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シナリオ詳細

<神の門>真実(うそ)と嘘(しんじつ)

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 苦しかった。
 苦しかった。
 まるで息ができないかのような日々。
 天義の正義は私を断罪し、
 そして『しそこねた』。
 私は生きている。
 生き延びてしまった。
 いっそのこと、あの場で不正義として断罪してくれていれば。
 私は、冤罪の末に殺された『被害者』として死ねたのだ。
 人は死者にやさしい。どうせもう口を開かないから、好き勝手に言えるからだ。思い出になってしまえば、もう、適当に美化して放っておいてくれるからだ。
 私に待っていたのは現実だった。
 ただ、家を守れず、聖盾を守れず、正義を守れず、悪の策にはまり、無様と惨めをさらけ出した愚か者だという、そう言うものが残っていただけであったのだ。
「わかるとも」
 彼の言葉が、砂漠に落ちた甘露のように染み渡るのを感じる。
「わかるとも。君の傍で、ずっと、ずっと――私はそれを見ていた」
 彼は、仮面の奥にやさしい瞳を隠している。その仮面の奥にあるのは、私だ。
 私の、顔だ。
「友よ。あるいは、私よ。セレスタン・オリオールという藁人形という役割を全うし続けた生贄の羊よ。私が誰だか理解しているかね?」
「私は、私だ」
 私は、サマエルに向けてそういった。
「私とともに、ほんとうに、ずっとそばにいてくれたのは、私だけだった。私、だけだ」
「そうだとも。だから、君の本当の願いを、私は知っている」
 サマエルは笑った。
「私は君が欲しい。君と一つになろう。そうしてこそ、私たちは本当に、私になれる」
「あこがれた、本当の、私に」
 あえぐように、救いを求めるように、私の喉は彼を求める言葉を吐いた。
 狂っているのかもしれない。
 そうかもしれない。
 でも、仕方ないじゃないか。
 誰も彼も――私に、私が、本当に欲しかった言葉をくれなかったじゃないか。
 神も、聖職者も、同僚も、友も、誰も。
 赦しをくれなかった。
 励めと。立てと。歩けと。
 無邪気に残酷に、その先に光があると指をさして笑う。
 笑いながら、私を蹴りつける。
 無能だ、堕落だ、没落だと笑い果てる。
 面白い見ものだったか。
 惨めな男が這いつくばるのは。
「わかるとも。苦しいのだろう。つらいのだろう。
 私が、私だけが、君を赦そう。
 私が、私だけが、君を、愛そう。
 私が君の神になる。
 私は、神の国に生まれ、聖盾をリンクし、君とつながった――セレスタン・オリオールなのだから」
 神は、私を赦した。
 神は、私を愛した。
 ハッピーエンドだよ。これはそういう物語だ。


