シナリオ詳細
<グレート・カタストロフ>シルバーバレット
オープニング
●ラサの地にて
銀色の大口径リボルバー拳銃が轟音を発した。放たれた弾頭は狙い違わず対象に命中し、その姿を爆散させる。
凄まじい威力の一撃だが、しかし……。
「数が多すぎてキリがない」
弾倉を解放し空薬莢を足元へ乱暴にばらまくパドラ(p3n000322)。スピードローダーを差し込んで素早くリロードを終えると、新たな対象に狙いを付けた。
それは巨大なサソリにも似た怪物で、終焉獣とはまた異なる存在だ。
「これが……イレギュラーズの言ってた『星界獣』ってわけ」
それだけではない。完全な人型をした星界獣がふわりと空中に浮きあがり、手の平から魔術による光線を放ってくる。
横っ飛びに回避したパドラは反撃の銃弾を撃ち込むが全身を堅い殻に覆った人型星界獣にはその表面にガンという音をたてるばかり。
「ここは、撤退したほうが正解みたい」
パドラは目くらまし用の煙玉をコートから取り出すと、それを地面に放って走り出したのだった。
●執行猶予の終わり
「全く、酷い目にあったよ。世界の崩壊が近いって言うのも、嘘じゃないみたいだね」
パドラは現場から離れたオアシス街の酒場にて、ビール瓶を片手にカウンターへと寄りかかっていた。
そこには馴染みの飲み仲間でありローレット・イレギュラーズのシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が隣で同じようにビール瓶を手にしている。
「無限にも思えた執行猶予は終わり、なんだってさ」
手のひらをぱたぱたと降るシキ。
この世界がいつか滅ぶという神託の、その『いつか』がついにやってきたのだろう。
ラサの『南部砂漠コンシレラ』。そこには無数のバグホールが出現した他、通称『でっかくん』と呼ばれる怪物が出現しオアシス街を五つほど消滅させたという。
その被害から逃れるべくいくつものオアシス街から住民たちが避難し、それらは無人となっている。
パドラはバグホールや町の調査を行うべくマガキの仲間と共にそのオアシス街を訪れたのだが……。
「星界獣たちが町を占拠していた、というわけですね」
瓶を片手にやってくる水月・鏡禍(p3p008354)。彼もまたパドラと深い友情を結んだ仲だ。
「その星界獣たちは?」
「おそらくだけど、北上してこっちのオアシス街を狙ってる。侵略だね。
もう一度出撃したいけど、仲間たちが星界獣にやられちゃって重傷を負ってる。
だから――」
そう言って、パドラは瓶を小さく掲げた。
「今回も頼めないかな。ローレットに。勿論二次会の酒はうちの奢りでさ」
●バロトダウと大サソリ
イレギュラーズたちが集まり、マップが開かれる。
そこに置かれたのはビール瓶の蓋だ。
「連中と戦うには、まず星界獣の前衛部隊にあたる『大蠍型星界獣』の群れを突破しなきゃならない。こいつらはオアシス街を北上してくるつもりみたいだから、町の外から攻め込んで倒しながら町の中へ入っていくカンジになると思う」
ツーッと瓶の蓋をオアシス街の外から中へと動かしていくパドラ。
けど注意して。強さはさほどでもないけどこの星界獣は数が多いし尾に毒がある。
「蠍型モンスターのエネルギーでも喰らったのかな? けど、性質が分かっていれば対処は余裕だね」
「そういうこと」
シキの言葉に頷いて、カンッと蓋を爪で叩くパドラ。
「次に重要なのはここ。街中に出現する人型の星界獣。奴は自分を『バロトダウ』と名乗ったの」
「――『名乗った』!?」
鏡禍の驚きはもっともだ。星界獣が言葉を発しコミュニケーションをとってきたということなのだから。
だが不可能だとも思えない。なぜなら、ステラという人間そっくりの存在もまた、星界獣の一種なのだから。そういう前例がある異常、喋る星界獣が現れても不思議ではないだろう。
「奴は物凄く頑丈な上に、空を飛んで魔法を扱う。近接組は屋根から飛びかかったり狙撃したりって対応をしてたみたい。相手もそこまで高高度に逃げるってことはなさそうだから、その対応で十分そうだね。私も相手の防御力をふまえて特殊弾頭を持っていくつもり」
