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シナリオ詳細

【Autumn color】桃色淡く、いとこい坂
【Autumn color】桃色淡く、いとこい坂

完了

参加者 : 28 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いとしこいし
 誰が呼んだか、いとこい坂――

 桃色纏いし人にだけ、道は開くと人は言う。

 愛し恋しが集まって、愛や恋やが結び咲き。
 嗚呼愛しいあの人に、嗚呼恋しい彼の人に。
 言えない言の葉書きつけて、桃色紐で結んだら。
 いつか叶うと誰かが言った。だから願いは重なった。

 今では桃色咲き乱れ、すっかり坂は恋の色。
 来るなら桃色身に添えて、願い携えおいでませ。

 此処は願いのいとこい坂。幻想の外れ、桃色抱いて。


●あいやこいや
「いとこい坂、という場所があってね」
 愛し恋し、から来ているそうなのだけれど。グレモリー・グレモリー(p3n000074)は柄にもない話題を挙げ、幻想の片隅を指差した。住宅もまばらな場所にある坂道……立地はそうなっている。
「誰かがそう名付けて、恋の願いをかけたのが始まりなのかな。紙に願いを書いて、桃色の紐――リボンとか、なんでもいいんだけど、結び付ければ、願いが叶うという噂が立ってね。今ではすっかり桃色の紐と紙だらけなんだそうだ。紙は別に何色とは言い伝えにはないんだけど、桃色を使う人が多いみたいだね」
 桃色だらけの景色とは、なんとも画家として腕試しをされている気がするね。ぽつり呟いたグレモリーは、色恋よりもその色に興味があるようだった。
「という訳で、願い事があるならどうだい。って案内なんだ。縁は愛とか恋とかいうのだけじゃないから、もし違う願いがあるならやってみてもいいんじゃないかな。あ、紙と紐、それから桃色の何かは忘れない方が良いよ」
 桃色の何かを身に着けていかないと、何故か坂が見付からないんだって。
 グレモリーは桃色のリボンがたくさん入った箱を見せて、腕に結んだら良いんじゃないかな、と呟いた。
 既に彼は行く気のようで、よく見れば腕に桃色の紐が結んであった。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 今回は企画【Autumn Color】の参加シナリオになります。

●目的
 いとこい坂へ行ってみよう

●立地
 幻想の郊外にある何の変哲もない坂道……に見える場所です。
 桃色の何かを身に着けている人だけが、いとこい坂の本当の景色を見ることが出来ます。
 坂道の手すりから街路樹に至るまで、あらゆるところに桃色のリボンと願いの書かれた紙や絵馬が結び付けられています。
 歩きづらいとかそういう事はありません。
 また、出店の類もありません。(出店をどなたかが出す場合はこの限りではありません)

●出来ること
 いとこい坂を歩いたり、願い事をする

 今回に限り、時間帯は「昼固定」となります。
 出店を出したい方は出してもOKです。
 皆さんなりにこのいとこい坂の景色を楽しんでいただければと思います。
 また、「桃色の何かを身に纏う」事が条件となります。
 ない場合、いとこい坂を見付ける事が出来ませんのでご注意ください。
(獣種などで体毛が桃色なら、小物はなくてもOKです)

●NPC
 グレモリーが桃色の景色とにらめっこしています。
 お声掛けはご自由に。

●注意事項
 迷子・描写漏れ防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。
 やりたいことを一つに絞って頂いた方が描写量は多くなります。


 イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
 皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守って楽しみましょう。
 では、いってらっしゃい。

  • 【Autumn color】桃色淡く、いとこい坂完了
  • GM名奇古譚
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年10月28日 22時25分
  • 参加人数 28/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 28 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(28人)

