シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2018>揺り落とされる実の名前
オープニング
●
剣を置こう。ペンを置こう。
今はただ、降る雪に見とれていよう。雪降り注ぐ夜を超え、朝日に輝くその真白を見ると良い。
それは絵にはできない美しさ。どんな画家もこの白は作れない。
奇跡をきっかけに始まったシャイネンナハト。目を向けてごらん。小さな奇跡が寄り集まって、この夜ができるんだ。
●大きな願いの木の下で
「という訳で僕がグレモリーだ」
グレモリー・グレモリー(p3n000074)は、どうも名前を憶えて貰えるまでこの名乗り口上を続けるようだ。まだ君たちには数度しか会ってないしね、とご丁寧に理由まで付け足して。
「それはそれとして、シャイネンナハトだね。それらしい情報というか、知人の画家から面白い話を聞いたので君たちに共有しておこうと思って」
グレモリーがいう事には。メフ・メフィートの外れに、大きな大きな常緑樹があるという。種類は判らない。飾り付けもなく、雪だけが装飾。そんな、何もなければ通りすがるだけの木、なのだが――
「その画家は木の下に立っていた。雨宿りでね。すると上から絵筆が落ちて来たというんだ。雪で出来た絵筆がね。触るとぼろぼろ砕けてしまったけど、確かに絵筆のかたちをしていたそうだ」
丁度“新しい絵筆が欲しいな”と思っていたところにね。不思議だろ?
グレモリーはそう言いながら、スケッチブックを広げて何やら描き始める。さらさらというカンバスの音だけがよく響く。
「願いが叶う木、とは精密には言えないだろうけど……聖なる夜だから、何かあるのかも知れないね。興味があるなら行ってみてはどうだろう。あ、ちなみにこれはその木の絵だ」
グレモリーはスケッチブックを裏返し、描いた絵をイレギュラーズに見せる。
成る程、とても大きな木である。ニレの木に近いかもしれない。しかし胸を打つものは何もなく――説明画としてはこの上なくよいものだった。
- <Scheinen Nacht2018>揺り落とされる実の名前完了
- GM名奇古譚
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年01月11日 22時05分
- 参加人数24/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 24 人
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参加者一覧(24人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●Daylight
昼下がり。
アベルとシュテルンは二人、さわさわと風に鳴る不思議な木を見上げていた。
「いやあ、一人寂しく過ごすつもりだったのでとても嬉しいですよ。お誘いありがとうございます」
「アベル、むつかし、お仕事、時、いっぱい、いっぱい、助ける、してくれた」
今日は、その、お礼、なの!
両手を広げて、じゃーん、とばかりに言う彼女に、アベルは笑みを隠さずにありがとう、と。
「それにしても不思議な願いの木、ですか。ロマンチックで素敵ですね、おとぎ話の魔法のようだ」
「うん、うん。木に、お願い……シュテ、初めて、する」
「そうですか。実はですね、俺もそんな魔法が使えるんですよ」
「! アベル、魔法、使う……? 願い、叶える?」
興味津々と桃色の目を輝かすシュテルンに、アベルはええ、と頷いた。そして木にそっと願う。お願いしますね、と。
「ほら、」
木は男に応える。これで良いかい。ええ、十分ですとも。
「君を笑顔にする魔法です」
落ちてきた雪色の花を、シュテルンに恭しく差し出すアベル。シュテルンは何が起きたのかわからずに、上と下をぽかんと見ている。
「すごい! すごい! 花、落ちた! アベル、の、魔法……?」
「ええ。……髪に差せばとても綺麗ですよ」
願わくば、この指で花を添えても宜しいですか。そんなアベルの願いは直ぐに果たされる事となる。さあ、出店を見に行こう。手を繋げそうで繋がない、そんな微妙な距離感で。
この寒い時期だから、お汁粉でも作ろう。
そういったのはルナールとルーキス、どちらだったのか。レシピを調べて、材料を調達して。準備から既に二人にとっては楽しい時間。
「お汁粉様、お一つ頂きましょう」
「ありがとうございまーす!」
お客を一通り捌き終え、ルナールを振り返る。任せたのは自分だけれど、餅を黙々と焼く様が少しおかしくて。
「馴染みのない食べ物だけど、面白いものを考えるよね。実際おいしいし」
「そうだな。二人での屋台は夏以来か……お、良い感じに焦げてる焦げてる」
「焦げてるのが美味しいの?」
「そう。汁粉の餅は焦がし気味が美味い」
「ふうーん…お手伝いありがとうね、ルナール先生。でも体の冷やしすぎは良くないよ」
こうやって屋台を出すと、色んな人に関われる。それが楽しいとルーキスは思う。汁粉を一杯分器に掬って、両手で器で包んで暖を取る。
「ああ、流石に寒い……というわけで、ルーキスで暖を取る」
「ちょっ」
手をゆっくりと引かれ、飛び込むのは彼の胸。汁粉がこぼれる、とじゃれながら、二人の聖夜は過ぎていく。
【雪見花】の面々は、ハーブティーのお店を出そうとせかせか準備していた。自家栽培のハーブをたくさん、それから紅茶葉にフルーツ、ティーセットも忘れてはいけない。
試しにとアニーが焔とアレクシアに振舞ったハーブティーはとても美味しい。体が中から暖まり、心も落ち着いて。これは絶対に売れる、売れなきゃ駄目だと決意を固める面々。
でも、売れるには何をしたらいいだろう。焔はカップにギフトで炎をつければ暖かさが長持ちするのでは、という。
「それは……お客様がびっくりされるのでは……?」
「あ、そうだね! じゃあちゃんと説明してから……」
「それも面白そうだけど、まずは呼び込みだよね! 私は……休憩してる人に話しかけて、試しに飲んでもらったりしてみようかな」
「それいいね! きっと疲れた体にハーブティーが染みわたるよ~! ボクも呼び込みするよ、お歌の練習で声を出すのには慣れてるからね!」
「お二人とも……ありがとうございます」
「このハーブティーのおいしさを皆に知って貰いたいからね!」
「うんうん、しっかり宣伝するよ! 任せてっ!」
そうして二人はお客を呼び込み、ハーブティー店は右を左への大忙し。お客がいると、何だろうと寄ってくる人もいるもので。その暖かさと美味しさに、あっという間に用意したハーブはなくなってしまった。
三人は忙しくても笑いあいながら、聖夜を過ごす。
●GoodNight
「不思議な逸話のある木か……」
クリスティアンは一人、木の下にいた。
何か僕に願い事はあるだろうか、とクリスティアンは考える。しかし旅人である彼は、大抵の事は自分で叶えてしまっている。それこそ、故郷に戻りたいという願い以外は殆ど。
己に不満などあるはずもない。整った顔、護るため鍛えぬいた体、どこにも文句のつけようがない。敢えて言うなら、その魅力にもっと気付いてもらいたいところだが――
ハッ。
「そうか! 僕のブロマイドを願えば、木の下にいる皆にブロマイドが落ちてくるのでは!?」
おっと、余りに名案過ぎて口に出てしまった。が、まあいいだろう。これは僕のファンを大量ゲットのチャンス。よーし! 木よ! 僕のブロマイドおーくれ!
ばっ、と手を広げたクリスティアンに、降ってきたものは――ぶわっと舞い散る木の葉だった。
「………………」
もしや奇をてらって木の葉型のブロマイドかな? と拾ってみたものの、何の変哲もない葉っぱである。
――ハッ。
「そうか! 君もブロマイドを配りたかったんだね……! フフ、気が付いてあげられなくてごめんよ……これは大事に貰っておくよ。僕のブロマイドと交換だ!」
木の根元に自身のブロマイドを置いて、ルンルンとクリスティアンは立ち去る。同志を得た喜び(?)が、彼への一番のプレゼントだったのかもしれない。
「願い事か……」
ウェールは紙袋を片手に、木の下に。願い事と言われても、思いつくのは恋しい息子の事や、手作りパンの事。でも、それは自分の手で成し遂げたいことだ。
会いたい。手作りパンを食わせてやりたい。それは木の力には頼りたくない。
何をしようか、と悩んで暫し、彼は焼いたパンを木にあげる事にした。
「取り敢えず……いろんな奴の願いを聞くんだろ? お疲れ様っ、と!」
木のてっぺんへ向けて、パンを思い切り投げたウェール。暫くして、そろそろ良いかと木を登り始めた。パンは回収しなければ、野生動物が食べて、味を覚えてしまうかもしれない。
「……ん? あれ?」
けれど、見つからない。確かにこの辺に投げたはず、と樹上できょろきょろするウェールに、ぽこんと何かが落ちてきた。それは“おいしかった、ありがとう”と書かれた木片。
「………。」
まさか、本当にパンを食われちまったのか。腹減ってたのかな?
