シナリオ詳細
ラサの商人より真心を込めて
オープニング
「どうでしょう。皆様にとっても悪い話ではないかと」
ギルドの一角にて、ラサからやって来たキャラバンの年若い商人が『狗刃』エディ・ワイルダー(p3n000008)に向けてそう言った。
商人の名はセイラム。頭髪に獣種の耳が見え隠れする事からブルーブラッドだろうか。何やら、エディを通して相談を持ちかけているらしい。その内容は贈答など土産向けの品物をイレギュラーズに”提供”する機会を設けてもらいたいという。
エディは考えた様に押し黙り、続きを促す様に頷く。
「曰く、近頃では母親に感謝し子供の幸福を祝う記念日があると聞きました。ならば、我々も私情を捨ててその“お手伝い“をするのが道理。闇市の方でがらく……もとい、戦いに役立つ装備は販売していますが、直接対面して見繕えばキットお望みの品がご提供出来ましょう」
黙しているエディを目の前に商人は早口でつらつら言い述べた。その明るげな様子からは年が若いのも相俟ってか、女とも男とも判断付かぬ。
おおよその申し出を理解したエディは、回答を一先ず置いて質問を返す。
「そういう話はレオンを通すのが筋じゃないか。俺は商売話はあまり得意ではないんだが……」
承知していますとも。商人はそう笑顔で口にする。
「他の世界にはこういう言葉もあるらしいですよ。『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』。……商人は何度も根負けするワケには行かないのです。だから同種の伝を頼って、こうしてお会いしているのです」
「成る程。ラサに帰る前にもう一儲けしようという魂胆か?」
エディの歯に衣を着せない率直な物言いに商人は驚いた様な表情をした後、取り繕う様に笑顔を浮かべた。
「いえいえ、今回は本当に無料(タダ)で提供させていただきますとも。その代わり『パサジール・ルメス』の件は宜しくお願いしますよ♪」
無料(タダ)より高いものは無いという事か。エディは呆れた様にため息をついた。
- ラサの商人より真心を込めて完了
- GM名稗田 ケロ子
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年06月29日 20時25分
- 参加人数30/30人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●我らが母と父へ
「どうでしょう。御要望の海洋産の珊瑚です」
そう言って商人セイラムは同族のジュアに対して、恭しく珊瑚のブローチを見せた。
決して派手ではないが、品の良い装飾が珊瑚の良さを引き立てている。
「こりゃあ良い。これなら彼女も喜ぶだろう」
そう言われて、商人セイラムは少々得意げになってみせた。しかしすぐに不思議そうに顔を曲げる。
「でも、宜しいので? 貴方が届け主だという事を伏せてしまって」
「あぁ、構わないさ」
勘の良い彼女の事だ。どうせ、送り主が誰かだなんて見抜いてしまうだろう。ジュアは、内心でそんな事を思った。
「それより、彼女は金のニオイや有力者とパイプを繋ぐのが好きなんだ。よかったら少し相手をしてやってくれ、商人サン」
年若い商人は、嬉しそうに耳をピンと立てて「待ってました!」と言わんばかりに何度も頷き、それを無下にはしない事を約束した。
エディを含めた何人かは呆れた様な顔を向けるも、商人は恥じる様子もなく次々の贈答品の要望を聞き始めている。
次に話を向けられたのはシャロンだ。
「僕は……深緑に住む両親にへプレゼントを」
曰く、彼は召喚されてから故郷の方に帰る機会が無かったらしい。これについては他のイレギュラーズ数名も似た様な境遇だ。
彼の両親――少し抜けてるけど優しい父親と、厳しいがしっかりモノの母親へ贈り物。
「そうだね……美味しいワインとチーズを贈りたいかな」
シャロンの語り口から両親への敬愛をなんとなく感じたのか、セイラムも精一杯笑顔を取りながら言葉を返す。
「でしたら、幻想の貴族御用達のワインなんて如何でしょう。チーズも……えぇい、同じくらい高いヤツを付けちゃいましょう!」
高価な食料品を提供するかどうか一瞬迷った商人であったが、結局は今出せる最大限の物を提供してくれるらしい。
「ありがとう。両親の顔が見たいから、自分で持っていくよ」
そうしてシャロンはワインとチーズが入った袋を受け取った。
「母さんと父さんかぁ」
「チャロロも、両親への贈り物か?」
物思いに呟いたチャロロに対してエディはそう問いかける。
チャロロは首を横に振ったのち、こう答える。
「実の母さんと父さんとは五歳のときに死に別れたんだ」
エディは悲しい事を思い出させてしまったと少し申し訳なさそうな顔をするが、当のチャロロは不機嫌になるでもなく前向きな表情をしていた。
「けど、その後ハカセが引き取ってくれたんだ。五年間オイラを育ててくれて……母親みたいなハカセに贈り物をしたいんだ」
