シナリオ詳細
レティクルを南西に
オープニング
●レティクルを南西に
見上げれば満天の星。夜闇のヴェールは綺羅星を飾り煌めく。
水蒸気の少ない冬の大気は普段よりも夜空を高く見せる。低い気温は星の瞬きが大気層を通過する密度のゆらぎを大きく見せる効果もある。だから冬の星は他の季節より強く輝いて見えるのだ。
ここ幻想のとある場所に、星の子供――いわゆる流れ星現象が局地的に多くなるという時期と場所がある。
流れ星。それは星の子供らが空で遊ぶ時に起こる。煌めく星が尾を引いて夜空を飾る現象だ。
しかしこの星の子供はなんともおっちょこちょいの者もいるのだ。地上に落下し、自分の力では空に戻れなくなってしまう。これが星の迷子という現象である。
もし貴方が星の迷子を見つけたのであれば、拾い上げ願いを唱えながら空に投げてあげるといい。星の迷子は空の方向さえわかればまた空に戻れるのだ。
空へ導けば星の迷子はお礼に頭上で星のかけらを降らしながら星屑のダンスを踊り、空に帰っていく。
その際、星の迷子はあなたの願いを空に連れて行く。そうすれば願いが叶うという伝承がこの地にはある。
星の夜、迷子の星を探しにいくのはいかがだろうか?
夜は冷える。暖かいものをお供に夜の散歩というのも悪くはない。
――星は詠う。寿ぎを。
人は願う。星々に。
星と人との邂逅の物語。
- レティクルを南西に完了
- GM名鉄瓶ぬめぬめ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年03月14日 20時55分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
リプレイ
●
春は目の前。とはいえ、まだまだ寒い日は続く。マナ・ニールは水筒とマフィンを用意して、竜胆・シオンと夜のピクニック。
「星ってキラキラして好き……」
見上げる輝く天幕は友達と一緒なら、不思議といつもより綺麗に見える。くちゅんとシオンがかわいいくしゃみをすれば、マナはその場で即席のアップルティを振る舞う。
「わぁ……暖かい」
「はい、竜胆様が風邪をひかないように。ジンジャーも入っているので温まるのです」
ふんわりとわたがしのような笑顔で微笑まれると心までふわふわになるようで。ふわりとマナの肩を夜より昏い羽根が包み込む。
「マナも風邪をひかないようにね」
二人の天体観測は始まったばかり。
盃の中の星空から一つ流星がおちた。流星ごと飲み干すように盃を傾ければ、焼けるような清涼感が喉を通り過ぎる。
一人、星見酒に興じるはクロバ=ザ=ホロウメア。
「??あぁ、いつか二人でゆっくり星を見に行こうとか約束を持ちかけられたっけか」
思い出すは自分が人として生きた尊い時間。交わした約束が叶うことはもう、ない。
それでも約束を護り続けることは自分が人として生きるための大切なそれ。
「そう言えば、流れ星に願いを言うと……っていうのもあったか」
呟くも自分に願いはない。ユメもない。だから目指すものに近づければいいと思う。
――己の内に燻る思い。その衝動がたとえ黒いものであったとしても。
ユーリエ・シュトラールは一人ぼっちだ。
元の世界にいた妹はこの世界にはいない。空を見上げればオレンジに輝く双子星。
名前もわからない星だけどまるで自分たちのようだと妹が言ったあの夜の星と同じもののように見えのに隣に妹はいない。
一筋の流星がユーリエの頬を伝う。
あれ、なんで私泣いて……。募る郷愁。妹に会いたい。
だからユーリエは何事もなかったかのように目をこすり星に誓う。
「いつか元の世界に戻るために頑張らないと!」
