PandoraPartyProject

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ゼロ・グレイグヤード

「――此処が『そう』なのか?」
「うん、ここだよファニー! 『ゼロ・クール達の墓場』って呼ばれてる場所なんだって!」
 魔王軍の進撃から数日。ファニー(p3p010255)が知り合いたるゼロ・クール、リプリルに案内されていたのは『ゼロ・グレイグヤード(ゼロ・クール達の墓場)』である。要は、完全に動かなくなったゼロ・クール達が廃棄される場所……
 寄生されたゼロ・クール達は核(コア)を犯され助からない。
 ならばせめて安らかに弔う事が出来る場所はないかと尋ねたのが此処へと至った経緯だ。
 ――しかし。墓場と言っても弔われているかという面では疑問が残る。
 見た限りでは乱雑だ。一部は人間と等しい墓のようなモノが立てられている場合もあるが。その辺りに乱雑に置かれている光景も目に映り……更に少し進んでみれば大きめの穴の中に、大量の遺棄されているゼロ・クール達もあろうか。
 粗雑な置かれ方だ。一部は大切にされているような跡も見られる、が。
 ゼロ・クール達はあくまで生活の為の人形。
 人に非ざる意識があるが故だろうか――と、その時。

「――やぁリプリルじゃあないか。こんな所に何をしに来たんだい?」
「あ。魔法使いさん!」

 彼らの前に姿を現わした者がいた。
 ――『魔法使い』? つまり、ゼロ・クールを生み出すような者達の一人、か?
 なんとも、そんな雰囲気は感じられない男である。
 常に笑みを浮かべ、こちらの様子を窺っている様な……いや。
 或いはこちらの心の奥底を除きこまんとしている――ような。
「後ろにいるのはお友達かな? こんな陰気な場所によく来たねぇ……♪」
「――どうも。そっちこそ、こんな陰気な場所とやらになんでいるのかな?」
「ははは。僕はここの管理人みたいなモノなのさ」
「管理人? んなモンがいるとはな……此処には終焉獣は来てねぇのかい?」
 そんな彼に言の葉を紡いだのはジェック・アーロン(p3p004755)だ。傍にはゴリョウ・クートン(p3p002081)の姿もあろうか――両名も先日、ファニーと同様に四天王が現れた戦場へと駆けつけたイレギュラーズであった。
 そして『墓場』という単語も聞いて訪れたのである。
 なにせプーレルジールではゼロ・クールを狙って『寄生』を試みる終焉獣が多いのだから。四天王が一角、獣王との戦いでも多数の存在が確認された程に……連中には気になる事が多いのだとゴリョウは思考を巡らせながら、男の目を見据えよう。
「終焉獣か。この辺りでは今の所見てないねぇ……♪
 だけど魔王軍が近くにまで来ることはあったなぁ。
 わざわざそんな事の確認の為に来たのかい?」
「ああ――この墓場ってのは、特に危険そうだしな」
「……彼らの望むままにはさせられないのです。
 ゼロ・クール達を乗っ取らせるなど、とても看破出来ませんから」
 更にグリーフ・ロス(p3p008615)の姿も見えようか。
 秘宝種たる彼女は特に――この世界にただならぬ思い入れがあった。
 そしてなにより同胞とも言えるゼロ・クール達は……他人とは思えぬ。
 そんな彼らの『墓場』たるや如何な場所かとも気になりて此処に来た訳だ、が。
「魔法使いだというならご存じではありませんか?
 彼らを修復する方法。或いは――救う方法が本当にないかどうか」
「さて、ねぇ。だが無理だと思うよ。ゼロ・クールのコアは人間にとっての『魂』のようなモノ――一度浸食されれば引き剥がすなんて事、出来やしない。『奇跡』でも願うかい? そうしたら何かあるかもしれないが、君達が果てる方が先かもねぇ♪」
「……せめて直してやれないにしても、安らかに眠らせてはやりたいんだが」
「人形想いなんだねぇ。それなら此処に連れてきてあげると良い。
 せめて沢山のお友達に囲まれてれば、きっと幸せなんじゃないかなぁ……♪」
「…………」
 相も変わらず男は薄ら笑みを浮かべながら、グリーフやファニーに言葉を返そうか。
 くそ。誰に聞いても『寄生されたゼロ・クールを救う手段はない』としか返されない。
 本当にそうなのか? 彼らを救う手立ては……
 この世に計算外の『可能性』は、ないのか?
「……まぁ何か『妙なモノ』が目覚めたようだが……些事かな……」
「んっ?」
「――なんでもないよぉ、独り言さ♪ こんな陰な場所にずっといると錯乱しそうでねぇ。時々独り言呟いてないとヤってられないのさ♪」
 しかし――それはそうとして。
 どうも目の前の男からは『嫌な予感』がする。
 なんというか。例えば先日の魔王軍の様な分かりやすい敵意を感じる訳ではないのだが。
 一々こちらを嘲笑っているような。
 いや待てよ、そもそも……
「そういや、アンタ名前はなんて言うんだ? リプリルも『魔法使いさん』としか言わねぇし」
「僕の名前? あぁ――」
 と、その時。ファニーが尋ねてみれば男は――
 一息。

「――『隗」隱ュ縺吶l縺ー隱ュ繧√k縺ィ諤昴▲縺滂シ縺イ縺」縺九°縺」縺溘↑縺≫飭』だよ」

 はっ? 誰かが、そんな呆気な声を零したか。
 今、聞こえた名前は一体――
「ハハハ、冗談だよ冗談! ま、名前は秘密だ。
 親しい者にしか教えない主義でね――もう少し仲良くなってからね」
「えー! 魔法使いさん、ボクにも教えてくれないんだけど、もしかして親しくなかった!?」
「キミは人形だからね♪ 人間の話さ♪」
 ぷー! と頬を膨らませるリプリル。
 やはりどこか捉え所のない男だ。しかし、終焉獣は現れていないとは言っていたが……
「ここ、見に来ることは可能なのかい? 連中の寄生は厄介だから気になってな」
「勿論さ。誰も拒む様な事はしてないよ――いつでも好きに来てくれ。僕も歓迎しよう♪」
 念のためと、ゴリョウは管理人の男に、必要とあらばまた訪れてよいか尋ねよう。
 此処は終焉獣にとって『使えそうな』ゼロ・クールが多すぎるから、と。
 ……先日、寄生されかけた裏の首筋辺りをゴリョウはさすりながら想うものだ。

 『――ま。君達が何をしようが無駄だと思うけどねぇ♪』

「ん? 今なんて言っ……おろ? どこ行った?」
 刹那。イレギュラーズ達が一瞬視線を外したと同時に――管理人の姿が消えていた。
 どこにもいない。まるで最初から存在していなかったかのように、姿を消している。
 ……風が吹く。首筋を、温く撫でるような風が。
 この世に訪れたイレギュラーズ達に纏わりつくが如き――陰気なる風であった。

 ※プーレルジールには『ゼロ・クール達の墓場』なる場所が存在するようです――
 ※プーレルジールでの戦いに、ひとまずの決着がもたらされました!


 ※希望ヶ浜で『マジ卍祭り』が開催されました!

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

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