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アイアン・ドクトリン

 雪が、降り積もる。
 氷が、大地を覆う。
 ここまでの状況は如何に北方国家と言えど異常な寒波であった。
 ――だが。人々は極寒に屈するを良しとはしない。
 帝政派も。南部戦線も。ラド・バウも。
 革命派も。北辰連合も。アーカーシュも。
 それぞれが抗う意志と共にあるのだ。

「――俺だ。聞こえるか?」

 ……独立島アーカーシュの一角。人目を忍ぶ様にしている先で無線機らしきモノを操作しているのは――ディートハルト・シズリーなる人物だ。鉄帝国には練達程高度なモノではないが、こういった代物も存在している。アーカーシュでの戦いの折には援軍を遮断する為にパトリック大佐……いや将軍破壊工作を行った事もあったか。
 ノイズだらけの無線機は果たしてどこへ通じているのか、と思っていれば。
『――んぁ? これどーやって使うんだ……あー叩きゃなんとかなるか?
 こういうのは、こう。斜め45度の角度から――!』
「古ぼけた反応を見せるな。ギュルヴィに伝えとけ、派閥に動きあり、とな」
『おいおい何かあったのか?』
 激しい雑音の果てに聞こえてきたのは、別の男の声だ。
 名をアスィスラ・アリーアルという者。
 南部戦線との戦いでも姿を現した新皇帝側に属する者だ――
「フローズヴィニトルによる寒波は想像以上に焦ったらしい。
 ――いや。元より今のこの国はあまりに不安定にして乱世に近い。
 であれば如何なる状況にも対応しようという動きが生まれるのは当然だったか」
『結論言いやがれ。つまり?』
「転用政策だ。例えばここは――高度な技術力を軍事力へ転換せんとする動きがある」
 他の派閥も似たような事が出来るようになるだろう、とディートハルトは言うものだ。
 フローズヴィニトルによる大寒波は各派閥の食料備蓄……生産を司る力に大打撃を与えた。瓦解する程の被害があった訳ではないものの、もしももう一度同程度の寒波が訪れれば……と考えれば悠長に構えてはいられない。
 故に勢力の持つ力を、他を補う事が出来る政策を準備したのだ。
 例えば。軍兵を動かし、食料を探させる。
 食料を配布し、保護した民からの信頼を得る。
 勢力を信頼する民の協力を得て、技術を向上させんと研究を進める。
 所有する技術力を軍事兵器に転換し、更なる軍備を整える――
「頭が良さそうな連中はコレを『E.S.i.S』とも呼んでたな」
『あん?』
「Emergency Supplies transItion System……要は緊急用に組んだ政策システムと言った所か」
『んだ、そのカッコよさげな横文字ァ! 鉄帝人の誇り忘れたかァ!!』
「知るか……ともあれ、分かるだろう」
 各地の勢力は、ますますに新皇帝派に対応する為の動きを見せてくるだろう、とディートハルトは告げるのだ。彼は『戦争屋』と呼ばれる人物であり――『雇われた側』の為に動いている。故にこそ地上の者へと情報を齎している訳だ。
 が。今更この動きを新皇帝派が止められよう筈も無い。
 そもそもこれは大寒波にしろ新皇帝派の圧にしろ。
 『お前達になど負けぬ』とする意志から生まれたモノなのだから。
 緊急用の勢威転用・対冬政策。

 ――名を『アイアン・ドクトリン』

 冬を乗り切らんとした意志により生まれた、新たな方針である。

 ※派閥勢力パラメータを使用できる『アイアン・ドクトリン』が制定されました!

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