PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

血潮の薔薇

 ルスト・シファーの権能領域。理想の紗幕を穿つ聖骸布の行く末を火野・彩陽(p3p010663)はその目で視たのだそうだ。
 書き換えられていく理想の先に叩き込まれる『天の杖』は聖竜の気配を頼りに標的を見付けた。
 冠位傲慢の身を焼き切らんとしたそれは男の左腕を吹き飛ばし、『魔種グドルフ』の決死の抵抗がその修復に後れを出した。
 だが、男は不死を気取る傲慢さを有している。
 自らの権能領域内では彼は「不死だと言えばそうなる」と体現するように肉体を復旧させたのだ。
「恐らく、この領域内で彼を殺して、殺して、殺して……繰り返し殺してダメージを与えて理想郷そのものを崩壊させなくちゃならないんだ」
 イル・フロッタ (p3n000094)は言った。母方の生家たるミュラトールより借り受けた『ミュラトールの杖』は未だその力の解放を待っている。
「ルストとの直接対決になる。だから、命の危険があれば使って欲しい」
 それは術者の生命力を利用して危機的状態から脱することの出来る回復能力が込められた杖だ。
 イルは思い人の――リンツァトルテ・コンフィズリー (p3n000104)の背中を見た。
「聖剣を使いこなすことが、先輩には難しいんだ。
 コンフィズリーの不正義、そう言われて、迫害されて……。
 あの時の天義の在り方は私には理解出来ないよ。
 王宮執政官だったエルベルト・アブレウとアストリア枢機卿が結託して悪事を働いていた。
 その露見を怖れた奴らが先輩の父であるイェルハルド・フェレス・コンフィズリー卿を不正義として断罪した。
 そんな、誰かが黒だと言えば黒になるような正義が罷り通ってたんだ、この国は」
 暗い少年期を過ごし、騎士として血が滲むような努力をしても閑職に追い遣られ続けた彼は今やその地位を確固たるものとした。
 この場で指揮を執り騎士達を連れ神の国攻略を目指している。
「あのさ、イレギュラーズの皆なら、先輩を励ませると思うんだ。
 ……これは『この中に居る私達だからこそ出来ること』だ」
 イルは困ったように肩を竦めた。自分は『後輩』だから。先輩と対等な関係にはなれやしない。
 不正義の家門と言われても、努力家で挫けぬあの人が好きだった。
 真っ直ぐに人を見る黒い瞳に心を惹かれた。その在り方全てが愛おしかった。
 ――私は、ただ、あの人が幸せになって、笑っていて欲しいのだ。それ以上は多くは望まない。
「勝とうね」

 戦況報告に訪れた藤野 蛍(p3p003861)は「マリグナントの撃破完了しました」と告げる。レーテー石の存在する礼拝堂の周囲は剣呑とした空気が漂っていた。
「俺たちも、遂行者グウェナエルの撃破に成功したよ」
 アルム・カンフローレル(p3p007874)がそういうのへ、次なる報告が続く。
「『致命者』イズマを撃破しました――が、のんびりと報告はできなさそうですか」
 肩を竦めた彼者誰(p3p004449)へと蛍は「ええ、何があるかは分かりませんから」と囁いた。
「少し騒がしいわね。こっちはカルヴァニヤを何とかしてきたところなんだけど」
 コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が目を細めて言うのへ、遂行者アルヴァエルをとの戦いを制した仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)がうなづく。
 俄に騒がしいのは産み出され放置されていた影の天使達が気配を辿り集まってきたからだろうか。
「どうやら、休む間もない、ということか。他の皆は?」
「……こちらも、作戦成功……だよ」
 雲類鷲・氷聖との戦いを終えたばかりのチック・シュテル(p3p000932)がうなづく。『同じ姿』の敵が居たというのもイズマ・トーティス(p3p009471)にとってはコメントし辛いが彼自身もティツオ始めとした遂行者の撃破を終えている。
「それにしても、この礼拝堂は……?」
「懐かしいわね。『エンピレオの薔薇』を起動し維持するモノリスがある場所だったかしら」
 アルテミア・フィルティス(p3p001981)は遂行者チェイスの撃破を終え、この場にやってきた。
 エンピレオの薔薇――それは伝説級のアーティファクトである。
 サン・サヴァラン大聖堂内部の大礼拝堂。この地の『浄潔』の気配に敵が釣られてくるとは何の皮肉か。
「ならば、集まる影の天使や致命者などを撃破すれば良いと?」
 シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は静かに問うた。遂行者アーノルドとの激戦を勝ち抜いた後だが、そうそう休暇は得られない。
「フラヴィアちゃん……オルタンシアを倒したけど、ゆっくりできなそう」
「はい、セシルくん。此処を守りましょう!」
 セシル・アーネット(p3p010940)フラヴィア・ペレグリーノ(p3n000318)は力強く頷いた。
「礼拝堂を守り切ります。エンピレオの薔薇の輝きが、『偽りの神』を穿つまで――!」

 ――そうしてあなたはベルナードの茨冠を戴き、月光に導かれる者達の手を引かねばならない

『赤き血潮の書』の一文を読み上げたのはリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)であった。
「赤き血潮の書、それから……」
『白き薔薇の書』をつい、と見遣ったリースリットに水天宮 妙見子(p3p010644)が頷く。
「ティナリス様、痛みを伴うと聞いておりますよ。大丈夫ですか?」
 父が死した。別れを経験したばかりの聖騎士、ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)は蒼白い顔をしながら頷く。
「大丈夫です。どの様な痛みであれど、天義の民として為すべき事でしょう」
「……ティナリス……支える、ね……。どれだけ、白く、綺麗でも、負けない。
 薄鈍(うすにび)だって……意地が、あるから」
 チックは『白き薔薇の書』を押し当てるティナリスに手を重ねた。
 光り輝く幻影の紋が礼拝堂を包み征く。鋭い痛みが走り幻影の茨が締め付ける。
 ティナリスの手が、思わず引っ込みかけたが、堪えるように押さえ付けた。

 浄潔の薔薇。
 気高き血潮に咲く花よ。 

 一滴ずつ、血が染みこむ。一線ずつ、もどかしげに薔薇を描く。
 ティナリスは全身に走る責め苦に堪えきれぬと眉を顰めた。その手をチックが、妙見子が、リースリットが重ねてくれる。
 分かち合い、背負わねばならない。――輝きが満ちた。

 第一射。それは眩く光咲いた薔薇。天を目指し飛び込んで行く。
 大聖堂を包んだ敵全てが散り散りに消え去り、フラヴィアが剣を降ろす。
 第二射。それは浄潔の光となって、神の国を捉えた。
 その眩い光は冠位傲慢の元へと届きその肉体を焼いた。肉が盛り上がり、人の形を取り直し、直ぐに『復活』を果たす。

「届いて――――!」

 あと、もう一度。ティナリスは苦痛など気にする事無く叫んだ。
 第三射。その光は、理想郷の殻に更なる罅を入れ、薔薇の花と共に霧散した。

 ※天義での決戦にて、戦果報告が上がっています――!


 ※神の王国に対する攻撃が始まりました!!

 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM