PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ローレット・コーヒーブレイク

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幕間(コーヒーブレイク)
 レガト・イルシオン、首都メフ・メフィート。
 少し前まで近隣諸国や民草からも悪徳の都やら荒廃の象徴やら不名誉な呼び名を沢山頂いていたその街はこの程幾分か活気を取り戻しつつあるように見えた。
 大通りを行き交う人の流れも、並ぶ露天商の数も随分増えた。響く商人の声も、そこを行く人々の足取りは以前よりもずっと軽やかだ。
「最近どうだい」
「前と一緒かな」
「そりゃすごい」
「全くだ」
「現状維持出来るなんてな、信じられん」
「毎年――どころか毎月酷くなってたからなぁ」
 ……実際の所、かの迷君・フォルデルマン三世陛下の治世を戴くこの国の現状は劇的に何か良くなった訳ではないのだが、『状況が下げ止まった』と感じられるのは大いなる希望と考えられたのである。
 そしてそのちょっとした『改善傾向』は専らある組織が活動を活発化させた時期と重なっていると考えられている。
「……ローレットだよな」
「ああ、間違いない」
「特異運命座標にだけは足向けて眠れんわ。
 まぁ、善人ばかりじゃないのは分かってるけど、それでも……」
「全くだ。『嘘吐きサーカス』も『蠍事件』も。
 聞いたか、陛下はこの間、蠍の被害が回復してない村の支援を命じられたらしいぞ」
「嘘だろ。シャルロッテ様泣いてるんじゃないか?」
「あと『暗殺令嬢』が誕生日の後、物騒な計画を沙汰止みにしたって聞いた」
「俺は『黄金双竜』様が新規に治水事業を始めたらしい。
 まぁ、あの方は元々政治には真っ当だが、人夫への支払いが五割増しだったのだと」
「あの吝嗇家が。ガブリエル様は――」
「――変わらない。いつも最高だ。あの方は領民にお優しい」
 民草絶賛のバルツァーレク伯はともかくとして、すこぶる人気のない御三方までもがこの所随分と政治の真似事の努力を始めたり、丸くなったと市中の評判だ。
 そしてそれは彼等が言った通り、『始まりの日』より動き出した時計の針が――特異運命座標という可能性の塊がもたらした確かな『変化』と言えるのだろう。
 問題は山積している。古豪レガト・イルシオンがかつてのように復権するにはまだまだ時間が掛かるだろう。しかし、春を待つ二月(きょう)の気候のように。厳しい寒さの中にほんの微かに春を匂わせる今日の風のように、それを待つ人々の胸には以前とは違う確かな希望が芽生えていた。
「俺、後でローレットに差し入れしてくるわ」
「俺も。果物と、あとパンなら用意出来る」
 特異運命座標は滅びの神託を回避する為の救世主。
 しかし、彼等の価値は漠然とした未来だけに非ず。
 今ここに生きる人々にとっても明かりであり、救いとなっているに違いない。

●ギルド・ローレットの長い一日
 朝から晩まで。
 実に数百、数千の特異運命座標の寄り合いとなった超巨大ギルドは騒がしい。
 人の出入りはひっきりなしで。

 例えば新しい依頼を探しに来たり。
 例えば仕事の打ち合わせをしていたり。
 例えば食事や酒を楽しみにきていたり。
 例えばそこに居る誰かとの歓談を期待していたり。
 勿論、依頼人がやって来る事も非常に多い――

 千差万別の目的をもったイレギュラーズは突然始まった救世主ライフを思い思いに過ごしていると言える。尤も純種達はともかく、旅人に関しては押し付けられた感が否めないのが確かなのだが――
 からん、からんと入り口のドアで音が鳴る。
「やあ、いらっしゃい」
 相変わらず気安いが、朝が得意ではないのか何時もより冴えない顔で眠たげな『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)が貴方に声をかけた。
「よふかしするからなのです。おろかなのです」
 不良ギルドマスターが客席でくつろいでいるのと対照的に、さもしっかりしていますと澄ました顔をする『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はカウンターの中で何かの資料をせっせと纏めている最中だった。情報屋らしい事をする彼女の資料がかなりの確率で間違っているのはご愛嬌だ。
「今日の御用は? 御用があったらローレットが承るぜ。
 御用がなくても、暇位は潰していきなよ」
 やたら上手にウィンクするレオンは相変わらず。
 そんなやり取りの間にも次々と新たな人が訪れて――ああ、本当にここは賑やかだ。

