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シナリオ詳細

<渦巻く因果>太陽の翼とともに

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●翼と戦士と、神官と
「ハイペリオンさま! ご無事ですか!」
 血相を変えて飛び込んできたのは深紅の羽毛に包まれた猛禽の頭をした神官風の男、ベルハイド・シャルラハである。
 ベルハイドは無傷のハイペリオンと、満身創痍のポチトリ・ウィツィロと、そしてその場に集まっていたイレギュラーズたちをそれぞれ見てから……。
「これは、一体どういう状況だ?」
 と首をかしげるのであった。

「なるほど、貴殿等があのアトリエ・コンフィーの」
 ベルハイドは納得した様子でこくこくと頷く。それで通じるあたり、ベルハイドはなかなかに情報通なのだろう。
 包帯まみれのポチトリが説明を求めるように振り返る。
「つまりどういうことなのだ?」
「この者たちは滅びに瀕した世界にやってきた、新たな戦士だということですぞポチトリ殿」
「なるほどそれは心強い」
 あっさりとしたものである。が、その中心のハイペリオンはというとすこし表情が深刻そうだ。
 シンプルで可愛らしい顔つきではあるが、その眉がさがり何かを憂いているようすである。
「世界中に蔓延る終焉獣の存在。魔王軍が伸ばす魔の手。世界が滅びに瀕していることは私達にもわかります。あなたがたは、それを止めようとしているのですか?」
 問われて、イレギュラーズたちは顔を見合わせた。
 本来なら……いや、混沌世界の歴史なら、それを止めたのは勇者パーティーであるハイペリオンやポチトリたちなのだ。
 そのことを話すと、ハイペリオンは深く考え込む仕草をした。
 翼を畳み、身体を丸くして目を瞑る。
「そうですか……私の力がこの世界の役に立つというのであれば、是非もありません。
 おそらくはこの世界の危機は魔王によって起こされたもの。魔王を倒すべく、力を貸しましょう」

●ヴィーグリーズの虐殺
 それから暫したってのこと。魔王軍からこんな宣言が飛んだ。
『我々はこの世界を滅ぼし、混沌世界へと渡航する事に決めた。
 選ばれた世界の住民達しか『混沌世界』に渡ることが出来ないのだ。滅びに抗えるお前達を捕え混沌に渡る手助けをして貰おうか』
 それはイレギュラーズたちを利用して混沌世界へと侵略の魔の手を伸ばすという宣言に他ならない。
 しかも、イレギュラーズたちをおびき出すためにかヴィーグリーズの丘やその周辺地域での虐殺を開始したのである。
「例えおびき出すためだとわかっていても、黙って見過ごすことはできませんね」
 ばさりと翼を広げるハイペリオン。
「皆さん、私の背に乗ってください。ヴィーグリーズの丘まで飛びましょう!」
 力を奪われ弱体化したとはいっても、大陸を飛び回ったことで知られるハイペリオン。その程度は可能だということだろう。
「ですが注意してください。飛行中の私はほぼ無防備。魔王軍の飛行部隊による襲撃をウケることになるでしょう。その撃退は、任せてもよろしいでしょうか」
「ハイペリオンさま! 危険ですぞ!」
 その行動に異を唱えたのはベルハイドだった。
「ポチトリ殿も負傷しておられる今、戦力はこの異邦の民たちのみ。そんな状態で魔王軍のさなかへと飛び込むなど、この者たちを信じるというのですか!」
「ベルハイド」
 ハイペリオンは優しく、そして包み込むように言った。
「この方たちをご覧なさい。確かに清濁を併せ持っていますが、希望と未来を示す強い目をしています。私は、この方々を信じます」
「ハイペリオンさま……ううむ……そういうことでしたら私も」
「いいえベルハイド。あなたは引き続きこのウィツィロ集落の安全を守って貰わねばなりません。いつまた終焉獣やモンスターたちが襲ってくるかわからないのです」
「しかし!」
 強く抗議しようとするベルハイドの肩に、ハイペリオンの翼がそっとかかる。まるで子の肩を抱く母のような優しさと温かさに、ベルハイドは沈黙した。
「たのみます、ベルハイド」

●天空降下作戦
 作戦はこうである。
 ハイペリオンの背にのりヴィーグリーズの丘へ直行したイレギュラーズたちは、まずは魔王軍の航空戦力と対決。迎撃する。
 そして敵戦力が密集しているアルビオンとよばれる村へ皆を直接降下させるのだ。
「現地にどのような戦力が待ち構えているかわかりません。充分な準備をして、対応してください! それでは行きましょう!」
 皆を乗せ、ハイペリオンは空へと飛び上がるのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 天空の翼ハイペリオンを味方に付けることに成功したイレギュラーズ。
 しかし同時にヴィーグリーズの丘にて魔王軍の虐殺作戦が開始されてしまった。
 無辜なる民を守るべく、大空へと舞い上がるハイペリオン。その背に乗って、民たちを守るべく戦うこととなったのだった。

