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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>OPERATION TRIGLAV

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――鉄道網奪還。
 トリグラフ作戦と命名されたソレは、佳境を迎えんとしていた。ザーバ派は大規模に軍事行動を開始し、南部の一大鉄道拠点であるゲヴィド・ウェスタンへと進軍を開始したのである――そして、その地には。
「まさか将軍にお越し頂けるとは」
「あぁ。南部で幻想に睨みを利かせるのもアリだったが――
 新皇帝の勅令以降、初めての大規模軍事行動だ。
 一応、南部の長だしな。恰好ぐらいはつけておかねば」
 なんと。ザーバ・ザンザの姿もあるものであった。
 驚嘆の声を挙げたのは解・憂炎(p3p010784)である。ザーバ将軍には後方にいてもらい、他の戦力でオールスター……とは考えていたのだがザーバ本人にも来てもらえるとは。流石にザーバ自身、己がどう出るかは些か悩んだようだ、が。大規模な軍事行動を可能とする程に補給線(生産力)が回復した事もあり決断した様である。
 それに帝都まで行くならともかく、ゲヴィド・ウェスタンまでならばバーデンドルフ・ラインに大きな影響はないと見込んだか。
「ただし。俺は不測の事態に備えて指揮に専念する。
 万が一『何か』が在る時は前に出るかもしれないが――」
「それは避けろ、と言う事ですね?」
「そういう事だ。指揮官が前に出れば全体が見えなくなるしな」
 苦笑する様に紡ぐザーバ。『何か』とはなにか……さて。
 それは思わぬ伏兵が潜んでいる可能性を考慮しての事か。
 それは予想外に幻想方面から攻撃があった際、迅速に転進する為か。
 それとも――ヴェルス帝を倒したバルナバスが万が一にも現れた時、か?
 ……いずれにせよ指揮官として懸念するべきことは多い、と言う訳だ。
「ともあれ前線はゲルツと共に進んでもらおうか――ゲルツ」
「ハッ。ではイレギュラーズ、我々の任務を再確認しておこう――情報部の報告によると、新皇帝派が市街地で防衛線を築いているらしい……しかし急ごしらえ感が否めない防衛線だ。我々はこれを迅速に撃滅、同時に軍事施設の残存部隊と合流し列車砲を奪還する事が目標だ。列車砲を奪還した後は――戦場全域に作戦遂行の号令を鳴らす為に、一発撃つことは許可された」
「確認したいのだけど……空砲を、と言う事でいいのかな?」
「弾薬が装填されてれば一発、天へと撃ってもいいかもな。
 ――どちらにせよあの轟音が鳴り響けば、新皇帝派の士気は一気に瓦解するだろう」
 続いて、ザーバが視線を滑らせた先にはゲルツ・ゲブラー(p3n000131)が控えていた。そのゲルツが任務の再確認の為に言を紡げば……アリア・テリア(p3p007129)が尋ねたは、列車砲の事。
 そう。列車砲――ゲヴィド・ウェスタンに存在する軍の巨大兵器。
 先日調査を実行した際にその無事も確認された。
 これを奪取する事がザーバ派にとっての今回の最大の戦略目標である……かの列車砲が稼働したことを街中に示せば、それは勝利の号砲ともなろう。新皇帝派の連中の士気を挫くには十分であろうと見込まれている。
「ぶはは! こいつぁ大役を任されたもんだな!
 こいつはぁ手を抜けねぇってもんだぜアウレオナの嬢ちゃんよ!」
「うんうんそうだね! まぁご飯の分は働くよ――!」
 であればと。豪快な笑みを張り上げるはゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。彼が言の葉を紡いだ先には――先日、ゲヴィド・ウェスタンを調査した折に勧誘したアウレオナ・アリーアル(p3n000298)の姿もあろうか。
 食客の様な立場で南部に味方している彼女も意気揚々とこの場に馳せ参じていて。
「市街地にはこの前作った拠点もあるしね!」
「先日仕込んだ拠点の位置はバレてない筈だから……
 アレを利用すれば伏兵の様な事が出来るかしら」
 続けてヒィロ=エヒト(p3p002503)や美咲・マクスウェル(p3p005192)の姿も作戦本部にあった。彼女らは先の調査にも参加したメンバーであり……こっそりと作り上げた隠し拠点も、ある。
 あの拠点を利用すれば、例えば市街地に展開している新皇帝派に対して後ろを取れたり、伏兵の様に強襲出来たりするかもしれないと――計画を考えていれ、ば。
「よし。ではそろそろ行動を開始するとするか……
 可能な限りの戦力は持ってきた。後は成せるか成せないか――だ」
 ザーバは腰をあげるものである。
 作戦本部のテントより出でれば――其処には多くの軍人達も集っていようか。
 南部戦線の面々だ。幻想王国などと幾度も戦を繰り広げてきた、精鋭たちよ。

「――総員聞け。我々は南部を護る防波堤だ。
 時に南に在りし雄大な土地を夢見て手を伸ばす事はあれど。
 我々は国家を護る者であり、我々が北に歩みを向ける事は今まで無かった」

 そして。ザーバは語る。
 誰しもの耳に届く様に。誰しもの耳に届ける様に。
「我々は国家の為に在らねばならない。それが定められた責務である。
 されど国家が病巣に包まれし時、我々が成すべきは何か――?
 座して国と共に沈むべきか。それで良しと瞼を閉じる事か」
 己が、言葉を――胸の奥まで吸い上げて。

「――否ッ!」

 吐き出すが如く、一喝する。
「それは諦めだ。死から眼を逸らした生物に未来はない。
 国家という体が蝕まれているならば……
 必要なのは治療である! 帝都に巣食う薄汚い連中の好きの儘にさせてよいか――
 否、と言葉が浮かぶのならば続け! これはその第一歩である!」
 間髪入れず。視線を地の果てまで巡らせ。手を一度だけ、掲げ振りて。
「問え、その胸に。
 唱え、その志を。
 鉄帝の民で在らんとするならば魂の限りに進め!
 この国は己らのモノであると、傲岸不遜たる連中がいるのならば打ち倒して進め!
 自分達は『殴る』側だと思っている連中の横っ面など拳で砕け!
 諸君らにソレが出来ぬとは俺が誰にも言わせん。
 知らぬのならば、この戦いをもってして知るが良い!
 諸君らの武勇こそが至上であると天に吼えろ!
 武とは黙して語るものに非ず! 体現せよ! 繰り返す、体現せよ!!
 我々こそが最強だと誰も彼にも――教えてやれ!」
 一息。
 胸に迸る熱があるのなら。
 進めよ諸君。お前達が一番強いのだと――俺はそう信じているから。

「――総員突撃。オペレーション・トリグラフ、遂行せよ!」

 号令は今、鳴ったのだッ!


