シナリオ詳細
<Phantom Night2018>南瓜灯籠
オープニング
●カボチャ
「Trick or Treat! なのです!」
そう告げる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、何故か南瓜を被っていた。
「……ぷはっ。今回はですね、海洋で南瓜流しがあるのです! 皆さんもいかがですか?」
豊穣を祝う収穫祭。海洋のとある島では、収穫された南瓜を川から海へと流すのだと言う。海に感謝を告げるために始まったとかいないとか、そのルーツはやや曖昧だ。
「そんな感じでいつの間にか始まったみたいですが、そのうち『ただ南瓜を流すだけは味気ない』とかなんとか言って、今の形になったらしいですよ」
今の形──南瓜を顔の形にくり抜き、中にろうそくを入れて流す方法だ。
その姿形は旅人(ウォーカー)の言うところの『ジャック・オー・ランタン』である。しかし本来なら南瓜は重いだろうし、何よりくり抜いたあとはしっかり乾燥させなければいけないはずだ。
「旅人さんにはそう言う方が多いですよね。その島で採れる南瓜は軽くて、とても乾きやすいのです。なので時間を置いたりしなくても大丈夫なのですよ」
ユリーカがちょっとだけ首を傾げながら告げる。そして先程まで被っていた南瓜をイレギュラーズに渡した。
南瓜を手に持ったイレギュラーズが目を丸くする。まるでボールのようだ、と。
回されていく南瓜に、驚きの表情を浮かべるイレギュラーズ達。ユリーカの元まで南瓜が戻ってくると、ユリーカは黒のペンを取り出した。
「これは先に中をくり抜いていますが、別に後でもいいのです。こうしてペンで顔を描いて……」
キュキュ、と得意げに顔を描くユリーカ。
「……できたのです! これをナイフでくり抜いて、こうして底に蓋をするのです」
残してあったらしい南瓜の底。ろうそくが倒れないよう設置されたそこに「えいやっ!」とユリーカが南瓜を被せる。
この南瓜の顔はくり抜かれていないが、それ以外は概ねこんな作り方らしい。
「南瓜は夕方から夜にかけて、ろうそくに火を灯して流すのです。きっと素敵な眺めなのです! 勿論トリックオアトリート、もできるのですよ」
自慢したくなるような顔の南瓜を作っても良いし、顔ではなくて仲間とお揃いのマークでも良い。
それらを流して眺めながら、友と語るのも良いだろう。
誰かを驚かせたって良い。軽度の悪戯は見過ごされるだろうから。
──さあ、あなたはどんな収穫祭(ハロウィン)を過ごしますか?
- <Phantom Night2018>南瓜灯籠完了
- GM名愁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年11月18日 22時05分
- 参加人数33/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 33 人
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参加者一覧(33人)
リプレイ
●Jack-o'-lantern
大きいもの、小さいもの。ごついもの、丸いもの。所狭しと並ぶ南瓜の中、これぞとイレギュラーズは選び取っていく。
「さぁって、気合入れて作りますかねぇ」
と巨大な南瓜を抱えたのは黒豚系オーク──ではなく、赤鬼系オーク。
(思わず笑顔になるような、大笑いジャック・オー・ランタンを作るぜ!)
下書きをする為には見本が必要だ、とゴリョウは鏡を取り出す。映る自分の大笑い顔を参考にペンを走らせるが──。
「ぬががっ! 顔が引き攣ってきたぁ!?」
なんてアクシデントも。
けれど、コツコツと丁寧に作られた大笑い南瓜は周りをしっかり笑顔にしてくれそうだ。
「結構硬そうだよねぇ」
「うん。綺麗にくり抜くの難しそう」
ルアナが選んだ南瓜をぺちぺちと叩けば、割と硬めな感触。焔も小さめの南瓜を手に頷いてみせる。
お互いの顔の形にくり抜いてみよう、と2人は向き合って相手を観察し始めた。
(ちょっと釣り目なのかな? こうかな……)
なんて真剣に観察されるものだから、焔はちょっぴり照れくさい。
(やっぱり綺麗な目だよねぇ……上手く綺麗にくり抜けるかな?)