GMコメント

 YAMIDEITEIです。
 ラリーシナリオの仕様が出来たのでテスト運行してみます。
 以下詳細。

●依頼達成条件
・ローレットの一日が終了する

●何をするシナリオなの?
 ギルド・ローレットの一日定点観測です。
 ここを訪れる人々の日常や会話、様子等を描写します。
 参加する場合はローレットを訪れて下さい。

●第一章のシチュエーション
 朝です。(時間は7~11時頃を想定)
 レオンは眠そうにしており、ユリーカはキビキビ働いてい(るように見え)ます。
 朝食をとるもの、朝の日課を済ませるもの、仕事を確認しにきたもの等。
 想定されるギルドの風景は必ずそこにあるでしょう。
 というか、貴方もそれを形作る一員です。

●この時間に遭遇できるNPC
・レオン
・ユリーカ
・ショウ
・プルー
・アルテナ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 厳しい依頼の隙間、一時のコーヒーブレイクをどうぞ!
 尚、そんなに超高速で進展するとは限りませんので悪しからずご了承下さい。
 以上、宜しくお願いいたします。


●ラリーシナリオ
※報酬について
 ラリーシナリオの報酬は『1回の採用』に対して『難易度相当のGOLD1/3、及び経験値1/3の』が付与されます。
 名声は『1度でも採用される度』に等量ずつ付与されます。パンドラはラリー完結時に付与されます。

※プレイングの投稿ルール
・投稿したプレイングはGMが確認するまでは何度でも書き直しができます。
・一度プレイングがGMに確認されると、リプレイになるまで再度の投稿はできません。リプレイ公開後に再度投稿できるようになります。
・各章での採用回数上限はありません。

  • ローレット・コーヒーブレイク完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年04月21日 22時08分
  • 章数3章
  • 総採用数111人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

●ギルドの夜
 ローレットは冒険者ギルドである。
 冒険者ギルドは所属や関わる冒険者――この場合はイレギュラーズが大半だ――に仕事を斡旋したり、生活の支援を行ったりする機能を持っている。
 しかしながら同時にローレットは酒場であり、宿屋でもある。
 依頼を斡旋したり、報告を受けたり。様々な冒険者ギルドとしての機能を発揮するのは主に昼間であり、夕刻も過ぎれば『そちら目的の客』が増えるのは必然だった。
 夕食を取ったり、宴会をしたり、もっとシックにカウンターの隅で二人でデートをしてみたり。
 騒がしいのは似ているが、夜の時間は少し違った表情も見せるだろう。
 長い、長い、予定外に長い――随分と長くなってしまったこの一日。
 最後に顔を出したあなたはどんな時間を過ごして……
 この束の間の『コーヒーブレイク』を終えるだろう?


※ローレットに『夜』訪れるシチュエーションです。
 夜の時間では以下のNPCに遭遇できます。

・レオン
・ユリーカ
・ショウ
・プルー

 ゆるゆる見た時処理するので流れた場合は必要なら再送ください。
 全件採用するかどうかは状況に寄ります。悪しからずご了承くださいませ。


第3章 第2節

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
生方・創(p3p000068)
アートなフォックス
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
シルフィナ(p3p007508)
メイド・オブ・オールワークス
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで

●最後の時間
 春の日もすっかりと暮れ、街には暖色の光が灯り始める。国の重鎮である割に今日は暇だったのか、随分と粘った貴族達も夕食前頃には各々の帰路へとついていた。
「わーい、夜だ夜だ。お酒の時間、大人の時間。
 昼間の明るい賑やかなローレットの雰囲気も好きだけど、夜の賑やかさも僕は好きだなぁ。
 さてと、今日はどんなお酒があるかなぁ?」
 カウンターチェアをどかしたカウンターの前に腰を下ろし、ロックでウィスキーを愉しむ『黒狐はただ住まう』生方・創(p3p000068)はすっかり気楽に戻ったローレットを満喫している。
「……いつもより……賑やかな気が……なんだか今日は……色々あったみたいだね……?
 ……今日はちょっとした依頼とかで……お昼に結局来れなかったけど……
 何かあったのなら…僕も見たかったな……」
「何かと言うか、今日は色々とあって疲れましたよ。
 皆さん、どうして…三大貴族に普通に話し掛けられるのでしょうか?
 兎も角……忙しい一日もあと少し……」
『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)。それに応えた『はじまりはメイドから』シルフィナ(p3p007508)からすれば先程のお歴々の揃い踏みは、中々息の詰まる時間だったに違いない。言う程肩肘の張った関係でもないが『ローレットの異物』が失せれば、この場所はすっかり何時もの調子を取り戻す。わいわいがやがやとやや騒がしい酒場は実に大衆庶民的なものなのだ。
 夜のローレットに仕事を終えたイレギュラーズや、その他――用事がある人間が次々と訪れる。
「夜食のデリバリーにやって来た……注文はレオン宛だったが、良かったのだろうか……?」
「いいや、覚えはないがね」
「……ふむ、『待っていた料理が来た』という雰囲気では無さそうだ。
 どうも、これは悪戯発注だったようだな」
 確かにローレット宛のデリバリーの注文を受けたのだが……
『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は少し困り顔でレオンを見た。
「おじさま、これこっちでいいの?」
「あ、ああ……それはそっちに……」
 二人のやり取りを知らず、『絵になる大人(おじさま)二人の会話』にキラキラした視線を向ける『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は台車を引きながらキビキビ動いている。
「あのねあのね、レオンさん!
 わたしもお料理作るのめっちゃ頑張ったから! みんなで食べてね!」
 よりにもよって今日やる気が十分で力一杯そう言ったルアナにグレイシアは顔を手で覆った。
「……はいよ、ありがと。
 よし、その辺のオマエ達。今日は俺が奢ってやる。まぁ、あるだけ食え!」
「……なんだかお仕事で疲れちゃって……
 これから拠点に戻って…ご飯作る気になれなかったし……ラッキー?」
 グレイルに、
「今日は夕ご飯もローレットでごちそうさま、だね」
「オマエは甘いのが足りないかな?」
「うん、甘えていいならホットのエッグノッグが欲しいかな?」
 『屋台の軽業師』ハルア・フィーン(p3p007983)。「了解」と安請け合いしたレオンがカウンターのユリーカに合図する。
「全く、人使いが荒いのです。ハルアさんに言ったのではないのです」
 少しばかり眠そうなハルアが「ごめんね」と言うとユリーカは慌てたように付け足した。
 勿論、レオンの声に沸いたのは二人だけではなく。
 あれだけあった料理は次々とそれぞれのテーブルに運ばれていた。
「今日はみんなでご飯ね、賑やかな晩御飯は久しぶりだから楽しいですね♪
 さぁ、沢山食べましょう、沢山飲みましょう?
 レオンおにーさんが折角奢ってくれるというのですから♪」
「ローレットで食事なんて珍しいね〜。
 それが奢りだって言うならすごく嬉しいな〜
 ……って、ミーナ、いいのかな~? 私の食べる量すっごい多いよ〜?」
「たまにはローレットで食事ってのもいいだろ。
 料金はレオンツケで……って冗談の心算が本当になったな、笑う。
 ……ってーことで、遠慮なく容赦なく行くかな。
 悪いけど多分足りないから沢山適当に持ってきてくれや。私もアイリスもかなり食うからな。
 そういやフルールは何か好きな食べ物とかあるか? 遠慮せず頼んでいいんだぜ?」