首を傾げながらもやはりパンがないことを再三確認して、彼は帰路につくのだった。
津々流は木の下に立って、立派な木だとその常緑樹を見上げている。これは確かに雨や雪を避けるのにもってこいだ、と頷き、守られるように枝の下に立つ。
試しにお願いでもしてみようか。ううん、と少しの間悩んだ後、津々流は考える。死して樹木になるならば、貴方のような素敵な木が良いと。
……変なお願いだろうか。
何か落ちてくるかな。
そわそわしていると、頭の上にぱさりと奇妙な感触が。
「ん、……。健康百科……」
雑誌であった。
――どうやらこの木は、まだまだ元気でいなさいと言ってくれているらしい。
そっと木の幹に触れ、ありがとうと伝える。帰ってきたイメージは、老婆老爺の歩く様。そんなに長く生きられるかなあ。少しだけ笑った津々流の手元には、気付けば健康百科はもうなかった。
マナとシオンは二人、そわそわと木の上を見上げている。あの上に何があるのだろう。どんな仕掛けでものが落ちてくるのだろう? 二人の興味は尽きないで、じゃあ、俺はマナの事を考えてみるよとシオンが言う。
自分の事を考えられるのは、いささか恥ずかしい。マナはじゃあ、と、今日という楽しい思い出をずっと覚えていられるようにと願う。
二人してうーん、と考えていると、シオンの頭にもふり、という感触。マナの手にふわり落ちてくる、平たいもの。
何だろう、と二人して見てみると……
「わあ、見て見てマナ、マナにそっくりな雪だるまだ! この翼のところとか、そっくりだよ!」
「私は…木の葉に包まれた雪の板……ですね。わ、私の形をした雪だるま…」
本当に自分のことを考えてくれていたのだと思うと、気恥ずかしいやら何やら。雪だるまも、まるで日記帳みたいな雪の板も、いずれは溶けてしまうけれど。
二人の思い出は、いつまでも溶けないでいようね。笑いあう二人。
ティミと四音は木の下へ。色とりどりの装飾がなくとも存在感のある木に、二人はほうと息を吐く。その息の白さを見て取った四音は、自然なしぐさでティミの手を取り、繋ぐ。
ほら、これなら暖かいでしょう。そう笑う四音に、ティミの思考に混じり入った奴隷だった日々の寒い夜は掻き消える。
「――なんだか最近、嫌な感じがしてて」
「嫌な予感ですか? 何か心配事でも、……おや、これは…」
そうつぶやくティミの頭上に、何かが落ちてくる。何だろう、と四音が手に取ったそれを目にした瞬間、ティミの視界にノイズが走った。
鞭と、手枷。思い出す、奴隷として石を抱くように眠った日々。冷たい石畳の部屋で、薄いブランケットを友に眠った。ちっとも暖かくなんてなかった。暖かさなんて知らなくて、知っていたのは痛みの熱さと一人の寒さだけ。
「あ、う、う……」
「大丈夫ですか? …大丈夫。貴女の心配するような事は、何も起きませんよ」
そっとティミの細い肩を抱く四音。そろそろこんなイベントがないと、つまらない。奴隷だった少女が悪い主人を倒す物語には、きっかけがなくては。素敵です、とても素敵。
四音は後ろ手に枷と鞭をそっと捨てる。それらは雪となってほろり、消えた。
幻とジェイクは、本当に欲しいものはもう手に入れていた。それは互いの心という得難い宝物。
幻は言う。以前なら、誰よりもすごい奇術師になりたいと願ったでしょうと。けれど今は、ジェイク様の事ばかり。共にいたい、色んなところへ行きたい、ずっと一緒にいたい。ああ、欲がとどまるところを知らないのです。
生というものは、こんなにも人を強欲にさせるんですね。そう瞳を向けた幻を、ジェイクはいとおしいと思う。
俺だって同じだ。幻と恋人になり、幸せな一年を過ごしてきた。これ以上の願いなんてあるのだろうか?
