PandoraPartyProject
誓いたるゴルゴダ
神の国。
其処はルストを『神』とし、その配下――選ばれし者達が住まう至高の地。
決して揺らぐ事無き絶対なる『理想郷』だ。
何を持って理想とするかはそれぞれによるだろう。
小鳥の囁きが聞こえる、平穏なる街を創造する者。
木々満ち、静かなる湖畔を創造する者。
或いは血に塗れた紅蓮なる闘争の世界を創造する者もいるだろうか。
とは言え。その全てはルストの権能内にのみ限られる。
真実、世界の全てが『こう』ではないのだ――しかし。
「――この地平が偽りでない時が来るのだ」
遂行者が一角、『聖槍』マスティマは呟こうか。
あぁ間もなく『時』がやって来るのだと。
何の為に世界各地に帳を降ろさんとしていたか。
幻想、海洋、鉄帝、深緑、傭兵、練達、豊穣――結果としてイレギュラーズの行為により、マトモに帳が降りたと言えるのは海洋ぐらいのものだったが。されどその目的は世界全てを理想郷にて塗りつぶす事であったのだから。
アレらは前準備。そして本命たる時は至る。
もう間もなく。間もなくだ。
グラキエスは多くを救うために。
セレスタン=”サマエル”・オリオールは完全となるために。
遂行者らはそれぞれの意志と目的によって、理想を成さんとするだろう。
では、マスティマは『何』か。
――彼は今、焼けた夕日が彼方に見える丘の上にいる。
ここは彼にとって懐かしき光景たる場であった。
ここで。かつて一人の者が磔刑に処されたのである。それはマスティマにとっても遠い記憶の彼方にある……原初の一端であった。その者の脇腹を突き刺したのが、かつての己にして自らが『聖槍』と呼ばれる所以。
「我が主よ。もう間もなく――世界より罪が消えるのです」
……マスティマはルストに賛同すれど深い忠誠がある訳ではない。
彼にとって真実、崇拝しえる己が神と言える者は別にいるのだ。
マスティマは彼を刺した事を――間違っていないと信ずる。
間違っていたのなら、己は何のために、刺したのだ?
……ともあれ。マスティマの目的は己が主を失えど――いや失ったからこそ。
その後の世界をよりよい世にせねばならぬと信じていた。
故に持ち主に勝利を与えんとし続けた。
あの方を刺した際に宿った己が神秘を与え続けた。
それが『聖槍』と謳われた己が宿命であると信じた。
されど。世はいつまで経ちても混迷にいたるばかり。
このような世ばかりが作られるのならば。
――私自らが世を罰さねばなるまい。
罪ありし者を粛清し。罪なき者だけの世を作るのだ。
「この理想郷ならばソレが出来るのです、主よ」
マスティマは天に祈る。
理想郷の中に――『死』はない。
厳密にはそれもルストの権能が故だが理想郷の住民は死なず、死の一撃をもってしてもやがて蘇るのだ。それこそが『選ばれた者』の特権。無知蒙昧なる、信仰なき輩になんぞ与えられん、正に神からの贈り物。
――この世界ならば成せる。
己らだけが選んだ者達だけで理想郷を文字通り作れるのだ。
「私達は間違っていない。私達こそが真実なる正義だ」
選別しよう。
選定しよう。
前準備は終わった。もう間もなく世界そのものを塗りつぶす時だ。
海洋以外に帳を降ろすのを仕損じているが故にこそ、些か強引な手が必要かもしれぬ。
テュリム大神殿の防衛線を超えられたことも想定外だ。多くの異物共が理想郷にまで手を掛けている。
されど負けん。神の意志を遂行するのが遂行者なれば。
「神罰執行・滅却創生」
マスティマは何度でも紡ぐものだ。まるで聖句のように。
――彼方には未だ夕日が見える。血に塗れたかのような、真っ赤な夕日が。
あの太陽がもう一度昇る時。世界は新しく創造されているだろうか。
灼けた地平の果てに、望む空はあるのか。
あると信じよう。
死すら覆すこの完全なる世界に亀裂が走る事は許されぬのだから。
※天義にて、遂行者たちの動きが活発化しているようです……。
※シーズンテーマノベル『蒼雪の舞う空へ』が開催されました。
※プーレルジールの諸氏族連合軍が、魔王軍主力部隊と激突を始めました。
※イレギュラーズは『魔王城サハイェル』攻略戦にて、敵特記戦力を撃破してください。
※ハロウィン2023の入賞が発表されています!
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