十夜 縁(p3p000099)
うそもまこともみなそこに
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
死神二振
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
また薄い本が出た
羽瀬川 瑠璃(p3p000833)
勿忘草に想いを託して
古木・文(p3p001262)
文具屋
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
Righteous Blade
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
箱入りですもの
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
心だって強さに
リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
分の悪い賭けは嫌いじゃない
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
ラド・バウD級闘士
桜咲 珠緒(p3p004426)
司令官
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
リア・クォーツ(p3p004937)
旋律を知る者
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
美咲・マクスウェル(p3p005192)
見敵必殺
氷彗(p3p006166)
氷の精霊
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
シャラ・シュヴァイツァー(p3p006981)
深い緑の蒼
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
誰かの為の騎士
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
躾のなってないワガママ娘
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
天戒の楔
シエル・フォン・ルニエ(p3p007603)
特異運命座標

リプレイ

●いとこい坂
 付いてきてもらって悪いわね……一応叶えたい願いがあるのよ。ひ、秘密ね?
 道中、リアはそう語る。うん、と静かに頷いていた氷彗だったが……
「ところで、何か桃色のもの持ってきた?」
「へ?」
「……。桃色がないと、いとこい坂は見えないらしいよ」
「え!? そうなの!? 願いが叶うって事しか聞いてなかった!」
 リア、お話はきちんと聞きましょうね。そそっかしい彼女に氷彗は溜息をこれみよがしに吐くと、はい、と包みを手渡した。
「え? なにこれ」
「開けてびっくり、お楽しみ」
「え、これ……」
 中から現れたのは、簡素だけれど美しく輝く髪飾り。リアは太陽に透かすように髪飾りを掲げ、氷彗の顔を見て、顔を赤くする。
「な、なんていうか、凄く恥ずかしい……! あなたって本当に、ずるい人よね……」
 言いながらも、そっと己の黒髪に髪飾りを付けてみるリア。似合うかしら、と氷彗に聞いてみれば、相手はそっと笑みを浮かべて、とても似合うよ、と頷いた。

「わぁー……すごい。本当にあちこちが桃色なんですね!」
 瑠璃は瞳を瞬かせ、見えた景色に感嘆の声を漏らす。これだけの願いが降り積もる光景は、見た事があるかどうか。しかもこれ、殆どが恋のお願いなんでしょう? 凄いですね!
 だから瑠璃も、恋愛のお願い事をする事にした。持ってきた紙に、大事に書く。紙は桃色だが四葉のクローバー型をしていて、其れだけでも愛らしい。
 “大好きなあの人と、ずっと一緒にいられますように。そして、あの人が幸せでありますように。”
 長い時間をかけて、やっと色づき花咲いた恋。もし自分がいなくなっても、彼が笑っていてくれるなら。どうかどうか、2人とも幸せであれますように、と、乙女は一途な願いを籠める。

「秋と言えば赤か黄色、というイメージだったけど」
 いやあ、まさかこんな桃色が見られるなんてね。
 文は坂を見上げて、桃色に染まった光景に知らず知らず息を吐く。恋にまつわる願いがあれば良かったのだけれど、生憎文はまだ持ち合わせていなくて。なので無難に、“みんなが健康でいられますように”と桃色の紙に願いを寄せた。
 ふと視線を巡らせると、坂の下、イーゼルにキャンバスを乗せてにらめっこしている画家を見つけた。グレモリーである。桃色の景色を書くのは大変そうだ……と考えて、何か染料でも作れないものか、と思いついた。
 発色が良くて、濁りの少ないもの。茜色、桃色、柔らかい色もいいかもしれない。茜の根と混ぜたら良い色になるだろうか。うん、いいと思う。帰ったら早速試してみよう。
 ――彼もまた、職業病にかかっているようだ。職業というより、趣味ではあるけれど。

 アルテミアは腕に付けた、桃色の宝石が嵌まったブレスレットの具合を確かめる。
「桃色なら何でも良いのかしら」
 見上げれば、桃色が眼前に咲くように広がっている。じゃあ、私も一つ――願い事をしましょうか。
 彼女の願いは決まっていた。白い翼型の紙に既に書きつけてあるものを、紐で結び付ける。愛や恋ではないけれど、叶えばいいと書いた文字。
 “双子の妹との再会”
 妹――エルメリアは攫われて、今なお消息が分かっていない。でも、双子の姉妹だから。だからだろうか、彼女は必ずどこかで生きているのだとアルテミアには確信めいた予感がずっとあった。
 吹き抜ける髪が、彼女の銀糸を揺らしていく。
 愛し恋し、いとこい坂。妹を愛しいと思う気持ちが混じっても、構わないわよね?