下書きをして刃を入れ始める焔。
一方のルアナはくり抜いた皮を見て何やら思いつく。
(これを三角に切って……)
南瓜の頭につければ、それは焔の耳のよう。
出来栄えを見て顔を上げると──。
「あっ、ちゃんとリボン付けてくれてる!」
ルアナが南瓜を見て満面の笑みを浮かべる。
焔もまた、くり抜いた皮でリボンを作っていたのだ。
「髪の毛も作りたかったけど、材料が足らないや……」
「じゅうぶん可愛いよ! ルアナもできたから見てくれる?」
可愛くできたと思うんだけど、とルアナは焔灯籠を差し出した。
「豊穣を願って海に流す……豊漁祈願にもなりそうですね……!」
これが一石二鳥と言う奴か、と納得した九鬼。
南瓜の中身で鮭を咥えた熊と、更にその頭上へ南瓜を造形する。最後に串で『祈願』と掘った南瓜の上に固定すれば完成だ。
出来上がりにドヤ顔の九鬼。土台にも工夫を、と腕などを付け始める。
「ふふ、ハロウィンらしさも出て……ヤバイですね……!」
こうして呪いの南瓜──ではなく、有り難い『豊穣豊漁祈願熊さんin南瓜丸』ができあがった。
(これなら、わたしでも、出来るでしょう、か……)
お菓子の魔女──メイメイと対峙するのは大きな南瓜。
下書きはにっこりお顔の女の子だ。
(くり抜いた皮で、リボンを作って……羊の角も、つけましょう……)
きょろきょろと同じように制作している周りの手元を観察しながら、メイメイは丁寧に少しずつ掘っていく。
(実りに恵まれ、美味しいものが、たくさん食べられますよう、に……)
祈りを、願いを、南瓜に刻む。
「今日はリベンジだ!」
小さい頃に経験のあるアレクシア。ただし、昔はできなかったらしい。
そんな彼女に「仕上がりを勝負しようぜ」と持ち掛けるシラスは猫姿。
爪でガリガリと下書きを削って掘っていく。
(灯籠作り、大変そう……ああでもとっても可愛らしい……!)
なんてアレクシアの視線は露知らず。
アレクシアは抱きしめたい気持ちを抑えて南瓜に向き直った。
下書きは基本に忠実に、完成だけを目標に。
(でも何か物足りない気が……)
なんて思いながら、視線は自然とシラスの方へ。そんなことを何度も繰り返しつつ完成させたわけだが──。
「笑わないでよね! もうっ!」
視線を逸らしたシラスのヒゲがひくひくと動いていて、アレクシアは口を尖らせた。しかし、シラスの足場になっている南瓜を見てすぐ笑顔を浮かべる。
「わぁ、完成してる! その姿で作り上げるだけで凄いよ! 撫でてあげる!」
「……アレクシアが撫でたいだけじゃないか?」
「え? そんなことないよ!」
手が頭に乗る。その温もりに、黒猫は満更でもなさげに目を細めたのだった。
「この精悍な感じのにしよう!」
フィーリングで南瓜を選んだシャルレィスはキョロキョロと辺りを見回す。
(南瓜灯籠の顔に眉毛とかあったっけ? みんなどんな顔にしてるのかな?)