 激突する。ゲヴィド・ウェスタン各所にて、激しい攻防の音が――鳴り響こうか。
 成程。新皇帝派もある程度、対応できる戦力を持って来たらしい……が。
 ザーバ派の軍事力は元より優れていた。
 南部戦線で幾度も敵国と戦い続けていた精鋭であるのも当然ではあったが――イレギュラーズ達の活躍によって補給線の問題が解消されていた事も大きい。大規模に投入可能であった兵站が可能とした攻略作戦は、全体としては大きく優勢を保っていたと言えるだろう。
 ――しかし。局所的に言えば、まだ戦況は分からなかった。

「おーおー大層元気のいい連中が多いじゃねぇか。なぁ?」

 それが。市街地の一角――特に鉄道駅周辺での戦いであった。
 そこに、一人の男がいた。
 逞しき筋肉を宿した者だ――名を、アスィスラ・アリーアル。
 彼は突撃して来たザーバ派軍人を拳の一閃で穿ち貫き、その頭を――潰す。
 圧倒的な膂力。最早『人』とは思えぬ程の力は、高き壁として其処に在ろうか。
「たしかザーバとかいう若造が来てるんだっけな――?
 どれ。ちと顔でも見に行ってやろうか」
「アスィスラ殿。連中は相当な規模の軍事力を投入してきている様です……
 如何に貴方でも前に出過ぎれば危険では……」
「がっはっは! なぁに言ってやがる! 戦場で安全な所なんざ元よりある訳ねぇだろ!」
 アスィスラの顔に張り付くは笑み――ただし、まるで獣の様な、とでも称そうか。
 危険極まりない雰囲気を醸し出す彼を諫めるは、新皇帝派組織アラクランに属する……ホワイダニーという男だ。一度イレギュラーズとも交戦した事のある彼は、敵を侮らぬ様にと忠告する、も。アスィスラはむしろ『望む所』とばかりに闘志漲らせる。
 あぁどうせこれほどの勢いであれば新皇帝派がこの地を維持し続けるのは難しい。
 が。一泡吹かせてやるぐらいは出来るだろう――と。
「ほう。ではここは脳筋であるお前に任せてやるとしよう」
「ん? あぁシグフェズルか。お前はどこ行くんだよ」
「決まっているだろう。列車砲を破壊しに行くのだ――
 奪取が無理でも、破壊ぐらいはしておかねばな」
 同時。そんなアスィスラへと語るのはシグフェズル・フロールリジだ。
 ――彼もまた明らかに『人』とは思えぬ『圧』をその身に宿している。
 魔種、か。新皇帝派に属する彼は、麾下の者らを率いて軍事施設側に向かわんとする。
 ザーバ派の導入してきている戦力からして、列車砲を奪取し、例えばそれを帝都に向かって運び出すのは無理であろう……が。破壊ぐらいならば出来るのではないかと。
 まぁ……軍事施設側へと大々的に向かえば最悪、街に至っているザーバ派に背後を突かれる形になるかもしれなかった。だからシグフェズルはいっそ撤退も視野に入れていたのだが……アスィスラ(脳筋)が前に出るのならばソレを囮にしてやろう、という考えに至り。
「精々派手に暴れてこい。陣形が乱れれば機も生まれるだろう」
「おおよ。テメェも精々死なねぇ様に気張るこったな!」
 故に動き出す。アスィスラやホワイダニーは市街地でザーバ派を崩さんとし。
 その隙に――シグフェズルは列車砲の破壊に向かう。
 ザーバ派が列車砲を確保するのが早いか。それとも新皇帝派が破壊するのが早いか。
 それはまだ分からぬ――が。
「うわ、おとっつぁんいるじゃん!」
「ん――アウレオナ。もしかして彼が……」
「そーだよ、おとっつぁんだよ。やーまずいねーどうする? おとっつぁんって滅茶苦茶強いよ? んー……拙がおとっつぁんと戦っても絶対勝てないけど、やるだけやってみる? 時間稼ぎぐらいは何とかしてみるよ!」
「ふぅむ……確認しときたいんだが、身内と戦う事はいいんかい?」
「へっ? 戦うんなら身内と戦う事だってあるでしょ。別に何の問題もないよ!」
 そんな市街地へと足を踏み入れたアウレオナや憂炎、ゴリョウらが遠目にアスィスラの姿を確認するものだ――アウレオナが何度か呟いていた『おとっつぁん』なる者が、彼とは。ザーバ派に取り囲まれながらも、アスィスラは凌駕する勢いで突き進んできている。
 アレを止めねばやがてこの辺りが突破されてしまいそうだ――
「……身内と、か。あぁ確かにそう言う事もあるかも、な」
 同時。言葉を零したのはエッダ・フロールリジ(p3p006270)だ。
 あの影は――まさか――?
 ……先程。微かにだが見えた影にエッダの心がざわつく。
 あの姿。たった一瞬だけだったが、己が見間違うだろうか。あの背姿を。
 悪性にして善人たる――前フロールリジ伯よ。
「まずいね。軍事施設にも戦力を割くみたい……こっちも軍事施設に急ぐ!?」
「――かといってあの男を止めておかないと、本陣に突っ込む勢いだわ」
 ともあれ、と。ヒィロに美咲が高速に思考を巡らせるものだ。
 列車砲の奪取を優先するか、市街地で暴れ回るあの男をどうにかするか。
 幸いにして此方にはザーバ派の軍人達が大勢いる――
 数の優位はあるのだ。これをどうにかして活かし、作戦を遂行せねば。
「……軍事施設では死守命令を護っている者達もいる筈だ。
 行くぞ! 勝機は必ずある――将軍の命通り、全て粉砕して勝利を掴め!」
 故にこそ、エッダは声を張り上げる。
 共に至る軍人達と共に。
 新皇帝に対する反撃の狼煙を――この地より挙げる為に!

GMコメント

●依頼達成条件
1:列車砲を奪取する事。(奪取の基準は『列車砲が砲撃の音を鳴らす』事です)
2:列車砲奪取まで、市街地方面を敵に突破されない事。
3:ザーバが指揮権を保持し続ける事(ザーバが前線に出ない事)

 全て達成してください。

●フィールド・シチュエーション
 ゲヴィド・ウェスタン『市街地』並びに『軍事施設』両面です。
 『市街地』方面では暴れながらザーバ派の本陣に突撃せんとする一団が存在しています。同時に少数ですが『軍事施設』方面へと向かい、列車砲を破壊せんと試みている部隊も存在している様です。

 『市街地』方面が突破されると、ザーバ派の陣形に亀裂が生じます。
 『軍事施設』方面が突破されると、列車砲に影響がある可能性があります。

 市街地は新皇帝派とぶつかり合う形になるでしょう。
 軍事施設は、侵入せんとしている新皇帝派の後ろを突く形になりそうです。戦力は後述しますが、現地で列車砲を死守せんとしていた軍人達とも合流する事も出来るでしょう。
 しかし新皇帝派も向かっている為、可能な限り急いだ方がいいかもしれません。

 なお、戦場となる市街地方面近くには前回の調査シナリオの段階で美咲・マクスウェル (p3p005192)さんやヒィロ=エヒト(p3p002503)さんの作り上げた隠し拠点があります。ここに潜んでおき、アスィスラなどが近く来れば強襲――もしくは、ザーバ派軍人と共に後ろに回り込んで挟み撃ち――と言った事を行っても構いません。この隠し拠点は新皇帝派にバレていない様なので、潜む事自体には成功するでしょう。

●敵戦力
『アスィスラ・アリーアル』
 逞しい筋肉を宿した男性です。
 能力は不明。しかしアウレオナ曰く「めっっっちゃ強い」との事。
 元ラド・バウ闘士との噂もあるとか……?
 前線での殴り合いに特化したタイプだと思われ『市街地』方面で暴れまくっています。その拳は壁すら打ち砕くが如くです――
 ザーバ派軍人も抵抗していますが、あまりの強さに押されています。イレギュラーズの皆さんの動きが重要となるでしょう。

『シグフェズル・フロールリジ』
 先代フロールリジ――にして、魔種です。
 魔種である為に非常に強力な能力を宿していると想定されますが……こちらも具体的な戦闘力は不明です。確実なのは、R2以内のシグフェズル麾下隊員の戦闘力を向上させる指揮能力を宿している事です。明らかに動きが違います。
 『軍事施設』方面に麾下部隊と共に向かっています。