 ピンクのピナフォアとお揃いのリボン。
 メリーは少しおめかしをしていとこい坂へ
 どうせなら願い事をしたいけど、なんて書いたらいいかしら。好きな人もいないし、出会いもそんなに求めてない。普通の願いでも良いのかしら?
 桃色の紙を手に、首を傾げて考える。
 “元の世界に返りたい”? “もっと強くなりたい”?
 メリーはうんうん唸る。周りの紙や絵馬に助けを求めても、恋愛関係の願い事ばかりだ。
「……あ、そうだ」
 “名声を得る機会に恵まれたい”――これならどうかしら? 機会というのは、自分で手繰り寄せられるものと、そうでないものがあるものね。機会に巡り合いさえすれば、あとは自分の手で掴んでみせるわ!

 シエルは銀糸に桃色のリボンを編み込んで、いとこい坂に目を輝かせる。
「わ、わ、わ……! すごいすごいっ、桃色いっぱいだ!」
 其れはまるで、女の子の理想を詰め込んだ部屋のよう。愛と恋で甘く味付けされた其の坂道は、シエルの乙女心を躍らせるに十分だ。
「私も何か、お願い事を考えたいなぁ……! どうしよう、何を御願いしよう!」
 坂をすっかり上り切ってしまって、見下ろせば桃色。細長い桃色の紙を1枚頂戴して、持ってきた細い紐で手すりに結び付ける。だって、リボンを解いてしまったら、この景色は夢幻のように消えてしまうのでしょう?
 “あの人が幸せになりますように”
 どこか切ないシエルの願いは、静かに、桃色の景色に交じって揺れている。

 フレイはグレモリーから桃色のリボンを借り、腕にくるくると巻いておく。
 しかし、恋。俺にはないな。誰かを恋うた事もない。此処だけの話、初恋もまだなんだ。――まぁ、好かれた事はあるにはあるけどな。ちょっとハードな求められ方だったよ。
 知らず知らず己の偽りの目に触れながら、思い返して溜息。
 ……と、いうか。本当にこの坂は桃色のものを身につけないと見付からないのだろうか。もしかして、桃色がなくても見つかったりはしないか?
 坂を上り切ったフレイは思いついたように、腕に結ばれていたリボンを外して、風に流した。すると――
 ふわり、風が一度強く吹いて。思わず一度目を瞬かせると、あら不思議。其処にあった桃色の景色も、其処にいた願いを結んでいる人々も、フレイの視界からは綺麗さっぱり掻き消えて。ただの山道がぽつねんとあるばかり。

 桃色のリボンが、クリスティアンの腕に結ばれて揺れている。
「わあ……本当に坂中がピンクだね」
 リボンと紙、そして絵馬。此処にある桃色の何もかもが、誰かの願いなんだね……なんて、少しロマンチックかな? と、クリスティアンは笑う。
 いとこい坂には、自分だけではなく他の人もいる。彼らも何か願い事をしに来たのだろうか。
 ――どうせなら、僕もいつか出会う誰かを思って願いを残してみようか。なんだか少し、照れ臭いけれどね。
 紙を取り、願いをさらさら書きつけるクリスティアン。縛る場所は決めたけれど――縛るものが、腕に結んでいるリボンしかない。仕方ないな、とリボンを取り、紙を並木に結び付けた、其の瞬間。
 まるでドレスが翻るように、景色が裏返った。其処には何もない、簡素な坂道があるばかり。
 ああ、まるで幻のよう。だけれど、クリスティアンの願いは、いとこい坂に残っているはず。
 “いつか老い朽ちるその時まで、僕と共に歩んで欲しい”

