PandoraPartyProject

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明日への意志

 大気が震える。それはベヒーモスの咆哮か、それとも滅びに抗う魂の叫びか。
 いずれにせよ――あそこで戦っている者がいる。
 それだけは確かな事だ。だから。
「僕も行って来ようと思う」
「――本気なの?」
「本気だ。あそこで戦っている皆がいる。
 世界の為に。親しい誰かの為に――ね、なら僕も行く」
 言の葉を紡ぐはローレットの情報屋たるギルオス・ホリスだ。
 彼の隣にいるのはイラス・カリスチーノ。
 ギルオスのかつての世界の知古であり――少し前にはギルオスの命を狙っていた者だ。
 それはかつての世界からの事情と彼女なりの情によるものだった。ギルオスは安寧の日々を送れはしないのなら、自らの手で終わらせようと。結論だけ述べるなら――結局その目論見は仕損じた。その後は身柄を確保されていたのだが……
「だから君にも協力してほしい」
「それこそ本気で言ってるの? 私の拘束を解けば……」
「いや君は狙わない。もう無意味だと、君は悟ってるだろう。
 京たちが君を拘束してくれたおかげで話す時間もあったしね――」
「まぁよしんば何かしようとしたら『また』ぶちのめしてあげるわよ」
 この世界の滅びを前に、ギルオスはイラスに協力を求める。
 一人でも戦力が必要なのだ。滅びに抗う意志が、この世界の全てを決める。
 ギルオスもイラスも旅人(ウォーカー)であるのなら。
 この世界に呼ばれた使命を果たす時が来たのだと――
 まぁ。今更イラスが何をしようともが防いでみせるけれど、と。
 背後よりイラスに視線を向けておこうか。
 何度か拳を交えたのだ。もうイラスの動きは見切ってもいるのだから。
「死ぬことはなにも救いになんてならないんだ。
 ――僕は。この世界で出来た大事な者の為に戦う。
 だから君にも協力してほしい。かつての世界で、一緒に戦ってくれたように」
「……そうやっていつも誰かを理由にするから、解放してあげたくなるのに」
「性分だからね。きっとどこまでだって変わらないさ」
「……ん。ギルオスさんらしいよね」
 であれば。パンドラの加護を纏い、古き竜のような姿へと変じているハリエットも、ギルオスへと視線を向けようか。
 『僕は生きていきたい。この世界で出来た大切な者の為にも』
 そんな彼の言葉に。イラスは『相変わらずがすぎるわ……』なんてある種、諦めたかのような吐息を零して。
「ナイトハルトの傍にいた事もあったんだろう? 彼への攻略の一助とかない?」
「ある訳ないでしょ。あの男はニヤケ面しながらも、決して手の内を晒そうとはしなかったからね……でも、そうね。あの男も旅人でありながら終焉獣に襲われないのは操る能力があるからだけど――あれはそこそこ負担になってると思うわよ」
 そうでなければ、負担がないのであれば。ギルオスらを襲撃した時やプーレルジールの戦いにおいて、もっともっと無尽蔵に数を貸し出していた筈だから。
「……あの人は、どうなんだろう。あの人にも負担があるのかな?」
ヴィッターの事? あれは指揮を委託されてるだけで、本人が操る術を持っている訳じゃないからね……ヴィッター自身は終焉獣を削るのとは別に倒すしかないでしょうね」
 と。ハリエットは戦場で姿を見せたヴィッターの事へと思考を巡らせようか。
 ヴィッターは前線――ベヒーモスの近くで暗躍しているはずだ。
 ナイトハルトが全体を見ている以上、最前線では彼が指示を出しているとも思われる。
 彼自身に終焉獣を操る負荷はないだろうが。
 しかしヴィッターを倒せば――終焉獣達の統率は大きく乱れる筈。
 ならば。きっと己を狙ってくるであろう彼にどう動いたものか、と思考して……
「いずれにせよ終焉獣達が無茶苦茶な数出てきてるけれど、その度にナイトハルトは自分やヴィッターが襲われない様にする為に支配操作を行ってるはず。終焉獣を倒せば倒す程――負担はもっと増えていく」
「成程。終焉獣を倒していくだけでも……効果は十分以上にありそうだね」
 イラス自身、ナイトハルトから借り受けた魔物を指揮した事がある故、理解が及ぶのだろうか。いずれにせよナイトハルトの力だって無限ではない――必ず攻略出来る道筋がある筈だ、と。