『ホワイダニー』
 新皇帝派組織『アラクラン』に所属する人物で、雷撃を操る魔術師タイプです。
 天衝種を指揮しながら、アスィスラを援護する様に戦います。
 それなりの実力を宿していますが、アスィスラやシグフェズル程の力量は感じえません。

『天衝種』×30体
 新皇帝が誕生して以降に鉄帝で出没している魔物です。
 狼や蛇、鳥の様な動物の形を司った者達がアスィスラと共に皆さんに襲い掛かってきます。
 アスィスラやホワイダニーなど新皇帝派の者は襲いません。完全に配下の様に動きます。

『シグフェズル麾下隊員』×20名
 新皇帝派の軍人です。シグフェズルに忠誠を誓っているのか、忠実に動きます。
 銃を所持する遠距離型が8名。
 剣を所持する近距離型が12名の様です。
 能力はそれなり程度ですが、シグフェズルの指揮下にある者達は明らかに動きが良くなります。
 いずれもシグフェズルと共に軍事施設方面へ向かいます。

●味方戦力
『ザーバ・ザンザ(p3n000073)』
 鉄帝の守護神。ザーバ派の長です。
 その実力は個人としても群を抜いています、が。
 彼は指揮官としてやってきました。それはなんらか『不足』の事態に備える為でもあります。軍を指揮し、的確に戦力を都度動かすには前線に出ている暇はありません――つまり――ザーバが前線に出たら依頼は実質的に失敗ですので、お気を付けください。

『ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)』
 ザーバ派に属し、遠距離射撃を得意とする飛行種です。
 ラド・バウB級闘士でもありそれなりに実力も高いです。近接戦闘も出来るようですが、どちかといえば遠距離射撃を得意とし、皆さんの援護を行わんとするでしょう。特に指定が無ければ『市街地』方面で戦闘しますが『軍事施設』方面へ赴く事も可能です。

『ザーバ派軍人』×50名
 ザーバの激励を受け、戦闘力と士気が向上しているザーバ派軍人達です。
 前衛型、後衛型、治癒魔術を使える者――と、色々います。
 戦力を振り分ける事が可能です。
 特に指定が無ければ『市街地』方面に30名。
 『軍事施設』方面に20名向かいます。
 なお、ゲヴィド・ウェスタンそのものに大部隊が動員されていますので時間が経つごとに、ある程度援軍が訪れます。

『アウレオナ・アリーアル(p3n000298)』
 先日ザーバ派に勧誘された少女です――
 剣才に関しては優れた能力があり、典型的な前衛タイプです。皆さんと共に戦います。戦術のアスィスラとはなんぞや関係がありそうですが、ザーバ派を裏切ったりする様な雰囲気は一切ありません。うおー! ぶった斬るぞー!
 特に指定が無ければ『市街地』方面で戦闘しますが『軍事施設』方面へ赴く事も可能です。

『ゲヴィド・ウェスタン防衛部隊(現地軍人)』×15名~
 ゲヴィド・ウェスタンで列車砲を死守し続けていた者達です。
 孤軍奮闘していた為に些か疲弊気味ですが、先日の調査の際に一度合流した事もあってか、ここが正念場だと士気を盛り上げ敵を押しとどめています。
 合流出来れば列車砲を動かすのにも協力してくれる事でしょう。

●列車砲について
 ゲヴィド・ウェスタンには列車砲が存在しています。
 軍事施設側で、現地の軍人達により今まで死守されていました――その結果、新皇帝派に害される事なく今まで保持されています。
 この兵器の入手がザーバ派としての最大の戦略目標です。
 ゲヴィド・ウェスタンに空砲でいいので、轟音を轟かせてやりましょう――

●サポート参加につきまして
 本シナリオにはサポート参加が可能です。
 極力の描写を努めますが、サポート参加者が非常に多人数になった場合、描写対象から除外される場合があります。
 また、描写は限定的なものになりますのでご了承いただけますと幸いです。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <大乱のヴィルベルヴィント>OPERATION TRIGLAVLv:40以上完了
  • GM名茶零四
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年12月10日 22時55分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC11人)参加者一覧(10人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
シェンリー・アリーアル(p3p010784)
戦勝の指し手