軽く眺めた程度では見当たらない。……が、キリッとさせたいのでつけてしまおう。
歴戦の戦士のようにするのだ、と強そうな逆ハの字を書く。
南瓜をくり貫くのは意外と大変で、けれど楽しい。完成した灯籠に、色紙で作った眼帯を被せれば──。
「できた!」
──巴灯籠、完成。
「案外難しいものですね」
「うん……結構難しいね……」
雪之丞ちらりと南瓜をくり抜くシオンの手元を見る。
「シオン、小刀の扱いは、気をつけて下さいね……痛っ」
「……!! ゆきのじょー大丈夫……?」
雪之丞の指先に血がぷくりと溜まり、溢れそうになる。
自身がうっかりしては駄目ですね──なんて思ったのも束の間。
「シオン……!?」
「確か切り傷は舐めれば直るって……!!」
指を咥えるシオンに雪之丞は口をぱくぱくと開閉させるものの、何も返せず。
「血が止まったらまた頑張って彫って、完成させよー……!!」
「……えぇ。止血したら、また頑張りましょう」
頷く雪之丞。向こうを向いてもらえないかと告げると、シオンはきょとんと首を傾げた。
「自覚できる程度には、顔が熱いので。少しの間、見ないで下さい……」
「んー……? わかった……」
シオンが横を向けば、鎮座するのは大きな南瓜。雪之丞のような角を持ち、シオンのような眠たげな表情をした南瓜がほぼ下書きの状態で、2人をのんびりと待っている。
沢山の南瓜を見回して、大きな南瓜にリヴィエラは瞳を輝かせた。
両腕で抱え、優しく抱きしめてご挨拶。
「よろしくね、素敵な灯籠にさせてね」
下書きには星を散らし、中身をくりぬいていく。
(中身は持って帰ってもいいのかしら?)
パイも作ってみたい──なんて考えながら模様をくり抜く。灯りを入れて蓋をすれば、星の音楽が聴こえてきそう。
「ふふ、とっても可愛くできたわ! なんだか、流すのがもったいなくなってきちゃうわね」
火が揺れると同時、星の光も揺らめいて。
マリネとオリヴァーは同時に首を傾げる。
(彫る、顔……顔、かぁ。どんなのが良いんだろ……?)
(どんなのがいいかなー……そだ!)
「……リネ?」
「出来上がるまでー、リヴには教えねーしー」
怪訝そうな声を上げるオリヴァーに背を向けるマリネ。
ふと見えたとても楽しげな横顔に、オリヴァーの頭にも案が浮かぶ。
(出来る、かな。んん……がんばる)
思いついたソレは想像以上に難しい。上手いとは言い難いかもしれないが、2人はどうにか形にした。
「じゃーん、リヴの顔! どうよ!」
マリネが見せた南瓜にオリヴァーは瞬きを1つ。
まさか、自分の顔だとは思っていなかったのだ。それに、自分だって──。
「……僕も、これ。リネの顔。……頑張ってみた」
「あーしの顔? えー、見えねーし!」
「……む。そ、かな?」
マリネの南瓜だって大差ない。
そう思いながらも、オリヴァーの口元には微かな笑みが浮かんで。
「でも。これ、並べて流すの……楽しみ。だね」
ドヤ顔の南瓜とぼんやり顔の南瓜。きっと仲良く流れていくのだろう。
その近くでは「お互いのイメージで灯籠を作ろう!」と張り切るクリスティアンとロク。
(王子のイメージねえ……カッコイイ! カッコイイ南瓜作らないとね!)
(この少し丸目の南瓜なら、ロク君の可愛らしさを存分に表現できそうだ!)
爪で下書きを終えた猫姿のロク、それに沿って前足で南瓜の中を掘りはじめる。クリスティアンもまた、ナイフで凹凸の大きな箇所を掘り始める──が。
「「アアッ!!」」
2人の声が被る。片や南瓜の脳天を突き抜け、片や余計な部分まで切り落とし。
(……まあいっか!)