綺麗で優しく、でも勉強を教える時は厳しくて、いつもオイラにたくさんの知識を与えてくれる。……算数の宿題を出されるのはちょっとイヤだけど。
サイボーグの少年は、自分の母親――ハカセの事をそんな風に語る。彼女の事を尊敬しているし、いつかあんな風に知識と技術のある大人になりたい。
「いつもありがとうって伝えるのにはなにがいいかな?」
チャロロは商人に対して、そう問いかける。商人は柔和に微笑んだ顔で、淡いピンク色の花とその種と思われる物を取り出してみせた。
「でしたら、これを。母親へ感謝する日に贈られる花らしいのですが、色合いによって花言葉が変わります。特にこの色はピッタリの花言葉がありましてね……」
商人はまるで秘密話の様に、チャロロへそれを耳打ちしていた。
「母親に感謝、なー。そーいや、ローレットに属してから連絡もしてなかった」
耳をピンと立てて、そのヒソヒソ話を聞き入れるブルーブラッドのジョゼ。
「わざわざ記念日を決めて贈り物をするとは、変わった事を思いつくやつもいたモンだ」
――でもいいきっかけになるかもしれねぇな。俺みてぇに、“言い訳”がなけりゃぁ動けねぇやつには特に。
煙管を燻らせながら、そうくつくつと笑う十夜。似た様な事を思っていたジョゼもその言葉に軽く笑い、肯定を入れる。
「親父みたく『帰ってこい』って騒いじゃいねーとは思うけど、これもいい機会だな」
商人セイラムは二人の心持ちがある程度決まったと気づいて、愛想の良い笑顔を作りながら近寄って来た。
「お二人もお決まりになりましたか?」
「あぁ、お袋に。あと一応親父にもな」
商人が持ってきた品々を見ながら悩むジョゼ。酔いどれの父親へはとりあえず酒でいいにしても、母親に対してはどんな物が良いだろうか。
ジョゼ自身が「ガラクタにもガラクタの物語がある」という理念もあるからか、沢山の品物を逐一見回って行く。
そんなジョゼを横目に、十夜は商人へ声を掛けた。
「せっかくだ、俺にも何か見繕ってくれるかい?」
「モチロン。貴方もご両親にですか?」
「贈り先は……俺の、母親――でもあり、娘でもあり、ってとこかね」
太陽に向かって真っ直ぐ立つ花みてぇに気丈で、そのくせ、人一倍寂しがり屋で……。
そんなヒトだったと、懐かしむ様に十夜は語った。
「……そうさな、小さぇので何かいいモンは置いてねぇか? あいつの髪に似た金色と、あいつの瞳に似た、澄んだ青の」
真面目な顔で話を聞いていた商人セイラム。十夜の話を聞き終えると、商人はパッと笑顔を浮かべる。
「簪(かんざし)など如何でしょう。小振りに意匠をされたもので、色合いも都合の良いのがあります」
そう言って、一本の金で出来た針に青いギヤマン(硝子)の飾りが付いたいわゆる”玉簪”を十夜に渡す。
「あぁ、こいつはいい」
十夜は受け取ったものを天井の灯りに翳す。ギヤマンを通して見る光景は、水面を通した陽の様に明るかった。
「その方もきっと喜ばれると思いますよ」
相変わらず屈託の無い笑顔を浮かべる商人。何も知らずこれを渡したのか。それとも分かった上でこれを渡してくれたのか。
「……ありがとよ」
どちらにしても言葉にする必要は無いか。十夜はフッとした笑いを内心で収め、飄々とした態度で礼を返した。
「んあ」
彼らのやり取りが終えられた直後、ジョゼが唸る様な声を漏らした。
母親が帳簿を書く時に仕事で使うだろうと羽根のペンを探していたのだが、その中でも妙に古めかしい品物を視界に入れた際に少し右目が痛んだ。
「どうかなされましたか?」
「いや……このペンがちょっとな」
そう言ってジョゼはペンを手に取った。ペン先は金属製で、万年筆の様な作りをしている。材質はなかなか上質で、少々古い事以外は見た目おかしいところはない。
「あぁ、それですか。モノは良いんですが、作り手も不明。しかも古いとあっては。こうして売れ残っている次第です」
商人はそう溜息をついた。商人にとっては売れない骨董品といった感じなのだろうが、ジョゼはこの来歴も定かではない羽根ペンに何処か好奇心をくすぐられた。
「使うには十分そうだし……よし、この羽ペンに決めたっと!」
ジョゼがそれを選んだ事に商人は目を丸くしたが、すぐに笑顔で頷いた。この羽根ペンとジョゼの手紙は、キャラバン経由で届けられる事が約束される。
「母の日プレゼントかー」
ラサへも贈答品が届けられると聞き、間延びした声をあげるクロジンデ。
彼女の故郷はラサにある砂漠の隠れ里であり、ネフェルストを通って此処幻想のローレットギルドに辿り着いたという。
「お前が来たのは五年ほど前だったか。早いものだな」
ローレット所属の傭兵であるエディが思い返す様にそんな事を言う。二人してローレットの所属という事は、そういう意味では長い付き合いか。
「連れ戻しに来る可能性があったから、何の連絡もしてなかったなー」