 『あなた』が『テュリム大神殿』へと足を踏み入れたのは、イレギュラーズたちの戦端が切り開かれ、そう間もないタイミングでのことだ。
「……また戻ってくるとはな。まぁ、まだここは入口みてぇなものだが」
 ゴリョウ・クートン(p3p002081)がそういった。ゴリョウたちが招かれた場所までは、まだ遠いといえるだろう。テュリム大神殿は、神の国への入り口に過ぎない。だが、敵に拉致され、帰還したゴリョウや、シェアキムの力なくば、この場にイレギュラーズたちが進軍することもできなかっただろう。
 長らく続いてきた遂行者たちとの戦いも、既に反撃のフェーズへと突入していたはずであった。ここで神の国に襲撃を仕掛け、冠位強欲を引きずり出す―それが、イレギュラーズたちのプランだ。
「そうだな。また会えたことを光栄に思うよ、ゴリョウ」
 親しげな声が響いた。そこにいたのは、仮面の遂行者、サマエルだ。
「また会うときは、戦場で。思いの他、早い再会となったものだ。
 私に会いたくなったのかな?」
 そう告げるサマエルに、ゴリョウは鼻で笑ってみせた。
「まぁな、色男。そろそろ決着をつけたいと思っていたところでな!」
 身構える。それを制するように、サマエルは手を上げた。
「決着は無論。そして、今この場に運命的に集ったイレギュラーズの諸君にも、私は敬意を払うとも」
「……妙に機嫌がよさそうだな。何かお宝でも拾ったかい」
 尋ねるゴリョウへ、サマエルは頷いた。
「ああ。私は、半身を取り戻したのだからね」
 そう、笑う。突然、サマエルの隣の空間がゆがんだ。神の国内での、遂行者の瞬間移動の術の様なものだろうか。戦闘中には使えまいが、こうして移動は容易なのだろう。それはさておき、現れた男の姿に、ゴリョウは、そしてイレギュラーズたちはたまらずに身構えた。そこにいたのは、天義の黒衣を身にまとった男であったからだ。
「……セレスタン・オリオール……!」
 仲間のイレギュラーズが声をあげる。それは、セレスタン・オリオール。天義の聖騎士に間違いなかった。
「なるほど、オメェさんにも招待状がきてたのか。そして、受けちまった……!」
 ゴリョウが言うのへ、セレスタンはうなづいた。
「ああ……ようやく、私は本当の救いを手に入れることができたのだよ」
 どこかうっとりとするように、セレスタンは声を上げた。サマエルが頷く。
「君たちの予測通り、私もまたセレスタン・オリオールだ。
 神の国に生まれた、ゼノグロシアンをベースとした、ね。
 ゆえに、彼がどれだけ惨めな人生を生きてきたかを知っているし、彼の救いを求める声も理解していた――」
「唆したのか?」
 仲間の一人が言う。
「救いを与えただけさ」
 サマエルが笑う。
「さぁ、ここからが本番だ。
 さすがに、神の国に土足で立ち入らせるわけにはいかない。
 無粋な客には、ここで退場してもらうとしよう。
 やれるな、私?」
「ああ、そのつもりだ、私」
 二人のセレスタンは、その大きな盾を構えた。聖盾と、聖騎士の盾。しかし、聖盾は、ここに本来の持ち主を取り戻したことを喜ぶかのように、異常な波動を放っていた。
「ちっ……あいつらの自信満々もわかるぜ。聖盾の力が、これまでの比じゃねぇ……!」
 これまで、何度もサマエルと相対してきたゴリョウが、その力を心底から理解する。これまで、ともにサマエルと戦ってきた、タイム(p3p007854)が居れば――いや、タイムもまた、遂行者の手の内で戦っているはずだ。
「やるぞ、皆」
 仲間の一人がそういうのへ、『あなた』は頷いた。
 此処を突破し、神の国への足掛かりを作らねばならなかった――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 二人の盾使いとの戦いです。

●成功条件
 セレスタン・オリオール、サマエルのどちらかを戦闘不能状態に追い込む。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 神の国への進撃のため、テュリム大神殿へと足を踏み入れた、皆さんローレット・イレギュラーズ。
 そこに待ち受けていたのは、遂行者であるサマエル。そして、彼らの声を受け入れ、裏切った元聖騎士、セレスタン・オリオールでした。
 もともと強力であった遂行者サマエル。そして、聖盾を失っていたとはいえ一級の聖騎士だったセレスタン。この二人を倒さなければ、このエリアを突破はでいません。
 さらに、聖盾は真なる持ち主を取り戻したことに呼応するように、非常に強烈な力を放っています。聖盾はユニットではありませんが、彼を戦力として数えるなら、強力な防の勇者三名を相手にしなければならないという状況です。
 状況は決して良いとは言えませんが、ここを突破できなければ、冠位傲慢に相対するなどまた夢のまた夢であるとも言えます。
 作戦決行タイミングは昼。作戦エリアは、テュリム大神殿、サマエルの間。
 障害物などはなく、特に戦闘ペナルティなどは発生しないものとします。

●エネミーデータ
 遂行者、サマエル ×1
  仮面の遂行者にして、その正体は『神の国のセレスタン・オリオール』。聖盾の偽りの主でしたが、聖盾が真の主を取り戻した今、その性能はさらに一段上に上がったといえるでしょう。
  非常に高い防御技能を持ち合わせています。そのため、防無などで確実にダメージを通してやったり、強力な攻撃で少しでもダメージを与えるなどする必要があるでしょう。
  攻撃面でも当然のように強力ですが、今回の彼は至近~近距離での攻撃に特化しているようです。
  一対一のダンスがお望みのようです。振り回されない自信があるなら、相対しましょう。

 遂行者、セレスタン ×1
  呼び声を受け、聖痕を刻まれた裏切りの騎士。遂行者となった彼は、これまでよりもさらにパワーアップしています。
  性能はサマエルと似ていますが、今回の彼は遊撃タイプになっています。動き回り、皆さんの攻撃を引き付け、戦場を引っ掻き回してくるでしょう。
  動きを止めてやったり、サマエルから引きはがしてお互いのサポートを妨害してやったりすると、相手のやりたいことを潰せるかと思います。
  また、サマエルよりはセレスタンの方が柔らかいので、狙うなら彼……と考えるのもまたよしです。が、あくまで「比較的」であり、「こっちを狙えば楽勝」などとは考えませんよう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <神の門>真実(うそ)と嘘(しんじつ)完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年10月27日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤

サポートNPC一覧(1人)