●パート構成
 このシナリオは主に『空中戦闘パート』『降下戦闘パート』『村戦闘パート』の三つにわかれています。

●空中戦闘パート
 ハイペリオンの背に乗って、あるいは自力で飛行することで魔王軍の飛行戦力と戦います。
 巨大な鴉のようなモンスターをはじめ、様々なモンスターが敵として立ちはだかってくるでしょう。
 なお、ハイペリオンさまの加護によってこの飛行戦闘中は飛行戦闘ペナルティが軽減されます。

●降下戦闘パート
 村へと一気に降下してモンスターたちを倒します。
 モンスターは対空砲撃を行ってきますが、これを防御または回避しながら急降下し、対空砲撃手段を潰していくのが主となるでしょう。

●村戦闘パート
 村で出現する敵戦力との戦闘になります。
 ここではどのようなモンスターが出現するか全くの未知です。備えをしていきましょう。


●味方NPC
・ハイペリオン
 太陽の翼ことハイペリオンは皆に治癒やバフといった加護を与えるほか、風を操って戦う術も持っています。
 また、飛行戦闘ペナルティを軽減してくれる加護をほどこしてくれます。

※ベルハイドとポチトリは集落防衛のために今回はお留守番をしています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <渦巻く因果>太陽の翼とともに完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月30日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ

リプレイ

●虎に翼の例えあり
 混沌に伝わる伝説によれば、太陽の翼ハイペリオンはその背に勇者一行を乗せて大陸じゅうを飛び回ったという。
 きっとどこどこの町からどこどこの町への届け物だとかいうおつかいクエストも山のように経験したに違いないとは、誰の弁だったか。
 かくしてその翼はプーレルジールのここにあり、魔王軍が跋扈するヴィーグリーズの丘へと飛んでいた。
 さながら勇者一行の旅をなぞるかのように。

