PandoraPartyProject
『冒険者』アイオン
プーレルジールの野を一人の青年が駆けて行く。
手には錆びたロングソードを握り締め、近隣の村を襲ったゴブリンの討伐を行って居るのだ。
「なあ、話し合いをしよう」
青年はゴブリンへとそう告げた。ギャアギャアと騒ぎ立てるだけで対話の気配もないモンスターに対して青年は肩を竦める。
「――って言って話す事が出来ればどれ程良かったんだろうな」
青年はモンスターを斃す事に対して特別な思想は存在しない。生きる為には犠牲が必要であると知っている。
『この世界の』彼の実家は牧畜をしていた。それ故に動物たちとの別れを早く経験し、命の尊さを翌々理解していたのだ。
目の前のモンスターは生活を脅かす。だからこそ、討伐しなくてはならない。
仕方が無い事なのだ。
(まあ、話せたところでさ、其処まで変わりないんだろうけど……俺は頼まれたら断れないんだよな)
村人がお願いしてきたから「分かった」と受けた。その依頼を反故にすることはない。
「さ、そろそろお終いにしようか」
ぎゃあぎゃあとゴブリン達は騒ぎ立てた。青年は困り切った様子で目尻を下げてから「ごめんよ」と囁いた。
――それはよくある風景だ。イレギュラーズならばローレットを通して受けた依頼にてモンスターの討伐経験は日常的にあることだろう。
だが、この時代には冒険者は余り多くはない。
ゼロ・クールと呼ばれる『しもべ人形』達がそうした荒事を熟してくれるからだ。
『ゼロ・クールにばっかり働かせるのは可哀想だとは思うよ』
と、そんなこの時代の人間らしからぬ倫理観と型破りな常識を持った青年は敢て冒険者として活動して居た。
人出なくては解決できない荒事へと対処するためだ。
青年は名をアイオンという。この周辺で活動する冒険者だ。
冒険者、と言っても遠方に遙々出掛けて未知を知るわけでは無い。近郊トラブルを解決する何でも屋のような存在だ。
彼は特別、剣の腕が立つわけではない。
彼は特別、何かに恵まれているわけではない。
ただ、人よりも少しだけ『お人好し』なだけだった。
「それが勇者の原点と皆様の世界で呼ばれる青年の『IFの姿(ありえたかもしれないかたち)』でございます」
アトリエ・コンフィーで『Guide05(ギーコ)』は静かにそう言った。
無辜なる混沌とプーレルジールは本当の過去というわけではない。何処かズレが生じている場所だ。
例えば、R.O.Oのようにネクストが独自的に発展進歩と遂げたとは訳が違う。どうしたわけかこの世界は無辜なる混沌の過去を再現し、そしてその正史からズレている。
何らかの理由があるのだろうがギーコは知らないという。
そも、ギーコは『心なし(ゼロ・クール)』だ。魔法使い(作者)に設定された以上は話せない為、仕方が無いのだろうが。
「彼は皆さんの過ごす無辜なる混沌なであれば魔王イルドゼギアを打ち倒したことでしょう。
ええ……尊大たる彼は天空島サハイェルにて『勇者』と呼ばれるようになったアイオンに打ち倒される『筈』です。
ですが、プーレルジールではその片鱗はなく、アイオンという青年は勇者ではなく冒険者として過ごしております」
ギーコはプーレルジール近郊の地図をテーブルに広げてからとん、と指差した。
「この村に彼が居ります。どうぞ、興味がございましたら見に行ってみては如何でしょう?」
ある青年が勇者と呼ばれていない理由も、冒険者の儘で燻っている理由も、それらを一度確かめに行こう。
敢て言うならばとある青年の物語は『まだ』始まっていないのかも知れない。
※『プーレルジール』近郊の村ティルーの村で冒険者アイオンと接触します――
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