セレスタン=サマエル=オリオール(p3n000342)
合一の果て

リプレイ

●対峙
 鐘が鳴り響くような気すらする。
 セレスタン・オリオールの心境はとても晴れやかであった。
「そうか、誘いに乗っちまったのか」
 少しだけ残念そうに、『ポロキメン』ゴリョウ・クートン(p3p002081)はそういった。
「ジル坊のこともある。残念だ」
「彼は」
 セレスタンが言う。
「純真だった。まっすぐに、未来を信じていた。
 私のことも信じていたし、私が立ち直ることを、私がもう一度立ち上がることを、誰よりも強く望んでいた」
 酷くゆがんだ表情を、セレスタンは浮かべた。
 泣き出すような、怒るような、何かを憎むような、そういう表情だった。
「――それが、どれほど私の心をえぐっただろう。
 ジルは優しく、強く、勇敢だ。私と同じ立場ならば、きっと私の誘いの手をはねのけただろう。
 だからこそ」
「憎かったってのか」
 『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が、そう声を上げた。
「違うか。怖かったんだな。ジルはアンタにとって、今の、天義の象徴だった。
 過去じゃない。怖い、未来の象徴だったんだ」
 吐き捨てるように、コルネリアが言った。
 何もかもをあきらめたように、セレスタンは瞳を閉じた。
「私(サマエル)は、かつての天義こそが、正しい歴史の世界だと語っていたね。
 その通りだ。
 あの時、冷徹なる正義と断罪をもって、私の首をはねたであろう天義こそが、私にとっての正しい世界だった」
「分からなくはないさ」
 コルネリアが言った。わずかに、その視線が伏せられた。
「絶望の淵、何者にも……自分でもどうにもならなかった思いの中で差し伸べられた選択肢。
 当人にゃ手を取らざるを得ない光だったわけだ。
 分からなくは無いさ。足掻いた先が遂行者だったというだけ」
「私に光を与えられたのは、私だけだったということさ」
 サマエルが言った。
(わかるさ、きっと己を肯定して貰いたかったのだろう)
 『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が、胸中でそうつぶやいた。
 這いつくばり泥をすすっているときに、人が欲するものは前向きな未来への道筋だろうか?
 もしかしたら、『あなた』たちならば――そう、言うのかもしれない。いえるくらい、強いのかもしれない。
(自分で自分を赦すことが出来ないから、そうしてくれる人を求めた。
 泥水の中にいることを、それでもよかったと赦してくれるものが必要だったのか。
 ……全く下らない。人は結局、何処までいっても独りだと謂うのに)
 言い聞かせるように、か。吐き捨てるように、か。アルヴァは胸中でそうつぶやいた。
「本当の救いを手に入れることが出来た、だって?
 そんなものが救いだっていうなら、全くもってお笑いだね」
「救いだよ」
 サマエルは笑った。
「私たちにとっては、それが救いだったわけさ」
「……ヒトは残酷だ。
 無自覚に誰かを追い詰め、潰す。自分を救えるのは自分だけだ。
 だから、差し伸べられた手を取ってしまったンだろ? セレスタン。
 んで、苦しむ自分を救ってやりたかったのもあるンだろ? サマエル」
 『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が、静かにそういった。わずかに、セレスタンが息を吐いた。サマエルが、制する。
「図星をつかれたようだな、私よ。
 だが、憤ることはないよ。
 事実だ。君にもわかるかい? この天義という国が、やはり根本から腐っていることに」
 大仰に、大げさに。そして主語を広げてサマエルが言う。
「主語をでかくするなよ。天義ががまだ、変わる途中で……まだ変わり切っていないことはそうだろうさ。
 そのうえで……俺はアンタたちを、ここで仕留めるつもりでいることに変わりはない」
「天義が苦しいなら他の所に行けばいいだろ。
 場の空気や水が合わず、
 毒として身を蝕むなら生きる為にも他所へ行くしかない。
 頑張りたくなければ聖騎士なんて辞めればよかっただろ」
 『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は、その身を震わせんばかりに、そう声を上げた。
「それでも、心がボロボロになっても聖騎士でいたのは何か理由があるんじゃないのか?
 子供の頃の夢、助けた人からの感謝、親兄弟の意思を継ぐ。
 最初から何も無いなら力も技術も身につかないだろ……!
 お前の心に響かなくても応援してる人、消えたお前の無事を祈ってる人が一人はいるだろう!
 そんな人も間違っているからと今を真っ赤に塗りつぶしてなかったことにするのがお前のしたいことなのか!!」
「人はな……生まれたところから、そう遠くへ行けないものだ……」
 サマエルが言った。
「私(セレスタン)にとってそれは、天義という地だった。それは鎖のようでもあった。
 君の言う、夢、感謝、意思……。
 それは私にとって、すでに重い重責に過ぎなくなっていったのだ」