 縁は手に持った桃色のリボンの感触を確かめながら、眼前に広がる桃色の坂道に目を細めた。
「あぁ、こいつは――見事なモンだ」
 見事、という一言で片づけてしまうには勿体ない景色。縁は人々――どれだけがイレギュラーズなのかは判らないが――の間を泳ぐように歩く。
 特に願い事はなかった。何かを願えるような素直さなんて、どこかの水底に置いてきてしまったから。だから、他の人の願いを眺めては、可愛いねぇ素直だねと笑っていた。――けれど。
 ふと触れた絵馬の群れ。目を向けた先、其の先にあった文字列に、背筋がぴしりと凍り付く。
 ――リーデル
 心臓が止まったかと思った。かと思えば、早鐘を打ち出した。
 確かめようとかき分けても、まるで幻かのように、その名前はもう見付からない。見間違えだ。或いは同じ名前の別人だ。……そう言い聞かせる縁の手から、リボンがふわりと飛んで行って――彼を幻想的な桃色から、無機質な坂道へと、無常に引き戻す。

 クロバはリボンを右腕に、シフォリィはリボンで髪をまとめ。桃色の景色の中を2人で歩く。
 けれど、其れはどこか歪。シフォリィが己を通して別の誰かを見ている事を、クロバはよく知っている。
「すごい桃色ですね。別の色をあしらっても、紛れてしまいそうです」
「そうだな。……ん、此処が空いてる」
 2人は願いを結び付ける。しかし其処には、悲しい決意がある。
 クロバは選ばなければならなかった。過去は所詮過去。其の言葉が棘のように心に刺さって、未だに抜けないでいる。其の痛みに耐えながら、“大切な人の願いが叶いますように”と。
 シフォリィは諦めていた。思いを寄せる人がいる誰かの願いが叶えばいい、そしてそれは、自分であってはならないと。だから“誰かの願いが叶いますように”と願う。
 そうして2人は、仮面をつけたように笑いあう。何か食べて帰りませんか。そう言ったシフォリィの言葉に、嘘はない筈なのに。なぜか、風が冷たい。

「カイトさん、見えますか?」
「ああ、見える。凄いな、本当に坂が全部桃色だ」
 桃色のリボンが揺れる。リースリットが髪をまとめた色は桃色。隣に立つ騎士、カイトの髪もまた桃色。2人は圧倒されるような景色を、じっと見上げていた。
「大体のものは見飽きたと思っていたけど、なかなかどうして、世界には色んな景色があるもんだな」
「そうですね……これだけ願い事が積み重なっているというのも、人の想いを感じます」
 でも、難しいですね。そうリースリットは苦笑する。改めて一つ願いを書けと言われると、何を書いたらいいか判らない。
 そうだなあ、とカイトものんびり返す。彼の願い事は決まっているけれど、夢物語だと笑われても仕方のないような事で。だって、そうだろ? 戦がなくなるように願って、叶ったら、騎士はお役御免だもんな。
 願い事。難しく考えなくても良いなら……
 今ある夢、そうだな。
「「あなたと友達になりたい」」
 あ。
 おやおや。どうやら、早速叶ってしまったようですよ。