二人は暫し沈黙する。願いとは何だろう。やがてジェイクは一つ思いついたという顔をすると、目を閉じて願いを心中で口にした。
では僕も、と幻も目を閉じる。ジェイクが何を願ったのかと問うと、幻はひみつです、とほんのり笑って見せた。
「……あ、雪」
「え?」
二人の頭上にふわり、白い綿雪。おかしいな、とジェイクは言う。だって俺たちは、木の下にいるのに。
『来年もまた、共に幸せな一年を』
同じ願いを抱いた強欲な二人に、綿雪のような幸多からんことを。
「不思議な木かぁ……望んだものが手に入るかもしれないなんて、すごい事だよなぁ!」
「ていうか、どういう理屈なんだろ……不思議」
ヨルムンガンドと衣は不思議な木の下にお祈りに。ぽつんと聳える一本の大樹を、寂しそうだというヨルムンガンド。
「でも、とにかくお祈りしよう……! 私は衣や皆と、これからもっと仲良くなれるように……!」
「……私は……」
衣は一人でいるのが嫌いという訳ではなかった。寂しがりとも思ったことはなかった。けれど時折、何故か無性に悲しくなる。ローレットの戦いは熾烈だ。もし、もしも、誰か己に近しい人がいなくなるような事があったら? もう会えない人が出来てしまったら、どうしたらいい?
「(私はそんなの嫌。だから、これからもヨルちゃんやみんなと一緒にいたい)」
「……っと! どうだ、衣……! お願い事は出来たかぁ……!?」
「、うん。ちゃんとした、よ」
ぴょん!
何かが落ちてきて、思わずヨルムンガンドに掴まる衣。ぴょん、ぴょん、ぴょん、と幾つか落ちてきたそれは、二人の足元をぐるぐる回って。
「これは、」
「ゆ、雪ウサギだぁ……!! すごいなぁ衣、木から雪ウサギが降ってきたぞ……!」
雪ウサギはしばしぴょんぴょんと跳ねていたが、やがて動きを止めてしまう。つつくと雪のふんわりした感触がする、ただの雪ウサギに戻っていた。
「……さっき、お願いするときにな? この木も寂しくないようにってお願いしたんだ……! そのお礼かなぁ……!」
誰も、一人で寂しくない人はいないんだよ。それは木だって同じさ。
無性に衣は悲しくなって、ヨルムンガンドをぎゅーっと抱きしめた。
「願いがかなう木、ねぇ」
アーリアとミディーセラは二人、木をじっと見上げていた。見上げる分にはただの常緑樹に見える。けれど、願いに応える木なのだという。
混沌には色んな「願いが叶うもの」があるけれど。叶えたい願いが多いのか、託して置きたいのか……
「欲張りよねぇ、ほーんと」
「そうですね。一つ叶えれば次の、別の欲望が増える者。……何より高く、何より深く、何もかも覆いつくすほどの願望……」
素敵ですね、と魔女の愛し子は言った。まるで空を覆うこの木のようにも思う。ミディーセラをちらりと見ながら、私も十分欲張りなんだけど、とアーリアは心中で一人ごちた。
「ねぇミディーくん、せっかくだしお願い事でもしてみましょ! 何が落ちてくるか、気になるじゃなぁい?」
お互いの願いは秘密で、ね?
「……ええ、ええ。折角ですし、わたしたちも」
そして二人は黙する。黙して願う。願うことは奇しくも同じ。
――どうか、一緒に過ごしていけますように。
(一緒にお酒を飲みたいから。)(それがたとえ、呪いであっても。)
二人が目を開けて周囲を見回すと、バラが落ちていた。満開が一つ、つぼみが三つ。
「……バラ、ですね」
「バラねぇ。……知ってる? ミディーくん。バラの本数には、意味があるのよぉ」
アーリアがその細い指で、バラを拾い上げる。開いた花びらを軽くくわえて、小首を傾げた。知っていなくても言わないわ。そんな態度で。
――つぼみが三つ、満開一つ、ねえ、“この事は永遠に秘密”よ。
「この木何の木気になる木」
「ですね」
蛍と珠緒は木の下で、その複雑に生い茂った枝葉を見つめていた。はあと吐いた息は白く、もう12月なのだと実感させられる。
「日本ではこういうの、ご神木とかいうけどね」
そう言った蛍に、珠緒が思い出すのはかつての“お役目”。神託――情報を受け取り、木の柱を通じてカミと情報交換をしていたあの日。傷と薬で歩くことも出来なかった、ただの部品だった自分――混沌への召喚で、願われる側から願う側に転じた自分。
「そうだ、せっかくだからお願いしてみましょうよ。何かが落ちてくるんでしょ?」
蛍はつとめて明るく言うが、胸にある寂しさは珠緒には透けて見えるようだった。
そう、蛍は故郷と繋がれるものが欲しかった。寂しいというと、少しだけ嘘になる。だって、隣には珠緒がいる。家族はいないけれど、一緒に聖夜を過ごしてくれる友人がいる。生きる目標だってある。だから寂しくなんて、……でも、……でも。
湿っぽいかな、と笑う蛍に、いいえ、と珠緒は頭を振る。
「……桜咲に、主張する願いは特にないのですが……」