「彼の気持ちを代弁するなよな」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が、そういった。
「『私はあなたの事を一番わかっていますよ』は詐欺のトークだよ。
 自分自身の完璧なコピーが相手でも、全く同じ歴史をたどって今に来たわけじゃないんだから。
 セレスタンの苦悩、本当に理解してる? いや、理解してたとして……彼を操る材料って以外に、なにか感想を持ってる?」
 そう、穿つように尋ねるアクセルへ、サマエルは肩をすくめて見せた。
「手厳しいな。だが、私は私を愛している。本当だとも」
 そう、うそぶく様に言って見せた。
「結局のところ、綺麗ごとを言ったとて……彼を救えたものは、私以外にはいなかったということは紛れもない事実だろう? アクセル君、だったかな。
 私は詐欺師かもしれないが――では、詐欺師に救われたものは、果たして哀れか? これまで、誰も救ってはくれなかったというのに?」
「あなたって、そうやって他人をけむに巻くタイプ?」
 『龍柱朋友』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が、笑いながらそう言う。
「そういうのこそ、本当に詐欺師が言う常套句だよ。
 騙そうとした人が悪いに決まってる。
 ……まぁ、私は、あなたたちの苦悩を知らない。ローレットの報告書で見聞きした程度。
 だから、あなたたちのことを、どうこうなんて言えない」
 その言葉に、『星に想いを』ネーヴェ(p3p007199)もまた、うなづいた。
「あなた様たちに声をかけるのならば、きっとふさわしい人たちがいるのでしょう。
 わたくしたちは、ただ、突破するために。
 この先に、わたくしたちの、仲間がいるのでしょう?」
 きっ、と。決意を乗せた視線を、遂行者たちにぶつける。
「ならば、わたくしたちは……ただ、友のために。
 あなた様たちの、自慢の盾を。
 砕かせて、もらいます、ね!」
「ふ――勇ましい子兎だ」
 サマエルが笑う。そういうところがキモいのだ、と誰かが居たならば言ったかもしれない。
「僕にはあなたの気持ちはわかりません」
 『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)が、困惑するように、そういった。
「何があなたをここまで追い込んだのかも。
 ……あなたを縛り付けたのは何だったんでしょうね。
 どこか離れた場所で何の名声もないセレスタンとしては、生きられなかったんでしょうか」
「無理だ」
 セレスタンは、泣きそうな顔で笑った。
「それは、できなかった。
 できなかった、のだよ」
 そう、言った。
 おそらく――彼はまじめだったのだろう。
 周囲の期待に応え、聖盾を継承し。
 魔の策略によって、それを奪われた。
 盾を失った彼は、その挽回を目指し、
 しかしその結果は伴わなかった。
 かくして向けられるのは、同情と侮蔑の視線か。
 だれも――結果を残せなかった彼を認めてはくれない。
 むしろ逆。「なぜできなかったのか」と責めるばかり。
 無論、それを受け流すことのできる任げもいるだろう。
 だが彼は、まじめに過ぎたのだろう。
 その声を、些細な悪意を、すべて、受け取ってしまったのならば――。
「人間は、わかりません」
 鏡禍は、
 そう言った。
 わからなかった。
 なぜ、人は思いをすれ違わせるのだろうか。
 なぜ――かくあるべしと、自分を、他人を、追いやるのだろうか。
 理想とは理想であり、現実ではない。
 でも――。
 現実という沼に浸かっているだけでは、きっと人は溺れてしまうから。
 這い上がろうとするのか。
 すべてを追い込んでまで――。
「もう、よいかな」
 セレスタンの声が、鏡禍の思考を現実に引き戻した。
 同時に、仲間たちの意識を、その『敵』へと向けた。
 敵である。
 もはや、敵なのである。
 何があったかも、なかろうとも――。
 対峙し、倒すべき相手である。
「セレスタン・オリオール卿」
 『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は、そう、声を上げた。
 まっすぐに、瞳をぶつける。二人の、遂行者へ。
「貴方に問うよ。
 セレスタン・オリオール。
 貴方の正義はどこにあるの?」
「ここに」
 と、セレスタンは言った。
「今は、正しき自分とともに」
 そう――。
 剣を構えた。
 聖騎士の剣だった。
 彼の誇りであり、重荷である剣だった。
「まだその刃を構えるのならば。まだその盾を掲げるのならば」
 スティアが、身構えた。
「私が止めるよ。ヴァークライトの娘として」
「好い」
 サマエルが言う。
「さぁ、始めよう。
 まずは言葉を。
 そして次は剣をかわそう。
 情熱的な、ダンスの始まりと行こうか」
 構えた。
 偽りの、聖騎士の剣。そして、堕ちた聖盾。
「やるぜ」
 ゴリョウが、言った。
「踊ろうか、遂行者」
 その言葉を合図に――。
 両軍、一斉に踏み込む。
 たんっ、と音を立てて。
 ステップ――それは、血で血を洗うダンスの始まり。
 神の国を騙る地にて。
 今、正義(いつわり)と正義(しんじつ)が、衝突する!