「面白い――この闘争、私も混ぜてもらおうか!」

 と、その時だ。高らかなる声が響き渡った。
 終焉の地に歩を進めしその者の名は――ディリヒ・フォン・ゲルストラー
 遠い東。豊穣の地でかつて干戈帝と呼ばれた旅人の男である――
 常世穢国と呼ばれる事件においてイレギュラーズと敵対した事もあった者だが、渦中の騒乱における紆余曲折の末に命は助かり……豊穣を出でて混沌大陸側へと帰って来た。その後はプーレルジールでも一時姿を見せた事があった、が。
「やぁ、来てくれたんだね。
 プーレルジールでの暴れっぷり、ここでも見せてくれるとありがたい」
「ハッハッハ。招待に預かり光栄だと述べておこうか!
 しかし世界の命運を掛けた戦いとは……なんと胸躍る響きであろうか!
 戦わねば死ぬ。うむ、じつに宜しい!
 魂を掛けた闘争は極限状況の中にこそあるのだ――
 ならば往かぬ理由はない。行くぞ征堂、最後の供をせよ!
 臆したが如く見られれば、先だって旅立った者になんぞや言われそうだ!
 常世穢国より生き永らえたはこの戦いの為にあったと思え――ッ!」
「ハッ、承知ッ――! 万象悉く滅してみせましょう!」
 ギルオスからの招待と、なにより大闘争の気配を察知して魂赴くままに駆けつけてきたらしい。
 傍には柳・征堂なる、ディリヒに付き従う者もいようか。征堂からは、その内より莫大な狂気の気配が感じられるが……主たるディリヒには忠実であるようだ。その敵意は全て終焉側へと向けられている。イレギュラーズ側を襲う事はないだろう。
 闘争を好むディリヒは強者の下へ向かわんと視界を定めようか。
 ――彼方にいるナイトハルト。奴の首でも取ってみせんと!
偲雪よ、雲上よ。貴様らが望んだ太平の世――果たしてみせようぞ」
 同時。ディリヒが思考するは、常世穢国の主犯であった存在。
 偲雪という、かつての帝だ。
 彼女は皆が心穏やかで差別のない太平の世界を望み、魔種へと堕ちた。
 歪み切った願いは他者を洗脳してでも、という強硬手段を取らせたが。
 それでも根底にあったのは優しさだった。
 ディリヒもその優しさで救われた者の一人である――
 恩があった。故に加担した。そしてだからこそ世界を滅ぼさんとする意志に抗おう。
 ――故に。
「あぁそれと。もう一人加わっても構わんな?」
「――? 味方になってくれるなら、まぁ」
「我が身は豊穣より放逐されたが――縁は残っていてな」
 『来る』のだ。『世界を滅ぼしたくない』意志を持つ者なら。
 ディリヒが滑らせた視線の先。そこに在るは一人の女性の姿。
 その腕に抱きし旗は、理想の証。

 ――百合草 瑠々(p3p010340)の姿であった。

 彼女は偲雪の思想に賛同し狂気へと堕ちたイレギュラーズ。
 常世穢国での戦いによって行方不明になっていたが……
 世界の滅びを前に、その姿を現わした。
 その理は。このままの世界の行く末が主の望みに反するから。
 彼女は偲雪に傾倒し狂気に堕ちえども魔種へと変じた訳ではない。
 であれば終焉に属する訳もないのだ。とはいえ……
「あぁ。全く、数奇なものだよな」
 口端に笑みの色を灯しながら――
 彼女は旗を抱こう。
 されば。同時に『何か』の神秘が展開しようか。
 瑠々の身に纏われるようなソレは偲雪の力の残滓だろうか。
 偲雪が滅びて尚、しかし微かにだけ残っていた常世の名残。
 静謐の意志。太平の意志。
 常世の力が滅びを阻む結界として命の崩壊を阻まんとする――
 あぁ。主の望まれた世界は死満つる世界ではない。
 だからこそ戦おう。今一度『こちらの側』で。
 己が魂の儘に。
 この胸に狂おしいまでに抱いたのは――滅びの地平ではないのだから。

 理想は潰えども、夢は未だ紡げるのだから――!


 <終焉のクロニクル>始まりのレクイエムの状況が変動しています――!
 ※新たに到来した味方戦力がいるようです――!

 ※最終決戦が進行中です!
 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(終焉編)

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