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シナリオ詳細

おせち料理で寝正月

完了

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それはほんのふとしたきっかけ
「おせちがたべたい」
 と、セレーデが言った。
 彼女は港町ローリンローリンの孤児院が院生の一人。まだまだ幼い女の子だ。彼女は深刻な顔をしてため息をこぼす。普段あまり自己主張をしない彼女の言葉に、院生の子ども達はみんなして耳を傾けた。
「……おせち? お節料理のこと?」
【無口な雄弁】リリコ(p3n000096)は首をかしげた。名前は知っているけれど、詳細は知らない。リリコの言葉にセレーデは、うんとうなずいた。
「おせちはね、しんねんにとくべつなひととたべるえんぎものなの。わたしと父さまはまいとしおせちをたべてすごしたのよ」
 ほわんとしあわせそうな顔でセレーデは言う。彼女にとって魔種になってしまった父はいまだ憧れの存在そのもので、お節料理は彼女の記憶の中で幸せの象徴なのだろう。
「お節ねえ。たしか飯炊き娘が仕事をせずに済むように考え出されたとも言われているわね。あれがあれば新年は食事当番なしでもいいわね」
 院長のシスターイザベラは頬に手を当てた。
「マジ? おせち最高じゃん! おせち食べようぜ!」
「おせちおせち! みんなで食っちゃ寝しよう!」
 いばりんぼうのユリックとおちょうしもののザスがここぞとばかりに同調する。
「あんたたち、そんなこと言って、ただ単に当番やりたくないだけでしょ」
 負けず嫌いのミョールが顔をしかめて癖だらけの金髪をかしかしかいた。
「お節料理ってたしか海洋の名産だよね? 海洋まで行くの?」
 最年長のベネラーが目をしばたかせる。
「海洋は大戦争の真っ最中でちよ。とてもリゾートにいける雰囲気じゃないでち」
 最年少のチナナが顔をしかめて異を唱える。
「……お節。お節ね。ちょっと待っててくれる?」
 そう言うなりリリコは孤児院を出て行き……しばらくして、ローレットからけばけばしい紙束を持って戻ってきた。
「……はい、チラシ。練達の」
「れんだつ!」
 セレーデがぱっと顔を輝かせる。無理もない。彼女は練達こと探求都市国家アデプトの出身なのだ。まさに父との思い出の地。確かに練達なら冷凍技術が発達しているから、料理を取り寄せても大丈夫だろう。
 いろんなのがあるんだねえ、わーこれなに? うまいの? 気になるー! 子どもたちはみんなそろってチラシに夢中。ずらりと並ぶ未知のごちそうの数々に胸を高鳴らせる。
 院長のシスターは笑みを浮かべてこう言った。
「どれも気になるけど、ひとまず、この特大ファミリーサイズお節を100個頼みましょう!」
 彼女は食いしん坊なのだった。

●というわけで
「……いまだかつてなく私達の孤児院にはお節料理が山積みなの」
 そうリリコはあなたに言った。
「まだ蓋も開けていないのがたくさんあるの。だけどね、じつは私達、初日で食べ飽きてしまって……。朝昼晩同じメニューだし、冷たいし、紅茶ともあわないし、食べ物を粗末にするのはよくないから、皆で必死に詰め込んでるんだけど、喜んで食べてるのはもうシスターとセレーデだけ」
 おいしいのはたしかなんだけどね、とリリコは困った顔で言う。だがしかしぶっ通しで食べると飽きるというのもうなずける話だ。
「だから、お節料理を食べにきてほしいの。味は保証するわ。ファミリーサイズだから、食べごたえは十分よ」
 伝統に則った海洋産と違い、練達産のお節料理にはあらゆる世界から集まった旅人たちの「これ食いたい」が詰まっている。昔懐かしい味から、思いもよらない新感覚まで多彩も多彩。これは外せないという縁起物はもちろん、え、これなに、泥、いや、闇、うわああ、なんかねちゃねちゃしてやめろ箸にすがりつくな、登ってくるなあぁぁぁまで。とにかく具だくさん。
「……持ち込みも大丈夫よ。というか、歓迎するわ。キッチンも自由に使っていいから。場所はね……」
 と、リリコは人差し指を頬へ当てた。頭上の大きなリボンがぱたぱた揺れる。
「孤児院の講堂なんだけど、そのままだと寒いから、セレーデの提案で、ホットカーペットとこたつ、というものもいっしょに買い込んだの。あれは、魔種の手先ね。私、こたつに入ると、つい寝てしまうわ」
 てなわけで防寒対策もバッチリなようだ。
 ぬくぬくしながらおせちを食べよう。そんなリリコの誘いにあなたは少し明るい気分になった。