●ラスト・ダンス
「さて――今回は、少し本気で行くか。
 ついてきたまえ、私(セレスタン)」
 サマエルが、たんっ、と足を踏み込む。それに導かれるように、堕ちた黒衣が続いた! 連鎖行動!
「速い、か!」
 レイチェルが舌打ち一つ。迫る二つの堕ちた聖騎士。
「君の剣技は彼らに通じる。のびのびとやりたまえ」
「ああ、もちろんだとも」
 まるで長年の戦友のようなコンビネーション。それはそうだろう。彼らはまた、自分自身であるのだから。
「ネーヴェ君か。まずは君から狙わせてもらおう」
 サマエルが刃を振り払う。強烈な斬撃は空間を割き、真空刃を生み出してネーヴェへと迫る。ネーヴェは身構えた。その斬撃を、足を止めて受け止める!
「く、う……っ!」
 痛みが走る。致命打ではないが、それなりにダメージは大きい。やはり、魔の者。一筋縄ではいかない。
「すまないが、弱みを撃たせてもらう!」
 足を止めたネーヴェへ、セレスタンが襲い掛かる。たんっ、と踏み込むと同時にふるわれる刃は、聖騎士の刃。なるほど、訓練された鋭き斬撃である。ネーヴェは再度、息を吸い込むと、その一撃を受け止めて見せた。防衛技術。負けたいための戦い。
「でも、最初のお相手は、クートン様がおつとめになる予定ですよ……!」
 ネーヴェはそういいながら、セレスタンの刃をいなした。そのまま、ふわり、と後方へ跳躍――飛び込む、ゴリョウ、そしてスティア。
「さぁて、色男! 一対一のダンスをご所望だろう!?」
「オリオール卿、勝負だよ!」
 ゴリョウ、そしてスティアが声とともに突撃。二人の遂行者の攻撃を誘導すべく、立ちはだかる!
「ゴリョウか。やはり、君はいい。
 その黒衣が、私の隣になかったことが――実は残念でね」
 そういって、仮面の下で男が笑う。
「これは実にアンビバレンツだ。
 君なら断るだろう。否、断るからこそ、私は君を気に入っている。
 もし私の隣にいたとしたら、私は君に失望したかもしれない。
 だが――君がその気高きまま、私の隣にいることを、想像せずにはいられない……!」
「ぶはははっ! ずいぶんと買ってくれるじゃねぇか!
 だがな、俺はオメェさんの隣に立つことはねぇよ。絶対にな!」
 ずしん、と、ゴリョウは大地を踏みしめた。その体が、ずん、と沈む。
 耐久の方。ゴリョウが、これまで培ってきたすべてを生かす。
「オメェさんから学んだものもある。
 それまでに出会った、たくさんの強敵から学んだものもある!
 俺はな、剣術の学はねぇさ。
 装備だって、聖なる何とかなんてたいそうなものじゃあねぇ。
 それでも――宣言してやる。
 そんな俺でもオメェさんに勝てるモンはあるんだよ!
 それはこの背を支えるものだ!
 守るべき家族、背を預ける友、共に歩む最愛!
 一歩一歩踏み締め結んだ縁(れきし)こそがこの背を支える根源よ!
 半身を得てもテメェは一人! 独りで倒せるほど『俺たち』は脆くもなけりゃ儚くもねぇ!」
 そう、吠えた。
 英雄はここに一人。背負う者は無数の愛。なれば英雄は一人にあらず。
「いいとも。始めようか。ゴリョウ」
 サマエルが、ゆっくり身を沈めた。それは、弓を弾き絞るように。そして、解き放たれる。
 がおうん、と、両者の盾がぶつかり合った。ダンスの始まりを告げるベルである。
 一方で、セレスタンは、スティアへ斬撃を繰り出していた。
「ヴァークライトか……不正義の……!」
「あなたと同じ! でも、あなたとは違う!」
 スティアが吠えた。手にするは、ネフシュタンの聖杖。
「惨めな人生……なんて!
 貴方は自身の歩んできた道をそう表現するんだね。
 他の誰でもない貴方自身が!