「まあまあ、おやおや、これは凄い景色やねぇ」
 ブーケと其のお供、トモォは2人(?)、桃色の景色の中を歩いていた。トモォの足には、ブーケが結んであげた桃色のリボンが風にそよいでいる。
「ピンクとひとくちに言うても、淡い色から赤いのん、南国みたいなのまで色々やね。綺麗やねぇ、トモォ」
「トモクレェ」
 果たして其れは肯定なのか、ただ鳴いただけなのか。其れは余りブーケには関係なくて。
「此処までたくさんの願いを見ると……ロマンチックちゅうか、迫力を感じるね。肉食系ゆう奴やろか。さて、俺たちはどの辺に書こうねえ?」
 桃、桃、桃。其の中を、兎と謎の生物はゆく。2人の願いはきっと同じ。“みーんな仲良しでおれますように”。
 大きな愛は、ええのんよ。たくさんの人から小さな愛が貰えたら、俺は其れでええんやけど。

「わー! 美咲さん、見て! 凄い」
「そうね……純粋な願いがこれだけあるというのは、圧巻ね」
 ヒィロと美咲は桃色の景色に息をのむ。
 きっとみんなバラ色の未来を夢見て、此処に結び付けたんだよね? そんな幸せがいっぱい積み重なっていく坂なんて……すっごく眩しい!
 はしゃぐヒィロに、美咲は笑って頷く。他人を蹴落とすような願いでないなら、眼前の景色は幸せの集大成といっても間違いではないのかも知れない。
「ねねね、どうせだからお願い事してこーよ!」
 ヒィロの無邪気な提案に、美咲はええ、と頷く。あ、でも、とヒィロが声を上げた。
「ボク、いま美咲さんと色々楽しめて幸せだから、改めて願い事って言われるとちょっと……」
「――ふふ。良い状況で悩めるのは、幸せな事よね。私は何にしよっかなー」
「うーん、うーん。美咲さんは考えるのが早いからなぁ!」
 ヒィロが悩んでいる間に、美咲はさらさらと紙にしたためる。あ! と声を上げ、ヒィロも遅れて紙に願い事を書いた。
「じゃあこうして、ピンクのリボンで」
「結び付けるのね」
 さらり、2人がリボンで願いを結び付けると――いとこい坂は一転して、何の変哲もない山道へと戻ってしまった。
 けれど、2人の願いは確かに坂が預かった。
 “今の幸せが少しでも長く続くといいな”
 “笑顔の続く旅路を往けますように”

「ふむ……染めていても桃色と認識するとは」
 メーヴィンは銀色に染め上げた己の髪を一房取って唸る。美しく銀色に光る其れは、自然の色ではない。彼女の本来の髪の色は桃色で、だから、彼女はいとこい坂の景色を眺めている。
「桃色というても、様々あるのじゃな……鮮やかなものから、褪せたものまで……」
 ころん、と絵馬を指先でたぐり、託された願いの数々に目を通す。叶える側ではないし、まじまじとみるのはなんとなく失礼に思えたので。
 やはり願いは恋に関するものが多い。恋か、とメーヴィンは息を吐いた。彼女にとってはもうとうの昔に置いてきたような、そんな感情だ。
 此処に記す願いはない。願いを他人に、ましてや神様なんかに叶えてもらう程、彼女は落ちぶれてはいないのだ。――今は、もう。

 ゆらり、ミディ―セラの尻尾がゆれる。ゆらり、合わせて桃色のリボンが揺れる。
 ふわり、アーリアの髪が揺れる。ゆらり、合わせて桃色のリボンが揺れる。
「私の願いは勿論これよぉ!」
 じゃーん、とミディ―セラの眼前に掲げられた絵馬には“ずーっと一緒にお酒を飲む”と書かれていた。
 ――其れは、とてもアーリアさんらしいですね。思わずミディーセラは笑う。わたしはこれです、と相手に見せた絵馬には、“ながいながい時をいっしょに”。
 それじゃあ、どこに飾ろうかしら。桃色がたくさんで目移りしちゃう。2人はきょろきょろ、坂を巡り……ついに往復するかというところで、アーリアが名案を思い付いた。
 ミディーセラの後ろに回って、ひょいと持ち上げる。こうすれば高いところに括り付けられるでしょ? と言いながらも、其の声は何となく笑っていた。だって、されるがままで、まるで猫なんだもの。
 彼は何となく思われているところを察しながら、そうですね、と2人分の絵馬を括り。
 ころんころん、2つの絵馬が揺れるのを見ながら、ねぇ、とアーリアが切り出した。去年ホオズキを見たとき、「願いは掲げて標にする」って言ったの、覚えてる?
 ええ、ええ。覚えていますとも。標にしてひとつひとつ、思い出を織っていくのです。
 私ね。――来年も一緒にこの光景を見られますように、って言ったのよぉ。
 最初は何気ない願いだったかもしれない。けれど今では膨れて熟れて、心に甘い果実となった。あのホオズキは、花開いたのね。