雨宮 利香は一人藍色の空に白い指をなぞらせる。
「ここをつないで、こぐま座。それと……」
「一番光ってるので、北斗七星……には無理があるか」
「ひゃっ!?」
突然かけられた声に驚いて振り向けば、銀城 黒羽。
「っと、驚かせたか。すまねぇな」
「いえいえ、星空眺めていただけなんで」
「幻想らしい光景だな。満天の星空を眺めるも、星の子供を空に帰すも、思い人との逢瀬を重ねるにもピッタリのシチュエーション。ロマンチックで良いねぇ、実に良い。ま、最後のは俺には縁のねぇ話だがな」
「そうなんです? あなたモテそうですけど」
「残念ながら」
ふと利香がここではない遠くを見ていることに気づき「どうした?」と尋ねる。
「ええ、私は何者なんだろう、って思いまして」
空っぽの記憶。それは奇しくも黒羽もまた同じ。
「自分が何者かわかるヤツっていんのかね? 誰だって自分が誰で、何をすべきかなんてわかっちゃいねえ。あんたも旅人だろ? 混沌に呼び出されて混乱するのも無理はねえ」
利香は無言で続きを促す。
「だから、自分をこれから作っていくのでいいのさ」
それは黒羽自身にも言い聞かせた言葉だったのかもしれない。
弓削 鶫はごきげんだ。大好きなご主人様と星空デート。セリス・アルベルツの小柄な体を膝にのせ、用意してきたサンドイッチを後から「はい、御主人様。あ~ん♪」と食べさせる。
「あ、あ~ん♪ うん、おいしいなあ……」
せなかにはふたつの弾力のある感触。当ててんのよ。鶫は小悪魔だ。
「はい、お茶もありますよ」
リスに餌付けでもしてるかのようである。古来より、女の武器は料理である。男の胃袋を握った時点で、勝利は決定している。鶫はなされるがままのセリスに頬ずりしながら給餌を続ける。
やがて眠気が訪れたセリスはふたつの弾力に抱かれたまま幸せなまどろみに身を委ねる。
「んん~……鶫お姉ちゃん……すきぃ……」
そんなセリスを愛おしそうに撫でればなんともかわいい寝言が聞こえる。
「ええ。お姉ちゃんも、セリスの事が大好きよ」
九重 竜胆はヴィエラ・オルスタンツと星の夜を楽しむ。
星は流れておちれば消えるのに帰っていくなんて。と不思議がれば、こんな流れ星は私もはじめて。自分の住んでいる世界なのに知らないことは沢山あると感心する。
びゅう、と春の夜風が二人を撫でれば体が震える。
「竜胆は大丈夫? 風邪とか引いてない? 私は平気だけど」
「私は平気よ。昔から丈夫さだけが取り柄だもの」
竜胆がガッツポーズをとればヴィエラはくすくす笑う。
「とは言え、冷えるのは確かだし、はい」
竜胆が暖かいココアをさし出す。
「準備良いわねえ、ありがと、いただくわ。そういえば竜胆は旅人よね? 向こうの星空も綺麗だったの?」
「そうね。とても綺麗だったわ」
言って空を見上げる竜胆の横顔は少しだけ寂しそうにみえる。遠い異郷と新しい世界。思うことがあるのだろう。
「さっ、私達も星の迷子を探しに行きましょうか。一つ位叶えたい願い事あるでしょ?」
そんな表情も一転、笑顔で竜胆がヴィエラを誘う。
「そうねぇ、願い事、か」
彼女には大きな願いはない。それでも、この異郷の友人と取り巻く大切なひとたちとこれからも健やかに過ごせますように。そう願いたくなる夜だった。
●
【旅一座】の面々は揃ってピクニック気分。
準備なんて考えてないんでしょ? しかたないなー!
にこにこと皆のためのお弁当を用意するのは華蓮・ナーサリー・瑞稀。おにぎりサンドイッチ。特製のミートボール!
「星の迷子さんは困ってるの?」
ぴぴぴと人助けセンサーの感度はバッチリ、華蓮と、ヴェルフェゴア・リュネット・フルールの自然会話で星の迷子を探索!
