PandoraPartyProject
悠久残夢II
晩秋の陽光が、雲間からきらめいた。
進軍する兵士達の盾や甲冑が、光の波のように輝く。
諸氏族の連合軍は、今サハイェルと呼ばれる砂漠の荒野にあった。
この年、無辜なる混沌の歴史書によれば、彼等は遠くヴィーグリーズの丘で互いに殺し合ったらしい。
けれどこの古代混沌を模したかのような、隣世界プーレルジールでは、状況がまるで異なっている。
古代人――いや隣界種(カオスネイバー)と呼ぼうか。
諸氏族は硬く結束し、肩と轡を並べて、総力をもって魔軍へと挑みかからんとしていた。
――この世界には私が居ないからな。
混沌の歴史を暗躍した魔種(デモニア)は、確かにそう言っていた。
無辜なる混沌にあり、この隣世界に欠けるものは何か。
それは『特異運命座標』『魔種』『旅人』、そして『神』であると。
この見捨てられた大地には空中神殿がなく、魔種はおらず、救世主もいなかった。
鴉殿(パズルピース)が欠けたなら勇者も勇者たり得ない。しかし理屈の上で存在しないはずの旅人――魔王イルドゼギアは、この世界ではまるで別の存在でもあった。
滅びに食われかけの哀れな人形師――名も無き魔法使い(ウォーロック)に過ぎない。
アラウダレギオンをはじめとする、いくつかの軍団が、魔王の居城へと迫っている。
襲い来る終焉獣へ向け、槍を並べ、密集方陣を組み迎え撃つのだ。
鬨の声と共に、突撃が始まった。
襲い来る影狼終焉獣の爪を、兵が盾で受け止める。
だが勢い止まらず押し倒され、尻餅をついた。
長短でたらめな牙をぞろりと生やした影狼は、狂犬のように、丸盾へ牙をがつがつとぶつける。
衝撃に、兵は何度も兜の後ろを地に打ち付けた。
目眩が手元を鈍らせる。
影狼が兵の喉笛へ、牙を剥いた。
今まさに噛み切らんとする寸での所で、隣の兵が影狼の首を剣で突いた。
一進一退の激突が続いている。
そんな戦場の有り様を、まるで太陽を虫食う黒点かのように。
一人の男――魔種ヴェラムデリクトが見下ろしていた。
「眩しいな、昼というものは。まったくもって忌々しい」
この世界(プーレルジール)、神によって廃棄された古き実験場は――
奇跡成り難く、しかし真綿のように『滅び』をため込みやすい。
「しかし奴のプラン自体は、シンプルかつエレガントだ。上出来だとは思うがね。
無辜なる混沌は、可能性を吸い上げる怪物だ。
この世界に吸着した微かなパンドラを見つけ出すだろう。
そうしたなら、ため込んだ滅びのアークを、無辜なる混沌に食わせる。この世界ごとな。
泥人形も良く踊っている。実に奴らしい見事なやり方だとも。
だが忌々しいイレギュラーズめのこと、それにさえ抗ってみせるやもしれん。
ならばこれは一種の、いわば試金石にも成り得るだろう。
仮に、もし万が一にも、この絶望を打破出来たのなら、もう一度話をしようじゃないか。
人は魔と、痛みを分かち合う強さを持てるのか――のな」
男の表情は諦念と皮肉とに満ちていた。
「ようやくこれで終わるのだから、期待するだけ無駄だろうがな」
何かと戦い続け、疲れ果てたとでも言わんばかりに。
「いずれにせよ、混沌は終焉する。ならばそろそろ『果ての向こう』へ向き合えよ、イレギュラーズ」
※プーレルジールの諸氏族連合軍が、魔王軍主力部隊と激突を始めました。
※イレギュラーズは『魔王城サハイェル』攻略戦にて、敵特記戦力を撃破してください。
※天義において、遂行者陣営との戦いが続いています――。
※双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
※クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!
※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!
これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|終焉の兆し(??編)
トピックス
- プーレルジール編
特別クエスト公開中! - Re:version第二作『Lost Arcadia』
ティザーサイトオープン! - 【ラサ】烙印後遺症についてはこちら
- 【天義】シビュラの託宣
特設ページにて黒衣(騎士制服)が公開されています。 - シリーズシナリオ(特設)一覧ページ