『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501) 、『年中腹ペコ少女』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159) 、『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003) ――綺麗所三人がテーブルを囲っている。ミーナは「たまには」と言ったが、こんな時間はたまにでもしょっちゅうでもいいものだ。
「確かに人と一緒にご飯食べるのいいよね〜。ふふふ〜、嬉しいな〜」
「ええ、ええ。嬉しいわ♪ そうね、ええそう。
 誰かと共に食事を摂るのはとても楽しいこと。喜ばしいこと。笑顔が溢れますね♪
 では、私はすもものシロップ漬けを。他には特にはいらないわ?」
 食べるより華やぐ時間を愛したい――フルールからの追加の注文もあり、それ以外からも山のように飛んでくる。ローレットの厨房も既にフル回転状態だ。
 あちこちで始まる宴会めいた夕食の時間は楽しい。
「依頼の成功を願って! かんぱーーい!!」
 依頼の成功もクソも関係なく常時アルコール漬けの『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が木のカップをがつんと鳴らしていた。
 最初こそ幾らか大人しく呑んでいた彼女だったが、アルハラ(EX)のスキルは伊達ではなく、ざるに酒を注ぎ続ければ、
「ねー、ユリーカも飲みましょう? 一杯らけでいいから……」
「ボクは! 未成! 年!!!」
「なんれすの、私のお酒が飲めらいとでも?
 ふへへへへ、お酒れすわーー! もっろお酒を持ってきなさい!!」
「誰か! この人を!! 止めるのです!!!」
 見ての通り『綺麗なガワの全てを否定しぶっ飛ばす残念ぶり』を発揮する。
(……これは、『借り』が出来たか)
 グレイシアはといえば「恩に着る」と目線で彼にお礼を言う。
 連続する大変な一日を今日も乗り越えたローレットの時間は実に平和に過ぎていく。
「今日はお二人とお話しながら飲みたい気分で……
 いやね、どういう訳か……最近お酒に弱くなってしまったものだから……
 今日は鍛える為に飲もうと思ってるのっ!」
「エルスティーネさん、ロリなのに呑むのです?」
「え? ええ!? ……こんな身なりだけれど私一応成人よっ!」
 ヴァレーリヤにヴァレられたユリーカが不幸のお裾分けとばかりに『Ultima vampire』Erstine・Winstein(p3p007325)をからかい、ケタケタと笑っている。
「全くアイロン・グレーの空かしら。正真正銘のロリがいう事じゃないのだわ」
 酷く弱い手札同士のキャットファイトにプルーが深いため息を零す。
「この世界で出来なくなってる事はままあるけれど……
 まさか酔いやすくもなってしまっただなんて情けないわ!
 前の世界ではワイン一本嗜む程度には飲んでいたはずなのに……!
 これも呪いのせいなのかしら……っ……特に、あの方の前で飲むと眠くな……」
 カップをぎゅっと握り、赤い湖面を見つめながらErstineはぶつぶつと呟く。
「はー、乙女なのですー。はー、乙女乙女」
「な、何の話……」
 ざわつくErstineにムカつく顔をしたユリーカが肩を竦める。
 そんなユリーカをジト目で注視する者が居た。
(あの子……普段から結構『ああ』なんだ……)
 彼女を『天敵』と認めたトランプの三番――『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)その人である。
(どんな生活とやり取りをしていると思ったら、私以外にも結構適当というか……
 弱そうな人には適当? いや、考えてはいけない。私は彼女よりはきっと強い。たぶん。
 じっくり観察して弱点を探らなければ……)
 いきなり酷い依頼(えっちっち)を紹介された事を根に持っている。
「レオン君、ユリーカ君は普段からあんな感じなのかい?」
「あん? ユリーカが?」
 うん……というか今度から依頼はレオン君に見繕ってもらうね……」
「ああ、いい依頼があるぞ。これなんてオマエ向きだ。ピッタリだぞ」
 レオンの差し出した紙には『えっちっち』。
「だ、だから!!! ちがう!!! 3じゃない!!!」
 閑話休題。
 珍しく暇だったのか、終日ローレットに顔を出していたそんなレオンの所にも人は絶えない。