GMコメント

おこたでお節食ってごろごろしようぜ。

あけましておめでとうございます。みどりです。新年一発目、うちのNPC達を本年もよろしくおねがいします。

お酒は持ち込みオンリー。20才以上から。アンノウンは自己申告。
でもお屠蘇飲みたいよね。わっかるーぅ。

書式
一行目 同行タグ
二行目 好きに書くがいい

下記NPCは自由に呼び出せます。
 男ベネラー おどおど 最年長 配膳担当。各種おかわり頼んだら持ってきてくれます。
 男ユリック いばりんぼう 食べるのに夢中(主に持ち込み)
 女『無口な雄弁』リリコ(p3n000096) 紅茶を入れてくれます。腕はそこそこ。
 女ミョール 負けず嫌い 同上。腕はリリコよりちょっと上。
 男ザス おちょうしもの おなかいっぱいでごろごろ
 女セレーデ さびしがりや 食べるのに夢中(主におせち)
 男ロロフォイ 男の娘 誰かと話したいみたいです
 女チナナ ふてぶてしい イレギュラーズに興味津々 黄色いマニキュアしてます
 院長シスターイザベラ くいしんぼう 食べるのに夢中(なんでも)練達産日本酒でごきげん

  • おせち料理で寝正月完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年01月20日 22時20分
  • 参加人数25/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(25人)

上谷・零(p3p000277)
出張パン屋さん
ポテト=アークライト(p3p000294)
ハニーゴールドの温もり
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
守護の獣
主人=公(p3p000578)
ハム子
武器商人(p3p001107)
闇之雲
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
前へ進み続ける森アザラシ
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
咲く笑顔
アニー・メルヴィル(p3p002602)
お花屋さん
藤野 蛍(p3p003861)
二人でひとつ
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ
アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)
クールミント
辻岡 真(p3p004665)
永遠の旅人
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
美咲・マクスウェル(p3p005192)
紫緋の一撃
リナリナ(p3p006258)
エル・ウッドランド(p3p006713)
イカダ漂流チート第二の刺客
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
彼岸会 無量(p3p007169)
庚(p3p007370)
宙狐
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
躾のなってないワガママ娘
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ


 講堂、真ん中、鎮座しますは、祝い樽酒、大吟醸。新年だもの。景気よく!
「「あけましておめでとうございまぁーす!!」」
 アーリアを筆頭に子どもたちとシスターの声が響く。みんなの手が重なって振り下ろされる木槌。「美少女殺し」の蓋が開く。
「ああ、なんていい薫り。あらいけません、よだれが」
「シスターいつもお疲れ様よぉ~。あ、こらこらそこのふたり、飲んじゃダメよぉー?」
 ユリックとザスが樽の中身を覗き込んでいる。が、ミョールに襟首を掴まれ連れて行かれた。
「この煮物のさっぱりとした、でも奥深い味は、やっぱり日本酒よねぇ……」
 おこたに入っておせちをつまみに夢心地。今年はいいことありそうな、予感。