リプレイ


 鬨の声が鳴り響く。
 ザーバ派の一大作戦。仕損じられぬ――そんな場、にて。
「さぁ――思う存分、やらせてもらうとするかねぇ!!」
 敵陣を真っすぐに見据えるのは『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。共に動く軍人達の動きを統率する様にしつつ、戦線の状況を冷静に見定めよう――ここを突破させる訳にはいかぬのだから。
 敵は天衝種を中心とした勢力。
 幸いにしてザーバ派に蓄えられた多くの軍事力から、ここには増援が次第に訪れる見込みもある。こちらに味方は多く、決して不利な状況ではない……筈だ、が。
「やれやれ。最前線で暴れてるあの方が、アウレオナさんの『おとっつぁん』とはね」
「おとっつぁんは強いよー! 死なない様に気を付けといてね!」
 善処しよう、と紡いだのは『通行止め』解・憂炎(p3p010784)である。
 最前線で暴れているのは何もイレギュラーズだけ、という訳ではない。敵もそうだ。
 ――拳を振るえば人が飛ぶ。文字通りに、だ。
 それは、共に戦わんとするアウレオナ曰くの『おとっつぁん』
 正確な名をアスィスラ・アリーアルというらしいが――
「どうもこんにちは。調子が良いようですね。随分と体を動かしになられているようだ」
「あぁん? なんだ小僧。お前も死にに――ってアウレオナじゃねーか!」
「おとっつぁん、お久! 故あって私はこっちにいるから死んでもらうよ!」
「えっ? ガチで? ガチで言ってる? ――俺ぁ、容赦出来ねぇぞ」
 奴から感じ得る『圧』は尋常ならざるものだと憂炎も感じ得る。
 アウレオナとまるで日常会話の様な口調で話していたかと思えば、刹那の後に至るは闘志と殺意。拳の一閃は空を薙ぎ、瞬きでもしようものならば一寸の内に誰ぞの命を奪わんほどの勢い――
 が。既に見ていた勢いがあらば警戒はしているものだ。
 憂炎は盾で凌がんと斜めに拳を受けて勢いを逸らし。
「サクラさん、アウレオナさん。行きましょう!」
「うんうん! 行くぞ、おとっつぁん――ッ!」
「手加減出来る様な人じゃないね……!
 私は天義の聖騎士、サクラ・ロウライトだよ。よろしくね!」
 更に続くのは『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)に『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)だ。アリアの瞳には闘争の意思が宿っている――将軍より託された使命を果たすのだと、アウレオナ達と共に往くものである。
 憂炎が引き付けた拳の範囲外からアウレオナはアスィスラへと到来し、斬撃一つ。
 アリアにサクラもまた最前線へと至れば――アスィスラ付近に布陣する天衝種を狙おうか。アリアの紡ぐ神秘の魔術が、原始の泥を顕現せしめて薙ぎ払わんとし。狼型の個体が軍人の首筋を狙わんとすれば――サクラが跳躍、斬撃振るいて逆に首を落として進ぜよう。
 イレギュラーズが道を切り拓かんとし、さすればザーバの激励を受けた軍人達は更に士気が挙がるものだ。彼らもまた連携し押し寄せる天衝種らを逆に押し返さんと、ゴリョウを中心に対抗すれ――ば。
「おぉ!? やりやがるじゃねぇか若けぇの共……!
 だがこの程度じゃねぇよなぁ。オラ! ホワイダニー、さっさと働けェ!」
「いやさっきから術を展開しているのですが……はい」
 直後。その戦線に降り注ぐのは雷撃が魔術だ。
 天衝種らを割け、確実に敵――つまりはザーバ派の者らだけを穿っている。
 それは新皇帝派組織『アラクラン』に属するホワイダニーの攻勢。
 後方の安全圏より放たれる一撃は、皆の体力を確実に削らんとしようか。
「あー! アイツこの前の! こんな所にまで出てくるなんて……!!」
「潰し切れていれば、状況違ったかな。まぁ今回でキッチリ――片を付けてあげようか」
「そうだね。今度こそ、だよ!」
 さすればそんな状況を確認したのは『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)に『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)である。彼女らは以前の調査の折に築き上げた拠点より敵の陣形を窺っているものだ。
 住宅街の一室。仕込んでいたが故に今この時に活用できている場にて、狙うは挟撃だ。
 敵をやり過ごした後、背面より一気に強襲する。
 タイミングが重要だ。早過ぎれば強襲の効果が薄れ、遅すぎれば味方が押される。
 共に潜む軍人達の、逸る気を抑えつつ。
 一拍。二拍――そして。
「今よッ!」
 短く、しかしこの上なく分かりやすき一言を――美咲は告げるものだ。
 突撃。空から眺める様な視点にて観察していた彼女は『正にこの時』という瞬間を正確に捉えたのだ。特に天衝種共の意識が全て正面に向いた時を見定めて――往く。邪魔立てする者らは軍人らに任せ、自ら達は後方を担っていたホワイダニーへと一直線。
「何――!? くっ、背後からだと! どこに潜んでいた!?」
「おぅおぅ団体さんじゃねぇか! がはは面白くなってきやがったな!!」
 然らばホワイダニーは焦り、一方でアスィスラは軍人を絶命させ得る一撃を繰り出しながら――笑うものだ。危機こそ正に己が生きる場であるというように。むしろ彼は歓迎する有り様。
 激突。激しい衝突が市街地の方で繰り広げられる――その最中。
 市街地方面の戦闘とは別に、列車砲の確保を急がんとするメンバーもいた。
 例えば『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)だ。市街地の戦闘も重要であるが……しかし彼女らは目的を忘れてなどいない。最重要であるのはこの街にある列車砲の確保なのだ。新皇帝派に渡す訳にも破壊される訳にもいかない――
「兵は神速を貴ぶ、と言います。一手の無駄も出来ません……行きましょう」
「ザーバ将軍御大まで出張ってきてるからね。此処で負ける訳にはいかないよ」
 同様にそちらへと向かうのは『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)もか。この作戦が失敗したとてザーバ派が瓦解する様な事態にはならないだろう――が。今後の作戦の士気に関わるのは明白。
 下手を打つわけにはいかないね、と。その歩みを早めるものだ。
 瑠璃は先んじてファミリアーの使い魔を飛ばし、状況の確認をせんとする。敵の位置はどこか。進軍速度はどの程度か――さすれば怪しき一団を発見するものだ。軍事施設に仕掛けられている罠にある程度阻まれているのか、まだ列車砲までは距離がありそうである。
 一方でイレギュラーズ側は前回の調査により罠の位置を把握できている面もある。特に、その調査に参加していた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)も此方にいれば、イレギュラーズ達は敵よりも明らかに早い速度で進撃出来ようか――
「…………何故だ」
 しかし。その彼女の瞳には、何処か虚ろ気な色が宿っていた。
 注意散漫という程ではない。敵が近くに至れば彼女はすぐ様に現へと気を取り戻すだろう。まだ接敵していない、この一時だけに巡らせている想いは――敵陣の中に見えた『ある人物』の影であった。
 あれは、何故。どうして――『生きて』いる?
 と、その時。
「見えたぞ。敵の塊だ――なんとか間に合ったな」
 言葉を告げたのは『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)である。
 ラドバウからの出張であるが手を抜く理由はない。なにせ新皇帝派など、どの勢力からみてもまごうこと無き敵なのだから――見えた敵陣。背面より強襲できそうか……ならばと彼女は奥歯を噛みしめながら。
「ここを食い破るぞ! 味方と合流し、連中を殲滅する!!」
「今回は遊びは無し――本気で征くよ!」
 到達するものだ。練り上げられた闘氣と共に昴は敵陣を粉砕せんと襲来し。
 更にラムダの一撃が降り注ぐ――それは灼滅の極光にして、対軍殲滅術式。
 数多の光球が爆縮圧壊。直後に炸裂し、誰しもを光の渦へと沈めたもうか――さすれば。
「ほう……イレギュラーズ共か。
 やれやれ。マトモに迎撃態勢を整えられていないからこういう事になる」
「――お父様」
 この部隊を率いていた長――シグフェズルは吐息を一つ零すものだ。
 ゲヴィド・ウェスタンの状況をもう少し早く掴んでいたり、或いはザーバ派の繰り出せる軍事力が低ければまだ新皇帝派にも余裕があったのだろうが……しかし政治に興味のない新皇帝は、玉座に至ったとは言え鉄帝全土を掌握している訳ではないのだ。その歪な構造が此処ではある程度新皇帝派の不利に動いている訳だ――
 故にこそシグフェズルは嘆息するしかない。
 やはり王に付く者には、相応しい『格』がなければならないとも思いながら――
 同時。彼の耳には一つの声が届こうか。
「……まさか。ご存命であったとは」
「あぁ――なんだ。懐かしい顔を見たな。我が娘(エーデルガルト)よ」
「お懐かしゅうございます。お父様。あの時殺したはずですのに」
「ク、フ。ハハハ! 本気で私を殺せたつもりであったのか? それとも死んでいてくれ、と願ったが故に淡い幻覚でも見たか――? まぁいずれにせよ、私が此処にいるのが全ての真実だと知れ。我が娘よ」
 それは彼の娘。エッダ・フロールリジ――
 ……いや。エーデルガルト・フロールリジの声色、であろうか。
 シグフェズル・フロールリジは、かつて討たれた筈だったのだ。そう。眼前のエーデルガルドによって。しかし彼は生きていた。如何様にして? それは彼の気質が魔道に堕ちている様を見れば、これ以上なく明白であろう。
「あぁ、お父様――」
 故に。彼女は想うものだ。

 なんたる醜悪だ、と。

「……エッダ。気持ちは察するが、逸るなよ」
「……あぁ。分かっている、ゲルツ」
 然らば。エッダの内にて沸き上がる感情があるものだが。
 それを抑える様に告げるのは――共に列車砲を目指していたゲルツであった。
 ……冷静にならなくてはいけない。激情の儘に事を成せるものか。
 抑え込む。だがしかし、抑え込んだだけで、心情は変わってなどいない。
 その命。今度こそ確実に奪って差し上げましょう――
 失望。落胆。数多の感情を胸中に宿しながら彼女は己が宿命へと――撃を紡いだ。


