PandoraPartyProject
結局、そんな話
何も気持ちが通じ合ってとは思わない。
そんな事は分かっている。分かり切っているのだ。
微睡みの少女が目覚める事は無い。
少なくとも何度そうしてやろうと思っても――そんな気も起きなくなる位に彼女は純粋で、虚無だった。
(まぁ、だから――そういう事なんだろう)
よくよく考えればアイツは何時も清らか過ぎて、何処までも無防備過ぎた。
今も昔も、まぁ――自分に掛かれば『造作も無かった』ように思う。
実際に何度でも『機会』はあったのだ。
長い、長いモラトリアムの間。
空中神殿は何時も二人だけのものだったから。
少なくともざんげの世界に在る他人はレオン・ドナーツ・バルトロメイだけだったから。
だが、何も無かったし、そんな気も起きなかった。
その先に何もない事を知っていた。
それにすら意味が無い事を恐らく誰よりも知っていたから。
『ルカがそうする事が出来たのは若いからだ』。
あれこれと考え過ぎるよりも先に前へ踏み出す事が出来たからだ。
泥沼に足を取られるよりも、勝負の出来る男だったからに違いない。
嫌と言う程知っている相棒の事を考えれば、その薫陶を受けた王子様が踏み込めるのはまぁ、理屈としても納得はする。
(全く――嗚呼、何てままならないこと)
とっくの昔に褪せてくすんだ恋の残滓に、飯事みたいな口付けに嫉妬する程若くは無い。
瑞々しい気持ちを抱いた頃なら、持ち得たかも知れない期待も既に傷みに傷んでいる。
だから、こんな事はどうだっていいのだ。どうだっていいに違いないのに――
「……どうして、態々こんな日に。こんな時に見せてくれるかね。
いや? ああ、こりゃあ自業自得っていうヤツか」
誰にも届かない位の小さな声で零したレオンの胸に痛みが過ぎる。
――レオン君、お願いです! 待って、レオン君! れおん君!!!
半端に溶けた冷たい雪のぬかるみに膝をつけて号泣していた少女の事を思い出す。
あんな風に突き放して、あんな風に滅茶苦茶に傷付けて。
分かっていたのに、中途半端に踏み込ませ過ぎた自分の甘さに反吐が出る。
実に身勝手に参りに参って――その所為で顔が見たくなかったから、なんて。
そんな不純な動機なら、カミサマだってこんなシーンをぶつけようというものだ。
「……!」
彼の存在にざんげだけが気付いていた。
刹那の時間が永遠に引き伸ばされたよう。
走馬灯のように思い出が巡って――やはりその全てはどうしようもない位に褪せている。
されるがままの彼女と僅かに目が合うが、レオンはすぐにそこから目を逸らした。
現実にロマンス何てない。
ロマンティックも賞味期限が過ぎれば何も食べれたもんじゃない。
皮肉にひらひらと手を振って。
「結局、そんな話だよ」
欠片も思っちゃいない癖に――「お幸せに」と踵を返すだけだった。
※『煉獄篇第一冠傲慢』ルスト・シファーを撃破し、イレギュラーズが勝利を収めました――!
※『プルートの黄金劇場』事件が終幕したようです……!
※神の王国に対する攻撃が始まりました!!
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