「夜乃さん!私と勝負をしませんか? 奇術師と道化師の間に起こる、なんとも些細な道楽です! 受けてくださいますか?」
ふと思いついたNerr・M・Marzが夜乃 幻に勝負を挑む。
「賭事も楽しめなくて何が奇術師でしょう Marz様には負けたら僕のアシスタントになってもらいますよ」
二人は勝負に夢中だ。
「あら、恋人とられちゃったわね」
にししと華蓮が笑えばジェイク・太刀川が苦笑する。
「旅一座の皆が楽しければそれでいいさ」
「そいつは些か! 狡くないですかァァ!?」
幻が星の迷子ににた光球をいくつもMarzの周りに出現させれば、悲鳴が上がる。偽物には小さなくぼみ。幸いなことにライバルは気づいていない。
星の迷子は木の上で震えているのをジェイクが見つけだした。勝負はノーカン。
「ほら、空はあっちだ、今度は迷子になるなよ?」
ジェイクが空を指し示すと星の子供は螺旋を描いて空に帰る。そのダンスに魅了された幻はキラキラとした目で見上げている。そんな可愛い恋人の肩をそっと抱いたジェイクには気づいていない。
透視でそのダンスを見ていたヴェルフェゴアは自然と目隠しを外す。だってこんな美しい光景を肉眼で見ないなんてもったいない。
(これからもイーゼラー様の元へと全ての魂が無事に届きますように)
「これから沢山のお友達と出会えますように……」
華蓮は願う。それが叶えばまた沢山お弁当作らなきゃ!
ちなみに奇術師と道化師の願いは二人揃って
「仲のいい姉弟になれますように」
夜の冒険は心が踊る。昔は許してもらえなかったけど。サンティール・リアンは意気揚々と歩を進める。なのに今は寂しい。大切ななにかはいつだってなくしてから気づく。
ほころぶ前の蕾の下にいた星の子を見つければ、迷子同士の冒険がはじまる。君は迷子で、僕も――迷子だ。
レティクルを南西に。スコープで覗く空の案内には示されないその外側。ずっと向こうに大好きなお父さんとお母さんがいる。……君ならきっと君のお母さんに出会えるだろう。
星の子を空に帰し願いひとつ。
どうか、違う空の下にいるたいせつなひとがしあわせでありますように
空に消えた星の子にはもう手は届かない。けれどその熱は確かに手の中に。
誰かと眺める星空が美しく見えるのはきっと気の所為ではない。蜻蛉に自らの羽織をかけ、十夜 縁は思う。
「若い嬢ちゃんが体を冷やすモンじゃねぇさ」
「やっぱり、ひとりやなくて良かったわ」
「迷子の星とやら、見つけたかい?」
「ん……ああ、旦那はん、こっちにいてる」
縁が問えば、星の子を探していた蜻蛉は柔らかな光を見つけちょいちょいと指先を揺らし縁を呼ぶ。
「こんな所におったん? さぁお家へ帰り」
「ほー、小さくても綺麗だねぇ……ほら、もう迷子になるんじゃねぇぞ――」
蜻蛉に抱き寄せられた小さな星を縁は突く。
「……空の上のあの人へ、うちはもう大丈夫……元気でやっとるって、伝えて……そして……」
ささやく願いは果敢なくて。最後の言葉は縁には聞こえない小声。縁はそれに気づかない振りをしながらも蜻蛉の願いが叶うようにと星に願う。
星の子が去った手の喪失感が寂しくて仕方なくて、隣の男の手を掴む。
「旦那はん、今だけこうしとって」
男は答えない。だが振り払わないことにお人好しだと女は呟く。その頬には星の雫。男は肩をすくめそれも気づかない朴念仁の振りをした。
「なんと、見事な星空でしょう……」
星空に比べてなんて自分はなんてちっぽけだろうとクラリーチェ・カヴァッツァは思う。
(何かを殺めることも、最期を祈ることも。何かを守ることも……私はちゃんと、行えているでしょうか?)