(まだ、まだ大丈夫だ……)
それぞれ気をとりなおして作業を再開するものの──。
「「……アアッ!!!」」
互いの状況にまだ気づいていないのは、はたして幸か不幸か。
「これじゃ王子ってわからないね……」
「なんてことだ……もう1度最初から、え? ダメ?」
そんなわけで出来上がったのは、猫(一見魔種のよう)と王子(顔と脳天に大きな穴)の南瓜。
不器用2人組は互いの南瓜を見せ合って絶句したり、苦笑いしたり。
ペタン、と足を伸ばして座るココルは大きな南瓜抱えるようにして作業中。
「こんな感じでしょうか?」
腕を伸ばして離れてみると──おや、ちょっと歪な笑い顔。
納得がいかなさそうに小さく眉根を寄せたココルは隣を見た。
「ミーシャさんはどんな感じになりましたか?」
「ボクは、猫みたいに笑ってるの。だけど、口が大きいかなって」
案外うまく削れないものだ。
けれど、ココルはミーシャの南瓜を見てぱっと表情を輝かせる。
「可愛いのです! すごいのです! ミーシャさんは上手ですね!」
手放しに褒められるとほんの少しくすぐったい。
ミーシャはココルの方を見ると、その南瓜に目元を和ませた。
「ココルのも、可愛くできてると思う」
「そう言ってもらえると嬉しいです!」
告げられたココルも照れくさそうに笑う。
そうだ、とミーシャが目を瞬かせれば、ココルも「あ、」と小さく呟いた。
そう、忘れてはいけない。
「「トリック・オア・トリート!」」
一際賑やかなグループはギルドの仲間で集まっているようだ。
夏は氷の器、秋は南瓜灯籠。冬は雪細工なんか楽しいかもしれない──と思いながらポテトは小さめな南瓜を手にした。
「皆、大丈夫かい? 怪我しないよう気をつけるんだぞ?」
南瓜の底にナイフを入れながらリゲルが告げると、各所から返事が上がる。
(け、結構力が必要ですね……)
慎重にくり抜くエリーナ。その絵柄は顔というより影絵のようだ。
「そうだ。ポテト、くり抜いた中身の部分って食べられないのかなっ?」
ギギエッタの声にポテトは手元から目を離さず口を開く。
「種なら洗って焼けば食べられるぞ?」
「え、南瓜の種って食べられるのか? 流石、ポテトは詳しいな」
「そうなんですね。知りませんでした」
その言葉にリゲルとエリーナもしみじみと。
それから暫し。1番乗りで完成したギギエッタは唐突に立ち上がった。
「がおー! カボチャおばけ参上だぞー!!」
三角な目と鼻に、ギザギザの大きな口。
底から顔を入れてギギエッタは襲い掛かるポーズをした。
「南瓜のお化けの仮装ですね! 可愛らしいです!」
「ここで仮装するとは……定番の表情だけど愛嬌あるな」
「ギザギザの口が難しいんだよなー。似合ってるぞ!」
3人からの言葉にギギエッタは顔を出して「えへへ♪」と笑った。
「お、みんなのもできてる! マント付きのカボチャ、ちょっとイケメンじゃない?」
リゲルの南瓜はキリッとした目元に爪楊枝の剣。騎士の出で立ちだ。
ポテトとエリーナからの『凛々しい、カッコいい』と言う言葉にリゲルは照れくさそうに笑う。
「ポテトさんは可愛い猫さんのランタンですね!」
エリーナの視界に入ったのは丸っこくデフォルメされた猫の顔。後ろにはくるんと丸まった尻尾もあるのだ。
皆から可愛いと言われる猫灯籠の隣にある、兎灯籠にリゲルの視線が移る。
「エリーナさんの南瓜も可愛いな!」
「月兎か」
その南瓜はポテトが言った通り、月と兎。顔ではなく、月を眺める兎をイメージした南瓜だ。
「へー! こんなのも作れるんだぁ!!」
きらきらと目を輝かせるギギエッタ。
最後に皆で火を灯せば、個性的な4つの灯籠はぼんやりと場を明るくした。
「これぐらいの大きさでいいのかな?」
『作れそうな大きさなら何でもいいだろう』
ティア胸元の十字架と会話しながら南瓜を決め、白猫海賊──ミアの元へ持っていく。
ミアはいつになく張り切っていた。
ティアが探し求めていたものを先日見つけてくれたのだ。
(この嬉しさと感謝を……南瓜に込めるにゃ!)
