PandoraPartyProject

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Pandora Party Project

「良く集まってくれた!」
 ローレットをお膝元に置くメフ・メフィートの王宮には未だかつてない光景が広がっていた。
 凛と声を発したのは言わずと知れた幻想(レガド・イルシオン)の国主フォルデルマン三世。
 しかし彼の目の前に立つ人物達はこの場所からして例外的にまるで臣下の礼を取っていない。
 それもその筈。
「まさか、アンタから呼ばれるとは思っても見なかったぜ。
 こっちは戦勝気分でメイドの飯でも食えそうなトコだったんだけどな」
 知己のイレギュラーズとのやり取りを冗句めいて言ったのはゼシュテル鉄帝国皇帝、『麗帝』の武名混沌中に轟くヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズ。
「バグ・ホールとワーム・ホールであったか。
 此方もあれには中々手を焼いておる。建設的な『話』になれば幸いじゃな」
 自慢の白い顎髭を指で扱くのは練達、セフィロトが『探求』の塔主――カスパール・グシュナサフである。
 それだけではない。
「……この度の呼びかけを、そしてローレットへの長年のご支援に感謝を申し上げます。フォルデルマン王」
「うむ。魔種とはやはり人類圏の不倶戴天の敵なれば。
 彼等には感謝しても仕切れぬものがある。結果として貴国にも」
「おうおう、妾としてはとうにその心算じゃ。海洋は建国以来の悲願を彼等に果たさせて貰ったのでな」
「縁を繋いで貰った。返せない位多くを受け取った。思えば、到らぬばかりの話であったが」
「……………ま、中々面白い連中である事は確かだよ」
 最後の人、『彼女』が特異運命座標だろうとは言うなかれ。
 普段、勢力圏から出る事はない深緑(アルティオ=エルム)の緑の巫女、リュミエ・フル・フォーレ、更には自他共に厳めしい正義と実直、賢王としての年輪をその顔に刻み付けた聖教国国王にして、教主たるシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世、海洋王国大号令を成功させた女王イザベラ・パニ・アイスに『新天地』カムイグラの『霞帝』今園賀澄、『世界最強の傭兵』こと砂漠の赤犬、ディルク・レイス・エッフェンベルグ等といった錚々たる面子が揃っている。
 国として幻想と付き合いのあるディルクやイザベラはいざ知らず、長年の敵国の王であるヴェルスやシェアキム、我関せずを貫く中立主義のカスパール、外部との交流を好まない幻想種のリュミエや遥かカムイグラに在る賀澄等がメフ・メフィートの王宮に在る事自体を例外過ぎる事実と呼ぶしかなかろう。
 そしてその極めつけは……
「ま、ずーりんにお願いされたしね。ユーフォニーやヴィルメイズ、イレギュラーズには世話にもなったし。
 話があるってんなら付き合わない位に薄情じゃないわよ」
 ……ここについ『この間』までの人類未踏の地、覇竜領域の若き姫――珱琉珂の姿さえある事だった。
 覇竜観測所、そしてヘスペリデスの大事件……特異運命座標達の紡いできた縁こそがまさに特異点であると言う他なかろうか。
「それで――王サマよ。この集まりは何だい。アンタが仕切ってくれるんだろう?」
「うむ。ディルク殿、私は皆々様に提案をしようと思ってここに来て貰ったのだ」
 ディルクの言葉にも最早物怖じせず、フォルデルマンは居並ぶ面子を見回した。
「我々は国王だ。そして、我等が国はそれぞれが様々な事情を抱えている。
 私はイザベラ殿やディルク殿とは友誼を結んではきたものの……
 例えば我が国は、ゼシュテルとはもう何十年もそれ以上も争っている。
 ネメシスと戦争になった事も何度もある。父祖代々より続く因縁は決して小さなものではない。
 アルティオ=エルムやセフィロトは他国と関わるをこれまで良しとはしなかっただろう。
 遠き地の――カムイグラのお方や竜の姫君からすれば我々はまだ見知らぬ他人やも知れない。だが!」
 堂々と言ったフォルデルマンは一層胸を張って言葉を続けた。
「我々がこの混沌に生きる同じ人間である事に変わりはない。
 この世界は今、滅びの危機に瀕していると言う。
 我々は、我々の力だけで『神託』を回避出来ない事実をこの何年かで痛烈に思い知ってきた事と思う。
 世界最強のヴェルス殿やディルク殿も、戦う力のないこの私などはいの一番に。
 ……特異運命座標は、ローレットは本来民を守らねばならぬ我々の為に傷付き、命を燃やし、魔種共と戦ってくれてきた。
 だが、我々は何も出来ない存在であろうか?」
 フォルデルマンの横顔を見つめるシャルロッテの大きな瞳が潤んでいる。
「答えは否。断じて否だ!
 確かに我々には決まった運命を覆す力は無いかも知れない。
 可能性の獣と同等の結果を出す事は不可能だろう。だが、それでも我々は王だ。
 彼等には無い力を持っている。我々は――いや、我々を含めた人類は特異点の有無に関わらず抗う力を持っていると信じてやまない!
 ……そこで、私は――フォルデルマン三世は皆様に提案したい」

