PandoraPartyProject
終焉の気配
プーレルジール。それは果ての迷宮を辿り続け、見つけた世界。
其処にはかつての混沌大陸のような世界が広がっていた。
勇者王が『勇者』ではなかった時代。
ある魔法使いが『魔法使い』ではなかった時代。
似て非なる世界が其処にあったのだ。アイオンはアイオンではない、よく似た別人……
あぁ不思議な世界が広がっていた、というだけなら別に構わないのだが。
しかしプーレルジールに幾人か、混沌世界にいた者が巻き込まれている事件も生じていた。
世界各地にプーレルジールと繋がる『扉』のようなモノが開き始めているのだ。扉というのは比喩表現であり、要はプーレルジールに強制的に転移してしまうような現象が生じ始めていると言った所だが……
一言で言うと豊穣の国に飛ばされるバグ召喚。アレに似ているかもしれない。
――が。
「なにかおかしい」
ある存在が率直な疑問を呟いた。
その者の名はパンタデュラス。あるイレギュラーズと関わりがある存在である――が、まぁ彼が何者かは今は捨て置こう。それよりも……そう。プーレルジールに転移してしまう者がいる件。
『ソレ』はおかしいのだ。
プーレルジールとは『混沌に密接に通じている世界』
果ての迷宮は異世界にも密接に接していたという事だが――混沌世界は他世界を呑み喰らう程に強い場所であるという事を前提に考えてもらいたい。では異世界の要素が混沌世界側に『呑まれる』事はあっても『その逆』は非常に考えづらいのだ。
何故こちらの世界の者が、あちらの世界に呑まれる様な事がある?
……それほど大規模な数が巻き込まれてる訳ではない。世界全体から見れば些事だろう。
偶々そういう不思議な事があっただけ……と断じるのは簡単だが。
『なにか、おかしい』
そういう疑問が湧いて出るのも無理からぬ事であった。それに。
「終焉の獣が――増えている」
プーレルジールで気になるのは他にもある。
――終焉獣(ラグナヴァイス)の存在だ。
終焉獣とは混沌世界が一角『終焉』にて出でる魔物……未だ謎が多く、しかし内に宿す滅びの気質が故か人類に敵対的なのは間違いがない者達――それらがプーレルジールで目撃されているのだ。
問題なのは、その数である。一体や二体という数ではない。
どうしてこんなにも滅びの獣が多い?
これもおかしい話だ。いる理由、増えている理由。その全て……
生じる疑問。故にパンタデュラスは独自に調べんとしていた。彼にとって世界の命運などどうでもいいが、しかし迫りくる危機を受け入れる程破滅主義者でもない。とにかく直感が警報を鳴らしているこの世界を少しでも調べんとして――
「困るなぁ」
刹那。パンタデュラスのすぐ背後より――声が生じた。
いつの間に。誰だ? 即座に視線を滑らせんとした、が。
「困るんだ、そういうのは。終焉獣がいたっていいじゃないか気にしないでおくれよ」
「――誰だい?」
「うーん。『魔法使い』とだけ言っておこうかなぁ。
この世界で今の肩書は、と前置きはするけれど」
軽快なる口調で語り掛けられる。ともすればまるで友人に話しかけるが如く……
しかしその直後。パンタデュラスに凄まじい衝撃が――襲い掛かる。
体の半身を持っていかれるかのような感覚。なん、だ? 魔法か? それとも……
判断しうる時間も何もない。ただただ自らは『敵』に攻撃されたとしか分からぬ。
数秒後には死が自らの命を断頭せんばかりだと確信し――されど。
「おっと。手応えがなかったなぁ……?」
パンタデュラスは逃れる。ほぼ確定で死を迎えんとしていたのに、まるで敵の手中からするりと抜けるかの如く……何か能力でもあったのか? うーんどうしたものか。『魔法使い』は吐息を零すものだった――今からでも気配を追って始末に向かってもいいのだ、が。
「ま、めんどくさいからいっか。
見られた顔なんていくらでも変えればいい。誰も僕を追う事なんて出来ない」
『魔法使い』は途端にパンタデュラスという存在に飽いた。
興味を失った。どうでもいいとばかりに。
どうせ誰も『この世界の本当の意味』など分かりはしない。
それよりももっと重要な用事があるのだから――
「さーて『魔王』君の所にお茶しに行くとしようかなぁ。
蜂蜜あんみつアイスクリーム入りダージリンでも出してくれればいいんだけど♪」
『魔法使い』はせせら笑う。
その背後には、大量の滅びを纏った終焉獣の姿も見受けられたか。
『魔法使い』に付き従うかのように――彼らもまた蠢いていた。
※プーレルジールで暗躍する影があるようです……?
これまでのシビュラの託宣(天義編)|プーレルジール(境界編)
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