PandoraPartyProject

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預言者ツロによる啓示

 ――第一の預言。
 天より降るは神の鉄槌。雷は大地を焼き穀物全てを屠る事だろう。
 印のない者は飢え死ぬ定めである。偽の預言者によって産み出された悪魔を屠るが為の神の裁きである。

 ――第二の預言。
 我らは選ばれし者である。選別の遂行を行なうが為に死神は鎌を振り上げる。
 焔は意志を持ち進み、世界をも呑み喰らう。印がある者のみがその大地に立つことが許されるであろう。

 ――第三の預言。
 水は全て苦くなる。即ち、生命を維持することを許さじ。
 それらは徐々に神の意志を持ち得ることだろう。大きな波となり、大地をも飲み干すのである。

「それは、聖女様から?」
「『神託の乙女』が預言者ツロによる啓示を全遂行者に齎しました。
 これより、我らは真なる世界を作るが為に遂行を行なう事でしょう」
 赤髪の聖職者の言葉に眉を顰めた銀髪の騎士はいよいよかと唇を噛み締めた。
「大勢の人が死ぬね」
「……嫌なのですか? 正義の遂行が? まさか」
「ううん。そんなことはない。一度違えたのだもの。『もう二度とは我が家門は穢れない』」
 銀髪の娘――リスティア・ヴァークライトは聖騎士である。罪深き不正義の父親を断罪した穢れた娘は家門を弟に任せ聖騎士として任務を遂行している。
 その傍らに立っていた聖職者であるオウカ・ロウライトは「その方が宜しいでしょうね」と目を伏せた。鉄帝国出身の母を有する娘は聖職者として『正しき』を追求している。
 何方もが神による啓示の『遂行者』たらんとしているのだ。
「二人も行くのですか?」
 ふと、二人に声を掛けたのはアリアであった。ファミリーネームを捨て、叔父の後を着いて薬師となるために邁進してきた娘だ。
 儘ならぬ恋をしていた。その恋の相手が『預言者』であった事で彼女の人生は変わったのだ。
 預言者はアリアに正義の遂行を願い出た。
 恋は盲目。愛は献身。故に――女はその願いを『遂行』する。
 アリアは預言者ツロが齎し、『神託の乙女』聖女ルルによって遂行者へと齎された預言を遂行すべく地の国へと向かうつもりであった。
「アリアさんも行くの?」
「はい。そう、あの方もお望みです」
「なら、別々の行動になるかな? オウカちゃんも行くよね」
「うん。リスティアちゃんとは別の行動でしょうけれど……正義を遂行するためには必要な事ですから」
 オウカは小さく頷いた。リスティアが剣を指先でなぞる。ああ、父の血を吸った忌まわしきこの剣は幾人の命を飲み込むのだろうか。
「せめて――」
「……せめて?」
「せめて、ツロ様の願うとおりになればいいのだけれど」
 リスティアが呟けばアリアが眉を顰める。ああ、だって。
「……『成り代わります』もの」
 彼女にはモデルがいた。預言者ツロが求めているのはアリアではない。アリアを造り上げるために必要であった『本来の彼女』だ。
 苛立つように呟いたアリアは失礼と足早に歩き出す。向かう先は『地の国(現実)』か。
「あーあ、怒らせちゃった」
「……リスティアちゃんって強かですよね? いい性格」
「え?」
「怒ること分かってたのでしょう?」
「……ふふ。だって、恵まれているから意地悪をしたくなっただけだよ。
 本当の私と、今の私なら、どっちが不幸なんだろうね、ねえ、『スティア』」
「どうでしょう。私は全ての正義を遂行するこの身こそが正しく『サクラ』は不正義であると思いますけれど」
 ――彼女達は『イレギュラーズ』の生き写しを思わせた。
 ああ、けれど、その生き方は違う。有り得たかも知れない姿を在る男が造り上げた。
 男は『神の望んだ世界』を作る為に予言を齎し続ける。そして、己の存在を悟られぬように『神託の乙女』の唇を借りていたのだ。

「ルル様は?」
 リスティアが問えばオウカが渋い表情を見せた。前を行くアリアが振り向いてから笑う。
「未来の予知――即ち神による啓示をも為せない聖女に行く末はないでしょう?
 カロル・ルゥーロルゥーだって『そうであった』ではないですか」
 あなたが、望もうとも、望まなくとも。
 歴史は正しく動いていく。
 時計は寸分のズレもなく、歴史は正しく修復される。特異点は何れは消え去り、全ては一本の線となる。
 そうで無くてはならないのだ。
 そうで無くては神は我らを救わない――!

 ※天義国の方で動きが見えているようです――?


 ※パンドラパーティープロジェクト6周年ありがとうございます!
 『六周年記念ローレットトレーニング』開催中!
 


 ※『冠位暴食』との戦いが終結しました――
 ※覇竜領域では祝勝会が行なわれているようです。

これまでの覇竜編シビュラの託宣(天義編)

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