 『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)はハイペリオンの背からぴょんと跳躍すると、妖力で作り出した大きな鏡の上に飛び乗った。
 鏡は風を受けてサーフボードのように飛び、鏡禍もまた腕を広げバランスを取り始める。
「空から突撃するとは、特攻みたいでちょっと胸が躍りますね。
 死なない妖怪の本領発揮ってところでしょうか。
 地面に叩きつけられないようにだけ気を付けないとですね」
 鏡のボードを操ってみて実感するが、まるで風が自分の味方になっているかの如く飛びやすい。今なら軽くスピンやターンをきめても華麗にできるだろう。これがハイペリオンの加護というものなのだろうか。
「異世界への侵攻を目論む魔王軍と戦い、天空の翼ハイペリオン様と共に大空を飛ぶ。
 伝説や御伽噺を彷彿とさせるシチュエーションに心躍るというものです!」
 そう言って『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は遠くに見える魔王軍の飛行部隊の姿をとらえていた。
 巨大な鴉にも似たシルエットが旋回飛行をしながらひとつの村の上空に留まっている。
 一部は既にこちらに気付いているらしく、旋回ルートを外れて飛んできている個体もあった。
 プリンセス・シンデレラの代用として用意されたという間に合わせの剣をぎゅっと握りしめ、飛来する魔王軍の飛行部隊をにらみ付ける。
「ほむほむ。魔王軍とは、また物騒なのがやってきたの。
 ハイペリオン様の助力も得られたし、竜に翼を得たる如しというやつなの。
 信頼に応えられるようにがんばるのよ」
 一方で、未だマイペースを貫く『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。両手にポッと狐火を灯すと、それを螺旋でも描くようにくるりと回す。
 隣では『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が珍しそうにハイペリオンの背に手を当てている。
(フム、これがこの世界のハイペリオン様かね。
 混沌の方への土産話にも良いのう。
 故にハイペリオン様の前で惨めな戦いは出来ぬ!)
 ハイペリオンは混沌でも大人気の神霊である。プーレルジールのそれは別人であるとはいえ、やはりテンションが上がるのだろう。
 中でも特にテンションをあげていたのは『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)であった。
「この世界でもハイペリオンさまは優しくて頼りになってもふもふするとりの神様!
 なら赤い鳥さんがハイペリオンさまのお手伝いをするのは当然!」
 バッと翼を広げハイペリオンの背から飛び立つと、羽ばたきをかけながらハイペリオンの回りをくるりと一週してみせる。
(にしてもなんかあの赤い鳥のおっさん?にも親近感?なんだろな、不思議な感じだ。
 ま、ハイペリオンさまと一緒にいるなら良いやつだな!)
 ベルハイドのことを思い出してふむふむと首をかしげるカイト。
「しかし、そうしているとベルハイドと思い出しますね」
「あの赤い鳥さんのことか?」
「あの方にはとてもお世話になっているのです。今でもウィツィロの地を私に代わって守ってくれているでしょう」
「ははあ……」
 自分と全く同じテンションで気合いを入れるベルハイドを容易に想像出来てしまい、初対面だったというのに不思議な気持ちになるカイト。もうこれは血のつながりでも疑うレベルである。といっても、プーレルジールという異界の地におけるIFの存在ということになるのだが。
 『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)が自らの血を操って翼へ変えると、そんなカイトと共に飛び出して羽ばたきを始めた。
「本当にハイペリオン様には縁がありますね。思えばどちらの世界の空でもハイペリオン様の力を借りて戦ってましたね。思えばあれも魔王が相手だったような……」
 などと考えてから、アーカーシュで発見された『魔王』のことを思い出す。
 聞けばあれは魔王のスペアボディであったらしく、使われぬままひとりでに起動したいわゆる裏の魔王であった。つまり今回戦うことになる相手が真の魔王なのかと……考えてしまう。
(私は、今回の戦いは一つの自覚をしなくてはならないと思っているのだわ。
 私達がこの世界を助けずに帰れば、当面魔王軍は混沌へ渡航する手段を失う。
 私達がこの世界で戦う事は混沌を魔王軍の危険に晒している事なのだと、自覚しなくてはならないと思う。
 それでも尚ここで戦うのだと、心に刻んで戦いに向かわなくてはならないと私は思っているのだわ)
「それでも戦うのだわ、私は目の前の人達を見捨てたりしないと…神にそれを誓うから!」
 最後の部分だけを声に出して、『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は気合いを入れ直す。
 なんでも魔王は混沌世界への渡航を企んでいるというではないか。それを許せば最悪魔王軍の混沌侵攻などという洒落にならない事態が起きてしまう。それをこの滅びかけの世界の中で留めておけるかどうかという、そういう話なのだ。
「混沌への渡航ですか」
 『航空猟兵』綾辻・愛奈(p3p010320)は自らに飛行の魔法をかけると、ふわりと浮きあがりハイペリオンと並走飛行を始めた。拳銃を仲間に向けないように下へと下ろして。
「「この世界の」魔王としてはまあ、取れる領土がなくなったところに降って湧いた話でしょうからまさに渡りに船でしょうか。
 それにしても……我々を釣るためだけに虐殺を行うとは、本当に御伽噺の魔王ですね」
「止めなければなりません!」
 反射的に、あるいは吠えるように言う『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。
 どこからともなく飛んできた拡張フライトユニット『ヒュペリオンMkⅡ』とドッキングすると、両拳を突き出すような姿勢で飛行を開始する。
 ワイバーンの如き翼が広がり、スラスターから青白い残光が伸びる。
「宇宙保安官として、助けを呼ぶ声には必ず応えるのみ! であります!」
 そう、たとえ目的が自分達をつり出すことだとわかっていても、それを止めなければならない。ムサシのような正義感の塊でなかったとしても、思うことだ。
「魔王軍がこの世界を蹂躙しようとしてる……例えその先の狙いがわたし達の混沌だとしても、目の前の危機を放っておける訳ない!」
 と、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は宣言をするように自らの『箒星』に跨がった。
 絵本の魔女がそうするように、箒に魔法を流して飛行するセレナ。
「箒を駆り、空を舞うは魔女の本領! この世界にも平穏な夜が訪れるように。夜守の魔女が護ってみせるわ! ほら、トールも!」
 そういってトールにパスされたのは『Witchbroom』と呼ばれるいわゆる魔女のホウキ。
「トールならきっと乗りこなせるわ。魔女の加護をあなたに、ってね!」
「セレナさんから渡された空飛ぶ魔法のホウキ、必ず乗りこなしてみせます!」
 間に合わせの剣と借り物の箒。それでも彼女は空を飛び、そして戦うのだ。
 象徴的なアイテムを失ったとて、『彼女』は彼女であるのだから。
「皆さん!」
 そうしていると、ハイペリオンが鋭く声を発した。
「敵との戦闘距離に入ります。加護はかけたままにしておきますので……突っ込みますよ!」
 十人のイレギュラーズは、それに対して勇ましく応えるのだった。

●魔王軍飛行混成部隊
 空を席巻するかの如く飛び回る魔王軍の魔物たち。その一部は巨大な鴉めいた姿をしていたものの、近づいてみればそれは多種多様なモンスターが集まった混成部隊であった。
 空飛ぶ虎に巨大な鴉、蝙蝠の怪物に巨大な蜂。それらが一斉に、飛行するハイペリオンの部隊へと遅いかかってきたのである。