だが、今は特異運命座標という立場だ。無理矢理連れ戻すのも難だろう。
「この機会だ。安否報告も兼ねて送ってみてはどうだ」
「そうだねー。近況の手紙でも付けて何か送ろうかー。品はこの壺いっぱいのドライフルーツでいいかなー」
日持ちもしやすいし届けるには問題無い。商人はそれを受けて、快く了承した。
「じゃあ、ラサまで配送頼むねー」
傍目にも分厚い手紙を受け取った商人は目を白黒させる。エディはそんな光景を何処か見慣れた様に苦笑するのであった。
「パパ、ママ……への贈り物……なの」
他の者が選び終えると、今度はミア・レイフィールドが話を振られた。
彼女の両親は、深緑とラサの国境近くで牧場を営んでるらしい。両親共々早朝から夜にかけて、心身疲れ果てるまで働き詰めだったとの事だ。
自分は家出した身だから、キャラバンを通じて何かしら両親に届けてもらえないかと彼女は言う。
「どうして家出を?」
商人が思わずそうこぼすと、ミアは小さく言葉を返した。
「ミアの力なら、もっと稼ぐほーほーはある……って飛びだした」
成る程と商人は頷いた。命がけの傭兵の稼ぎならば、上手く行けば一攫千金も夢ではないかもしれない。
「でも、嫌ってた訳ではない……の」
「えぇ、贈り物をしようとしている事からそれは確かでしょうとも」
商人は微笑んでその様に言ったのち、彼女にこう告げる。
「分かりました。ラサからは近いですし、そこで仕入れた新品の道具を幾らかお届けする事をお約束します。そうすれば牧場の仕事も楽になる事でしょう」
ミアはそう言われ、何処か後ろめたそうだった顔色も少し晴れた様に明るくなった。
深緑の近くに行くと聞いて、深緑出身のアレクシアもおずおずと申し出る。
「ええと、お父さんとお母さんに贈るものが欲しいのだけど……」
彼女は事情があり、家から出ない生活をしていたという。父や母は、文句も言わずそんな自分を育ててくれた。
けれども、イレギュラーズになって飛び出して来た際にそれっきり会ってもいないし連絡も取っていない。
「この機会に、私は無事って事とごめんねって伝える手紙を送ろうと思ってるの」
良き事と思われます。愛想の良い声色で商人は答えた。
「それに一緒に添える贈り物ってどんなのがいいかなあって悩んでてさ。商人さん、何かいいアイデアないかな?」
商人は相談を受けて、一緒に頭を悩ませる。どうせなら消耗品や実用品ではなく、形として長く残るものが良い。
二人して考え、品々へ視線を泳がせている内に家具の一つに目を当てた。
「ではアンティークの家具など如何でしょう。わたくしどもにお任せいただければ通商のついでに届ける事も適います」
「そうね……是非お願いするわ」
その言葉に調子づいた商人は胸を張り、立派で大きな家具を送り届けてみせると言ってのけるが、そう大きな家具を突然送られても困るだろうとアレクシアは苦笑を浮かべる。
同じく、深緑へ届け物をしようとするものへ次の話は振られる。
「タダで貰えるなら貰うよ。僕は別に崇高な意志とかない一般特異運命座標だからね」
タダより高いものは無いと小声で漏らすエディを横目に、飄々と言ってみせるディジュラーク。
「僕に子供はいないから、父と母でいいかな?」
本当の両親にあらず育ての親であり、血の繋がりの無い両親だが本当の子以上に愛してくれたと語る。
「愛情をもって接してくれたご両親なのですね」
「はは。ただ、過保護でね。砂糖水に練乳と蜂蜜ぶち込んで……そんぐらいデロデロに甘くて。人をダメにする人って感じ。手紙は出してるけど、召喚されてから会ってないんだ。泣いてないといいけど」
商人の言葉に彼は苦笑して返す。
「父は日曜大工、母は絵を描くのが趣味でね。父が作って母が色を塗るのワンセット。仲が良いんだ」
「ならば大工道具と画材一式などはどうでしょう?」
刃物類の道具ならラサで良い店を知っているし。特にこの幻想では、芸術家の為に良い画材が揃っていると商人は語る。
「いいね。あ、贈り物は届けてもらっていいかい? 場所は深緑のね――」
感謝してるけど、戻りたくはない。そんな事が頭を掠めながらも、ディジュラークは両親の居場所を商人に伝えた。
「私は……お母さんの誕生日が近いので、母に贈り物をします」
皆と同じ様に、母親に贈り物をしたいと申し出るセレネ。
「成る程、でしたらその方のお好きなものなどを教えていただければ」
「そうですね、母は……えっと、紫陽花が好きで、よくお庭で手入れをしていました――いえ、しています」
慌て言い直す少女セレネ。商人セイラムは、笑顔を浮かべながらも言葉を選ぶ様に少し沈黙した後に言い返す。
「お優しい母上とお見受けします」
「……はい。とても優しくて、大好きです」
彼女はそんな母親に贈り物をしたいからと、紫陽花の花束を希望した。
「鉢植えは付いたものが良いでしょうか」
「いえ、鉢植えだと重いですし。紫陽花は挿し木が出来るので」
「承知致しました」