つまりは、強力なネームドが存在するということだ。おそらくはこれが指揮を執ることで北上作戦を行っているのだろう。倒してしまえば、その作戦ごと破壊することができるはずだ。
「ちょっと面倒な戦いになるけど……その分酒は振る舞わせて貰うよ。お願い、今回も力を貸して」
- <グレート・カタストロフ>シルバーバレット完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年01月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
「や、パドラ!また呼んでくれてうれしいよ」
「久しぶり、でもないかな。シキ」
ぱしんと楽しげに手を合わせる『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)とパドラ。
「世界の終焉だとかなんだとか。大変だけど、でも君の顔見るとちょっと安心する。
執行猶予はもう終わり、なんて。本当にするわけにはいかないさ」
「その通り、だね。世界の終わりなんてみとめるわけにはいかない。君もそう思うでしょ?」
そこへ『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がやってきて、こくりと頷いた。
「パドラさん、こんな形でまた会うことになるなんて……。
とにかく今は星界獣を倒してオアシスを守ろう!」
「うん、よろしくね。今じゃローレットばっかりが頼りなんだから」
世界の水準からいって、ローレットの戦力は凄まじく高い。鉄帝で例えるならA級闘士がごろごろいるような世界だ。一般の傭兵など比べものにならない戦闘力を有していると言って良い。
一方で、『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)は真剣な面持ちで依頼書を握っていた。
「ついにこっちまで星界獣が来たんですね。
それもかなり厄介そうな進化をして……」
そして決意を込めた眼差しで顔を上げる。
「大丈夫ですよパドラさん、任せてください。
僕が受け止めてますので援護射撃、いつものようにお願いしますね」
「ん、いつも通り頼りにしてる。今回も宜しくね鏡禍」
「大量のバグ・ホールと……何?でっかくん……? あだ名は可愛いけどやってることは全然可愛くないな」
依頼書を片手に、『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)は困った表情を浮かべていた。
「これまでは何者かが謀略によって世界を分裂させようとしていた感じだったけど、今回はもう天災、厄災って感じだ……滅びに意志はあるんだろうか?」
「さあね。意志があってやってるわりには無差別ってかんじだけど。いずれにせよコンシレラの惨状はどうにかしないといけない。でしょ?」
パドラの言葉に、アルムは深く頷いた。
「そうだね。コンシレラには、俺が関わって救った街もあった。それが、こんな理不尽に失われてたまるか!」
「既にオアシスを5つも消滅させてるなんて……」
『でっかくん』の起こした事件を振り返り、悲しげに眉根を寄せる『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)。
「この地に住まう人達の為にも一刻も早く解決しないと!
星界獣の好きにはさせないよ!」
「そうだね……」
『笑顔の魔女』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)がぎゅっと杖を握りしめる。
「星界獣の北上作戦も放置できるものではないし、バグ・ホールや街の調査も大事。速やかに殲滅したいね」
そう言いながら、仲間の様子を観察していた。
今回はヒーラーが多くタンク面でも重厚なメンバーが揃っている。気になるのはその分の殲滅速度だが、自分達が攻撃にシフトすればその部分は補えるだろう。
そんなことを考えていると、『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)がパドラにからんでいた。
「最近、親父(ハウザー)より娘(パドラ)のほうが仕事してねぇか?
隠居したか?