思索する彼女の足元を光球が転がり出る。蹴ってしまいそうになって慌てて足を止め持ち上げる。
「貴方の居場所はここじゃないですよ」
両手で抱え上げた星の子を空に掲げる。
「お嬢さんも、見つけたのか?」
ふいの声かけに振り向けば、片手に星の子を抱えた、ゲオルグ=レオンハート。
「ええ、あなたも?」
「ああ、こいつも一緒にかえしてあげないか? 一人で帰るよりは誰かがいたほうがいい」
そんな提案に彼女は頷く。
「さあ、お二人でおかえりなさい」
空を示された星の子は踊りながら舞い上がっていく。
「皆の心が温かくなる出来事が起こりますように」
クラリーチェは願いを捧げる。
そんな言葉にゲオルグはくつくつと笑う。なにかおかしいことでも? とクラリーチェが睨めば「いや、まさに今それが叶ったとおもってな」と答える。
「そういうあなたの願いは?」
「少しでも多くの人にささやかな幸せが訪れますように」
彼女も笑う。
「ならその願いも叶いました。この出会いの幸せが」
「それは一本とられたな」
星の子が帰った空を見上げ彼は望郷の思いを強くする。私もまたいつか元いた場所へ帰れるのだろうか。
だから、その日のために。
(ここで私の出来ることをしていかなければな)
まずはその一歩と寒そうな少女に男は一杯の飲み物を差し出した。
「拙者、宇宙警察忍者ですから! おまわりさんであります!迷子星の迷子を送り届けるのはすなわち使命だと思うのです!」
夢見 ルル家は迷子の星の子を抱えゴロゴロとその場を転がり佐山・勇司の足元まで到達する。
「なぁ、お前こんなトコで転がり回って何してんだ?」
「はじめまして! 実は星の迷子を保護したのですが願いが思いつかず……」
迷子を探そうとした矢先、願い事の迷子に早速出会う。いや、こういう迷子を探してたんじゃない。
「あぁ、初めまして。なるほど、願い事を悩んでたのか。そりゃ確かに重要だ」
勇司は律儀にも挨拶を返して、彼女を起き上がらせると一緒に願い事を考える。
「貴殿はどんな願いをされるのでありますか?」
「願い……」
「拙者、思いつきました! 願い事と言えばこれです!」
星の子を中天に掲げ叫ぶルル家。
「美少女のパンティーおーくれ」おーくれ」くれ」
ドップラー効果でまだ「れー」とか聞こえる夜空に消える星の子がこの願いを持っていくのかと思うと、気の毒になって勇司は見えなくなっていく星の子に「こんな願い叶えなくていいから!」と叫んだ。
「どうした? お前さんも迷子かい?」
カイト・シャルラハが滑空しながらレオンカルラに尋ねればふるふると人形が首をふる。「星の迷子を」『探してるの』
「よかったらお前たちも飛んでみるか? 俺も星の迷子を探してるんだ」
「お兄さんは空を飛べるの?」『それってとっても素敵!』
思った以上に軽いレオンを両手で抱え上空から、彼らの探索がはじまる。
『上も下もキラキラだわ』「迷子さんは何処に居るかな」
「お、みっけた!」
中空に浮かんでいるというのにまだ行き先が見つからない星の子に天を教えれば、嬉しそうに彼らの周りを飛び回り更に高いところに消えた。
「そうだ! 願い事! 楽しいことを沢山の友達と見ていきたいな!」
カイトの純粋な願い。
「お願い事?」『ふふっ。彼の願いは叶ってるわ』
「ふふっ、そうだね。彼女は"御友達が欲しい"、そう願うつもりだったからね」
「つまり?」
「お兄さんもお友達ってこと」
もう叶っているという言葉に面食らったあと、友達という言葉を反芻する。
「へへっ、そっか、友達、か」
●
星空を臨み、恋人たちは肩を寄せ合う。一枚の毛布にくるまり、お互いの熱を感じながら。リゲル=アークライトとポテト チップは二人っきりで星を見る。寒い夜も二人なら暖かい。
「それにしても星も迷子になるんだな」
抱き寄せた肩の重さが愛おしい。満天の星空と変わらないほどの星をたたえた瞳が見上げる夜はどこまでも高い。
「帰る手伝いをしたら、願いが叶うみたいだが」