並べられた商品から、紫陽花を選び出す商人セイラム。色はどれにしましょう、と促す様にセレネへ視線をやった。
「お色は薄い水色のものをいただけますか? 紫陽花の花言葉は、移り気ですが……家族だんらんという言葉もあるのです。私はこちらの方が好きです」
彼女の言葉に静かに頷いて、一番それらしい色を選びだしてくれた。その水色は淡く清楚な美しさなのだが、セレネにはこの時少し寂しい色に見えた。
「自分で渡します。久しぶりなので、逢ってちゃんと……ありがとうが言えるか分からないですが……」
花束を受け取ったセレネは心中の思いに力なく俯いてしまう。そんなセレネに、商人は赤く染まった紫陽花をポンと手渡してくる。
「これは貴方自身に。元気に笑っていた方が母上もきっと喜ばれます」
そう言われたセレネは商人に対して元気な笑顔を浮かべてみせ、礼を述べた。
「鈴鹿は最高級の今ある中でお酒を所望するの」
最高級と聞いて商人の表情が僅かにたじろんだ。
「最高級……一番高いものならこの蒸留酒ですが、ご両親にお届けですか?」
鈴鹿は、少し悲しげに首を横に振る。
「鈴鹿には前の世界に二人の母様が居るの。二人とも育ての親だけど」
曰く、一人は鬼子母神。子供の守り神の様な存在だ。鬼という種族でありながら、当時人間の捨て子であった鈴鹿を育ててくれたという。
もう一人は人間で、優しく強くて、姉の様な存在であり、何処か儚い人だった。
「二人とも人間に殺されたの。だから鈴鹿は人間が憎い……鬼に転生する程ね」
話を聞いた商人は神妙な表情を取った後、納得した様に頷き返しその蒸留酒が入った一瓶を彼女に渡す。
「どうぞ一献。その酒が呑める体になったのも、母二人の御陰という事で」
鈴鹿は、母親二人の形見と思しき赤角のイヤリングと花の髪飾りに酒を置いた。
「二人とも死んでしまったけど……こうしてお酒を飲みかわしたかったの」
そう言って様々な感情までも呑み下す様にぐびりと喉を鳴らす。そうやって口に入れた酒の味は、度数が高い事もあってか妙に胸に来るもの感じた鈴鹿であった。
「母親、ですか……」
皆が思い思いに母親への贈り物を要望する姿を見て、小さく呟くミディーセラ。
「あぁ、貴方も母君へ贈り物を?」
それを察知した様に商人セイラムの耳がピンと立ち、彼女へすり寄る様に尋ねて来た。
妙に明るく尋ねてくる商人に、ミディーセラは答えに困った様に言葉を返す。
「いえ、いえ。なんといいますか、世間一般でいうような存在では。けして、そんな存在ではなかったヒト達でした」
ろくでもない存在だ。世の中、力を持たせてはいけないヒトもいる。贈り物をしたとしても、適当な触媒にされるか、そも中身を見もしない様な。
商人セイラムは、その語り口から彼女の言う『母親』が魔術師の類かナニカだと察して、怯える様に耳を小さく畳んでいた。
「まあ、まあ……いいでしょう。商人さん達を困らせるつもりはありませんもの」
話題を切り替える様に、ミディーセラは流行りの菓子を幾つか所望する。商人セイラムは震えた声で「わたくしどもが届けた方が良いでしょうか」と彼女の顔色を伺っていたが、ミディーセラはその怯えように軽く笑ってからこう返した。
「お気持ちはありがたいのですが。やっぱり、自分で渡しますね。きっと、戻れなくなってしまいますもの。関わるものではありません」
商人は、安堵した様に息を一つ漏らしていた。
●我が子や友へ
「贈り物か……元の世界にいた頃に妹にやったかどうかなものなんだがな?」
「うーん? よく分からんが、貰える恩はもらっておくのも悪くないよな」
悩む様にそう言い合うクロバとサンディ。
クロバはこの世界に来てから様々な付き合いが出来た様で、他のイレギュラーズ達に対しての贈り物を検討しているらしい。
「まずはそうだな、世話になっている領主とそのついでに勇者になんか茶葉とかならあるだろうか。その次はあの騎士と精霊だったか? にも結婚祝い、にこういう時ペアカップだった、と……」
大量の注文にも笑顔で対応する商人セイラム。むしろ、頼まれていく品が増えていく度に何故かにやけている。そして、眉間を抑えているエディ。
「何か『約束』のある『取引』じゃないんだし……」
サンディがそう口にすると、商人の耳がびくりと大袈裟に震えた。
「これ何かあるんじゃ――」
「はははは、あ、貴方は誰に贈り物を?」
露骨に話題を逸らされた。仕方無しにサンディは言葉を返す。
「そういやイレギュラーズになってから戻れてないが、召喚前に一緒に組んでたアイツらは元気かな」
彼が言うにはメス・メフィートまでしか戻れないせいで元居た街の位置が検討が付かないという。幻想の何処かにある街だというのは確かなのだが。
商人は成る程と頷いた後、街の名前さえ分かれば商人の意地にかけてどうにか届けてみせると豪語してみせた。
「そうかい? そこの裏通りのあの半壊の建物に、プレゼントを投げ入れておいてくれ」
「投げ入っ……よろしいのですか?」
