PandoraPartyProject

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グレート・カタストロフ

「レオン! 何処行ってたですか!?」
 顔を見るなりそう大声を上げたユリーカ・ユリカの顔は何時に無い逼迫感に満ちている。泣きそうな顔で戻って来たレオン・ドナーツ・バルトロメイを見る彼女は成る程、普段の気楽さを有してはいなかった。
「うるせぇなあ」
 頭を掻いて、嘆息をして。何とも言えない顔をしたレオンは年末からこちら、文字通り盆と正月を同時に招待したような珍しい顔と連れ立っていた。
『プルートの黄金劇場』事件を前提において「二度と来ない」と言い放ったばかりのシュペル・M・ウィリーがそこに居る。
「異変の事は知ってるよ。んじゃあ分かりそうな奴を連れてくるしかねぇじゃねえか」
「……それは、そうなのです。でも……!」
 付き合いが長いというのは良くも悪くも、だ。
 幼い頃から最も長い時間を共に過ごした――人生の大半の時間、レオンが兄で或いは父だったユリーカは彼の様子が何時もと幾分か違う事に気付いていた。
(……レオン、荒れてるです?)
 シャイネン・ナハトの頃にふらりと何処かに姿を消し、年を明けて戻ってきて今だ。
 遊び人の彼がこんな時分にフラフラとするのは余り珍しい事では無かったが、この時期のレオンはそれはそれは身勝手な行動の結果も相まって機嫌が良い事が殆どだ。
 故にユリーカは『まるで十何年も前のように尖った感じの彼』に多少の違和感を禁じ得ない。
 ……そんな時分の彼はまさにはしかのようなユリーカの初恋だからして、本当に記憶の底に封印して二度と思い出さないと誓っていたような姿なのだけれども。
「身勝手に引っ張り出しておいて、勝手に盛り上がられても困るのだが?」
「オマエもうるせえよ、有識者。
 グダグダ言うとリアとかメリーノとかレイチェルとかとか、その他諸々全部塔に送りつけんぞ」
「御免被るな。二度と来るなと伝えておけ」
「『自分で言えよ』。
 大体オマエも分かってんだろ。通信を使わなかったのは唯の『ついで』だって。
 塔の上から下界を眺めてご満悦の神だって、今回の件は当事者だろ。オマエが何もしないなら俺達がやる。
 だが、解決の恩恵を受け取る以上は差し出すべきモンがあるだろう?
『オマエでも混沌法則の全てを破壊する事は出来なかったんだから』」
「等価交換を神に持ち出すのは貴様位だろうな、レオン・ドナーツ・バルトロメイ。
 その不愉快な生意気さ、まるで小生の塔を登った頃のようじゃあないか」
『神』に対して余りにも不遜なるレオンの物言いだが、意外にもシュペルは肩を竦めるだけで珍しくこれを咎めなかった。
「兎に角、レオン! 世界中が大変なのです!
 おかしな穴……? が開いて、被害が沢山なのです!
 触れた人は何処かに消えてしまったみたいで、生きているかどうかも分からないのです!
 それに、世界中に魔種達が現れて……各国の人達も頑張っているですけど、もう滅茶苦茶で……」
 レオンは「分かってるよ」ともう一度念を押した。
「説明してやれよ、有識者。但しユリーカでも分かる程度に分かり易いようにな」
「まぁ、細かい話は省くとして、だ。
 混沌全域で観測されている『穴』とやらは次元の歪みのようなものだ。
 貴様等の感覚ならば魔種連中が何かをした、と思う所だろうが実は違う」
「魔種達の所為ではないですか!?」
「広義でも狭義でも違うな。
 アレの発生は――小生は『バグ・ホール』と呼んでいるが――もっと深刻な原因を理由にするものだ。
 つまり、『神託』とやらの成就、混沌の終焉の接近に端を発しているという事だ」
 シュペルの言葉にレオンは小さく鼻を鳴らした。
 当然ながらいよいよ長広舌を垂れようというシュペルはそんな姿には取り合わない。
「絶対的終焉(Case-D)が混沌に接近している。
 まぁ、正確に何時顕現するかの演算はまだ済んでいないがね。
 バグ・ホールは単に混沌にアレが接近しただけで生じた影響だ。
 分かるかね、煩い小娘。『唯近付いただけで世界は滅亡しかかっているのだ』。
 不愉快極まりないが『最上位世界』を謳う、この無辜なる混沌(フーリッシュ・ケイオス)がだ」
「魔種連中が動き出したのは機を見て乗じたに過ぎないって話だな。
 これまでの魔種陣営は冠位を頂点に比較的組織立った――お行儀のいい『仕掛け』をしてたみてぇだが。
 今回はどうもそうじゃないらしい。『担当』も何もなくターゲットは全世界。
 やり方も荒っぽく、もう暗躍とかそんなレベルの話じゃねえ。
『滅びのアーク』だっけ? 掻き入れ時って顔をしてやがる。
 奴さん達も余程『神託』に駄目を押したいもんと見えるな」
「宣戦布告だ」とレオンは口の端を歪める。
「シュペルは『凡百』の人助けなんて真っ平らしいからな。
 お互いに妥協して、最低限の協力だけ取り付ける話になった。
 お偉いさんの顔も眺めてきたが、まぁ、連中もローレットに期待してること」
「……皆を、助けられるですか?」
 涙目のユリーカの頭にレオンは大きな手を置いた。
「……」
 やはり、少しだけ『違う』。
「『あいつら次第』でね。少なくともローレットのやる事は同じ。
 バックアップだけ……出来る事も『それだけ』だろ。
 ……まぁ、後は運命がどうとでも先行きを決める話なんだろうよ?」

 ※『バグ・ホール』の発生と共に混沌中で魔種による事件と甚大な被害が蔓延しつつあるようです……
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