ポテトが毛布の下のリゲルの手を握る。この優しい人はどんな願いをするのだろう。そして私は。
「リゲルが幸せでいられるように」
淡い願いを口にすると恋人の頬に口づけを落とす。
その願いに綻ぶ口元を隠せないリゲルはもう既に幸せだと思う。そんなリゲルの手元には星の子
「えっ、星の子?」
いつの間にか幸せの欠片を手に入れていた恋人の如才なさにポテトは驚いた。
「ポテトとあの子の幸せを。これからもずっとずっと暖かな時間を過ごせるように」
願って星の子を天に還す。願いであるそれはリゲルの誓いでもある。
「ポテト。一緒に幸せを願い、一緒に叶えていこう」
「一緒に……そうだな。叶えていこう。」
星の子は二人の重なる願いを天に届ける。星の子に別れを告げるポテトの頬に熱い手が触れる。
愛おしい想いが二人を包む。自然にポテトの瞳がとじられ二人の影は一つに重なった。
●
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインは星降る夜を歩く。吸血鬼。そういった存在が自分だ。夜との親和性については一家言すらある。
そんな夜の迷子を探しに向かったレイチェルは秋嶋 渓と出会う。
「お空に星を浮かべるってロマンチック! 貴方も迷子探し?」
元気よくそう言われれば、クククと笑ってレイチェルは答える。
「俺の居た世界じゃ、星が夜空から落っこちるなんて無かったが無垢なる混沌の星はどうも違うらしい」
「わかります! お星様が触れるなんて私の世界でもありませんでした! 迷子のままというのはなんだか悲しいですからね!」
そうだなと呟くレイチェルの目に渓の後ろで瞬く星が映る。
「おい、お前後ろ!」
「ふえ? あ! 星の子!」
「おっちょこちょいの迷子よ、空へ帰れ」
「今でも十分綺麗ですが空に帰ったらもっと綺麗になると思います」
踊りながら舞い上がる星の子に渓は願いを託しているようだ。レイチェルもまた願いを託す。
この子の願いが叶うように。俺の願いなんて叶わなくて良いから。
そんなレイチェルをみて渓はニコニコと微笑んでいる。レイチェルはバツの悪い顔になる。少しだけ口角があがったのを見られたらしい。あー……糞、柄じゃねぇ事はするもんじゃねぇなぁ。
「ふふ、星の子が落ちてくるなんて幻想的だね。ここでは普通なのかもしれないけれど……」
万物がまるで手の届くところにあるような不思議な感覚に恋歌 鼎は笑む。
鬼桜 雪之丞はまるで雪のように可愛らしい星の子と並んで歩いている。
そんな二人の前に現れるは森の賢者。有り体にいえばローラント・ガリラベルクだ。
「君たちも迷子のエスコートかい? どうだろう? 私のこの子とも一緒に行動させてはもらえぬか?」
問いかけるローラントの周りをいくつかの星の子がとりまいている。
「ずいぶんなつかれたものだね」
電飾のツリーのようになってしまっているローラントをみて鼎と雪之丞も微笑む。
「実は空を教えてもなかなか帰ってもらえずに困っていた所だったのだよ」
「ローラント様は黒くて大きな夜そのもののようで安心できるのでございましょう」
「星の子、そろそろ帰らないと母君が心配するよ」
鼎が言えば星の子供たちは未練がましくもローラントの周りを回り鼎の指差す空に螺旋を描いて登っていく。
そのダンスは今まで見たこともないような麗しきパドゥドゥ。
その優雅さに雪之丞ローラントは見惚れている。
「願いを忘れちゃだめだよ。私には望みはないけれど……そうだ。君達星の子が無事に空に上がれるように」
「ほんの少しだけ、道標となってください。縁を結んだ方々と、再び、めぐり会うことがあるように」
「どうか、夜闇に惑う者たちの足元を照らす、そんな光を送ってほしい」
三者三様の。優しい願いが空に還る。
「星の子たちよ、どうか立派な星になって、この願いを叶えてくれ」
ローラントの星の子への寿ぎに星の子が瞬いて返事をしたように見えた。