「認証付きでありながら、開かれた空間……興味深い構築です」
「そうね。ピンクがないと来られないなんて、不思議な場所よね……」
 珠緒と蛍は2人、手首に桃色のリボンを結んでいとこい坂を行く。珠緒がリボンを付けているのは、念のため、という奴だ。
「この一つ一つに愛しいや恋しいって願い事が込められてるって思うと……幸せの上り坂って感じがするな。ボクもあやかりたくなっちゃう」
 ね、と照れ笑う蛍の手には、桃色の短冊。
 ふむ、と珠緒も頷く。
「いとしさというのは、まだ知識としての理解のみですが。一人焦がれるより、共に願う存在に心強さを得ていたのでしょうか。此処に積み上げられた想いは、良いものに感じられます」
「ふふ。珠緒さんのお墨付きがあるなら、此処は間違いなく良い場所ね? ねぇ、良かったら短冊、隣同士で結び付けない?」
 少しだけ首を傾げる珠緒。数秒して、構いませんよ、と頷いた。願いは見せないで描くのがよいか、という珠緒の言葉で、2人秘密に願い事。
 けれど隣同士に吊るしたら、見えちゃうかしら。
 “珠緒さんにいつかちゃんとこの想いを伝えられますように”
 “蛍さんと共に、愛のかたちを見付けられますように”

「ルークはブレスレットなんだね」
 ノースポールがつないだ手を見て言う。そう言う彼女は桃色の小さな薔薇コサージュを胸元に付けている。
「僕がリボンを付けていたら、なんだかおかしいだろ?」
 ルチアーノが冗談めかしていえば、愛しの婚約者はくすくすと笑って。
 2人のぼる、桃色の坂、其れはまるで季節外れの桜並木のようで。
「うん」
「なぁに?」
「やっぱり、ポーが幸せそうに笑っている事が、僕には一番嬉しいなって」
「……も、もう。すぐそういう事言うんだから」
 ノースポールの頬が桜色に染まる。其れは此処にあるどんな桃色よりも愛しく美しい、とルチアーノは思う。
 願い事をしてみよう、というノースポールの提案で、2人は一度手を放し、願い事をしたためる。
 出会ったときは友達だった。けれど今は、婚約者。私はルークの事が、僕はポーの事が、大好きだから。其の幸せをこの桃色に願うよ。
 2人が描いたのは、お互いの幸せ。知りたい? と勿体ぶるノースポールに、知りたいな、とルチアーノは頷く。じゃあ耳を貸して、頬にキスをしてあげるから!
 悪戯っ子なノースポール。其の唇に愛が降り注ぐまで、あと僅か。

