PandoraPartyProject

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天は未だ曇天に

 海の国では一大決戦が勃発し。
 貴族の国では一人の令嬢の処刑を巡る動きが苛烈となっていた――が。
 鉄の国では混迷する国内状況の中で、いくつかの勢力が二つの狙いを定めていた。

 一つは『不凍港ベデクト』――鉄帝の中では貴重な凍らぬ港である。
 一つは鉄帝各地に伸びる『鉄道網』――より具体的にはそれらが集約する『駅』と言った所か。

 それぞれの地の奪回、および調査の為の動きが見えていたのである。
 ……もうじきこの国には冬がやってくる。
 混沌でも北に位置する鉄帝国の『冬』は恐ろしいモノだ――極寒なる環境は鉄騎種であればこそ耐えられる者もいるが全てとは限らず……いやそれ以前に土壌が豊かではない鉄帝国では食料の備蓄が甘ければ餓死者も出る。極限まで飢えに達した者はやがて『どんな行動』に出るか知れたものでもない。
 故に、かは知れぬが。
 各勢力共に本格的な冬が訪れる前に、少しでも勢力を安定させんと動き出すのだ。
 不凍港を手に入れれば海のルートが確保できよう。そこから得られるモノもある。
 鉄道網を回復させれば物資の流通が回復しよう。そればかりか新皇帝派に対する防衛拠点とも出来るかもしれない――故に帝政派やザーバ派は『トリグラフ作戦』と称した鉄道網奪取計画を既に実行に移しているぐらいだ。
 近い内に各拠点に対する本格的な調査活動も始まろうとしている――そんな中で。

「……なぁ嬢ちゃん、ホントにここまでで良いのか?
 もうちょい行きゃ南部の将軍様の地まで行けんぞ?」
「ううん。拙は大丈夫だからここまでで良いよ――ありがとね」

 一人の少女が街道沿いで言を交わせていた。
 どうやら少女は馬車に乗っていた様だ――が。どうにも途中下車して此処で別たれるらしい。さすれば……馬車を操りし御者は年若い彼女を心配する言を紡ぐものだ。今の鉄帝はどこが安全かすら分からぬ情勢下であるのだから。少女が一人で行動するなどあまりに危うい。
 強いて言えばそれぞれ理念は異なれど、新皇帝を良しとせぬ勢力の本拠が比較的安全な地として該当するだろうか――故にこそ此処から一番近い城塞までは一緒にいてはどうかと語り、されど少女はにこやかなる顔を示すのみ。
 何者も恐れぬ、自信があるかの様に。
「拙ねーおとっつぁんから鍛えられてるから。魔物とかバッサーって斬り倒せるし。
 実際そうだったでしょ? だから拙は拙の道を行くよ。おじさんこそ気を付けてね」
「いやまぁ確かに道中は随分頼りにさせてもらったが……危なくなったら南の方に走ってくるだぞ? ああいやサングロウブルクでも、ノイスハウゼンでもどこでもいいけどよ。安全そうな街に行きな」
「うんうん! じゃあね!」
 腕に自信はあるのだから、と。
 告げる彼女の名は、アウレオナ・アリーアル。
 かつて大闘技場にて大いなる名声を手にしていたある闘士に育てられた少女は何物も恐れていない。
 心配そうに何度も振り返る御者に手を振りながら――やがて彼女は別の方角を見据え。
「さーて。おとっつぁんが『今の時期なら南に行った方が暖かいぞ』なんて言ってたから楽しみだなぁ。たしかおっきな駅があるんだよね。美味しいモノとかあるかな~♪」
 往く。鼻歌交じりに、まるで散歩か旅行にでも赴く感覚で。
 南部方面の一大鉄道施設――ゲヴィド・ウェスタンへと。
 皇帝が入れ替わり、激しい混乱によって如何なる事態になっているか……全く分からぬ地へと。
 荒れ狂う天は未だ静まらぬ。
 鉄帝に吹き荒れる奔流を制するのは、はたして何処の地である事か……


 ※鉄帝国で派閥ごとに動きが見える様です……

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