「数がヤバイな。が、それはそれで戦いようはある!」
 カイトは自らの得意とする三種の【怒り】スキルを駆使し、敵飛行部隊の一部を誘引。
 突進してくる蜂をバレルロール機動で回避すると三叉槍を持ったデーモンの突きを三叉槍で撃ち弾く。
 三叉槍を握りくるりと回し、あえてハイペリオンから離れた位置へと移動する。
「あれだけ引きつけてもまだ避けきれるとは……貴様何者!」
 飛行部隊の中でも上位のモンスターなのだろう。人型の鴉めいたモンスターが叫ぶ。
「カイト・シャルラハ――『鳥種勇者』だ、覚えとけ!」
「勇者だと? ふざけるな!」
 鴉の放った黒い羽根がホーミングしてカイトへと突き刺さる。
 が、そうやって『カイト対策に夢中になる』のは望むところなのである。
「いくわよ、トール!」
「はい、セレナさん!」
 セレナとトールは魔女の箒にまたがった状態で鴉型モンスターの群れへと突進。
 トールが剣によってなぎ払うことで灰色の光が走り、飛行するモンスターたちを次々に墜落させていく。
 飛行戦闘の恐ろしい所は体力が一定まで失われると墜落するという所だ。
 逆に言えば、それだけ短期で決着がつくということでもある。
 トールは箒にしがみつくようにして加速することで蜂の群れを突っ切って回避。ターンして追いかけてくる蜂の群れに向けて魔法の手榴弾を放り投げた。
 花火のような光を放って爆発する手榴弾に巻き込まれる蜂モンスターたち。
 キラービートルという凶悪なモンスターだが、体力の低さが彼らのネックなのだ。範囲攻撃を食らえばひとたまりも無いのである。
「やるじゃない。なら、こっちも負けてられないわね」
 セレナはあえて蝙蝠型モンスターたちに誘引の魔法をかけると、自分を集中的に狙うようにしむけた。
 闇色の魔方陣が蝙蝠型モンスターたちから次々に生み出され、そこから闇の矢が次々に発射される。
 後方をとられつつも射撃を一方的に受けたセレナは月色の魔法障壁を展開。
 前進を覆う球形のバリアめいたそれは放たれた矢を次々と弾く。といっても無傷というわけではない。障壁には小さくだがヒビが入り、セレナはその様子に目を細める。
「余裕で突破させてくれる、ってわけじゃ……勿論ないわよね」
 わかってる! と叫びながら魔方陣を展開。
 『狂ウ満月』と呼ばれるその魔法は狂気をもたらす終末の光だ。妖しい月光を浴びた蝙蝠たちは次々に自害を始め、墜落していく。
「マリエッタ!」
 セレナが叫ぶ――と同時に、彼女の更に上空を地の翼で飛行していたマリエッタが天に手をかざす。ぎゅるんと音を立てるかのように螺旋状に集まっていく血が巨大な槍を作り出し、ふりおろすその動作と共に血の槍は放たれる。
 蝙蝠たちに直撃した瞬間大量の矢へと拡散、爆発。
 大量の蝙蝠型モンスターが墜落していくのが見えた。
 『夜守の魔女』と『死血の魔女』のコラボレーションといったところだろうか。
 そんなマリエッタを狙ったのは空を駆ける虎だった。翼の生えたその虎は空に足場でもあるかのごとく足を走らせマリエッタへと食らいつく。
「――ッ!」
 腕に喰らった攻撃。食いちぎられ血が吹き上がるが、その血こそがナイフになって相手の顔面に突き刺さる。
「空での戦いで、こちらが劣るとでも!」
 更なる爪の攻撃を上下反転によって回避。
 と同時に血によって作り出した大鎌が虎の腕を切り落とした。
 グオオと虎が声をあげたその瞬間、鏡をサーフボードのように走らせた鏡禍がその真横をかすめるように抜けていく。手にしていたのは割れた鏡の破片。いや、鏡でできた大ぶりなナイフであった。
 身体を大胆に切り裂かれた虎が墜落していくのを横目に、ボードを蹴ってターンをかける鏡禍。
 ナイフから手を離すと、ナイフはまるでなにもなかったかのようにパッとその場から消えた。妖力によって作り出していただけらしい。
「数が多いなら、分散して引きつければなんとか突破できるはずです。こっちの集団は任せてください」
 鏡禍は大量の鏡を空中に作り出すと、それに反応した魔物たちの一斉攻撃をその身に受けた。
 いや、うけ流した。ガラスめいた障壁にすべての攻撃が止められ、無効化されたのである。
「ブレイクできるだけの手段がないか、それとも個体戦力差がそれだけ高いか……ですね」
 愛奈は自らに対して二重の無効化結界を発動し全ての攻撃を無効化させると、骨でできた大鷲のような魔物の群れへと突っ込んでいった。
 まずは拳銃による射撃。大して相手は魔法の炎をぶつけてくるがそれらは愛奈の眼前で次々にかき消える。
 結界を破ろうと骨大鷲の一体が決死の突撃をしかけてくるも、それを愛奈は手槍で突き刺す形でいなしてしまった。
 そう、彼女の読み通りにブレイクできるだけの手段が大半のモンスターになく、よしんばあってもクリーンヒットを出すだけの実力が足りないのだ。
 群れの中に突っ込んで好き放題に引っかき回す愛奈。

