぜ! 俺は溺死なんて勘弁だ!」
 ベンタバールが先陣を切って部屋を飛び出す。次いでその直感を働かせたキドーが。
「サンディ、これ持って行きますわよ!」
「頼んだぜ!」
 ヴァレーリヤが水晶球を抱え込み、サンディも頷きながら部屋を出る。
(なるほど。施設の自壊ではなく、水没、か)
 サンディより一足先に部屋を出ていたエクスマリアは、部屋の壁から飛び出す水に目を細める。恐らくは湖の水だろう。
「まだ帰り道は大丈夫みたい! 行こう!」
 使役する鳥の視覚を借りた焔はそう叫んで来た道を走る。エッダも壊れたゴーレムを一瞬だけ一瞥すると彼女に続いた。
(これまで御苦労なことでありました)
 役目を果たした防衛機構。どうか、安らかに。

 後方から勢いよく迫る水に追い立てられ、イレギュラーズは走った。階段を駆け上がり、最後の1人が飛び込むなり仕掛けを作動させる。
「動いて……!」
 最後の最後である仕掛けが動いた以上、ここが上手く作動する保証はない。けれども仕掛けはErstineの願いに応え、その大規模なカラクリを動かし始めた。
 天が回る。部屋が回る。閉じられた壁から水は染み出して──こない。
「も、もう大丈夫ですの……?」
 安堵にヴァレーリヤがへたり込む。危うく右腕が錆びだらけになるところだった。
「あとは時を待ち、外から開けてもらうだけ、か」
「ええ。それまで休憩にしましょう」
 エクスマリアの言葉に頷いたイーリンが手際よく場所を整える。それならとErstineは調査結果の纏めを提案する。
「4回に渡る調査、きっと無駄にはならないはずだわ!」
「ああ、いいんじゃねぇの。他の遺跡も探索しやすくなるかもな」
 罠の傾向や遺跡の存在理由。挙げるならばいくらあっても足りることはないだろう。
 軽食を齧りながら皆で擦り合わせをしていれば、あっという間に時間が経つ。入口の方から響いた音に一同は顔を見合わせた。
「開いたかな?」
「行ってみようぜ」
 焔か鳥を飛ばし、本日直感の冴えたキドーを先頭に入口へと進んでいく。不意に風が頬を撫でた。
 外と繋がっているのだ。
 こうして外へと出た一同はラサの協力者たちと合流する。最奥から持ち帰られた水晶玉に皆が湧く中、Erstineはすでに閉じられた遺跡の入口を振り返った。水位が上がってきたためほとんど沈んでしまっているが、最後の仕掛けで水が遺跡に流入したためか最初より水位は低い。おそらく時たまに降る雨でいつしか元通りになるのだろう。
(……ラサには様々な遺跡があるのね)
 中には何か伝説のようなものも残っているのだろうか。誰かに聞いてみれば、そう行った文献も保管されているかもしれない。
 まだまだラサの遺跡は多く、その全貌も知れない。それを知るのはきっと──もっと先の話だ。

成否

成功

MVP

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り

状態異常

サンディ・カルタ(p3p000438)[重傷]
金庫破り
エッダ・フロールリジ(p3p006270)[重傷]
フロイライン・ファウスト

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 4回に渡るゲラッセンハイトの探索もこれにて終幕。ご発注をありがとうございました!

 それではまた、どこかでお会いできますように。

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