「鉄帝の捕虜になった時はどうなる事かと思ったが」
「こうして無事戻ることができた上に、こたつでぬくぬくしながらおせちか……」
 渦中の人となったリゲルとポテト。無事帰ってきた二人に孤児院の子どもたちもほっとしたようで周りに集まってくる。
「皆ー! 元気にしてたか? ほら、ポテト特製特盛りポテトチップスだ! チョコもあるぞ!」
 お菓子のたんまり入ったバスケットを渡すと、リゲルはひとりひとりハグをしてやった。
 ポテトは持参したポットから湯呑なるティーカップへ緑の液体を注いだ。リリコが不思議そうにそれを見つめた。
「緑茶だ。リリコたちも緑茶とおせちの組み合わせを試してみないか?」
 はい、と一本水筒をさしだしシスター用のおつまみも渡す。リリコはそれを受け取って会釈をした。
 夫婦は二人並んでこたつへ座り、おせちをつまみだした。
「それにしても色々あるな」
「ポテトは食べられないものはあるか? これか? じゃあ俺が代わりに頂こう!」
 こんにゃくでできた人形のようなものをつまむと、リゲルは口へ放り込んだ。
 ガリッ! ギャーーー!
『ヌノノメ星人の踊り食い:断末魔が病魔を祓う縁起物』
 説明書を読んだふたりは遠い目をした。
 ポテトがせっせと黒豆と豚の角煮をリゲルの取皿へ盛っていく。
「リゲル、これ美味しい」
「俺のおすすめはこれだな」
 数の子をあーんと食べさせてもらい、人前なのにと正月から百面相するポテトだった。

 ロロフォイはこたつに入っていた武器商人の背中を見つけてぺたっとくっついた。
「やァ、あけましておめでとう、これはお年玉ね。あぶく銭にするも貯めておくも望みのままに」
「ありがとう! キラキラのカチューシャがほしかったんだ!」
 ふと気づくとリリコもいた。近づきたいけど恥ずかしい。そんなとこだろうか。
「こっちへおいで」
 近づくリリコ。
「お膝へおいで」
 おずおずと膝に乗るリリコ。
「よくできました」
 武器商人はリリコに口を開けさせ、みかんを一房食べさせてやった。ぱくり。口を閉じたリリコが固まる。武器商人の指ごと咥えてしまったから。
「おやァ我(アタシ)ごと食べようってのかい。意外と強欲だねぇリリコは」

「おせち料理ってどれも縁起物で幸せにつながる意味が込められているんだってね」
「確かそうだったな。……まぁ今回のは練達産らしいし、一体何が出てくるやら」
「でもせっかくなら全種類食べて、この一年を良いものにしたいよね!」
「んー……アニーがそう言うなら……」
 しぶりつつ食べられそうなものを探す零。対してアニーは気を引かれたものから次々取皿へ乗せていく。
「おまめーにかまぼーこ、くーりきーんとーん♪」
 即興の歌なんか歌いながらご機嫌。と、その手が止まった。
「零くん、これなに?」
「ん? おあ!? 動いてるぞこれ、ほんとに食べ物か!?」
『クルムイック空間の茶巾絞り:7.5次元でしか採取できないダークマター、不慮の事故を遠ざける』
 説明はともかく闇状の物体はぴょんとはねてアニーの胸元へ飛び込んだ。
「わっわああ飛んできた~~!」
「これこそ不慮の事故だろこれ! 誰だこのメニュー考えた旅人、怒らないから出てこい!」
「いやぁそんなところ、いやぁんくすぐったいよやだぁぁぁ!」
 零はアニーを助けるため胸元をはだけさせ、はだ? はだけ? 女の子の胸元をはだけさせるとどうなるの? 詳細は彼の名誉のため伏せる。
 色々疲れてこたつで眠ってしまった零の寝顔をアニーは見つめた。
「ふふ、零くんの寝顔、かわいいな……」
 よいしょっと膝枕なんかしてみたり。
 零はアニーとふたり、ちゃんとしたおいしいおせちを食べる、そんな初夢。