冬葵 D 悠凪は星の子を見つけると、イエスとノーで答えることのできる簡単な質問をする。おうちにかえりたい? はい。星は一瞬の間をおいてから瞬く。もうすこしだけ、この探求者とお話がしたかったからだ。
リジアもまた冬葵と一緒に質問をなげかける。物質の誕生と崩壊を見届ける天使にとって、星という無機物が意思があるということが不思議でたまらないのだ。
声は聞こえないがど彼ら子供のもつ好奇心はくすぐったくも微笑ましい。
誕生を見守るわけでも崩壊を看取るわけでもない。だからこそ、空に還るその様子を見届けたい。それが自分の役目でなくても。
「冬葵、お前の願いを言うがいい。私の願望など語るに及ばないものだし、お前には色々と借りがある」
だからお前の願いが叶うといいと言外に告げる。
「そうですね……では、貴方と一緒に楽しめたらいいと思います」
欲のないその願いに一瞬面食らう。ああ、そうか、そうだな。
「それはもう叶っているぞ?」
「ええ、だからです」
微笑む冬葵にリジアもまた笑みを浮かべた。星よ、『二人』の願いを天に届けてほしい。
「何や、陸ってのはけったいやな。星がおちてくるんやて」
クー=リトルリトルおかしそうにケラケラと笑う。
「よく考えれば。空にあるもの、なら、落ちることも、ある」
「そんなもんかいな? 星ってヒトデににてるんやろ?」
「あまり、離れないで、くれ。夜道は、危ない」
「あ、あの光っとんのちゃうん? 大丈夫? 怪我とかしてへん?」
ふるふると道端で震える星の子を見つけたクーは問いかける。
「ってあか~ん、ヨキはんたべもんちゃいます」
「そうか、だめか」
「ヨキはんが食べる前に還したらなあかん」
クーは幻想を作り上げた。空に還すためのガラスの階段。登る星の子は頂点で瞬くと二人の周りを踊りながら天に還る。その光景にヨキの尻尾が千切れんばかりに振られた。
「はっ、せや、お願い事! えーっと、食べても太りすぎひんよーに!」
「食べたこと無いもの、いっぱい、食べる」
年頃の女の子らしいクーのお願いに比べてヨキの願いはなんともシンプルだ。
俺の願い、それはなんだろう。
宗高・みつきは自分に問いかける。元の世界に戻る、元の体に戻る。
どちらもしっくりとはこない。
そんな迷子の前に星の迷子はやってくる。自分に近いものを感じたのだろう。
召喚されて以来、いろいろあったけどいつの間にかなれた。もちろん嫌だけど。その反面この状況を楽しんでもいるのだ。充貴とみつき。最近その境界があやふやになっているようで不安になる。
星の子は慰めるようにみつきの周りをくるくると回る。
「願いなんてわかんねえよ。空はあっちだ、お前たちは方向さえ分かれば戻れるんだ。俺のことはいいから戻りなよ」
ルルリア・ルルフェルルークとミア・レイフィールドが乱獲しようとするのをマルク・シリングはやんわりと止めて「願いは一つだけだよ」といえばミアは頬をふくらませる。その表情のなんと可愛らしいことか。
「イケメン従業員」「ぴかぴかティアラ」「ダイヤの指輪」「もふもふペット」「玉の輿……!」
どれも最高の願いだから簡単には選べない。
沢山帰れるのはいいのだけれど、やりすぎると他の人が帰せなくなってしまう。何事もほどほどがいいのだ。
「ルルさんの願いはきまった?」
穏やかな声が尋ねれば金色の狐は「宿屋を金ピカにすることです!」とドヤ顔。
ちょっと悪趣味かもしれないと思っているとミアがシャキーンという効果音と共に立ち上がった。
「きまった……! ルルやまるくんが……これからも仲良くしてくれますよーに……なの」
とびきりの笑顔で願われたそれはとても素敵なこと。だからマルクも願う。こんな素敵な店長のいる金色流れ星がいつまでも暖かい場所でありますようにと。
「星の迷子みっけ!」
クィニー・ザルファーが後からメリル・S・アステロイデアをキャッチする。
「ぬあー!? だれー!?」
振り向けば悪戯顔のクィニーだ。
「私は迷子じゃないよー!」