 それは自分を呪うのと同じだよ!
 自分でさえ、貴方の事を赦してなかったんじゃないの?」
「そうだろうな……!」
 斬撃が、スティアを襲う。聖なる杖が、聖騎士の刃を受け止めた。
「だからこそ……私は全く、誰からも赦されなかったのだ……!」
 苦しむように、彼は言った。スティアはそれでも、彼に甘い言葉をかけるつもりはなかった。
「其れじゃあ、ただの八つ当たりだよ!」
 スティアが、聖杖で刃をいなす。入れ替わるように飛び込んできたのは、ウェールだ!
「あなたは、自分のことを許してやればよかったんだ。それを……!」
 狼札より剣を召喚し、ウェールはデッドエンドの斬撃を繰り出した。が、聖騎士の盾は、それを受け止めて見せる。なるほど、防御技能は、それなりに高いようである。
「気楽に言う! 私のことは、私が一番わかっている……!」
「まっすぐに過ぎたんだ! そんな重荷を背負わなくたって、いいはずだろう!?」
 ウェールの言葉は、しかしセレスタンに届かない。ウェールの言葉通り、まっすぐに過ぎた男である。全てを捨てて逃げられれば、よかった。それも、できない男だった。
「硬いなら、硬い相手への戦い方があるっ!」
 シキだ。その手にしたレインメイカー。奇跡を呼ぶ剣を手に、一気に踏み込む!
「弱点をぶつける! その盾だって、万能じゃない!」
 斬撃が、その盾のわずかな防御の隙間を縫った。振り下ろされた斬撃が、セレスタンの黒衣と、その肉を切り裂く。
「なんと……!」
 セレスタンが歯噛みする。体勢を立て直しつつ、セレスタンが走り出した。
「合流なんてさせないよ、セレスタン!」
 シキが叫んだ。
「ハッピーエンドだかなんだか知らないし、
 何がめでたしかなんて、私が口を出すことでもないけれど!
 誰になんと言われようが、認められなかろうが、理解されなかろうが、
 私は君たちの盾を粉砕してこの先へ進む。
 そうやって、私は私の信じた道をいくだけだ。
 君もそうでしょう? セレスタン!」
「そうだとも!」
 セレスタンが、応じた。
「私は、私の正しきを全うする! 私が、あるべき私になるために、ここで君たちを殺す!」
「だったら、此方のダンスのエスコートも頼むぜ? 聖騎士サマ」
 レイチェルが、一足飛びに接近した。その魔術紋が輝く。掲げた手からはなたれた血が、赤の炎となって、セレスタンの体を包み込んだ!
「雷焔というものか……!」
「そうだ、復讐の、焔だ」
 レイチェルが、ぱちん、と指を鳴らす。雷焔はさらに激しさを増して、セレスタンの体をしびれさせた!
「かといって、それで止まるような妄執じゃあないんだろうが!」
「当然……!」
 セレスタンは雷焔を振り払うと、一気に踏み込んだ。真正面にいた鏡禍へ向けて、その刃を振り下ろす!
「あなたは……!」
 鏡禍はその手を掲げると、ルーンの盾を展開する。一合、振り下ろされた斬撃を、その盾で受け止めた。
「……僕には、もうかける言葉はありません……!
 突破させてもらいます! この場所を!」
「いいだろう、やってみるといい!」
 セレスタンは、力を込めてその刃を振り下ろした。ルーンの盾が粉砕される。その勢いのままの斬撃を受けて、鏡禍が後方へと飛びずさった。
「僕が仮に倒れたとしても……あなたを倒す!
 それができれば、僕たちの勝ちです!」
 痛みをこらえながら、妖力の衣をふるう。その一撃は竜殺しの魔剣となって、セレスタンをたたきつけた。同時、コルネリアの銃弾が、セレスタンへと迫る。
「それで良かったのかい色男。
 どうしてアンタはその道を、遂行者の手を取った」
 あざ笑う、死神のごとき狙撃。その銃弾が迫るのを、セレスタンは盾で受け止める。
「辛かったのか、前までのテメェを変えたかったのか。
 誰よりも自分を理解してやれなかった、認めてやれなかった。
 でもどうして良いかわからないんだ。
 そうか……アンタもまた、逃げている途中なんだな。セレスタン
 アタシもだよ」
 何かを確認するように、コルネリアはそういった。
「私が逃げている……!?」
 銃弾を受け止めながら、セレスタンが叫ぶ。コルネリアは叫び返した。
「そうだ、逃げてるのさ……アタシたちは、ずっと!」
 コルネリアの銃弾が、セレスタンを狙う。セレスタンはそれを受け止めつつ、一気に走った。コルネリアに相対する。斬撃を振り下ろす。コルネリアが反射的に身をそらすが、その刃は体に確かな傷をつけた。
「違う! 私は、一歩を踏み出した……!」
「だから、騙されてるんだろ!?」
 アクセルが叫ぶ。指揮杖から放たれる青き衝撃が、セレスタンを吹き飛ばし、距離を取らせた。
「あいつは、君を利用してるだけなんだって!」
「だとしても、救いの手を差し伸べたのは、私だけだ……!」
 セレスタンが、叫び返した。斬撃を飛ばす。真空刃が、アクセルを傷つける。
「馬鹿野郎が……!」
 アルヴァが叫び、飛び込んだ。狙撃銃を構える。
「なぁセレスタン。てめぇには何処か親近感が湧くが」
 ゆっくりと、引き金を引いた。聖なる光が、解き放たれる。
「だからこそ気に喰わねぇ、気に入らねぇ。甘ったれやがって!
 この世で一番可哀想だったみたいな顔してる奴に、俺は負けねえよ!」
 解き放たれた聖光が、セレスタンを打ち抜いた。盾が、彼のなけなしの最後の誇りが、それを受け止める。
「私が……そのような顔をしていると……!?」
「その卑屈さは、もう傲慢だぜ、セレスタン!」
 アルヴァが叫び、再びの光撃を放つ。セレスタンが、その一撃を受け止めた。
 一進一退の攻防。イレギュラーズたち9名を相手にし、セレスタンは一歩も引かぬほどの力を見せた。
 それはやはり、魔に堕ちたが故に得た力であろうか。
 戦いのうちに、双方は深く傷ついていった。
 それは……セレスタンが、欲しかった力なのだろうか?
 本当に得たものとは、いったい何だったのであろうか?
 本当に得るべき力とは……。
 答えは出ない。
 ただ、両軍とも、信じる者のために、ぶつかり合うだけだ。
 嘘であろうと、真実であろうと。
 真実であろうと、嘘であろうと。
 その胸に、正義を……。
 信念を、掲げているのは。それだけは、間違いがないのだから――。