「閣下。各戦線で衝突が始まったとの報告が。
 敵は陣を乱し、内部にいる彼らの切り札が私達の作戦を頓挫させるつもりと思うわ」
「あり得るな。戦力ではこちらの方が上だと思えば、敵の狙いも絞れるものだ」
「ならば備えておきましょう。
 兵の進路、退路さえ確保しておけば、現地の憂炎やゴリョウが如何様にもしてくれるわ」
 同時刻。ザーバ派の本陣にてザーバへと言を紡いでいるのは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)である。数多の情報が駆け巡る中で、支援に成ればと彼女は言を紡ぎ――
「報酬は閣下、私の名前を呼んでいただいても?」
「光栄だな。戦勝に終われば、検討しておこう」
 軽口も時折、交わすものだ。
 そして最前線……市街地、列車砲方面。双方にて激しい攻防が繰り広げられる。
 特に数の上でも多数の者らが交戦しうる市街地側は、一際激しく闘志が入り乱れようか。
「死ぬなよ! 死んだら戦友にその負担が行く! 生きてこそ浮かぶ瀬もあらぁ!
 勝利の美酒ってのは味わってこそだぜ――なぁ!
 生きてたらあったけぇ飯と共に宴でもしようやぁ!!」
「おぉ! そいつは――死ねねぇなぁ!!」
 だからこそゴリョウは最前線にて味方と共に立ち続けるものだ。
 敵を突破させまいと立ち回る彼の指示の下、天衝種やアスィスラの『蓋』になる様に動こうか。敵にもそれなりの数がいる、が。こうすればその利を活かせまいと――敵の数を減らすよりも生き汚く足止めさせてもらおう、と。
 後より訪れる援軍とも意志を疎通させこの状態を保持せんとし。
「魔法騎士セララ参上――! 鉄帝の平和はボク達が守る!
 君達みたいな新皇帝派の好きになんてさせないよ……!
 くらえ! 全力全壊! ギガセララブレイク!」
「おぉぉセララよ、その意気じゃ! さぁお主は妾を振るい、悪を討つのじゃ!
 暴虐なりし者の野望を打ち砕こうぞ!!」
 更にその援軍として訪れた中には『魔法騎士』セララ(p3p000273)と『剣の精霊』ラグナロク(p3p010841)の姿もあった。喋る剣として振舞うラグナロクはセララの剣と成りて、彼女に加護を齎そうか。セララが負傷しようともラグナロクが治癒し、援護する。
 故にこそ万全なりし身によってセララは天衝種を薙ごう。
 一騎当千足り得るセララであれば天衝種など如何程の敵であろうか――更には。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。やれるだけのことはやらせてもらうぞ!
 ここが正念場であれば――突破させる訳にはいかないし、な!」
「敵の出刃を挫かせてもらおうでござる。連中に主導権を握らせぬ……これが肝要なれば」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)に『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)も市街地方面へと参戦しようか。最前線へと駆けつけたエーレンは襲い来る天衝種達を一閃し己が存在を誇示する――さすれば敵の目は彼へと向くもの。
 続け様に糸巻は自らの足を活かしてヒット&アウェイ。
 突出せんとする敵を的確に見分け、動きを阻む様に一撃放つのだ――
 倒すよりもその動きを封じる事を念頭に。敵の猛攻を阻まんとすれ、ば。
「ごきげんよう! 泥臭い現場に混ざる気になった? それが命取りになりそうね?」
「今度こそお前の首を獲る! 逃がさないよ!!」
「えぇい、なんてしつこい連中だ……そう簡単に行くと思うなよ!」
 敵陣後方側では引き続きヒィロや美咲の勢いが襲い掛かっているものである。
 ホワイダニーが一部の天衝種と共に応戦するも、後方側での勢いは強襲した事もあってかイレギュラーズ側に分がありそうか――軍人達だけでなく『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)も動きをサポートする者として混ざっていれ、ば。
「ふむ……流石に天衝種は堅い、な。流石人外たる存在が。
 だが、如何なる存在も死ぬまで撃てば死ぬだろう。この世に不死などあるものか」
 彼の制圧する様な射撃が戦場に援護として降り注ぐものだ。そのまま彼は位置を気取られる前に建物の屋上へと利用し、そこから攻勢を続行。正確に敵のみを狙いて前線へと支援の手を入れ続けよう。
「チッ! これほどの数をザーバ派が投入してくるとは……!」
「あはは! また逃げる? もしかしてまた逃げるの? 弱虫なんだー!」
 建物にも魔術を振るうホワイダニー。どのように立ち回るかを考えているのだろうか――故にヒィロは速度を増しながら、ホワイダニーを挑発する様に跳躍し移動し続けるものである。然らば彼女には天衝種からも攻撃が放たれるものだが……しかし卓越した見切りがそうそう、致命たる一撃を通したりはしない。
 そしてそんな敵の意識の外から殴りつける様に美咲の一撃が積田在れる。
 破滅の魔眼と共に。連鎖する動きから放たれる切断の概念が敵の懐へと襲い掛かろうか。
 徐々に。徐々に追い詰めんとする動き――だが。
「みんな! ここから先は絶対に通しちゃ駄目だよ!
 ザーバさんは私達を信じてここを任せてくれたんだ……!
 押し通るなら、斬り捨てるッ!」
 やはり懸念すべきは前方側、であったろうか。
 アスィスラが止め辛いのである。彼の拳はマトモに当たれば岩も鉄も砕くが如く。
 下手をすれば一撃で誰ぞの命すら奪わんばかり――
 其れでも引く訳にはいかないのだとサクラは全霊をもってして立ち回る。
 拳と剣の衝突。凄まじき衝撃がサクラの身体を染み渡りて――と、その時。
「ん……テメェ……テメェはソフィーリヤ!? んだよ、今度のその恰好はなんだ!? 騎士だなんてもっと柄じゃねぇだろ!」
「違うよ! 私はサクラ! ソフィーリヤは私のお母様だよ! 失礼な!」
「なにぃ!? アイツ、娘がいやがったのか!?
 ……いやしかし確かによく見りゃ肌の艶が違うな……誤魔化してる風じゃねぇ!」
「――今なんて言ったか、もう一度言ってみなさいよ」
 ひぇ。サクラが感じた殺意は後ろから。
 直後に到来したのは援軍だ。紅き髪が戦線を貫く様に一直線。
 ――アスィスラへと超速の儘に踵を落とす。
 それは。サクラの母たるソフィーリヤ・ロウライトだ!
「この前振りね、アスィスラ。死ね。後、サクラには後でお話があるから逃げないように」
「ひえー! どうしてー! 私はなにも言ってないのに――!」
「おいおい母も娘も掛かってくるとかこの一族はどうなってやがんだ?
 まぁいい。掛かってくんなら纏めて相手してやらぁ!」
 ソフィーリヤは生まれが鉄帝の者である。色々あって天義に移り住んだ経緯があり――まぁ仔細は割愛するが、とにかく故国の危機を知って駆けつけてきた訳である。それが故かザーバ派に参戦する形でこの場へと。
 が。それでも尚にアスィスラの歩みは淀まなかった。
 ソフィーリヤが拳撃一つ。続け様にサクラが高速へと至りて斬撃を幾重にも。
 同じ軌道は描かず、あらゆる方向から斬撃を送りて防の隙間を拭わんとする――!
 しかしアスィスラは見えていない筈の一撃すら、防がんとするものだ。
 それは経験による勘の一種。
 分かるのだ。数多の戦いを経験した者であれば、どこへ攻撃が至りそうか――
「はは、強いなぁ……困ったなぁ……!」
「あら。サクラ、どう困ったのかしら?」
「うん、だってね。こんなに苦しいのに――本当に楽しい!」
 然らば。サクラの口端には……笑みの色が灯っていた。
 あのお母さんと互角以上に戦える人と戦えるチャンスなんて早々ない。
 そして。その武の一端に触れられるなんて、あぁ――!
「一武人として。サクラ・ロウライト、推して参る!」
「おぅよ来いや! 先達が揉んでやらぁな――! 気抜いたら死ねッ!」
 彼女は歓喜の感情に包まれるものだ。
「なんて強さ……こんな人が、どうして新皇帝派に……?」
 然らばアリアは魔術を紡ぎつつアスィスラへと思考を巡らせるものだ。
 間近で見ればよりその強さを感じ取る。彼は魔種か? そうでないのか?
 いずれにせよ――不思議だ。何をもってして彼はその立場にあるのか。
「おいおい戦いの場で考え事してたら、やべぇぜお嬢ちゃん?」
「安心して。油断なんて――してないから!」
 瞬間。アスィスラの拳がアリアへと向こうか。
 それは遠当ての一種。拳の圧にて離れている者にも衝撃を加え得る技が一端。
 しかしアリアは油断していた訳ではない。皆の動きが一通り行われてから、彼の意識に少しでも『穴』が開く暇を窺っていただけである――遠当ての一撃が頬を掠めながらも躱し、そうして逆に魔の力を叩き込んでやろうか。
「くっ――これ一撃で沈むようだったら楽なんだけどね……!」
「がはは! 悪くはねぇ威力だが。昔っから、痛みには慣れっこでな――まだまだだぜ!」
「させっかよ! 俺らが相手だ!」
「ええ――その武、此処で使い果たしてもらいましょう」
 然らば一撃叩き込んだアリアへと更にカウンターをアスィスラは放たんとし、たが。
 介入したのがゴリョウに憂炎である。
 好き勝手はさせまいと防の姿勢にてアスィスラを止めんとする――ゴリョウは同時に治癒の力を振るいて致命たる一撃を受けぬようにし。憂炎もまた盾を受け、攻撃を滑らせるようにしながら耐え忍ぶものだ。
 どれだけ殴られようが立ち続ける――そう。
「ザーバ将軍とやるくらいなら、僕らとやった方がとても面白いですよ」
「ほう。言うじゃねぇか若造共が……国の英雄よりも価値があるってか?」
「ぶはははッ! 少なくとも俺らはまだ倒れちゃいねぇぜ――
 姿が見えない人よりも、眼前に集中してもらいたいもんだがなぁ!」
「ハッ! そりゃ確かにそうだ。ちげぇねぇ! だったら楽しませてみろよ――!」
 それがきっと勝利に繋がるのだと憂炎は信じている。
 ゴリョウもまたアスィスラの動きを封じる様に立ち塞がり続けるものだ。奴を自由にするのが最も危険であると分かっているから……あぁ我慢比べでも何でもしてみせようではないか。身に纏う装甲の力をフル活用し、アスィスラの拳を見切らんとする――!
「ゴリョウも憂炎も無茶しないようにね! おとっつぁんは殺る時は殺る人だよ!」
「……お、おとっつぁん!? あのど派手に暴れてるお方がアウレオナさんの親御さんなんであります……!? あ、アグレッシブなお方……しかし望む所であります。このムサシ・セルブライト――お力の一端になりましょう!」
「天衝種達も見逃さない様にね! 連中を先に潰した方がいいかも――
 私だって鉄帝の看守だもの! 出来る限りのことをしていくわよ……!」
 アスィスラの周辺は正に暴風。
 気を抜けば薙ぎ払われんとする領域で戦う者らに注意をアウレオナは促せば――同時に援軍として訪れた『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)や『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)の耳にも届くものだ。
 ムサシもまたアスィスラへと向かう者らの援護となる様に、身を挺して庇わんとしようか。一方でセチアは取り巻きである天衝種達へ、軍人達と共に攻勢を強めていく。あぁ全く、なんて状況かと思考を巡らせながら。
「無理はすんなよ。ゴリョウも言ってたが、生きてこそだぜ!
 傷が深い奴は一回下がれ! こっちで治癒するからよ――!」
 同時。『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)も馳せ参じるものだ。
 彼は治癒の術を巡らせる。聖域と言っていい領域を展開しながら、皆の傷を癒すのだ。
 自らに出来る事を成さんとする。全ては勝利の為に――!