 状況は優勢。しかしそんな中でも、カイトや鏡禍たちによる誘引能力をくぐり抜けてハイペリオンへと遅いかかる魔物もあった。
「ギギッ!」
 グリフォン。いや、グリフォンに騎乗したゴブリンだ。
 弓を引いて矢を放つ。それを前にでて防御したのはオウェードだった。
 身体を覆う鎧と両手に持った斧でもって、次々と放たれる矢を切り落とし、時には身を挺して受ける。
 ならばと突っ込んできたグリフォンライダーに斧を振り込む。
 相手の短剣と斧が激突……したが、力で勝ったのはオウェードの方だ。ハイペリオンの背にしっかりと足った彼は斧を振り抜いた姿勢のままキッと後方へ振り返る。
 騎乗していたゴブリンがなぎ払われ転落していくのを見て、グリフォンはどうやら自力で戦うことに決めたらしい。
 ターンし突っ込んでこようとするそのグリフォンめがけ、胡桃の必殺『こやんぱんち』が炸裂する。
 狐火を纏ったパンチが直撃し、凄まじいBSに塗れるグリフォン。
「まだまだ、終わらぬの」
 返す刀ならぬ返す手のひらから放つ狐火によって、巨大な狐の形になった炎がグリフォンを呑み込みまる焦げにしていく。
「村が見えてきたの」
 降下ポイントはもうすぐだ。
「飛び降りる準備は出来たワイ!」
「なら、到達するだけなの」
 胡桃は両手をガッと合わせると燃え上がる炎を更に強める。
 前方でこれ以上は進ませまいと群れを成した魔物の集団めがけ、炎を一気に解き放った。
 ゴオッと燃えさかるその炎の音はまるで咆哮する獣の如く。魔物たちを次々に食い破って突っ切っていく。
 魔物の群れにぽっかりと穴が空く。が、それも一時のこと。彼女めがけて大量の魔物が突進を仕掛けてきた。ハイペリオンからたたき落とそうというのだろう。
 ……が、そうはさせない。華蓮が、させない。
「そこまでなのだわ!」
 間に割り込んで翼を広げた華蓮。
 彼女は自らに付与した力を解放し、大量の魔物の前に魔術障壁……いや、神威障壁を展開した。
 華蓮の神威障壁は魔物の突進をいなし、魔法の射撃を受け止め、それらを次々に受け流していく。
 中には毒や電撃を帯びたものもあったが、華蓮の障壁はそれすらも無力化していく。
「攻撃は引き受けておくのだわ。その間に――」
 華蓮が叫ぶと答えたのはムサシだった。
 ヒュペリオンMkⅡによってぎゅるんと螺旋を描いて飛行する彼は突き出した拳をそのままにディフェンダー・ファンネルを展開。
「行け! ディフェンダー・ファンネルッ!」
 背部から離脱したディフェンダー・ファンネルたちは多角的なビーム攻撃によって魔物たちを次々に撃墜していく。
 そこへ飛び出すのは巨大なクワガタ虫のごとき魔物。ビームをものともせずに突っ込んでくるその相手を、華蓮は機敏な動きで割り込むとムサシへの突進を代行防御。後方へと受け流す。
「生半可な攻撃は通用しないのだわ」
「ならば、必殺の一撃を与えるまでであります! ビームバスター!」
 くるりと反転。頭部に搭載された超出力ビームを発射したムサシによって、クワガタ虫型の巨大モンスターは身体に大穴を開けることになった。
 そして――。
「ポイントに到着しました! 降下します!」
 ハイペリオンが叫び、胡桃たちを乗せたまま急降下を始めたのだった。

●急降下突撃
 魔王軍アルビオン村派遣部隊。空中への備えも万全に思われたこの部隊は今や追い詰められていた。
「飛行部隊が次々と墜落! おそらく例のイレギュラーズたちのせいかと……!」
「村の衛兵とはあまりにもレベルが違うであります!」
「ハイペリオンとやらの加護もあってか空戦部隊も歯が立ちませぬ!」
「チッ、突破されたか……」
 舌打ちをしたのは鴉頭の魔物、ノワールクロウ。奇しくも混沌においてハイペリオンと共に封印されていた魔物のIFが、魔王軍の配下としてアルビオンの村へ派遣されていたのだった。
 ノワールクロウは部下たちに命令を出し、自らも翼を使ってふわりと舞い上がった。
「対空砲撃を行え! 奴らを撃ち落とすのだ!」