 ――今日、この時を以って全ての恩讐を一旦取り置き、全国家全勢力全力を挙げてローレットを支援し、魔種との決戦に臨まんと!

「一本化した指揮系統は世界最優と名高いザーバ・ザンザ将軍にお預けしたい。
 参謀として我が国の『黄金双竜』レイガルテ卿をつける用意がある」
 フォルデルマンの言葉にレイガルテが「御意に」と一礼する。
 一方のザーバは……後で聞けばさぞ難しい顔をするに違いないが、これを断るような男ではなかろう。
「時間が無い故、その他、細かい調整は進めながら承りたい」
「聞いていた人物像とは随分違うとお見受けするが、良き哉。男児三日会わざるば刮目して見よ。
 学べる事、成長出来る事こそが若者の特権なればな」
 カスパールが淡く微笑んで、誰より先に拍手を始めた。
「……信じられないもんを見たが、アンタ十年も経てば結構俺のいいライバルになるかもな?」
「異論はない。神も、我々も彼等の先行きと共にあらんと願っていた」
 ヴェルスが、シェアキムがそれに続く。
「我が国に出せる戦力はたかが知れておるが是非も無い。支援に輸送にお任せあれじゃ」
「うむ。イザベラ殿と共に可能な限りの助力をする事を約束しよう」
「アンタ達は俺が守るって言いたいトコだけど、今回だけはな」
「その顔で言わないで下さい」
 イザベラと賀澄、ディルクの言葉にリュミエが苦笑した。
「勇者王って言うんだっけ、アナタの祖先」
 感心したように零した琉珂の脳裏に『竜さえも乗りこなしたその伝説』が過ぎる。
 アイオンの名は覇竜領域にも轟いていた。あのメテオスラークが懐かしそうに嬉しそうに話した言葉が浮かんで消えた。
 成る程、目の前のもやしの覇気を見れば眉唾な昔話も少しは信憑性を持とうというものだ。
「――感謝する!」
 深々と頭を下げたフォルデルマンには確かに混沌の誰もが一度は憧れた勇者王の片鱗が僅かに覗く。
 そして、ゆっくりと面を上げた彼はそしてここに宣言する――
「今、この時を以って我等は一丸。
 我が為に戦い、誰が為に死のう。
 隣人が為に誇りを振るい、世界の為に前に進まん!
 これより、乾坤一擲の決戦『Pandora Party Project』発動を宣言する!」

 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
 ドラマ・ゲツク(p3p000172)さんと華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)さんの二人に特殊判定を送信しています!
 ※Bad end 8首魁と見られるマリアベルとの戦いの報告が上がっています……!
 ※世界各国にて発生した戦いの、結果報告があがっています……!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(??編)

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