PandoraPartyProject

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兄弟

「……」
「……………」
「……………………」
 部屋に集まった三者三様にその口は重い。
 無音の空間はとてつもない居心地の悪さと重圧感をそこに居る三人、誰にも与えていた。
 残された竜の仔等がこうして集まるのは双竜宝冠事件を経てより、初めての事だった。
 事これに到った理由は他ならぬレイガルテ・フォン・フィッツバルディの一喝による。
 アベルト、フェリクス、パトリス。三人共が父よりとんでもない大目玉を喰らったのは言うまでもない。
「……」
「……………」
「……………………これさあ」
 余りにも埒のあかない沈黙を破る口火を切ったのはパトリスだった。
「何時までこうしてる訳? 父上は要するにきちんと話し合えって事で俺達をここに放り込んだんだろ?」
「……まぁ、それは」
「そうであろうが……」
 三人の中では最も貴族的ではなく、フィッツバルディのくびきのないパトリスは溜息を吐いた。
「言っとくけど、俺は謝らないよ。まあ、こっちが色々したのは確かだけど同じだけされてもいるからね」
「それには同意ですね。私も謝罪を求めようとは思わない」
 パトリスの言葉にフェリクスが頷いた。
「……致し方なかった、と言えば言い訳になりますが止むを得なかったのは事実だ。
 魔種の企みにまんまと乗せられた不明については父上に恥じ入るばかりだが……我々同士の問題は、ね」
「兄上は?」と水を向けたフェリクスにアベルトは咳払いをした。
「まぁ――今更そこを罵り合っても始まるまい。
 私には父上の快復が何よりの朗報だ。お体に障らぬよう、これ以上のご心配をかけるのは本意ではない」
 言い様こそ似ていない兄弟らしくそれぞれだったが、実の兄弟である事には変わらない。
「仲直りでもしとく?」
「そう簡単な話があるか」
 パトリスの言葉にアベルトは苦笑を浮かべた。
 だが、その声色は強烈な敵意を隠さないような類のものではない。
 それはどちらかと言えば、どうしようもない弟に呆れる兄の物言いだった。
 つい先日まで殺し合いをしていたような抜き差しならない関係なれば、多少のぎこちなさは否めなかったが、言葉を交わせば空気は多少なりとも緩み始めている。
「先は長くなるでしょうがね。ですが、諍いもしがらみもあれ、兄弟は兄弟です。
 父上はきっと、それを伝えたいのだとは思いますよ」
「……」
 フェリクスの言葉にアベルトは小さく鼻を鳴らした。
 完全な和解が簡単に達成される事など、文字通りの幻想だ。
 三兄弟にはそれぞれを推す貴族達の後援がある。互いを油断出来ない相手と見ているのは間違いない。
 しかし……
「フェリクス」
「兄上、何か?」
「……婚約の話を聞いた。一応、おめでとうと言っておこう」
「ヒュー! やるなあ! ファーレルさん家の美人さんだろ!?」
 ――それでも子竜達は切っても切れない兄弟だった。

 双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
 クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!
 ※テュリム大神殿の先の階層に進むことが出来そうです……。


 ※プーレルジールで合流したマナセとアイオンの前に魔王イルドゼギアが現れました――!
 双竜宝冠事件が劇的に進展しています!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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