 そして市街地での戦いが苛烈を極める中――列車砲方面もまた、激戦であった。

「総員、薙ぎ払え。罠など踏みつぶせ、列車砲さえ破壊すればこちらの勝ちだ」
 シグフェズルが手を振るう。それは麾下隊員達への攻勢の指示。イレギュラーズ達がこなければじっくりと攻め上がっても良かったのだが……しかし接触した今となっては最早急ぐ事こそが本命である、と。であれば昴はその動きを阻む様に往くものだ。
「そうはさせん――連中は私が受け持つ。お前たちには他のを任せるぞ」
「ああ。ひとまず道を開けてもらうとしようか!」
 同時に声を紡ぐのはゲルツである。遠方から射撃の援護を行う彼の姿も見えれば。
「魔種が指揮も執るなんてね……
 一筋縄じゃいきそうにないけれど、こっちだって狙いは交戦じゃないんだ」
 やり様は幾らでもある――とラムダも動き出そうか。
 昴が狙うのはその軍人達である。奴らを列車砲に近付けさせる訳にはいかぬと……特にシグフェズルの指示によって動きが滑らかとなっている者達を積極的に狙おうか。敵陣に飛び込む様な形で至った彼女は、周辺全てを薙ぐ一撃と共に動きを阻む。
 味方も巻き込んでしまうが故にこそ、彼女は単独だ。
 然らば当然として彼女に攻撃が集中もするものだが……全て承知の上で飛び込んでいる。故にこそ早々簡単には倒れ伏したりはしないものだ。闘志を漲らせつつ、気を保てば――ラムダの一撃も支援として飛んでくる。
「暫し付き合ってもらえるとありがたいね?」
「ダンスでも所望か? 転ばぬ様に振舞ってみせるがいい」
「ん、あんまり舐めない方がいい……戦力を投入してるのは、こっちも同じだから」
 敵味方が入り乱れ始める状況。故にラムダは桜花を思わせる無数の炎片にて攻勢を行おうか。更に『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)も支援する様に、敵陣の背後に回り込みて撃を紡ごう。
 彼女は以前の偵察で確認した情報を再度脳内で巡らせる――
 然らば挟撃の位置も掴めるものだ。故に合流せんと走り抜け、新皇帝派へと攻勢を仕掛けるもの。しかしシグフェズルはせせら笑う様に配下へと指示を繰り出しながら――状況を見据えるものだ。
 この場でイレギュラーズを相手取るか。或いは穴があれば、列車砲を優先して突き抜けようか。
 シグフェズルが抱いている懸念点は一つ。この場における数は――僅かだがイレギュラーズ側が多い、という点である。ザーバ派軍人達の数に加えて、列車砲を護る者達も加われば……話が別だ。
「――では、お願いします。疲弊しているでしょうが、ここを乗り越えれば全てが解決します」
「了解しました。後一歩、なんとしてでも耐えてみせましょう――!」
 そして。それを可能としたのが瑠璃の接触である。
 乱戦状況下において彼女は気配を殺しながら列車砲の倉庫へと接触したのだ。少々迂回する事にはなったが、しかし壁を透過しうる術もあれば彼女はわざわざ扉を介する必要もなく、壁際にさえ到達すれば彼方側との接触も叶う。
「それと――列車砲を動かせますか?」
「少し時間が必要ですが……可能です!」
「分かりました。早急に準備を整えてください――よろしくお願いします」
「指揮は、僕も取りましょう」
「――貴方は?」
「ヴィクトーリヤ・ヴィクトロヴナ・ヴィソツカヤ。
 ……あぁ。味方だよ。そっちでの名は……エッダだったかな。彼女の知り合いさ」
 同時に目的である列車砲の稼働も――始まった。
 ……後はそれが完了するまで耐えるのみ、だ。
 発射シークエンスを現地の者達と共に準備する――然らばエッダの要請で救援として訪れていたヴィクトーリヤ・ヴィクトロヴナ・ヴィソツカヤも合流するものだ。彼女の名代として接触して、その動きを援護せしめよう。
(指揮なら貴女は得意でしょう――フロイライン・ディリゲント)
 であれば、最前線で動くエッダは、きっといるだろうと思いながら想いを向けるものだ。
 ――この国の大事の時に、魔種などにいいようにあしらわれてなるものか。
 その指揮棒捌きが役に立つ時が来たのです、と。
「おっと……? なにやれ倉庫内の気配が妙だな。まさか……」
「戦場で余所見ですか? 随分と、堕落なされましたね」
 であればシグフェズルも、列車砲でなにがしかの動きがあった事に勘付くものだ。
 だが。そんな彼を動かせぬべくエッダは往く。
 軍人でなく、騎士でもなく、“戦士”として敵と相対する証を己が魂に刻みつつ。
 放つ一閃は――雷神の槌が如く。
「ほぉ。研鑽を積んだようだな。以前よりも遥かに遥かに増している――
 あぁ。相変わらず蚊蜻蛉のような膂力よ。
 何を成せると思ってこの程度で挑むか――? 蛮勇極まるな、クハハハ!」
 が。シグフェズルは受け止めてみせよう。ゆるぎない程の力と共に。
 ……『蛮勇』と述べたのは、ある意味では賛辞やもしれぬが。
 なぜならば『フロールリジ』とは『そう』であるのだから――
「お父様。何故今更に――そのような姿をお晒しになるのですか」
 次ぐ一撃。シグフェズルの拳はまるで、射出される超常の塊が如く。
 エッダは足を動かし、直撃を避け。しかし瞳は常にシグフェズルを捉え続けるもの。
 あぁ、お父様。
 帝国に仇を為してでも、己れの正義を貫かんとする貴方が誇りでしたのに。
 誇りに思いながら、逆徒として殺した筈ですのに。