まぁそいつは冗談だがよ」
肩をすくめるパドラに笑いかけ、ルナはオアシス街へと振り返る。
「酒代の分くれぇは働かねぇとな。それに、連中ほっときゃ、ラサも地図から消えちまいそうだしな」
それだけは勘弁してほしいと言いたげなルナ。
『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が小さく頷いた。
「一つ一つの事件を確実に潰していく。
世界中が混乱する今、それを一人一人が確実にこなしていくしかないのだわ。
大丈夫……皆でしっかりそれが出来れば、私達は最後に必ず勝つのだわ」
●
問題のオアシス街へと到着すると、そこは既に星界獣でいっぱいになっていた。
街の外まで展開する星界獣たちが、飢えたような視線をこちらに向けると、一斉に動き出した。
「最初の一団はオイラが引きつけるよ! 寄ってきた蠍たちはオイラごと巻きこんで攻撃しちゃっていいから!」
チャロロはそう叫ぶと蠍型星界獣の集団の中へ自ら飛び込んでいった。
『名乗り口上』の効果によって星界獣たちの注目が集まる中、チャロロは手にしていた『機煌宝剣・二式』に炎を纏わせ、大地に思い切り突き立てた。
「燃えろぉ!」
次の瞬間、大地から無数の炎の柱が立ち上り星界獣たちを焼き焦がしていく。
常人であれば簡単に倒せるだけの火力があるが、それでも倒しきれないのは星界獣がそれだけ厄介なタフさを備えているという証拠だろう。
「シキ、お言葉に甘えようと思うんだけど」
「私も。といっても、識別するけどね」
チャロロが引きつけた星界獣の群れめがけ、パドラが銀の大口径リボルバーピストルを突き出した。
弾倉にある限りをぶっ放す。放たれた弾丸は特殊な弾頭をもち、着弾地点で激しい爆発を引き起こした。
爆発に巻き込まれた星界獣たちの目がくらむ。回避能力がガクンと落ちたのだろう。その動きは酷く鈍っていた。
そこへ――。
「隙だらけ」
豪快に飛び込んでいくシキ。
抜刀した刀で星界獣を切り裂くと、返す刀で二体目を切り裂いていく。
流石にここまで痛めつけられれば星界獣とて無事では済まない。
血を吹き上げて星界獣が次々と力尽きていった。
そんな中で、チャロロの誘導にひっかからなかった星界獣がシキめがけて毒の尾を繰り出してくる。
回避は――あえてしない。突き刺さった尾の毒をうけつつも、シキは至近距離まで接近していた星界獣の尾を切断。更に頭部に刀を突き立ててやった。
じたばたと暴れたのちに動かなくなる星界獣。
「回復をお願い。今回はヒーラーが手厚くて助かるね」
「任せておいて。誰一人だって倒れさせたりしないのだわ!
今私が一つ一つ確実にこなすべき事がこれなのだわよ!」
華蓮は『祝詞』をあげるとふわりと浮きあがる。『稀久理媛神の加護』が彼女の飛行能力をサポートしていた。
そして毒を受けたシキや集中攻撃を受けているチャロロに『祈りの歌』の範囲治癒を行う。
AP回復とBS回復を併せ持った、この戦闘にはもってこいのスキルだ。
なにせオアシス街の外から中までこの星界獣の群れを蹴散らしながら進まねばならない。能率型の仲間にとってはともかく、消費の激しい仲間にとってはかなりキツイ戦いとなるだろう。なによりこの後、強力な星界獣との戦いが待っているのだから、できるだけ万全の体制で挑みたいものである。
群れを蹴散らしながら街の中へ。見えてきたのは市街地の光景だ。
路地を埋めるほどの星界獣の群れが突き進んでくるのもまた、見える。
「今度は僕が引きつけます! 範囲攻撃をお願いします!」
鏡禍がずいっと前に出ると、『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動。湧き出た紫色の妖力が炎のごとく燃え上がり、星界獣の群れへと襲いかかる。
「僕のことも巻き込んでもらって構いませんから!」
そう叫びながら星界獣の中へとこれまた自ら飛び込んでいく。
あまり広いとは言えない路地で密集すれば、『ブレイズハート・ヒートソウル』のいい的だ。【怒り】の付与された星界獣も、そうでない星界獣も纏めて鏡禍めがけて襲いかかってくる。
だが防御、回避、特殊抵抗がすべて100越えという鏡禍を削りとるには難しく、彼らの攻撃は次々にかするかかわされるかするばかりだ。