「あぁ、そうすりゃ俺の昔の仲間たちの手に渡る。あんまり表通りを歩けるような類の手合いじゃないが、中身は別段優しくて気の良い奴らだ」
そう聞いて商人の頬に冷や汗がたらりと落ちた。変に彼らを利用しようとした罰だろうか。
「プレゼントなんて考えた事もありませんでしたね」
品物を一瞥し、そう呟くアイリス。
気を取り直して、彼女の対応に移る商人。
「あ、あぁ。貴方も贈りたい人が?」
「贈りたい相手はラサ傭兵商会連合に属していた時代の同僚であり師でもある方です」
ラサと聞いて、商人は安心した様に頷いた。危険な目に遭わないと踏んだのか。
「人柄を一言で言えば“剃刀”でしょうか? 『必要なら非情な手段でも使え。そして躊躇うな。それがお前の実力不足を埋めてくれる』……私にこの言葉を与え、自らもそれを実践している方でした」
特異運命座標として召喚されてからは一度も会えていない。元々神出鬼没な人物だったから、元気だと思うが……。そう彼女は語る。
「彼はどんなものを好むのでしょうか?」
傭兵なら質の良い武器を渡すのが良いとは思うが、弓や大剣などを渡しても他の獲物の使い手だという可能性もあるし……。
「短剣はどうだろうか」
そう悩んでいた商人の横から口を挟むエディ。傭兵の彼が言うに、ナイフなどの携帯性の良い武器なら何らかの非常時に使いやすいから重宝するという。
それならぴったりのものがある。そう言って、商人は武器の中から一つの短剣を取り出してみせた。その刃は鋭利で、まるで剃刀の様である。
アイリスは短剣の質に納得して頷き、それを受け取って言い述べた。
「お願いすれば届けて貰えるそうですけれど、やはり私自身の手で渡さなければ意味がありません。折を見て私の手で渡したいと思います」
商人は彼女の希望通り、その短剣を鞘に収めてから手渡すのであった。
次に贈答品を聞かれたのはムスティスラーフ。商人が先程からムスティスラーフを色めきだった目で見ていたのは、おそらく彼が頭部に宝石の角を有していたからに尽きる。
「贈り物を贈る相手は亡き息子と亡き孫。彼らに手向ける物を見繕って欲しいんだ」
物思いにそう語る。商人セイラムは色めきだった目を潜めて沈黙し、続きを促す様に視線を合わせた。
「孫はまだまだ遊びたい盛りの子だった。そろそろ狩りや採集を学ばせたかったんだけど。遊んでとせがまれると可愛くて断れなくてね。老いた身を起こして一緒に駆け回ったものだよ」
とは言え度々一人にさせてしまうことがあった。そんな時に襲われてしまったのは不幸としか言いようがない。
独り寂しく死なせてしまった事を悔やむ様に表情を歪め、そのまま息子の話も語り始める。
「息子はとても勇敢で仲間思いのいい奴だったよ。最期まで僕を守り抜いたんだ。弓も槍も使いこなす戦士でね」
「立派な戦士だったのですね」
ムスティスラーフの話に、敬意を表する様に言葉にするセイラム。この手の話を茶化すつもりは無いらしく、彼と共に品定めしている。
「あぁ、立派だった。がっしりした身体はとてもおいし――」
「え」
「あ、いやなんでもないよ」
お互いに笑顔で誤魔化した。商人の笑い方が非常に乾いていたのはキットキノセイダ。
ともかく、手向けの品として勧められたのは深緑産の香である。死者を弔う時にも使われるらしい。
「防刃シャツを、ですか?」
商人から不思議そうに見られるオークのゴリョウ。
「ラサって気候的にその手の機能性とか優れてるんじゃねぇか?」
「えぇ、傭兵の方も多いですからそれなりには」
ゴリョウが言うには、贈り先の人物――”悪友”は『シルク・ド・マントゥール』の公演後の事件に巻き込まれ、危うく死にかけたという。
その事から、身を護る為として防具の一つでも見繕ってやろうという事だ。
「未だ戦闘力は高くねぇからうっかり死にかねん。流石にそいつは目覚めが悪い」
ふん、と大きな鼻を鳴らすゴリョウ。あくまで、彼は致し方なくという体なのであろう。商人はゴリョウに対して、なんだろう。妙に生暖かい視線を投げかけている。
「……やめろ! ツンデレ見るかのような生暖かい目は止めろ! 俺が渡すからさっさと包んでくれ! ほら!」
余談だが、商品を包装する間もゴリョウは終始商人のみならず周囲からも生暖かい視線を向けられ、いたたまれなさのあまりにギルドしか立ち去るしかなかった。
「母親や子供に贈り物……迷っちゃうな。こっちに来てある程度時間は経つけれど」
並べられた品々を見てその様に悩むアリス。刀剣や鎧など装備品はもとより、他の人が貰っているのを見ている限りではプレゼントに向いた代物も多くあるある。
「何処かの孤児院の子供達に贈り物をお願いしてもいいのかな? 彼らが少しでも笑って、元気を取り戻してもらえたらって思うんだ。彼らが少しでも笑って、元気を取り戻してもらえたらって思うんだ」
「えぇ、構いませんよ。お名前はどう記載しておきます?」