「冗談、冗談。ね、一緒にさがさない? キラキラ輝く一番星!」
二人が探索すれば程なく光る星の子が見つかる。
「で、願いだよね? メリSちゃんがビッグスターになっても、私を見捨てないでいてくれますように……」
さめざめと嘘泣きするクィニーにそんなことしない! とメリルが叫ぶ。
「メリSちゃんはどんな願い?」
「内緒」
だってこんな願い口に出したら絶対にからかわれるから。それでも。空に還る星屑のダンスを見ながら「ありがとう」とメリルは笑顔で告げた。
「ん? なんのこと?」
「なんでもない」
メリルの願いは「これからも仲良くできますように」それは奇しくもクィニーの本当の願いと同じだった。
ティミ・リリナールとルナシャ・クレスケンスの手が同じ星の子に伸ばされる。
「はわ!? ど、どうぞです」
「わわ!? ご、ごめんねー! なんか横取りしちゃってーって、いやいやどーぞ。私は大丈夫ですしっ」
二人とも遠慮して手をひく。一度譲りあうと後にひけない。譲り合い合戦がはじまる。そんな二人の周りを星の子があたふたとしながら回るのをみて二人は顔を見合わせて笑う。
「私はティミ・リリナールです。よかったら一緒にこの子を帰してあげませんか?」
どきどき。断られたらどうしよう。
一方のルナシャはこうみえて人見知りだ。あの子だって勇気を出してくれたのだから。私も答えなきゃ!
「……うん! 一緒に帰そっか? 私はルナシャ・クレスケンス。よろしくー! いーい?それじゃいっくよー?」
少女たちのふたつの手で星の子は安心したかのように空に帰っていく。
「そうだ、お願いは?」
「貴方とお友達になれたら」
「ええっ? そっか、偶然私も同じお願いしちゃってた!」
星が繋いだ小さなめぐり合わせは二人の物語を紡ぎはじめる。
きれい。星ってこんなに明るいんだ。
エデ・ミアンは星空を見上げれば中空から迷子がおちてくる。
エデはやさしく抱きしめる。
願い事は望まない。願い。祈り。それはエデの罪と罰。自らに架せられた重い呪縛。聖女に願う群衆を騙したという罪で彼女は一度『死んだ』。
だから自分が望みを抱くなんて許されることではないと思う。
彼女が星の子に語った過去は罪悪感。星の子は空を差されても帰らない。貴方のお願いを聞くまでは。
ならと、少女は願う。「もう迷子になってはいけないよ」。どこまでも他人を思う心。迷子はそれが悲しかった。だから迷子は願う。少女に幸せあらんことを。
星の迷子か。ひとりはさみしい、ひとりは心細い。
「……見つけた……大丈夫……? ……寂しかったよね……空でみんな……待ってるよ……」
グレイル・テンペスタは不安げに瞬く星の子を見つけるとそっと抱きしめる。そうすれば星の子は嬉しそうに強く光る。空を指させばふわりと浮かび上がり、星屑をこぼしながら踊る迷子にグレイルは目を見張る。
「僕と……とこれまで仲良くしてくれた人たちが健やかでいれますように」
「アンタも見送ったばかりかい?」
目ざとく空に上がる星の子を見つけたスケアクロウ=クロウがグレイルに話しかける。
「俺もさっき送ったんだが、流石に紅茶は飲ませれなくてな。で、飲めそうなやつを探してたらアンタがいた」
「……」
「アンタ、体冷えてるだろ? よかったら変わりに飲んでくれねえか? 」
にししと笑い彼はカップを差し出す。
「『体にいい紅茶』だぜ?」
「なるほど……なら飲まないと。うん、美味しい」
「今度はあいつらも一緒に飲めるような食材や料理がみつかりますようにっと」
めげない願いを言うスケアクロウにグレイルは微笑んだ。
「星、か。元の世界では人々を導く道標だったのだけれども」
コルザ・テルマレスは空を見上げながら歩く。
「さて、迷子の星は…む、あちらに何かが」
周囲を油断なく見つめていたロズウェル・ストライドが一瞬の煌めきを見つけた。
「ん、どこ?」
「そこに段差が、気を付けてください」
「おっと、空ばかりみてしまっていたね、ありがとう」