と、鼻歌混じりにナイフを使っていたミアだったのだが。
「ぴにゃっ!?」
「っと、大丈夫?」
ミアの指から血が滲む。
血止めを、と魔法のバッグから取り出そうとすると、指にぬるりとしたものが触れた。ティアの舌だ。
「ティアティア悪戯っ子……なの」
くすくすと笑っているうちに血は止まり、作業再開。やがて猫を思わせる南瓜灯籠ができあがった。
「爆発する花火をつける……の♪」
うきうきとしたミアに、ティアが待ったをかける。
「折角作ったものが壊れるのは悲しいと思うよ? 私もミアのが爆発しちゃうと悲しいし」
ミアはティアの言葉にそういうことなら仕方ない、と頷いた。
「これにしようかな」
ウィリアムが選んだのは大きな南瓜。三角形の目が多いようだが──。
(丸くしてみようか)
火を入れやすそうだし、可愛い気がする。
曲線にくり抜くというのは難しいが、完成してみれば──ほら、やっぱり可愛い。
(……初めてか)
南瓜流しも、灯籠を作るのも初めてだった。長く生きていても世界は広いと都度思い知らされる。新たに知る、ということに気づけば笑みが浮かんで。
「来年も実り豊かとなりますように。頼んだよ」
世界は徐々に、茜色へ染まっていく。
●Orange light
「夏にも灯籠作って流したけど、南瓜が流れてるのとは雰囲気が違うね~」
ニーニアは桜餅を食べつつ、温泉の湯が入った桶に足を浸す。
目の前を流れていく南瓜は様々な表情で可愛らしい。……いや、なんだかすごい顔(?)の南瓜も流れていった。薄く光っていたのはサインだろうか?
この中に自分の作った南瓜灯籠もあるはず、とキョロキョロすれば桜餅のベールがふわり。落とさまいと慌てて端を掴むニーニア。
「む、今流れてきた南瓜に笑われた気がする! 誰の南瓜だ~!」
怒ってはみるけれど、その南瓜はケタケタと笑ったまま流れていった。
「収穫祭って賑やかなお祭りが多いから、こういう静かな催しって新鮮だよね」
「ええ。変わった催しだけれど、思ったよりも雰囲気があって楽しいわ」
マルクとアンナは南瓜を流し、温かい飲み物を買って橋の上へ。
見下ろせば夜空を思わせる南瓜を始めとしていくつも流れていき、まるで──。
「まるで、シャイネン・ナハトみたいな光景だね」
自らの言葉で思い出したかのように、マルクはアンナを今年のシャイネン・ナハトへ誘った。2人で絵を描いてもらわないか、と。
「去年は行けなかったから、今年は行ってみたいと思って」
「もう冬の話? そうね……私も去年何もしなかったから、今年は何かしてみようとぼんやり考えてはいたけれど」
(イルミネーションでも思い出したのかしら?)
なんてアンナが思っているとマルクが口を開く。
「……約束がある方がさ、『還ってこれる』と思うんだ」
その言葉に、アンナは思わず苦笑した。
「心配症ね。必ず帰って来ると言ったでしょう?」
けれど、約束は時として力にもなるのかもしれない。
魔法少女──ヨルムンガンドは青薔薇のふわふわお化けへご挨拶。
「トリート&トリート! なんてな」
シャルルは目を丸くして、次いで首を傾げた。
「……掛け声、違わない?」
「こう言った方が貰えそうだからなぁ……! シャルル、一緒に自慢しに遊びに行こう……!」
ヨルムンガンドに誘われ、菓子をねだりに回り始めたシャルル。
トリックオアトリート、と声をかけながら「がおー!」とポーズをすれば、2人の元に菓子が集まっていく。
「……2人で半分こ、しよっか」
シャルルがぽつりと漏らした言葉にヨルムンガンドは目を瞬かせ、嬉しそうに頷いた。
「トリック・オア・トリート。俺の悪戯は常軌を逸してるからな? やられたくなけりゃ菓子を寄越しな」
灯籠を作り終わってまったりしている者達の前へMorguxが立ちはだかる。
何とも物騒だが、彼にも事情があるのだ。──サンド・バザールに費やしてしまって懐が寂しいのである。
いかに腹持ちが悪くとも、食費削減のために菓子で5日程度持たせたいもの。
(幸い、見た目は子供。普段着だってそれとなくハロウィンらしい……はずだ)
結果──相手の反応は様々であるが、成果はまあまあと言ったところか。あとは空腹という欲求との勝負である。
その上空──月に影。飛翔機で空へ向かったクロバは、眼下の光景に目を細めた。
(元の世界でもある風習ではあったのだけれど……)
まさかこの世界でも灯籠があると思わなかった。しかも、このような形で。
上空は地上より些か風が強く、赤マフラーとともに見慣れぬ黒髪がたなびいた。
そう、なびく艶やかポニーテールと可愛らしくデコレーションされた大鎌。収穫祭(ハロウィン)だけの魔法にクロバもまた、かかっている。
周りに気遣いながら傘をさしたヴルノエは、月を見上げて「わぁ」と声を漏らした。
(やっぱり変身した姿のひともいるんだね)
魔法にはかかりそびれたけれど、収穫祭くらい楽しみたい。ヴルノエは作った灯籠に傘を乗せ、川へ流す。
今差している黒地に橙蝙蝠の傘と同じデザイン。南瓜に乗った傘はヴルノエの手を離れて暫しすると──それこそ魔法のように──消えてしまった。
ヴルノエはそれを見届けると、水筒の中身を飲みながら他の南瓜や魔法にかかった人々を眺め始める。……『祈願』と掘られた南瓜の上にいるのは邪神像だろうか?