●決着
「ふ――ははは!」
 サマエルが笑った。ゴリョウの放った一撃が、そのほほに傷をつける。一方で、ゴリョウはまた、深く傷ついていた。当然といえば当然だろう。サマエルという怪物を相手に、ただ一人、立ちはだかり続けたのだ!
 だが、この傷も、結末も、ゴリョウは織り込み済みであるといえた。自分一人では、サマエルには勝てない。それはそうだ。だが――立ち続けることは、できた!
「まったく! 君は飽きさせないな! 誰よりも気高い!」
 サマエルの斬撃を、ゴリョウが盾で受け止める。そのまま、再び盾を押し付けた。聖盾とそれが、ぶつかり合う。


「それはどうも! だが……悪ぃな、そろそろ限界ではある!」
 にぃ、とゴリョウは笑った。さすがに、アクセルや鏡禍のサポートを受け続けているとはいえ、そう長く一対一で立ち続けることは厳しい――。
 だが、あと少し。あと、少しだ。仲間たちの力を、ゴリョウは信じている。それが、サマエルにはない、ゴリョウ達の力であるはずだった。
「すまねぇ、いったんスイッチだ!」
 ゴリョウが後方へと飛びずさるのへ、飛び込んできたのはネーヴェだ。
「サマエル様、わたくしとも……暫し、お付き合いください、な!
 トークン様ほどに、強そうには見えないかも、しれませんが……易々と狩られる兎でも、ないのです。
 油断していると、痛い目を見るかもしれません、よ?」
 そう言って、勇気とともに立ちはだかるネーヴェへ、
「無論だとも。君たちを侮りはしない。最上級の礼を尽くそう」
 ばぢり、と、聖盾が雷を放った。その力が、かつてゴリョウが相対していた、かつての聖盾とは明らかに違う力が、その力を解き放つ。そばにいるだけで、たまらずに膝をつきそうなほどのプレッシャー。盾とは守るものなれば、すなわち攻撃をさせぬことこそが最善である。その様を体現するかのような、聖なる圧力。
「この聖なる結界の中では、いかに可憐な兎といえど、飛び跳ねることはできまいよ。
 私の腕の中だ、子兎」
 そのように笑って見せるサマエルへ、それでもネーヴェは決意を瞳に乗せて見つめ返した。
「ごあいにく、ですが……兎は、そうやすやすと、跳ねるのをやめませんよ?」
 お前には屈しない。そう宣言するように。サマエルは笑った。ネーヴェもまた、気高き勇者なのだ。
 一方で、セレスタンとイレギュラーズたちの戦いも、ついに佳境を迎えようとしていた。
 届かない――セレスタンの顔に、焦りが生じる。
「何故だ――私は。私は、あるべき理想を取り戻したはず……だというのに!」
「貴方はどうして騎士になろうと思ったの?」
 静かに――スティアが問う。
「家の為? 名誉の為? それとも天義に住まう人達の為?
 大切な誰かを守る為に騎士を目指したんじゃないの?
 その時の気持ちはもう残っていないのかな?」
「その気持ちは残っている……だが、その誇りを奪ったのも、また天義の誰かなのだ……!」
 苦悩するように、セレスタンは言った。
「私の家門だって不正義だと断罪された。
だから貴方の気持ちを理解できない訳じゃない……!」
「君とは違う……運命に選ばれた君とは……!」
 それは、本音であったのかもしれない。
 選ばれなかった――運命に。
 それは、セレスタンの劣等感の表れであったのかもしれない。
 それでも、スティアは吠えた。
「本気で言っているなら、私は怒るよ!
 私が、私たちが、運命に選ばれたから、ここまで歩んでこれたっていうのならば!
 それは違う! 私は、私たちだから、大切に思ってくれる誰かが居たから、ここまで歩んでこれたんだ!」
 そうだ。
 運命に選ばれたからではない。
 神に選ばれたからではない。
 ただ、這いつくばってでも……皆は、進んできたのだから。
「もう一度、貴方に問うよ。
 セレスタン・オリオール。
 貴方の正義はどこにあるの?