転びそうになるコルザをロズウェルが支えた。程なく迷子は見つかる
「遊ぶのは良いけれど迷子になってしまうと寂しいだろう?」
「……これが星の子供ですか……きちんと空に帰してやらねば」
二人は優しく迷子を拾い上げ空に放つ。嬉しそうに跳ね回ったあと、星の子は光の飛沫をあげながら空に帰っていく。
「……願いを届ける君たちが、立派な星となれますよう!」
星の子に向かって、コルザがエールを投げかければ星の子は一度だけ一層強く瞬く。
「うんうん、いい返事だ。ロズウェル君、きみの願いはなんだい?」
「コルザさんと仲良くなれますように、で」
気障なその言葉にコルザはあははと笑う。
「おだてても温泉くらいしか出ないのだよ?」
なんなら一緒に入っても良い。そういって嘯く彼女の真意は知れない。
ロズウェルには大きな願いがある。しかしそれは叶えてもらうのではなく自分で叶えなくてはいけないものなのだ。
「星の子……流れ星の事なのと思っておりましたが……まさかこのような……! かわいいなあ!」
星の子を目の前にし、クロウディア・アリッサムは目を輝かせる。
「あ、君も迷子をみつけたのかい?」
ルチアーノ・グレコは星の子に声をかけているクロウディアに話しかけた。願いを持つ人達。そんな隣人に話しかければ自分が「何をしたらいいか」そのヒントを得ることができるかもと思ったのだ。
「……みられてましたか?」
突如岩の影から出てくる人物の声に冷静さを欠いていた自分を思い、赤面する。
「星をこんな間近で見れるのだからね。そうなるのもわかるよ。」
「なんとも恥ずかしい限りであります。この世界は何においても誠に不思議なものばかりでありますね」
「そうだね」
「この仔返さないとでありますよね?」
「一人ここに残るのも可愛そうだし空へかえしてあげよう」
二人は空に向かって星の子を投げれば最後のふたつも無事に天に還る。
「どんな願いをしたんでありますか?」
「僕に沢山の幸せを届けてくれた親友に幸せが巡ってきますように」
「優しい願いであります」
「親友にお返しできるのはこれくらいだからね」
「人のために祈れるのはすごいことです」
「きみの願いは?」
くう、とクロウディアのお腹が悲鳴をあげた。
「とりあえず、お腹を満たすことかな?」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
素敵な願いがいっぱいでした! ぬめのほっぺもほころんでおりました。
星の迷子達はあなたの願いを叶えてくれるでしょう。
今回はご参加本当にありがとうございました!
GMコメント
鉄瓶ぬめぬめです。
冬の夜空を見に行こうというイベシナでございます。
前回ほどの描写量は確約できませんが、全員描写をできるだけしたいと思っています。
お一人様参加、ペアでの参加、ギルド単位での参加歓迎です。
お連れ様と参加する場合はお相手様のIDとフルネーム。グループで参加する場合は【】でタグをかいていただけますと助かります。
また、お一人様で他の方との絡みを希望しない方は【☓】と冒頭にかいてお知らせください。
冒頭に以下選択肢をかいていただけます用お願いします。
飲食物の持ち込みは可能です。
公序良俗をお守りください。
【A】星空を見る。
のんびり星空を眺めます。星座とかはないと思いますが、空に瞬く星を見るのも素敵だと思います。
星の子供の観賞もこちらで出来ます。
【B】星の迷子を探す。
星の迷子を探します。少し探したらみつかります。空に帰してあげてください。お持ち帰りは不可能です。
星の迷子はキラキラ光る小さな光球です。言葉は喋りませんが、皆様の言葉は理解できます。
【C】スイートストロベリーシュガーゾーン
つまりそういうこと。
【D】星の夜の出会いを。
こちらはランダムで皆様をマッチングさせたいと思います。小さな出会いを求める方はお気軽にどうぞ。
以上よろしくお願いします。
Tweet