(普段住んでいる場所でも、まだまだ知らないことは多いですね……)
マナはキョロキョロと辺りを見回す。その手にはヨハンの顔が掘られた南瓜灯籠。
不慣れゆえに、良い出来とは言えないかもしれないが──。
(ふ、雰囲気を楽しめれば良いですよね……?)
既に流れている南瓜の中には、なにやら形容し難いものもいくつかあるようだ。
傍らのヨハンも、マナの顔を掘った南瓜を手にしている。
「なんかこう、我が子のような感慨深さが……?」
南瓜ではあるのだが、多少なりとも愛着は湧くもので。
それでも2人は火を灯し、川に南瓜を浮かべた。
「一緒に寄り添って、どこまでも流れていってくださいね」
とん、とヨハンが押すと2人の南瓜がゆっくり流れ始める。
「沈まずに……出来ればレーム様のかぼちゃと一緒に流れてくれると嬉しいですね……」
「ですね。2人で荒波も超えていくんですよー。……もちろん、あのヨハンかぼちゃのように、これからもマナさんを守り続けますからね」
南瓜の灯りを見送って、ヨハンはマナへ照れくさげに笑いかけた。
幻想的な光たちは、ゆっくりと海へ──。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。お楽しみ頂けたら幸いです。
プレイングでご指定頂いた方は魔法のかかった姿で、指定されていなかった方は通常の姿で描写されているかと思います。
今後もご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
GMコメント
●概要
1.南瓜灯籠を作ります。
2.南瓜灯籠を流します。
3.Trick or Treat!! できます。
【制作】
用意されている南瓜を選び、灯籠を作るまでのパートです。材料・道具は貸し出されます。
時間帯は日中、以下の手順内で描写致します。
・沢山用意されている南瓜から1つを選びます。1つだけですよ。
・黒いペンで顔の下書きをします。顔でなくてもよいです。
・南瓜の底をくり抜き、中身を出します。
・下書きに沿って切り抜きます。
・くり抜いた底にろうそくを嵌めこめる場所を作り、ろうそくを乗せたら元のように南瓜へはめ込みます。
・顔の穴から火を灯して完成!
【流す】
制作した南瓜を川に流します。
川の流れは緩やかです。
南瓜は軽いため、特に加工を加えなくても水に浮きます。
時間帯は夕方~夜、幻想的な眺めとなることでしょう。
このパートでは飲食物の持ち込みが可能です。ただし、その場で調理することはできないのでお弁当やサンドイッチ程度のものとします。
【ToT】
Trick or Treat!!
悪戯したいorお菓子を貰いたい方はこちら。時間帯は夕方~夜。
グループ参加推奨ですが、単独も止めません。
●注意事項
本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
同行者、あるいはグループタグは忘れずに。
今回、行き先タグに関して使用を推奨します。どちらにも関わることが記載してあった場合、大幅に出番の削られる可能性があります。
●ご挨拶
愁と申します。ハロウィンですね。
姿はいつも通りでも、魔法にかかった姿でもご自由にどうぞ。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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