 キッチンを借りて湯を沸かしているのはリコシェット。
「せっかくだから新緑のお茶、緑茶を持ってきた。おせちに合うお茶と聞いたら、これだったからな」
「……そう」
 リリコは興味深そうに緑茶の葉を見つめている。
「料理が冷たいなら、熱めのお茶が合いそうだ。リリコ、緑茶を頼めないか? リリコならもっとうまくやれそうだ」
「……がんばる」
 しばしの間。一口飲んだリコシェットはきゅーって顔のパーツを中心に集めた。
「ちょっと渋いな」
「……いれなおす」
 今度はましになった。ふたりはおこたに入り、おせちと対面。
「んー、この伊達巻、それに海老! 少し冷たいけど、美味しい……! リリコは何が好き?」
「……鮭のマリネ」

 リリコがやってきて、蛍と珠緒のこたつに小さな花束を置いた。
「……ふたりともおめでとう」
「「何が!?」」
「……私は情報屋」
 それだけ言ってリリコは去っていった。
「……知られているのかしら」
「噂くらいは耳に入るのかもしれません」
 別に恥じ入ることではないけど、やっぱりちょっと面映い。気を取り直して、いただきます。
「まぁたしかに三が日ずっとお節じゃ辛いわよね。でもね「お節もう飽きた」ってワードは主婦の天敵なのよ!」
「実感がこもっていますね蛍さん」
「あ、あら失礼。こほん」
「蛍さんは普段つくられる側でしたか? 珠緒は……知識はありますよ。実際にいただくのは、これが初めてなのです」
 珠緒は微笑んで昆布巻きを皿に取る。一口かじってふむふむ。
「お茶が多めに必要な感じですね……」
「さっきお茶淹れてる人いたから、ボク分けてもらってくるよ」
「あ、いえいえ、いいのです。それより、お料理に込められた意味を教えてくださいませ」
「いいの? 欲しかったら言ってね。そうね、まずはこの蓮根」
 蛍は蓮根を珠緒の目の前まで箸で持ち上げた。
「のぞいてみると……」
「みると?」
 珠緒が顔を寄せる。
「みるとー」
「……みると?」
 蛍も顔を寄せる。二人の距離は蓮根を挟んでくっつきそうなほど。ひょいと蓮根を取り下げ、蛍は珠緒へ頬ずりをした。珠緒は真っ赤。
「将来が見通せるのよ」
 蓮根の向こうのオッドアイは、たしかに暖かくて幸せな色。

「あけましておめでとう。今年もよろしくねー!」
 元気よく新年の挨拶をした真へ、孤児院の子どもたちがわあっと集まってきた。
「おせちに合うんだよこれ」
 真は黒兎リュックからジュエリーレモネードとおにぎりを取り出した。ユリックが目を輝かせる。
「なんだっけ、これ。らいすぼーる?」
「鳳圏ではおにぎりって言うらしいよ。具は食べてからのお楽しみ」
 おせちをたいらげ、ザスとごろごろ。
「食べた食べた、うわ、チナナちゃん上に乗らないで、ミョールちゃんセレーデちゃん、転がさないでー、うあっ、ユリックやったな! くすぐり攻撃だー! あっはっは! どぉれ参ったかー! って、ザスまで! わわわ、ズルいよこんにゃろうっ!」

 黒豆を一粒とって、あーん、むぐむぐ。
 もう一粒とって、あーん、むぐむぐ。
 幸せそうに味わっている美弥妃。豆はふっくら、皮もつやつや。まるで黒い宝石。見た目に美味しい、味だって最高。
「練達製だからって正直なめてましたねぇー。いいですねぇーおせち。お餅と違って喉につまらせるようなものも少ないデスしぃ、ちょっとずつでも数を減らせるように貢献しましょー♪」
 言いながらちらっとシスターを見る。たおやかに微笑みつつも彼女は、どががががっと音を立てながらおせちを空にしていく。
「……100個でよかったのかもデスねぇ」