よしんば当たったとて、抵抗を突破することは難しいだろう。そして突破できたとしても【BS無効】に阻まれるという寸法である。
「頼もしいね。なら、暫くは攻撃に集中していようかな」
スティアは密集しすぎて上下に重なりだした星界獣たちの群れめがけ『神気閃光』の魔法を発動させた。
白き天使の羽根が舞い散るなか、一個の球体を手のひらの上に作り出すと、それを翳すようにして星界獣の群れへと発射。
着弾した瞬間、光は爆発し白き天使の羽根を周囲に散らした。羽根は常人を容易く切り裂くような光の刃となって星界獣たちの肉体を切り裂いて行く。
ここでようやく鏡禍への攻撃の無意味さを悟った一部の星界獣がスティアたちに目を付け始める。が、これもまた愚かといえるだろう。
なぜならスティアは(今回やっていないだけで)抑え役として非常に優秀なタンクなのだ。
星界獣が何匹か襲いかかりその毒の尾を突き立てようとしたとて、簡単にそれが通る相手ではないのだ。
「うーん、かなり平気そうだけど……ちりつも式にダメージは受けてるね。回復しておこうか」
アルムは手にした杖を掲げると治癒の魔法を唱え仲間たちを回復し始める。
が、やはり手持ち無沙汰になったのか、魔法を転じて破壊の魔法を杖に宿した。
キラリと星の瞬きが起こったかと思うと、アルムの杖から激しい光線が発射される。
光線は星界獣の一体に命中し、そこを中心に光の爆発を引き起こす。
星界獣たちが吹き飛び、目の前がパッと明るく広がる。
その中をルナは思い切って駆け抜けた。
もし奇襲をうけても問題無い。なぜなら『ルーンシールド』と『マギ・ペンタグラム』を己に付与して完璧な無効化結界を張っているからだ。そしてそもそも、『ビーストヘッド』もちの彼に不意打ちは通用しない。
ルナが向かった先は町の中央に続く大通りであった。
そこにも星界獣が集まり、あちこちには倒れた馬車や燃えた家屋などが見える。
「こいつぁ酷いな」
どれだけの生活がこの星界獣によって破壊されたのだろう。そう考えたルナは舌打ちをしてライフルを構えた。
集まってきた星界獣めがけ、『神気閃光』の弾頭をこめたライフルで迎撃。
光の爆発が幾度も起きて星界獣が吹き飛んでいく。
【痺れ】と【乱れ】によって動きを鈍らせた星界獣の所へ、ここぞとばかりにヴェルーリアは『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動。
架空の軍勢が大通りに出現したかと思うと、それぞれが星界獣を攻撃し始める。この軍勢というのが、なんだからヴェルーリアを三頭身にしたぬいぐるみみたいな形をしているのだった。
それらが杖でぼこぼこ殴りつけたり魔法を唱えて発射したりとわちゃわちゃ可愛く戦っている。
その攻撃に対抗すべく飛び出してくる星界獣。が、これもまた星界獣にとって悪手であった。
これまた今はやっていないだけで、ヴェルーリアもまた優秀なタンクヒーラーなのだ。
星界獣が攻撃を仕掛けようとしたところで、三種100越えの防衛能力がその攻撃を阻み、高いEXAと能率効果から繰り出す連続治癒あるいは攻撃スキルによって瞬く間に星界獣を殲滅できてしまうのだ。
難点を無理に見つけようとするなら範囲攻撃に識別がついていないことくらいだが、それだってチームワークでいくらでも補強可能なポイントである。
「皆、中央広場に出るよ! おそらく例の『バロトダウ』はここにいるはず! 気を引き締めて!」
●
「おっとこれはこれは、パーティーに飛び入り参加だ」
空を悠々と飛んでいたバロトダウは空中に停止してこちらを見やった。
「が、招いた覚えはない」
両手を突き出し魔術を発動。光線が放たれるが、それをチャロロは盾で受けた。
「うわっ!?」
盾で受けたはずのチャロロはそのまま吹き飛ばされ、酒場らしき家屋へと突っ込んでいく。
ごろごろと屋内を転がり、テーブルを派手に倒したところですぐに起き上がった。
「なんて威力だ。ヒーラーたちはオイラの後ろに隠れて!」
続けて二発目が放たれようとしたところで、チャロロは華蓮やアルムたちの前に躍り出た。
今度はしっかりと足を踏ん張って吹き飛ばされないように注意。しつつ――後ろから華蓮ががっしりとチャロロの身体を支えるように突っ張った。
「私が立っている限り、誰かが倒れる事なんて許さないのだわ!