「ここまでのわたしの役目は皆のダメージを少しでも減らすこと。勿論、仲間も頼りながらね!」
 セレナは魔法障壁の強度を高めると、飛んでくる砲弾に向けて月の魔法をぶっ放した。
 砲弾が弾き飛ばされ、その後ろを飛ぶハイペリオンと、そこにしがみつく胡桃が守られる形となった。
「ここは一次的にでも耐え凌ぐの」
 『幻想纏い』を発動させ防御を極端に高める胡桃。
 そんな彼女たちに砲弾が命中――した途端、砲弾が破裂して石化の魔法が展開される。
「――!?」
「おっと、そうはさせねえ!」
 上空から急降下で追いついてきたカイトが『ホワイト・ウィンド』の術を展開。石化の魔法が一瞬で解除され、セレナと胡桃が同時に親指を立てて見せる。
 それに対して親指を立てて返したカイトは石化砲弾を放っていた砲手めがけて鋭い槍の如く突撃。
 ズドンという衝撃が砲手と砲台に走り、加えてセレナと胡桃の魔術が放射された。
 月の魔術が浴びせかけられ、狐火に焼かれ、混乱する砲手とその護衛戦力たち。
 ふんわりシューズで着地した胡桃は混乱した護衛の魔物めがけて炎を纏った蹴りを繰り出した。
「高高度で飛行してるこちらのほうが防御面では圧倒的に不利。それは事実よ。けど、守りに徹すればそれは覆せるの」
 セレナは箒から飛び降りると、防御に用いていた結界の一部を自らの手に集めた。
 剣の形に成形されたそれを、曰く『断絶結界』という。
 別名、『断月の魔剣』。
 かけ声ひとつとともに繰り出されたセレナの斬撃が砲台のひとつをを破壊する。
 と同時に、カイトの『緋色の呪い』が炸裂した。
 敵からすれば悪夢のように恐ろしい【怒り】の付与と超絶回避。群がって殴りつけてもその回避能力にまるで追いつくことができないのだ。
「砲台はまだ残ってる。そっちは任せるぜ!」

「こちらで対空の手を緩めます! 今のうち降下を!」
 跨がっていた箒からあえて飛び降りるトール。
 浴びせられる対空機関砲を剣さばきひとつで弾きながら、剣に灰色の力を流し込む。
 もう一発! と叫んで放たれた斬撃が飛んでいく。輝剣『プリンセス・シンデレラ』の放つオーロラカラーのそれには及ばないものの、しかし代用品はしっかりとその役目を『代用』している。
 ズガガガガッと放った斬撃が砲手の周囲に突き刺さるその中で、しかし砲手を担当する魔物は怯まず砲撃を続ける。
「一気にいくぞ!」
 そこへ弾丸の如く突っ込んだのはオウェードだった。
 両手に持った斧を振り下ろし、砲台へ直接叩き込むオウェード。
 まるでバターでも切り分けるように砲台は切断され、内燃機関がどうにかなったのか激しい爆発を起こす。
 爆発の中から平気な顔をして飛び出したオウェードが、更に砲手の魔物を斧で切り倒した。
「ブレイ・ブレイザー!」
 一方でムサシはマフラーにしていたそれを引き抜きマントのように広げると、半身を覆うようにして防御。地上の魔物たちからの魔術射撃を炎のマントで防ぐと、それを剣の形状に変えて着地と同時に斬り付けた。
 袈裟斬りにされた魔物がギエエと叫びながら崩れるが、別の魔物が鉤爪を繰り出してくる。
 後方からだ。
 が、それは上空から撃ち込まれた細長い血色の槍によって防がれた。思い切り串刺しとなった魔物が固まるなか、血の翼を解除し着地するマリエッタ。
 ムサシとマリエッタはそれぞれ背を向け合って立つと、囲む魔物たちをにらみ付ける。
「ここを脱する手段は?」
「当然」
 ムサシはディフェンダー・ファンネルを展開。と同時にマリエッタは翼にしていた血を大量の刃に変えて展開した。一斉射撃VS一斉射撃。
 激しい攻撃の交差の末に、魔物の最後の一体がウググと唸ってから崩れ落ちる。
 倒れた魔物たちの中心には、ムサシとマリエッタが立っていた。

 鏡禍と愛奈の結界が魔物の放つ特殊砲弾によって破壊される。
「ブレイクする手段をやっと見つけたみたいですね」
 それでも余裕を崩さない愛奈は拳銃の狙いを砲手へと定めた。
「けれど、もう遅い」
 連射の末に、着地と同時に槍を繰り出す。
 魔物側は防御の結界を張ったようだが、愛奈の槍はそれを易々と貫き破壊してしまう。
 鏡のボードから飛び降り、ふんわりシューズで着地する鏡禍。
 彼は妖力で作り上げた鏡の剣を手に、魔物の首をスパンとはねてしまった。
「一斉攻撃で沈めろ! 手練れだぞ! 一人でも落とせば大手柄だ!」
 魔物の一人が叫ぶ。おそらく上位の魔物だろう。彼の命令に従って放たれた一斉攻撃――を、間に割り込んだ華蓮が全て引き受ける。
 通常では不可能な二人同時のカバーを、残像でも見せる勢いで素早く動き回りながら実現してみせたのだった。
「私の後ろに、傷は付けさせないのだわ」
 更に飛んでくる矢をパシリとキャッチし、手の中でへし折る華蓮。
「ありがとうございます」
「感謝します!」
 愛奈と鏡禍は同時に飛び出し、魔物たちの中を駆け巡る。
 ギャッとかグエッとかいう魔物の発する断末魔がいくつも響いたかと思うと、魔物たちは次々と崩れ落ちていくのだった。