そう聞かれ、アリスは首を振る。
「送り主は伏せて、みたいなっ!」
商人はそう言われて笑みを浮かべ了承した。名を伏せて届けている者も他にいるから、その辺り心得ているらしい。
「でも送るとして何がいいのかな……本とかぬいぐるみ? 美味しいお菓子とかがいいのかな。エディさんや商人さんは何がいいと思う?」
彼女に話を振られ、少し驚くエディ。
「オレは子供の好きそうなものの見当は……」
彼も顎に手を撫でながら、真剣に悩んでいる。菓子か。しかし、食べ物となると好き嫌いが。本は興味が分かれやすいし……。独り言の様にそう繰り返している。
「……犬のぬいぐるみなんてどうでしょう」
「はははっ」
アリスと商人はそんなエディを眺めてそう言い合い、孤児院に送る品々を複数決めていくのであった。
「私、与える存在(モノ)でございますが、送る存在ではないのですよね」
施しというのは簡単だが、心を乗せる気持ちには更々ならない。
そんな事を言うティアブラスだが、「なんでも用意して下さるなら」と前置いた上で商人に注文を告げた。
「『種』を一つ、世にも美しい、そして珍しい華を咲かせる種でございます」
「ならば深緑の地に咲く華の種が一つあります。送り先はどなたで?」
そう問われた彼女はそっけない風に、あるいは真剣な面持ちで返した。
「誰でも良いです、希望を持たない子に渡してあげて下さい。メッセージは『願いを叶える種』と添えてあげて」
奇妙な注文に対して商人は不思議そうに理由を問い返すが、彼女は変わらない様子でこれに答える。
1つ、生きる目的を
2つ、責任感を
3つ、尊さを
「花は命の大切さを教えてくれますので。それと、もし良かったらその子がきちんと育て上げること事が出来るか見守って上げて」
ならばラサの地に居る恵まれない子に与える辺りになるだろう。商人はその不思議な注文を了承し、苦笑しながら彼女に言った。
「貴方様はまるで神様の様にお優しい事をおっしゃられるのですね」
「安心して下さい、天使ですので」
彼女は相変わらず、そっけなく言葉を返した。
●あるいはイレギュラーズ同士で
「うちの母は普通の人だと思うけれど、実際どうだろう。普段大らかで、でも怒ると痺れるように怖くて」
リノを交え、そう語るラダ。話の内容のせいか懐かしいものを思い返しているようにもみえるし、ちょっとした笑い話をしている体にもみえる。
「はは、どこも似たようなものかと思ってた。いつも忙しそうにしてて、一息でもついて欲しいから幻想の茶器なんかを贈ろうと思っているんだけど……」
そう聞いて商人は少し難しい顔をした。話を聞いていたリノがなんとなしに言葉にする。
「茶器は少し……道中の破損が怖いわねぇ」
幻想の茶器は、高級品ともなれば華奢な物も多い。貴族には大抵そういうものが好まれるから、ある意味それが理に適っているのだろうが。配達する側からすると気が気でない。
彼はリノの話を聞いて感心した様に頷いてから、織布の束を手に取った。
「じゃあ、縫い物好きだから布に……いや、レースにしよう」
「あら、レースも良いんじゃない? ステキだわ」
リノはその意見に賛成を述べる。彼は興味深そうにリノの首元に目やった。
「首のチョーカー、綺麗だと思ってたんだ」
そう褒められ、軽い調子で笑うリノ。商人がそのやり取りを何処か羨ましそうにしているのもあってだろうか。
「うちのお母様は、香油かお菓子にでもしようかしら」
次にリノは香油が入った瓶に鼻を近づけ匂いを嗅いだ。種類もそうだが、産出された地域によってその嗜好は布と同様に様々だ。
「リノの母さんは甘い物好きか、可愛い人だな。……なら蜂蜜はどうだろう」
「蜂蜜?」
商人はそれを聞いて、蜂蜜を取って来た。これもまた元となる花の種類によって味や匂いが違うらしい。
「オレンジ、ラベンダー、バラは……野バラになるか。花を揃えると面白そうだ」
「へぇ、花によって香りが違うのねぇ。良いわね、同じ花の香油と揃いで贈ってあげようかしら。こういうのって楽しいわねぇ、ラダが居てくれてよかったわ」
スムーズに贈答品選びが進み、彼女は微笑む。その笑みに対して、ラダはこう返した。
「折角だしもう少し話そう。いつもの店に行かないか?」
リノは笑みを保ったまま彼の提案に頷いた。
「昼間歩いていたら贈り物を見繕って下さるとの話を聞きました」
商人はそれを聞いて、えぇ勿論印象を御話頂ければと頷いた。夜乃は、彼の印象を話始める。
「一見、野蛮で粗野な方ですが、僕を見つめる視線はいつも真摯で優しいんです」
まるで灼熱の太陽の様な気持ちを持った人物だ。そんな様に語る。そんな彼との関係を問われて、彼女は頬を赤らめた。
「えぇっと、こ、恋人です」
後ろの方から咳払いが一つ聞こえる。グレーのスーツに身を包んだ青年、夜乃の恋人太刀川そのヒトだ。
彼からしてみれば夜乃が無理に惚気話を聞き出されていた様にも見えたのかもしれない。実際、商人は夜乃が小恥ずかしそうに語るのをニヤけ面で眺めていたから。