かと言って私へ攻撃する事を、うちの神様がタダで許してくれるかは別の話だけどね」
「神様どころかオイラが許さない!」
華蓮の手から治癒の温かい色の光が放たれ、押し当てたチャロロの身体に染みこんでいく。
盾を構えたチャロロの身体は激しい攻撃によってボロボロになりつつあったが、それが急速に回復していくのがわかった。
「堅いなァ。ならこれでどうだ?」
次なる魔術を放とうとしたバロトダウ――の横から奇襲を仕掛けるルナ。
それまで家屋に隠れていたルナは高い機動力を生かして高高度まで一気に上昇。ライフルに込めた『ピューピルシール』弾をバロトダウの腕めがけて放った。
「おっと!」
腕に弾丸を喰らって次の魔術をキャンセルされたバロトダウは、手をぱたぱたと振って自らに治癒の術を行使する。
「小技でも、うざってぇもんだろ?」
「素直に認めたらやめてくれる?」
「んなわけねえよな」
「だったら人手が必要だ」
パチンと指を鳴らすバロトダウ。するとそこら中から蠍型星界獣が飛び出してきた。
「こいつらは任せて! 私が引きつけるから!」
ヴェルーリアは杖を地面に突き立てると『絶対守護宣言』を発動。気迫を叩きつけられた蠍型星界獣たちは一斉にヴェルーリアへ襲いかかっていった。
「――アイゼルネ・ブリガーデ!」
襲いかかってくる星界獣の群れに対抗するように、先ほどの三頭身ヴェルーリアの群れを召喚。突撃させる。
鋭く統制されたその動きはわちゃわちゃしつつも星界獣たちを次々に吹き飛ばしていく。ヴェルーリアの高いEXA依存の火力がそうさせるのだ。
「私はシキだよ、よろしくねっ」
「でもって私はパドラ。よろしく死んでね!」
パドラの援護射撃を受けながら素早く建物の屋根へとよじ登るシキ。
そしてシキは屋根を走ると飛行するバロトダウへと斬りかかった。
跳躍と同時に剣を抜き、振り抜く。全身を堅い殻で覆ったバロトダウを襲ったのは強烈な斬撃――ではなく、『識の殺・業式』。
認識そのものを破壊するという暗殺術だ。がくんと身体のバランスを崩した所へ、スティアの『天穹』が直撃した。
「――しまった!」
「暫く、相手になってもらうね」
意志を魔力に変換し、撃ち出す魔法。強力な【怒り】付与の魔法だ。
これを喰らったバロトダウは目の色を変えてスティアへと殴りかかる。
対してスティアはスノードームのような魔術障壁を展開して衝撃を受け止めた。ふわりとドーム内で羽根が舞い散る。
「どうしてこんな事をするの? 街を滅ぼして得られるような物はないと思うんだけど……」
「どうして? そりゃあこの世界を喰らうためさ。すべて喰らって、滅ぼすため。単純明快だろ?」
「星界獣の本能……って所なのかな」
「まあそんなとこ」
「スティアさん、協力します!」
バロトダウを逃がさないように、そして狙いを分散させてダメージを軽減させるために鏡禍は『鏡面召喚術』を発動。
バロトダウの周囲をミラーハウスのように鏡が覆い、しみ出した妖力がバロトダウを絡め取り始める。
怒り狂ったバロトダウは鏡禍めがけて殴りかかった。
鏡の形をした妖力障壁を展開して防御する鏡禍。
「キラキラして美味しそうに見えたりします?」
「ま、確かに。喰らいがいのある強さをしてるねえ。喰っても?」
「良くないです!」
「バロトダウ、君たち星界獣はどうして人々に攻撃するんだ?」