●ノワールクロウと不愉快な仲間たち
 アルビオン村の攻略とイレギュラーズの誘い出しを目的として派遣されたノワールクロウ。彼は明らかに焦っていた。
 残されたのは自分を含めた数体の上級魔物のみ。対して敵は全て無傷……とはいかずとも揃っている。
「たった十人とひと柱に突破されたというのか……!」
 いや、むべなるかな。展開した魔物たちは弱小なものばかり。数に物を言わせたところで、イレギュラーズを止めることなどできないということなのだろう。
 ならば逆説的に、上級魔物である自分達ならばあるいは……。

「さがってくれ、ハイペリオンさま。ここは俺が引き受ける」
 三叉蒼槍をくるりと回し、勇ましく構えるカイト。
 対抗するようにノワールクロウが前に出る。
 彼は鉤爪をむき出しにすると、カイトとにらみ合った。
「ハアアッ!」
 鋭い斬撃。それを槍でギリギリ弾いてかわすカイト。カイトの表情に僅かばかりか驚きの色が浮かぶ。
「俺のスピードについてくるか。やるな」
「貴様こそ、この必殺必中の爪を避けるとはな!」
 その一方で、巨大な蜘蛛型の魔物が糸を吐いてカイトを拘束しにかかった。
「させないのだわ!」
 間に割り込み、糸を自分の身体で受ける華蓮。
 この戦いで味方をかばってばかりの彼女だが、今回はかなりのファインプレーだ。なぜなら相手の狙いはこちらを捕らえること。糸によって拘束された華蓮だが、すぐにそれを華蓮が手槍で切ることで解除したからだ。
「ぬうっ、我が糸を切るか。ならば――」
 毒液を吐き出す巨大蜘蛛。しかし華蓮と愛奈は距離をとり、それぞれ銃と弓を構えた。
 華蓮必中の一撃こと『神罰の一矢』。これをくらった巨大蜘蛛ががくりと傾いたその瞬間に、ボディめがけて愛奈の銃撃がしこたまに撃ち込まれる。
 全ての弾を撃ち尽くしたところでマガジンを滑り落とす愛奈。
 リロードの作業を素早く行うが、その間には巨大蜘蛛は全身から紫色の血を出して崩れている所だった。
 そのまた一方でこちらは巨大ゴブリン。通常個体の三倍以上はあろうかというゴブリンリーダーが大剣を手に振り回している。
 対抗しているのは胡桃だ。
 幻想纏い、SSSガジェット3.0b、更にあふた〜ば〜な〜をオンにした最大強化状態の胡桃はゴブリンリーダーの繰り出す豪腕の一撃を見事に防御。対抗し、至近距離からの収束火炎輻射術式『Blazing Blaster』をぶっ放す。
「ぐおお!?」
 それだけではない。胡桃のパンチ連打によって撃ち込まれた炎はゴブリンリーダーを包み込み、その肉体を弱らせていく。
 そこへ追い打ちをかけたのが鏡禍だ。
 ゴブリンリーダーの背後に回っていた鏡禍は弱点となる臓腑の位置を性格に見抜き、鏡の剣を突き刺した。
 突き刺し、ひねり、そのまま脇腹を切り裂いて抜ける。
 ここまでされれば流石のゴブリンリーダーも立っては居られないのか、がくりと膝をついてそのまま顔から崩れ落ちた。
「流石に上位の魔物だけあって手強いですが……けど、力を合わせれば勝てない敵じゃありません!」
 さあ次へ! と別の魔物へと挑みかかる。

 六本腕を持つアシュラスケルトンはオウェードとムサシによる連続攻撃を凌ぎきっていた。
「なかなかの手練れ。しかしこの六刀流剣術を凌ぐことはできぬでござる!」
 かけ声一発。六連回転斬りが繰り出されオウェードたちは大きく飛び退く。
「攻め手にかけるワイ」
「けれど、諦めない。宇宙保安官ある限り。この世に悪は栄えさせない……!」
 ムサシは腰の辺りで拳を構えると、頭部からビームバスターを発射した。
「これでどうだっ!! ビーム・バスターーッ!!!」
「ぬうう!」
 六本の剣でビームを受けるアシュラスケルトン。
 が、そこへオウェードが突進。捨て身かと思うほどの豪快な突進と斧の斬撃によって、アシュラスケルトンの腕が粉砕された。
「ぐおお!?」
 そこからは一気に攻める。オウェードは更なる斬撃を、ムサシは出力を全開にしたビームバスターを放ち、アシュラスケルトンを撃ち抜いたのだった。