「あ、あぁ。ジェイク様は一足先に品を受け取っていましたね。私はお邪魔でしょう」
そそくさ逃げる様に、何処かへ行ってしまう商人。やれやれと太刀川は呆れていた。
それから気を取り直し、夜乃の方へ向き直る。紳士としてフォーマルな格好で、真面目に見つめてくるジェイクに対して何か眩しさを感じ先程とはまた違った恥ずかしさで直視出来ない夜乃である。
「綺麗だよ幻。これが俺からのプレゼントだ」
恋人を幻想的な青い蝶と評した――であるからして、その印象が映える様な青を基調とした華奢な髪飾りを彼女に微笑みと共に送った。
嬉しさと共に、目がくらむ様なものを感じる夜乃。周囲から一部始終を聞かれかねないせいもあるか。
「ジェイク様、ここでは……」
「おっと、そうだな。それを着けてみた姿も見てみたい」
彼女の心情を察して、その場から立ち去ろうとするジェイク。そして夜乃。急ぎ足で立ち去ろうとする二人に、商人は箱を手に慌てて夜乃に近寄った。
「中身は、恋人様に相応の銀の胸飾りです。彼に渡してあげて下さいな」
そう、またニヤけ顔で彼女に言ったのであった。
「母の日に子供の日か……父の日というのもあるのか?」
娘であるノーラの手をしっかりと握りしめながら、思い悩むポテトチップ。
夫であるリゲルも勿論一緒だが、彼は他の二人と違いしんみりとした表情だ。リゲルの父親は行方不明となり自分も幻想に居る今、母親を独りだけ天儀に残している事に胸中思う事があるのだろう。
「おばあちゃん、お茶会好きなんだよな? じゃぁ、美味しい紅茶とお菓子が良いと思うぞ!」
彼の内心を察してか、それともそうでないのか明るくそう言ってのける娘のノーラ。
「紅茶にお菓子は良いな。美味しい物を探そうか」
彼女たちの言葉につられる形で、リゲルも前向きな笑顔を浮かべる。
「俺はティースプーンを選ぼうかな」
紅茶好きの母上には欠かせない。商人に良質なティースプーンを選んでもらい、その間にノーラもポテトと一緒に品々を見回る。
「どの紅茶が良いかな……あ、パパのお勧めの紅茶とかあるか? あるならそれ贈ったら喜んでくれると思うんだ!」
「リゲルのお勧め……なら、これか」
彼の相方であるポテトは、なんとなしに茶葉が詰められた袋を手に取る。商人との相談が終わり戻ってきたリゲルは彼女が手にとった茶葉を確かめて、関心した様に頷いた。
「あぁ、これは美味しそうだな。これなら母上好みだろうし……俺のお勧めはこれだな」
ポテトがリゲルの”お勧め”を当ててみせた事に、ノーラは少しびっくりした様に口に手を当てた。
「ママ、えすぱーだったの?」
そう言われて彼女の母親と父親である二人はきょとんとした後、堪えきれない様に笑みを浮かべてみせた。
ノーラは首を傾げるが、くつくつと笑うポテトは宥める様に他の話題に入る。
「他に何か贈りたい物あるのか? あるならそれも探して一緒に渡して貰おう」
「僕はおばあちゃんへのお手紙!」
中身はノーラが描いた、父母二人と祖母の絵だ。
「おばあちゃん喜んでくれると良いな」
ポテトもそれに同意し、ノーラの頭を軽く撫でる。彼女達はそれらを一纏めにしながら、商人へ天儀に居るリゲルの母親への配達を取り付けた。
「あとな、ママも母の日有難うだ!」
「ポテトもいつも有難うな。カーネーションの可愛い指輪を見つけてきたんだ」
そう言ってノーラはカーネーションの一輪をポテトに差し出す。リゲルも、個人的に見繕ってきたのか同じタイミングで彼女に指輪を差し出した。
ポテトは自分も貰える事が予想外だったろう、今度は此方が少し驚いた様な顔をしていた
「私にもあるのか……有難う。じゃぁ、お返しだ」
彼女は、ノーラに向けて猫の絵本を差し出し、リゲルには星と猫のアイシングが描かれたクッキーを手渡した。
「今度これを付けてデートしようか」
そうお互いに渡し合う瞬間、リゲルはポテトに対して耳打ちをする。二人の耳打ち話に興味を持ったノーラであるが、リゲルに白い猫のぬいぐるみを渡された事もあって聞き出すには至れなかった。
「僕は孤児だったから、母の日の真似事はしても、直接的には関係なかったね」
商人にそう説明するルチアーノ。たぶん、両親に捨てられたんだと思うけれど何か事情があって捨てられたり死に別れたり、そんな事可能性も考えなくはないとも語る。
彼はふと漏らす様に口にした。
「だから今回は……仮に、僕に子供ができて。それでも近くに居る事が出来なくなってしまった場合、その子を守れるような何かを渡すことが出来たら……なんて思っちゃってね。ちょっと無茶振りしちゃって悪いんだけど……そんなお守り代わりになうような品物を何か見繕って頂けませんか?」
商人はそれを聞いて成る程、と納得した様に頷いた。そうして幾らか言葉を選ぶ様にしたのち、商人は水彩画のセットを渡して来る。
特に、その内にある筆ペンの一つは形は古いが取り分けて目立つほど立派な装飾が施されているの様だ。