 来たよ! リナリナだよ! エブリデイ大冒険だよ!
 そう、今日は食の探訪。おせちなるものへ初挑戦?
「おせちって何だ? ウマイのか? セレーデ」
「おいしいよー。とってもとってもおいしいよー」
「おー、コレがおせち! ウマそうだなっ!! 食って良いのか? 食うぞ? 食うぞ? 良いよな、食うぞっ!?」
 彼女にしっぽが生えてたら、たぶんぶんぶか振っている。
「おー、いただきます!」
 両手で豪快にむしゃむしゃ。なんか途中、ガリッとかヒギィーとかぐぬっちょとか聞こえたけど気にしない。気にするわけない。

 おこたに入ったエルは、与の重まで並べられた豪華な机上に息を呑んだ。
「これが……おせち。どういう料理があるんでしょうか? お腹は空いているので大丈夫ですけど……練達製って所が少し心配ですね」
 端から端まで眺めて無害そうなのから。
「このローストビーフはイケますね。しぐれ煮もなかなか。なんでロールキャベツが入ってるんでしょうか」
 見るからに怪しげなものは……。横目で隣の席を伺うとやっぱり跳ねられている。エルは未確認物体をこねこね寄せ集め、ギフトで干からびたパンにした。
「鉄帝の寒村で幼い頃に食べた年越し料理に比べれば豪華ですけど、飽きる。院長は頭のネジが緩んでいるようですね、はぁ……」

 みんなおせちに飽きてきた頃。アンジェリーナはメイド服の襟を整えてにっこり。
「あらあら、皆様新年だからといってだらけていらっしゃいますね。ここは私がメイドとして。皆様のお世話をいたしましょう」
 もちろん邪魔をするような野暮などしない。まるでいないかのように振る舞い、快適さを提供するのもメイドなのだ。さりげなく茶を入れ、空になった重箱を片付け、小腹がすいた時のためにとおみかんを置いて。
「皆様、御用がありましたら何なりとお申し付けくださいませ」
 そう声をかけるのも忘れない。できたメイドである。
 一通り講堂を回ったアンジェリーナは空いていたおこたに入り、ほうと一息つく。
「休憩したらまた皆様のお世話をいたしましょう」

「子どもが8人、大人が1人、なのにどうして注文数が100になるのやら」
 と、美咲はシスターの方を向いて、見なかったことにした。
(あの勢いなら食べきるかも……)
「ねねね美咲さん、お節って縁起物だったりするの? お作法とかあるのかな?」
 ヒィロの声で我に返る。
「あ、うん、縁起物だけどね、今日は難しいこと考えなくていいよ」
 あなたの常識、混沌の非常識、なんてザラだしね。おこたにもそもそもぐりこんだヒィロがふんわりしっぽを嬉しげに揺らす。
「うわー、お正月にこんな豪華な料理食べるの初めて! 種類もいっぱいあって、華やかで美味しそー! いただきまーす!」
「いただきます」
「美味しーねー美咲さん。結構野菜も多いね。新年の健康祈願の意味もあるのかな。だったら孤児の皆のためにここで振る舞われるのも納得だね!」
「そうねー、所々わけわかんないのあるけど、全体的に高品質ね」
「あ、そうだ」
 ヒィロがぱっと顔をあげる。
「美咲さん、よかったら一品ずつ順番に、あーんし合いっこしながら食べない? 一個も見落とさず隈なく縁起物を食べられるように! なんて本当は美咲さんとあーんしたいだけなんだけど……てへっ」
 美咲が受けて立つように笑みを見せる。
「ふふ、素直に言えたいい子には、しっかりあーんしてあげよう。私の故郷のでよければ意味も教えてあげる。……時々二度目の品入れて確認するから、答えてね?」
「むぐ、がんばる」