「レオン様、本日の任務のご報告に上がりました!」
「……あ、そう? お疲れ」
 敬礼し、目の前にどさっと資料の束を置いた『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)にレオンはやや引きながら酒のカップを傾けた。
「……………オマエ、本当に真面目だね」
「それが取り柄ですので!」
 レオンの何とも言えない反応に屈託なくリゲルは笑う。
 宴会交じりの彼にこんなものを持ってくる――物凄く無粋な事をやっているかもしれない、そう理解しながら――しかし朝回しにするよりは良いだろうと考え抜いて行動した結果である。
(レオン様はいつも落ち着いておられ、忙しいはずであろうのに、忙しない面は表には出さない。
 貫禄のある行動が羨ましいものです。一流は休息すべき時は確り取るという言葉を耳にしたこともありますが、上手い息抜きの仕方というのも一人でいると分からなくなるものなのです。
 仕事や訓練をしている方が落ち着く程で――)
 何事もポジティブに良い方向に捉えがちなリゲルは目を閉じ、勝手に感じ入っていたが、
「やっとその気になってくれた訳?」
「うむ、何ともはや、青天の霹靂という形容が相応しい一日になったもの。
 退屈せずに済むのは良い事だが……うむ。流石にそろそろ、口直しをするべきだろう。
 デートしたいのだろう? なら、この一升を空けるまで飲兵衛デートと洒落込もうではないか」
「潰れるなよ」と意地悪く汰磨羈。「潰せたら、こっちに任せるでいいのね?」とレオン。リゲルを既に置き去りにして、隣の席についた『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に関係各所が聞いたなら何ともややこしくなりそうな面倒な絡み方をしている。
「レオン殿ー!
 ちょっと昼間にはしにくかった相談があるので聞いてください!
 美少女の相談ですよ! 役得! 好きですよねそういうの!」
「……オマエね、空気読みなさいよ、空気」
 ややこしい現場に胡乱な奴――『求婚実績(レイガルテ)』夢見 ルル家(p3p000016)が飛び込めば、「残念だったなぁ」と一気に酒を飲み干して汰磨羈が笑う。
「それはそうと! その相談なんですけど!
 拙者死兆ってるじゃないですか! 遺書とか書いた方が良いですかね?
 今までも死は身近でしたけど、実力と運で切り抜けられました。
 でも今回は期限を迎えればどうしようもなく死んでしまいます。
 流石にちょっと…拙者も思うところある訳で、言語化が非常に難しいのですが……諦観というか、寂しいとか空しいみたいな。そういうのないまぜにした感じでですね。
 せめてお世話になった人に何か言葉を残せればと思いまして……」
「……ああ、その」
 ルル家の口にした意外にも何とも重たい――何と言ってやっていいか咄嗟に答えかねる『相談』にレオンの歯切れは悪かった。言葉を探し、一瞬迷う彼にルル家は続けた。
「……という感じのしおらしさを見せたらギャップでモテませんかね!?」
「さあね。唯、リーゼロッテ辺りはきっと怒り出すだろうな!」
「あいた!? レオン殿も何か怒ってませんか!!!」
 ヘッドロックを喰らい頭をぐりぐりとやられたルル家が悲鳴を上げている。
「お話してもいいかしら?」
「どうぞ。ルル家(こんなん)ポイだ、ポイ」
「酷ッ!?」
 一連の与太に肩を竦めた『嘘の刃』暁蕾(p3p000647)が「奢るわよ」と微笑んだ。
「以前レオンが話していた『メガネの知り合い』の事が気になってね」
「何だか随分前の話な気もするが」
「私がこの世界に来た時に持っていたのもメガネ。
 記憶にないから、よくわからないけれど。これはとても大切なもののように思え、自分の過去の手掛かりになるものかもしれないとも感じてたりするのよ。
 もしかしたら、レオンの言う『メガネの知り合い』も何か私の過去に繋がるものかもって――もっとも、それはただの空想か妄想でしかないけれど」
「占い師の直感?」
「そう。たまにはそんな与太話をしてもいいじゃない」
 レオンは「多分関係ないとは思うが」と念を押して言う。
「そいつは俺の何倍か女癖が悪くて、気障で、きっと碌でもない。
 ……ま、旅人のオマエと関わりがあるとは思えないがね」
 夜のローレットは喧噪に満ち、実に無軌道だった。
 食事を楽しむ者あり、会話を楽しむ者あり。時にそれは一日の終わりの自分へのご褒美であり、ちょっとした逃避の意味合いもある。