 ノワールクロウはついにカイトを制することを諦めた。
「赤き鳥よ、貴様を狙ってもらちがあかん。まずは別の者たちからだ!」
 ギラリとにらみ付けたのはマリエッタ。
 飛びかかるノワールクロウの素早さに、しかしマリエッタの血の刃は追いつけない。
 彼女のうでに激しい切り傷がうまれ、値が吹き上がった。
「マリエッタ!」
 そこへ突っ込んでいったのはセレナだった。
 ノワールクロウは突っ込んできたセレナの『断月の魔剣』をがしりと手で掴む。
 バチバチと激しいスパークがおきるのは、セレナの結界の力とノワールクロウの魔力が拮抗しているからだ。
 が、それならば。それならば――こちらの勝ちだ。
 トールが逆サイドへと回り込み、剣で思い切り斬り付けた。一瞬だけ刀身に纏わせた灰色の魔力が輝き、ノワールクロウの背を切りつける。
「ぐあっ!?」
 よろめくノワールクロウ。そこへマリエッタは血の槍を思い切り投げつけた。
 ノワールクロウの身体を血の槍が貫通。更によろめいたところで、セレナの断絶結界が今度こそノワールクロウの腕を切り裂いたのだった。
 ぐらり、ぐらり……と身体をよろめかせながら数歩さがるノワールクロウ。
「申し訳ありません、魔王、様……!」
 そうとだけ呟くと、その場にどさりと崩れ落ちるのだった。

●そして、新しい出会い
 村周辺の魔物の掃討も終わり、生存者の救出でもと見回りを始めたところで、ハイペリオンより声がかかった。
「皆さん、少し来て頂けませんか」
 そんな漠然とした、しかしどこか急を要する物言いに、皆は集まることになる。
 集まって、そして、言葉の意味を理解した。
 ……棺だった。
 それも、クレーター状に大きくへこんだ土の真ん中に、石の棺がただひとつだけ置いてある。
 あまりにもあまりな現状に、『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)や『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)は顔を見合わせた。
「棺じゃ」
「棺なの」
 しかしここまであからさまに置いてあって、よもや空の棺ということもあるまい。
「どうしましょう……」
 ハイペリオンのそんな困った言い草に、『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)が腕まくりをして歩き出した。
 『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)と『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)もそれに続く。
「とりあえず様子を見てみるか」
「棺っぽいけど、棺じゃないかもしれないのだわ」
「棺じゃないってどういう……」
 と、その時。
 ガコンッという大きな音を立てて石の棺はその蓋を開いた。それも恐ろしく丁寧に、滑るように蓋が左右両開きになってゆっくりと解放されていく。
 内側からはなぜだか白い煙がもくもくとたちのぼっていた。
「棺じゃなかった、ですね」
「そ、そうですね……」
 『航空猟兵』綾辻・愛奈(p3p010320)と『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)が顔を引きつらせて言う。いつもすまし顔の愛奈の引きつり顔というのは、なかなかに珍しい。というより、引きつったのは声だけだ。表情はそのままに、慎重に煙る棺へと近づいていった。
 その際に拳銃を構えるのは忘れない。暴発にそなえ斜め下に向けたそれを……。
「ふああ、あ」
 声と共に起き上がる人影。
 反射的にサッと拳銃を向けてから、愛奈はその様子に驚いた。
 いや、その容姿に驚いたと言うべきかもしれない。
 星がきらめくような金髪と、左右異なる色の瞳。
 瞳の内側にはキラキラとした星の輝きがまた宿り、ご丁寧なことに胸には星型の結晶が埋まっている。
 それは、とてもとても幼い少女であった。幼女、と端的に言い換えてもよいほどに。
「ゼロ・クール?」
「にしては、様子が……」
 『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)と『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がそんな風に言ってみると、
「ううん、わたしは、ゼロ・クールじゃない。私は、『ステラ』」
 そう言われて、初めて自己紹介をされたのだと『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は気付いた。
「見て、凶星が光ってる。星界獣が、現れる」
 幼女ステラは高く空を指さしてそう言った。
「星界獣……あっ」
 マリエッタと愛奈は、あることを思い出した。
 『エネルギーを喰らう奇妙な獣』の存在をだ。
 それは、混沌に今まさに現れているという『星界獣』の特徴にぴったりと合うではないか。
 気付けば、愛奈は銃を下ろしていた。
 その銃をちらりと見て、ステラは笑う。
「その銃、綺麗ね」
「え」
「あなたに、とても似合ってる」
 ステラは棺あらため石の寝台よりすっくと立ち上がると、また空を見上げた。
「星界獣を、払わなきゃ。この世界が、壊れちゃう」

成否

成功

MVP

華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

状態異常

なし

あとがき

 ――星の少女、ステラと出会いました

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