(…ここに来るのも…なんだか久しぶりな気がするな…)
「あけましておめでとうございます」
 重箱を抱えたままベネラーが寄ってきた。
「グレイルさんにとってこの一年が実り多きものでありますように」
「…堅苦しいね…こちらこそ今年もよろしく…かな…」
 挨拶に答えるなり、グレイルはベネラーの持っていた重箱を取り上げた。
「…ベネラーさんだけで配膳は…大変だろうし…僕も手伝うよ…。…あ…大丈夫…寒さには強いから…疲れたら…休んでいいよ…僕がその間頑張るから…」
「すみません、お言葉に甘えます」
 ベネラーを見送り、さあ、どこへ持っていこうと振り返った瞬間。
「そこのあなた、そうあなたよ、さっさとそれを持ってきなさい!」
 メリーに呼び止められた。よく見ると一品しか食べてない。
「…まだ…残ってるみたいだけど…」
「わたしは! 栗金団だけ食べていたいの!」
「…いいけど…」
 さっそく目当ての物を頬張るメリー。
「おせちを食べてると、元の世界の正月を思い出すわね。街中の子どもをボコってお年玉を巻き上げてたけど、面倒になって大人をボコって直接徴収してたわ」
「…はあ…」
「神社で神様ごっこも傑作だったわ。わたしの魔法で願いを叶えてあげるの。もちろんお賽銭は弾んでもらうけどね。神主さんは「いますぐ神様のところに行かせてあげましょーか!?」って凄んで黙らせたわ」
 ぱくぱく、上機嫌のメリー。栗金団だけなくなった重箱が積み重なっていく。
(……どうしよう、これ……)

●そこへ現れたる救世主!
「カレーと和解せよ」
 庚であった。
「カレーと言えばライス! ライスと言えば米! さぁ良いから米を食うんだ!」
 新年のテンションのせいか本性がチラ見えしているゴリョウ。
「カレーです。カレーにいたしましょう。皆様もお好きでいらっしゃいますよね、カレー。カレーが一番です」
「ぶはははっ! やっぱメシは暖かくてなんぼだよな! 縁起物は欠かせないとは言え、温かいメシには勝てねえ勝てねえ!」
「ええ、カノエは一度闇鍋という物に挑戦したことがあるのでございますが、その時もカレーにして何とかいたしました。カレーはようございます。母なる混沌を表すようですね。全てを内包する味の坩堝足りえるでしょう」
「確かにおせちは美味ぇがおんなじ味ばっかだと飽きるもんなぁ!」
「……カノエ、好き嫌いは聞いておりません。カレー食べませ、カレー」
 なんか合ってるようで微妙にずれてる会話をかわすカノエとゴリョウ。まあまあと公が割って入る。
「食べ飽きたおせちもリメイクで美味しく頂こう! カレーにするなら筑前煮カレーがお勧めだよ。作り方も簡単、筑前煮に水を加えて練達から調達したカレールーを溶かすだけ」
「おお? それなら俺は栗金団をスイートポテトにリメイクだ。それからかまぼことタケノコは煮しめにすりゃいいし、梅花人参に手綱こんにゃく、陣笠椎茸は汁物にしちまおう。伊達巻はチーズやトマト乗せてチンすりゃ立派なつまみになる。黒豆は餡子にできるな、保存も効くしパンにも塗れる。いい事ずくめだ。そして数の子スルメ昆布巻で作る松前漬け! こりゃあ白飯がすすむぜ! 米を食え!」
「じゃあボクも、もう一品。金団と黒豆のホットサンド。薄切りのパンに金団を厚めに塗って、黒豆を均等に埋め込んだら、砕いたごまめをアクセントでパラリ。同じ物を二枚作ってフライパンで両面をこんがり焼いたらできあがり。どうかな、素人の手料理だけど、ちょっと手を入れて味を変えるたり温かくするだけでずいぶん違うんだよ!」
 わいわいきゃっきゃと賑わうキッチン。おいしそうな香りが溢れて、さっそくよだれをこぼした子どもは誰かなあ?