「酒持って来いですわーー!!!」
「もう、飲まない方が……」
「酒を出すか、貴方が今飲まれるか選ばれませ!!!」←危険人物
 ……単なる怪物もそこにいる。
「……あの、その、レオン君。こんばんは」
 悲喜こもごものあれこれに、彩を添えるのは何処かもじもじとした『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)である。
「あの……この後のお時間はありますか?
 宜しければ、なのですが――ご一緒出来ればと……」
「飯? それとも『それ以外』?」
「……ゆ、夕食です!」
 ><。となったドラマが顔を赤くした。
 ドラマとしては今日は昼から夕方までは王宮図書館でゆっくり過ごすつもりであったが、フィッツバルディ公来訪が全ての予定をふいにした感があった。珍しくレオンが一日中ギルドに居た事は知っていたが、『私』より『公』を優先した結果、余り話している時間は無かった。同居人は後で〆る。
「ど、どうでしょうか?」
 故にこの時間、彼を誘うのは彼女にとっての乾坤一擲である。
「良いのでは」
 そう応えたのはレオンではなく、カウンターの隅でちびちびとバニラアイスとウィスキーを楽しむ『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)であった。
(この組み合わせが美味しいとは大分前から聞いておりましたが……
 混沌は飲酒可能年齢が無暗に高いのでようやく試せるようになったのですよね。
 出身世界では年齢は問題なくともアイスクリームなど高級品で、一兵卒の私では手が出るようなものではありませんでしたし――)
 ポーカーフェイスを崩さないヘイゼルは見た目は兎も角、この時間を満喫している。
「へ、へいぜるさん……」
「御気になさらず。これはそう、ちょっとした酒の肴のようなものでせう。
 人の多い日にはレオンさんを中心に『何らかの、なにか』が起こるものなのです」
 知り合いに――友人にその現場を直撃で抑えられ、ドラマの顔が愉快な感じになっている。
「オマエは見てるだけなの?」と問うたレオンにヘイゼルは、
「……私ですか? そういった諸々は外から眺めるから楽しめるのですよ」
 と涼しく返した。
「そういうもんかい。じゃ、そういう訳で」
「ひゃ――」
 ドラマをひょいと小脇に抱えてレオンが後を情報屋達に押し付けた。
 彼女は見るから嫌な顔をしたが酔いのプルーは「おいたはほどほどにね」と手を振った。
 レオンと入れ違いに血相を変えた『観光客』アト・サイン(p3p001394)がローレットに駆け込んできた。
「あー、ちょっと、ユリーカ! まだ受付閉めてないよね!? ユリーカ!
 依頼終わったから! 今日の分の報酬を!
 個人的に頼んだ情報屋へのダンジョン捜索料の支払いが滞ってて!
 だから待て、待って!! 今、頼む!!!」
 厳密にいえばとっくに受付業務等終わっている。
「また、ばたばたと。今度は何をしたですか」
「まず遺跡のマッピング。いつも通り隠し部屋も罠の位置も全部確認できるだけ描いた。
 罠は全部無力化済みだよ。ゴブリンが住み着いてたから首魁を討ち取った。
 遺跡の最奥のアーティファクト、今回は古代の魔法のペンダントだった
 これを提出して仕事は終わりになる筈だけど――」
 上目遣い(かわいくない)のアトを見て、ユリーカはショウの顔を見た。
 ショウが苦笑して頷くと「仕方ないのです」とユリーカは仕事の処理を始めていた。
「いやー、日付が変わると利子が膨らむからな、助かったよ!」
 ローレットには調子のいい者も多い。
 いい加減で適当で楽しい日々は例えばこんな風にも過ぎていく。
『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)の夜も更けていく――
「……あ、気づいたら、今日ももう夜なのね。
 今日も一日よく働いたわ。しっかり疲れを取って明日に備えないとね。
 晩ごはんなににしよう……おかしいわね。サイフの中身が昨日と変わってないんだけど。
 むしろ減っている位なんだけど……」
 そりゃあな。
「あんなに働いたのに、なんでだろう。
 一番安いスープ定食頂戴な……食べ終わったら帰って寝るから。おやすみなさい」

成否

成功

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