 何ですか、そのざまは。

「そんな有様で生きていて恥ずかしくはないのですか」
「仕方あるまい。生きていたのならばそれが定めよ」
「誇りとは。定めが在らば捻じ曲げるものなのですか」
「娘よ。いつかお前も知るだろう――全てを喪った先に見える地平を」
 そして『夢』を。
 シグフェズルは笑みを見せる。貴様は私の娘(エーデルガルト)なのだからと。
 交わす拳。あぁその拳は卓越した練鉄徹甲拳――
 此ればかりは熟練に費やした時が違う。
 その上に魔種であるという属性があらば、正に拳の描く軌跡は人外魔境。
 ――それでも蛮勇(誇り)は止まらぬ。
 共に戦う軍人らと共に戦線を押し上げんとするのだ。
 同時。ラムダが治癒術を張り巡らせ、味方の支援と成そうか。
 数多の傷を一気に治癒し――ゲルツも射撃を繰り出して一体一体確実に捻じ伏せれば、昴は敵を薙ぎ払う様に。隙ある者には肘の一閃を。防御を貫き魂へと届く一撃を――此処に。
「この戦い、なんとしても勝つぞ! 勝利を――掴め!」
「くっ……ここも抵抗が激しいわね。だからこその鉄帝とも言うべきなのかしら。あぁ! こんな連中を従えるなんて――さぞ『鉄帝的』にカリスマ性溢れた方なんでしょうね、新皇帝バルナバスさんは!」
 さすれば援軍として訪れた『砂国からの使者』エルス・ティーネ(p3p007325)は歯がゆい気持ちをどこかに抱きながらも、新皇帝派を蹴散らさんと刃を振るうものだ。鉄帝の基準はやはり武こそが全てなのだなと――どこか呆れる様に納得しながら。
 往く。往く。押せ。押せ――!
 そして、遂に訪れるは『その時』だ。

「列車砲用意良し! 撃てッ――!!」

 倉庫の入り口が開かれる。巨大な鉄の扉が開かれ、現れるは――大望の列車砲。
 重厚なりし鉄の巨大兵器が其処にあるのだ。
 そして。砲身が天を向く。
 ――刹那に響くは、数多を響かせる砲撃の音。
 列車砲の存在をこの上なく示す――強大なる圧であった。


 鳴り響く音はどこまでも届く。
 軍事施設はおろか市街地全域に響き渡り。
 更にはより遠く、遠くまで響こうか――
 その音色は誰しもの魂を揺らす。味方にとっては震え上がらせる鼓舞の音であり。
「潮時か。まぁ――いい。兵器一つで戦況が変わる程でもなし」
 敵にとっては、ソレが自らに向いたら……という恐怖の音でもある。
 然らばシグフェズルは苦笑一つ。
 今からアレを落としても、傾いた士気が元に戻る事はあるまい、と。
 故に指を鳴らして示すものだ。『撤退だ』と。
「引き上げですか。ならば好きにさせてもいいでしょう――此方の目的は達されました」
「うん。だけどまだ警戒はしておこう。連中だって最後に何か仕掛けてくる可能性も……と!」
 であれば瑠璃が外へと出でて状況の確認を。同時にラムダも敵を見据え――れば。
 その時。シグフェズルの背面に備え付けられし『何か』から、一撃が放たれた。
 それは砲弾? いやもっと違う何か、随分と禍々しい気配が――ッ!
「総員、伏せろッ!!」
 故に。エッダは、声を張り上げる。
 姿を見せた列車砲を、破壊とは言わぬまでも少しでも傷つけんとした一撃。もののついでに兵をも巻き込まんとするのなら――エッダはその身を挺して全てを救わんとする。アトラスの守護たる姿が――彼女の身を焼けども、全てを庇って。
「大佐殿――!」
「民を……本気で狙うのか」
 此処にいるのは軍人達。有事の際には命を懸ける者達。
 ――しかしそれ以前に鉄帝の民でもあるのだ。
 分からいでか、その程度の事か。本当に、本当に其処まで落ちぶれたのか。
 ならば。
 貴様は憤怒の魔種。
 父の皮を被り囀る者。
「――次は、本気で討つ」
 貴様如きとフロールリジでは、背負うものが違うのだ。
 フロールリジの名をもってして――穢れた魂を、必ず討ってみせよう。

 そして。列車砲の砲撃音は、市街地にも到達していた。

「今の音は……彼方はどうも、しくじったようだな……!」
 ホワイダニーは聞く。天を眺める様にしながら、作戦の失敗を。
 周囲の天衝種らもどこか動揺しているが如き気配を見せれば……これ以上は無為かと。
「退くぞ! アスィスラ殿、貴方もそろそろ――」
「そーはいかないよ! 二度も三度も逃がすもんか!」
 であればと撤退の意思を固めるホワイダニー……へと往くはヒィロだ。
 天衝種を盾にする戦術。ソレはもう見た事があるのだと――阻止する動きをみせよう。
 然らば。ホワイダニーは即座に雷撃をもってしてヒィロを排さんとする。
 如何に彼女が優れた動きをもっていようとも、動きを予測できれば穿てると――
 しかし。
「うん。いいよ――美咲さん」
 それは。ヒィロ側も承知の上の動きだ。
 見切らせてやったのだ。いや『見せかけた』というのが正確だろうか。