そこへ、杖を構えたアルムが問いかけた。
「その質問にはさっき答えたな。ああ……もう一度言うかい? 本能がそうさせるからさ。世界のすべてを喰らうため。この世界を滅ぼすため。それが私だ」
「バグ・ホールと君たちに関係はあるのか? 君たちはどこから来てるんだ?」
「まったまった。質問をしすぎだ。答える義理は? 勿論ない」
肩をすくめて手を広げてみせるバロトダウ。
そこで【怒り】の効果が切れたのか、アルムめがけて両手から光線を放った。
素早く割り込んで光線を受け止める鏡禍とスティア。
「滅びとは……一体何なんだ?
教えてくれ、救いたい人がいるんだ」
アルムの、どこか縋るような言葉に、バロトダウは首を僅かに動かす。
「すべてを喰らうことさ。この世界は滅びに近づいている。我々がやがてすべてを喰らい尽くすだろう」
「そうは、させない」
アルムの杖から放った光線がバロトダウへと直撃。胸に大穴を開けると、バロトダウは墜落した。
屋根を破壊してついさきほどチャロロが突っ込んでいった酒場と同じ場所に落ちると、テーブルを破壊して大の字に倒れた。
「僕を倒したところで、すべては……もう……」
がくがくと震えながら手を伸ばし、その腕は、ばたんと地面に落ちたのだった。
●
余談。
戦いの後、シキとパドラはいつものようにビールで乾杯していた。
「あぁいや、嬉しくないわけじゃないよ?
でもちょっとだけ、うん。くすぐったく思うかな。
君とこうして過ごして、飲んで笑って。
こういうの、これから先も続いていくといいな」
「アタシも……そう思う。ずっと、この先も続いたらいいよね」
世界なんか、滅びなくってさ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
コンシレラから北上作戦を行おうとしている星界獣の一団を撃退しましょう!
●フィールド
オアシス街『シャルロ』
コンシレラ砂漠に存在するオアシス街の一つで、今は無人となっています。
町の空にはバグホールがいくつか出現しており、これが避難の主な原因となりました。
・バグ・ホール
混沌世界各地に出現している『謎の穴』です。
混沌の終焉(絶対的終焉(Case-D))の接近に伴って出現したとされています。
次元の歪みのようなもので『触ったら消滅する』とも言われているもので、非常に危険な代物です。
このバグホールは激しいプレッシャーを放っているらしく、これによって味方のランダムな対象に【重圧】【体勢不利】のBSが付与されます。
●エネミー
・大蠍型星界獣
全長1m程度の蠍型の星界獣です。
数がとにかく多く、尾には毒があります。
これが前線部隊となっているため、町に入るにはこれらを倒していかなければなりません。
・人型星界獣『バロトダウ』
言葉を話す星界獣です。空を飛び、頑丈で、魔法による光線を主体とした戦闘方法をとります。
単独で街中を飛び回っており、当然『それができる』だけの実力を備えています。
かなりの強敵なので力を合わせて戦いましょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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