「去年はデカホオズキを流したよな」
「うんうん。あのホオズキ、どうなったかなー」
 【花鳶】の2人はそれぞれ羽織ったものに桃色を加えて、いとこい坂を上る。
 シラスの願い事は変わらない。其の為になんだってやってきた。自慢しいじゃないけれど、何故か隣の彼女には、其れを聞いて欲しくなる。
「この前なんてさ、あのフィッツバルディ公に会って話したんだぜ。俺の名前まで呼ばせてやったよ」
 得意になってる気持ちもあるけれど、其れ以上に、頑張った事を知って欲しい。そしてアレクシアは、自慢にも聞こえそうなシラスの其の真意をしっかりと汲み取る。
「へえ、すごいね! シラス君は、あの時からずっと頑張ってきたんだね……本当にすごいって思う。今のうちにサインとかもらっておいた方が良いかな?」
「そうだな。将来高く売れるかも知れないぜ」
「あはは!」
 何気ない話の中に、一本通った信頼感。
 アレクシアとて、願いの為に何もしなかった訳ではない。もっと大勢の人を救いたい、その願いの為に邁進し、実際に叶えて来た。叶っている、と思いたい。でも。
「もっともっと、って思うんだ。頑張らなきゃ」
「おう。まだまだ、お互い頑張り時だな」
 今年もやろうぜ、とシラスは拳を握り、アレクシアに差し出した。
 困ったときは、お互いに頼る事。置いて行かないように、置いて行かれないように、頑張る事。
 そんな思いを込めて、大きさの違う2つの拳はトン、とぶつかった。

「秋に、一面の桃色。……といえば、秋桜ですよね……」
 閏は街路樹の香りを間近に感じながら、風にそよいで舞っている、たくさんの願いを感じとる。秋桜の花言葉は調和・謙虚。そのままに、“良い風が吹きますように”、と願った。
 そして彼は坂を下りる。きっと絵にするなら、絵にかくなら、坂を見上げるだろうから。
「……グレモリーさん」
「ん。……あ、やあ。君は閏」
「はい、お久しぶり、です。肌寒くなってきましたね」
 彼が探していたのは情報屋。筆を迷いなく止めて、閏の方を向く。うん、と頷いて、今日は寒いね、と言った。
「体を冷やさないよう、気を付けてください、ね?」
「大丈夫だよ。君は暖かそうだね。そのショール」
「……はい。暖かい、です。あの」
「なんだろう」
「よかったら、完成した絵を、見せて貰えませんか?」
 彼の瞳は、布で隠されている。呪詛が表にでないようにと。けれど、見たいのだ。グレモリー越しで構わない、このいとこい坂がどれだけ鮮やかなのかを見たいのだ。
 情報屋は頷いた。ただ、あんまり感動するかは判らないよ、と付け足して。

「グレモリーさんっ! みて下さい、この首飾りで坂にこれました!」
「やあ、シャラ。うん。ピンクに見えるね。其れは」
「ピンククォーツ? というそうです。ママから貰った、大切なものなんです……」
 ふむ、とグレモリーはまじまじと石を見て……あっち、と景色を指差した。
「あの辺りにある色が、少し似ている気がするね」
「そうですか?」
「うん。少し動こうと思っていたところだ、いってみようか」
「はいっ!」
 グレモリーは腕に桃色のリボンを結んでいる。無表情の彼とはなんだか不釣り合いにみえて、くすり、とシャラは笑う。
「何かおかしいことでも?」
「あ、いえ! ……いとこい坂は愛し恋し、でしたか。私、お願い事があるんです」
「恋の願い?」
「いえ、……パパとママに早く会いたいって願いです!」
「そうか。うん、お願いするといいよ。じゃあ僕は、みんなの願いが早く叶いますようにってお願いしようかな」
「? グレモリー様、絵画の事は宜しいんですか?」
「あれは自分で勝ち取るものだから。願ってかなっても、あんまり嬉しくないかな」
「成る程……そうですね! 自分で巧くなってこそ、ですよね!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
いとこい坂、いかがだったでしょうか。
お願い事をする人、誓いを立てる人、いつかの誰かに託す人……
中には去年のイベシナの話をされてる方もいて、とてもありがたい気持ちになりました。
ありがとうございます。
また、グレモリーに構ってくださった皆様もありがとうございました!
皆さん素敵なお願い事をいとこい坂に託されたようですが――さて、叶うでしょうか。
素敵な道が皆さんの前に続くことを祈っております。
ご参加ありがとうございました!

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