PandoraPartyProject
人に非ざねど
――ネロ=ヴェアヴォルフは人間ではない。
彼はかつて天義に巣食う魔物の一種『人狼種』の生き残りであった。
人の身に化け、人を陰ながら喰らう一族。
獣種(ブルーブラッド)とは根底から異なる……人間の敵だ。
だから彼らは天義によって断罪された。
しかし。
辛うじて生き残っていた彼が、珍しき種族として人に売られるか殺されるかの場で。
救ったのもまた――人間だった。
「恩がある。暖かな手を差し伸べてくれた日の事は忘れられない」
ネロは語ろうか。魔である身でありながら、人の為に戦う根源を。
小狼時代の温もりが――今でも忘れられぬのだと。
無論……これは魔と心で分かり合える可能性がある、と言う事ではない。
ネロの場合は特殊なだけだ。
偶然、人から情けを受け、偶然ネロもその情に応えた個体だったという事に過ぎない。
ただそれでも。例え偶然に偶然が重なった結果だとしても。
「命を懸けてでも、この国を護ろうと思うようになった……って訳ね?」
「うむ。この国、引いては私を救ってくれた者の為にな」
「だからと言って――そんな身を蝕む聖遺物を背負う必要があるの」
「バビロンの断罪者の生き残りである私だからこそ、あるのだ」
リア・クォーツ(p3p004937)は言の葉をネロへと紡ごうか。
彼女が言いながら視線を向けているのはネロの背負いし大剣……
『対聖遺物用の聖遺物・バビロン』だ。
なにがしか聖遺物が悪の道に利用された際の対抗物。悪を祓う一品――
されどソレは悪に属す魔物たるネロの身すら蝕むモノであった。
「ネロ様、どうしても、その剣を手放されるおつもりは、ないのですね……?」
「ああ――どうせ長年の戦いで私も永くはない。気にする事はないのだ」
「…………」
続け様にはメイメイ・ルー(p3p004460)もネロへと言を。
ネロの身は、大剣無しでも既に長年の戦いで身体に限界が近付きつつあるのだ。
彼には只人よりも遥かに優れた自己治癒能力があるが――
それも無限ではない。激しき戦いを繰り広げていれば、いつか尽き果てる。
……そしてその時は迫っているのだ。聖遺物を使おうと、使うまいと。
彼は覚悟を決めているとメイメイは分かってはいる。
いるの、ですが――それでも諦めきれない。
「……それならば、次の戦いも、共に。せめて隣で、戦わせて、頂きたいです」
「そうねアンタが求めるなら――私もどんな死地でも手を貸すわよ」
「大剣を使わなければ、まだもう少し暇が増えるのではないか?
――その大剣を使わなくても済む様に、神の国へ斬り込もう」
「…………本当に。どこまでもどこまでも優しいな、お前達は」
まるでお前達も。かつて己を救ってくれた者達のようだと――
神妙なる面持ちで見つめてくる秦・鈴花(p3p010358)や、刀に手を携えながら紡ぐエーレン・キリエ(p3p009844)らへと告げようか。あぁ……私は化け物なのだと何度言っても。斯様な言葉を掛けてくれる。
……過ぎたるものだ。こんな怪物の身には。
「フッ」
「ん、何笑ってるのよ、何かおかしかった? ――ま、辛気臭い顔よりは大分マシね!」
「いいや何でもない」
然らば。鈴花に指摘され気付いたが。
自然と、意識せぬうちに笑みの色が零れ落ちていようか。
遂行者との戦いでバビロンの断罪者の仲間が減る度に、こんな感情は失われていっていた。笑ってる暇などなかった。悪を断罪し、一刻も早く平和を手にせねばと。胸の内に渦巻く焦燥と不安だけが全てを塗りつぶしていた。
だが。今や不穏なる影はネロの内に無い。
彼らが光となって、闇たる己を照らしてくれたから。
己を見つけてくれたから。
「あぁ行こう――連中の本拠は、この先だ」
あとどれ程自らに時が残っているか分からぬが。
されど、しかと天に向けて告げよう。
我が名はネロ=ヴェアヴォルフ。
――彼らの友なり。
※遂行者との戦いが続いています――
※シーズンテーマノベル『蒼雪の舞う空へ』が開催されました。
※プーレルジールの諸氏族連合軍が、魔王軍主力部隊と激突を始めました。
※イレギュラーズは『魔王城サハイェル』攻略戦にて、敵特記戦力を撃破してください。
※ハロウィン2023の入賞が発表されています!
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