それは今が十分だから。自分の足で歩き、選び取る事が出来る自分。混沌がそれをくれた、それだけで十分だったから。だけど、隣の蛍をなんとかして元気づけてあげられないものかと思案する。そう、ならば願うのは……
「この場でよき事を願う皆様の心に、温もりが贈られますように」
「……それが桜咲さんの願い?」
「ええ」
「皆のための願いだね」
「ええ。今の桜咲には、これが精一杯の願いでしょうか」
「そっか。……いつかは、桜咲さん自身の願いも……あいたっ」
「あら?」
二人の頭に落ちてきたもの。それは、
「……ノート?」
「手袋、ですね」
………。
二人は顔を見合わせて、笑った。この木なりに色々考えた結果なんだろう、と。
閠は木の下にいた。彼が木の下にいるのは、珍しい事。飛行種だからかは判らないが、不思議なもの・大きなもの問わず、木にはなんとなく惹かれるものがある。
お願い事ですか、と首を傾げる。特にいますぐにという願いがある訳ではないし、困っていることは自分で解決したいのだが……ものは試し、考えていたら何か落ちてくるのではないか、と待っていた。
「……君」
「え?」
呼ばれて振り返ると、そこにはグレモリーがいた。地面を指差して、落ちているよ、という。何がでしょう、と見えない閠が問う。
「鳥の羽が、たくさん落ちている」
――慌てて己の翼を確認する閠。だが、傷一つない。
「それは何処から湧いて出たものなのだろうね」
「わ、わかりません。グレモリーさんはいつから此処に?」
「さっきだ。絵を描こうと思って」
「絵、ですか。何を書いてるんですか?」
「君たちを」
「ボクたち?」
閠が首を傾げると、りん、と鈴が鳴る。
「そう。木の下にいる人たちを。……絵になると思ったので、描いている」
「そうですか、……確かに、いい絵になりそうですね」
「ああ。だから、君も書いている」
閠にはその絵を見る事は出来ないが――きっととても素敵な絵になるのだろうと思った。木の下に集い、願う人々、ころりとちょっとおかしなものを落としてくる木。いかにも混沌だ、と笑う。
「ああ、そうだ。グレモリーさん」
「なんだろう」
――輝かんばかりの、この夜に(メリークリスマス)!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
皆さんの願い、確かに木は聞いてくれたようですよ。落ちてきたものはちょっとズレてたかもしれませんが。
すてきな聖夜でした。書かせて下さって、ありがとうございました。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
輝かんばかりのこの夜に(メリークリスマス)!
こんにちは、奇古譚です。一年が過ぎるのは早いですね。今年もあと少しです。
今回は不思議な木のお話を持って参りました。良ければいかがですか。
●目的
不思議な願いの木の下で、色々
●立地
メフ・メフィート郊外の林です。
林ですが、問題の願いの木の周りには何故か何も生えておらず、ぽつんと寂しげな印象を受けます。「こんなところに木なんてあったかな」と不思議な気持ちを覚えるでしょう。
屋台の類もありませんが、出してみれば、案外イレギュラーズが立ち寄ってくれるかもしれません。
グレモリーの友人は、この木の下で絵筆の事を考えていたら雪で出来た絵筆が落ちて来たそうです。
試しに何かお願い事をしたら――何か面白いものが落ちて来るかもしれません。
●出来ること
《1》屋台を出して周りを賑やかにする
《2》願い事をする
1の場合、他の方とのアドリブ絡みがあるかもしれません。ご注意ください。
2でお願い事をした場合、プレイングに手に入れるものを書いて下さっても構いません。(ただし、絵筆のように雪で出来ていたり、剣を願ったのに木の実になったりします。武器などは落ちてきません)
何が落ちるかお任せして下さる場合は、その旨をご記入ください。
●NPC
グレモリーがここぞとばかりに絵を書いています。
邪魔されても特に怒ったりはしません。
●注意事項
迷子・描写漏れ防止のため、冒頭に希望する場面(数字)と同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。
シーンは昼・夜のどちらかに絞って頂いた方が描写量は多くなります。
●
今回は昼シチュエーションに限り、アドリブ絡みが生じる場合があります。
皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってゆっくり過ごしましょう。
では、いってらっしゃい。
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