「お節はご当地料理、だったのです、ね?」
 と、閠が驚く。無理もない。いくら海洋が閠の出身地だって北もあれば南もある。バベっちゃうと和風中華風その他がちゃんぽんになってるお国柄だから、とにかく料理の幅は広い。
「紅茶に、合わない。それは大変、です。栗金団と黒豆で、パウンドケーキなどいかが、ですか?」
 材料を混ぜながら、なつかしげに閠は微笑んだ。
「この時期、兄がよく、作ってくれて、覚えてしまったのです、よね。ボクひとりでは、上手く作れないので、お手伝い、してもらえますか? さあ、ザスさんも、少し体を動かして、お腹を空かせましょう。焼けたら、ミョールさんには、是非、お茶を淹れてもらいたいです、ね」

「……レーゲン、先日悪酔いして俺の部屋を荒らしたみたいな事をしないように」
「きゅうぅ……分かってるっきゅ。このサマー・ビール一つで我慢して(こんなこと言って実行してる人見たことない)グリュックと一緒にお節を食べるっきゅ」
「頼んだぞ。俺は熱々のピザトーストでも作ってくる」
「いってらっしゃいっきゅー」
 グリュックと一緒におててふりふりしたレーゲンは、おこたに入った。今日もグリュックの膝の上は快適だ。
「……これは!? 間違いないっきゅ! レーさんの世界のお節、一年に一匹小瓶サイズしか飲めない世界の雫、別名アザラシ木天蓼の匂い……がするゼリーっきゅ? ゼリーならきっと大丈夫っきゅ。……あむ」
 さて、その頃ウェールは食パンの上に具材を散らしていた。
「洋風なものなら口直しにぴったりだ。カリカリベーコンにとろけるチーズ、彩りにはトマトにピーマン。よし、いい感じだ」
 大丈夫、好き嫌いしない、いい子たち。らしいから。
「これが思い出の記念メダルっきゅー!!!」
 突然聞こえてきた大声がウェールの獣耳をつんざいた。あわてて講堂を覗くとべろべろに酔ったレーゲンが子どもたちを集めて演説している。
「保護者さんのいいところを分かってもらうにはこの守護の獣の物語が一番っきゅ! それは獣性の否定。過去との決別。未来への抱擁、可能性の救い――ウェール=ナイトボート!」
「や、やめろレーゲン! 過去を話されるのは黒歴史じゃなくても黒歴史なんだぞ!」

 窓際で黙々と静かに、持ち込んだ七輪で燗をしながら過ごすのは無量。
 しゅうしゅうと干物の焼ける音が静寂を際立たせる。
「こういう時のお酒の燗は『大体』もしくは『適当』が一番良いですね」
 物事には丁度いい按配というものがあるのだけれど、のんびりしている時はそれすらも取っ払ってしまったほうが楽しめる。無量はそう考えていたし、実際にそうなのだろう。
 お節の椎茸の芳醇な味わいが残った舌へ、一献。思わずこぼれる笑顔。
「ふう……今日は刀を持つのはやめましょう」
 新しき一年を祝う日ならば、人斬りの衝動は抑えてみせよう。
「なかなか良いこたつ布団を使っていらっしゃる」
 くらり酔笑、夢心地。いつしか無量は微睡みの中へ。

成否

成功

MVP

彼岸会 無量(p3p007169)

状態異常

なし

あとがき

おせち!
いかがでしたか!
皆さん食べました?

MVPはそれはもう楽しそうにお酒とお節を楽しんでいたあなたへ。
称号『孤児院顔パス』発行しています。ご査収ください。

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