 ――ヒィロ。私らは無名だけど、ヤツには一度手を見せてるからね。鬼札を仕込むよ。

 強襲する前。小声で彼女と打ち合わせていたから。
 ヒィロが影となる。美咲の一手を紡ぐ為の。
 美咲さんが言ってた『最終手段』
 言葉にされなくてもわかる。
 いつだって一緒にいるボクにだけは伝わる。
 だから。
 斜線を体で区切るのだ。あえて。自らの身をもってして――奴を、討つ。
「普段なら絶対使わない手よ……光栄に感じて、くたばれ」
「き、貴様――まさかッ――!!」
 そうして放つ。
 美咲が――全力全霊の一撃をもってして、ヒィロごと貫くのだ。
 虹色の瞳が世界を捉える。数多をすり抜け、煌めこう。
 ――阻むものなき貫きの御業なり。
 ホワイダニーの心臓を穿つ。勿論、ヒィロも纏めて、であるが。
 走る激痛。だけど――これでいいんだ。
「ヒィロ!」
「うん――大丈夫だよ、美咲さん」
 迸る血流。幸いにして、ヒィロの命にまで別条はなさそうだ……し。
 何より。

 ――美咲さんになら、このまま殺されてもいいかもってちょっと思っちゃった。

「……馬鹿ね。ヒィロが死んでいいわけないでしょ、二度とやるもんですか」
 抱きしめる。ヒィロの身を案じる様に、強く。強く。
 ――後方側が崩れ始める。ホワイダニーが落ちた事によって、防衛の要が抜けたのだから。
 故に。
「おいおいホワイダニーの野郎、今度こそ死んだか――?
 やーれやれ。ここいらが喧嘩の終わり所かねぇ」
「おや、終わりですか……? 僕はまだまだいけますが」
「命まで気張るなよ、小僧。流石に立つのもそろそろキツイだろ?」
 アスィスラは後頭部を掻きながらどうするか考え始めるものだ。
 眼前には――憂炎がいる。満身創痍の状態の、だ。
 盾で幾度も防いできたが、その腕自体がもう限界。
 ……なんで此処まで貴方と戦ってるのかって?
「男の矜持って奴ですかね。此処で引いたら僕は一生後悔する」
「ほう――そいつは具体的にはなんだ?」
「……さて。まぁ、それはその内」
 言葉にする程の意味はない、と。微かに視線を滑らせた先にいたのは『誰』か。
 ……いずれにせよ彼の瞳から闘志は未だ消えていない。
 仲間からの、彼らの信頼に答えたい。友情を信じたい。悲しませたくない。
 それになにより――知ったこの『感情』に応えたい。
「ぶははは! ま、そうだな! これ以上まだやるってんなら……『目の前の敵を倒せばいい』戦いとはまた違うオッサンなりの戦り方、見せてやらぁ! アウレオナの嬢ちゃんにもまたメシ食ってもらいたい所でもあるしな! ――アウレオナの嬢ちゃんにも好評だったんだぞチャーハンとか!」
「なに、チャーハンだとぉ……! アウレオナ、テメェまさかチャーハンに屈したのか!」
「ゴリョウのチャーハン、美味しかったよ!」
「俺もチャーハン作った事あったろ! それよりうめぇってのか!」
「え、そうだったっけ? うーん、でもおとっつぁんの料理って、正直雑だからなぁ……」
 雑ゥ!? 次いで言葉を口にしたのは、ゴリョウか。
 彼もまたかなりの疲弊が見えるが――しかし顔色には出さぬ。
 ……アスィスラを前に油断は出来ぬから。
 アスィスラは先程から時折、アウレオナと漫才染みた、どこかコミカルな会話を繰り広げる事もあるのだが――しかし。一寸も途切れない殺意が共にあれば、どこか恐ろしさも感じ得る。例えば彼は軍人らの首をもぎ取る事も出来るのだ。
 口では茶化す様な言動をしながらに殺意と闘志が同居している。
 彼はあの口調のままに人を殺し、あの口調の儘に次なる敵を見据えるだろう。
 ――気を抜けば刹那に三途の果てに至らされるかもしれぬ。
 だが、ゴリョウとて、ここまで幾度もの戦いを抜けてきた玄人。
 その熟練具合をもってして――この最終線を護り続けよう。
 どうなるか。奴の様子をしかと眺め、て――
「……物凄い轟音。列車砲の空砲かな? という事は、向こうに割かれてた戦力が此処に戻って来る筈だよ。その前に此処は撤退したらどうかな――ここが『戦場』なのはもう過去の事だよ」
 であればその思考を後押しする様に紡ぐのはアリアだ。
 負傷の大きい者に治癒の術を張り巡らせ、魔力をいつでも攻撃にも支援にも転じさせるように備える彼女は――停戦を提案してみよう。これでアスィスラが退けば良し。退かねば……まぁ、その時は戦力が集結するまでなんとかしてみせようかと。
 一拍。二拍。その末に、アスィスラが辿り着いた結論は――
「ま、いーや! 此処で俺も命賭ける程の事はぁねぇしな! 帰っか!」
「帰さないわよ。さっきの言動忘れてないわよ。死になさいよ此処で」
「お、お母様! 待って待って、せめて冷静に!」
 然らば。アスィスラはあっけらかんと撤退の意思を見せるものだ。
 ならばと笑顔の儘に、内に憤怒の感情を貯め込んでいるソフィーリヤがアスィスラを追撃せんとする。サクラも同様に、限界が近い憂炎やゴリョウのカバーに入るべく剣を構えながら往こうか。
 残存の天衝種へと撃を紡ぎながら――
 しかし。アスィスラはソフィーリヤの一撃を躱しながら、市街地の一角の窓に飛び込んだ。
 そのまま建物の中を通って逃げる気か――
「待って! 最後に一つ。どうして貴方はそちらに属しているの!?」
 故に。アリアは声を張り上げる。恐らく届いているであろう、アスィスラへと。
「アウレオナさんだって、本当に娘さんなの? 貴方は一体――」
「あぁん? 俺はぁ、個人的に決着を付けねぇといけねぇ奴がいるんでなぁ……
 その為だったらこの老いた肉体も、魂も、悪魔に売ってやるさな」
「悪魔って――」
 一体何のことか。更に続けて問わんとしたアリアは――しかし感じた。
 強烈な。『呼び声』の反応を、だ。
 まさか――魔種だというのか? あの人物が、本当に――

「ハッ! まぁまた会おうぜイレギュラーズ! お互いに命があったらな!」

 ……そして彼の気配は消えていく。
 軍人達が彼の行く末を追わんとするが――しかし、無駄だろうか。あれだけ強いのであれば、追いつけても討つのは容易ではない……むしろ半端な戦力で挑めば全て返り討ちにあうだけだ。
「はぁ……全く。新皇帝派にも色んな人がいるよね」
「とりあえずは……将軍に報告に挙がらないといけないか、な」
「ああ――後はメシだメシ! 食って寝て、そっからまた次の動きってな!」
 ともあれ、と。サクラは最後の天衝種を切り伏せながら吐息を零し。
 同時に憂炎とゴリョウは残敵がいないか周囲を警戒しながら――言うものだ。
 ザーバ将軍に、戦勝の報告を持って帰ろうと。

 ――おおお! 南部戦線、万ー歳!!

 と、その時。街のどこからか――勝ち鬨の声が挙がるものであった。
 それはやがて街全体へと波及していく。
 新皇帝派への反撃作戦は――成功したのだと、誰しもの魂に刻まれるかの様であった。

成否

成功

MVP

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃

状態異常

ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
黒豚系オーク
ヒィロ=エヒト(p3p002503)[重傷]
瑠璃の刃
エッダ・フロールリジ(p3p006270)[重傷]
フロイライン・ファウスト
三鬼 昴(p3p010722)[重傷]
修羅の如く
シェンリー・アリーアル(p3p010784)[重傷]
戦勝の指し手

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 列車砲を奪取した事による影響は――また後程。
 ありがとうございました。

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