 私の正義は力無き人々を守る為にある!
 だからどんなに苦しくても諦めたりはしないよ!
 助けてって言ってる幼い頃の自分も救ってあげたいから!」
 叫ぶ。それは、純粋なる、想いの声である。
 だからだろうか――。
 わずかに、セレスタンが動きを止めたのは。
 だから。
 その隙をついて、コルネリアは銃弾をたたき込めた。
「――」
 憐れむように、か。あるいは、違う感情を乗せて、か。
 コルネリアが視線をやる。銃弾が、セレスタンの盾を弾き飛ばした。聖騎士の盾を。
「そのまま抑えるよ!」
 アクセルが、その指揮杖をふるった。神罰の光が降り注ぐ。その裏切りを罰するように。
 光が、セレスタンを抑えつけた。
 その次の瞬間には、シキが、眼前に迫っていた。
「これで……!」
 崩す!
 ふるわれた刃が、セレスタンの体を切り裂いた。鮮血が、しとどに流れ落ちる。その、衝撃。作られた、隙。
「ヨハンナ!」
 アルヴァが叫んだ。その手に編み上げられる、術式。行動を最適化する、支援術式。
「撃て!」
 これが最善のタイミング! レイチェルは、その手を掲げた。
「今日のところは、俺たちの勝ちだ」
 その手から、放たれる。雷焔。
(自分を救えるのは自分だけ、誰も助けてくれない。
 サマエルが居なくても自分に優しくなれたなら……歩む道は違ったのかもな。セレスタン)
 胸中でそうつぶやく。
 今度こそ、雷焔は、セレスタンの体をたたいた。強烈な痛みが、セレスタンの体を駆け巡る。
「く、う……っ!」
 呻く、そのまま、片膝をついた。
「何故だ……私は……!」
 セレスタンが、喘ぐように吐き捨てた。理想の自分を、得たはずだ。なのに、何故……届かない!?
「撤退だ、私よ」
 サマエルが、ネーヴェを振り払いながら、そう声を上げた。
「なに、まだチャンスはある」
「……わかった、私よ」
 セレスタンが、ふらつきながら立ち上がる。
「セレスタン……あなたがそのままでは、きっと、何も……!」
 ウェールが叫ぶのへ、セレスタンは辛そうに笑った。
「いいのさ……これを、私は望んだ……」
 セレスタンがマントを翻す。すると、影に溶けるように、その姿は神の国のうちへと消え去っていた。
「やってくれたな。見事とは言っておこう」
 サマエルがそういう。その視線は、ゴリョウに、そしてネーヴェに、やがてすべてのイレギュラーズたちに向けられた。
「決戦の時は近い。決着は、その時につけよう」
 そういうと、サマエルもまた、己のマントを翻した。その白の影が、神の国の影に溶けて、消えていく。
「は……楽しみにしているぜ」
 ゴリョウは、不敵に笑った。体は、限界を迎えていても。その闘志だけは衰えてはいなかった。
 作戦完了。
 イレギュラーズたちは、二人の遂行者を、迎撃することに成功したのだった――。

成否

成功

MVP

ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 作戦遂行。突破完了です。お見事。

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