「これは大昔に幻想で大成した芸術家が持っていた品物なんですが、そういう代物はお守りとしてご利益があるものです。貴方も絵を描くのが趣味みたいですし、どうでしょう?」
ルチアーノは商人の言葉に頷いた。
「あぁ、ありがとう。でも、なんでボクが水彩画が好きだって分かったんだい?」
商人は笑みを浮かべて、こう言ってのけた。
「まぁ、商人の伝というヤツでございます」
ルチアーノに水彩画が渡されて、しばらく後の話である。
「わ、渡して来てくれましたか?」
「えぇ、滞りなく」
ノースポールが隠れる様にギルドの隅に座っていた。当の送り先が居るとは彼女も計算外だったらしい。
とりあえず見つからずに済んで、彼女も安堵した様に息をつく。
「貴女の御話通り、とてもお優しい人の様でございましたね。兎に角優しくて、強くて、頼りになりそうな」
商人はくすくすと笑ってみせる。彼女は、どうにも気恥ずかしそうな表情で俯いた。
「いえ、茶化すのも意地悪いですね。……さて、困った事に私はルチアーノ様に贈り物は致しましたが貴女の要望はまだ満たしておりませぬ。どう致しましょう?」
商人はわざとらしく、そんな事を言ってみせる。もう一つ選んでも良いという事か。あるいは、ルチアーノに送り主を告げた方が良いか尋ねているのかもしれない。
「わたしは……」
ノースポールは他人に聞かれぬ様に、自分の選択を小声で商人に告げたのであった。
●渡し終わり
「これで全部か」
品々の贈呈が終わったとみて、そう頷くエディ。商人はイレギュラーズに恩を売る事が出来てほくほく顔である。
「ですね。お仕事の方は約束通り……」
分かってるさ。エディはもう一度頷き、そう軽く返した。そもそもイレギュラーズの事だから、依頼に対しては全力で取り組んでくれる事だろう。エディそういう仲間への信頼もあって、特別不利益は無いだろうと割り切った様だ。
「それで、エディ様も何かしら贈り物の御要望は? 貴方様にも両親が居るでしょう。あるいは、恋人とか」
調子の良い事を言ってくる商人だが、エディは表情を変えずに短く言い返してみせた。
「もう貰ったさ」
商人は不思議そうに首を傾げる。エディはイレギュラーズの方に向き直った。
――彼にとって、仲間達の内面や事情を多く知れたのはそれだけでも得るものがあったらしい。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
稗田GMです。返却遅れて申し訳ありません。
送り先や贈り物は、PCによって一様でありましたね。
今回の事が、皆様の設定の力添えになれれば幸いです。
GMコメント
GMの稗田ケロ子です。
子供の日・母の日が最近ありましたが、PCさん達はどんな親子関係があるのでしょうか。
そんな物語を広げる一助になれれば幸いです。
【場所・状況など】
ギルドローレットの昼~夕方頃。その場で居合わせたギルドの希望者が、キャラバンの商人に贈答向けの品を用意してもらえる様子。
商人の目的はローレットギルドに別件の依頼(バサジール・ルメスが出てくる依頼を参照の事)を優遇してもらう為のご機嫌取りみたいですが、それ以外の魂胆はとりあえず無い様子なので肖っちゃいましょう。
母親や子供へ向けた贈り物を中心に見繕ってくれるみたいですが、母や子供以外又は自分用でも可能。
適切なものを見繕う為に、その贈答する者についての印象や関係性を話して欲しいとの事。
贈り方についてはイレギュラーズ自身で直接手渡すのも良いのですが、キャラバンに頼めばラサにおける商売や傭兵業を経由して届ける事も可能。
なお描写上は「キャラクター自身が所持して機会を見て届ける・キャラバンに頼んで届けてもらう」等の形になりますが、システムデータ的にはアイテムは配布されません。
【NPC一覧】
・エディ・ワイルダー
ギルド直属の傭兵。彼について多くご説明する必要は無いでしょう。
渋々ながらも、商人から品物を提供してもらう様子。
基本、話に無い商売を商人が始めないように見張っていますが、イレギュラーズから何か話を振ると乗ってくるかもしれません。
・商人セイラム
ラサからやって来たブルーブラッドの商人。性別不明。少なくとも子供が居る年齢ではなさそう。
別件の依頼の事が魂胆にありますが、個人的にもイレギュラーズの人間関係に関心がある様子。
単純に物珍しさへの好奇心なのかもしれませんし、商売の匂いを嗅ぎ取ったのかもしれません。
【注意事項】
・同行者が居る場合、その旨をプレイングにお書き下さい。
・出来る限り多く人数を描写を心がけますが、全員描写出来ない場合があります。
・公序良俗に反するもの。キャラバン輸送で生鮮食品などは断られる場合があります。(現地で購入して贈答などは可能)
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