PandoraPartyProject

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ニュー・キャスト

●性格の悪い男
「御覧よ、ユキノジョウ。連中右往左往してる」
「想定通りなのだろう?」
「まぁね。その為に最初から人を仕込んでいたのだし」
 肩を竦めた刃桐雪之丞にクリスチアン・バダンデールは人の悪い顔をした。
 体は万全ではない。怪我を押しての出陣だ。しかし、この登壇は彼にとっては予定通り。
「ある程度、やり合ってくれないと盛り上がらないからね。
 嘘は大きく吐いて――それなりの真実を混ぜ込んでおくものだ。
 人望のあるイレギュラーズが傷付けられるのを見れば彼等も心穏やかにはいられないさ」
 せせら笑うクリスチアンはあくまで余裕めいていた。
 絶対に外せない用件だが、気に入らない連中に『先』を譲ってまで用意した局面である。
「それでこれからどうするんだい?」
「……がるるるるるる……!」
 呆れたように尋ねる時雨の一方で野生動物のように唸り声を上げるたてはは『待ったなし』そのものだ。
 この瞬間まで我慢出来ていた事が奇跡と言っても過言ではない。
「登場するさ。思い切り華やかに、ね。
 第一、処刑台のお嬢様にハッキリご理解頂かないと割に合わないじゃないか。
 貴女様が真に頼りに出来るのはこの幼馴染です、ってね!」
 事こうなればアーベントロート側は兵力の一部を群衆の制御に割かずにはいられない筈である。
 ヨアヒムが遊び半分に用意したギャラリーを敵方の不安要素として動かすのはクリスチアンのプラン通り。
 しかしながら、これはまだ途上である。トドメは、これから。
「さあ、行こう!」
 特別な四騎はかくて、蒼薔薇迷宮に参戦する。
 それは愛の為であり、やはり愛の為なのだろう。
 そんな事、とても面映ゆくて言えないけれど――

●転機
「いやア、性格が悪いなア! 彼!」
 パウルは思わずそう快哉してケタケタと笑い声を上げていた。
 そろそろ頃合いか、と踏み込んでみれば早速の御登壇である。
 他人の事は言えないが、クリスチアンの動きは確かにアーベントロートにとっては大迷惑だ。
「いやはや、これは困ったんじゃないですカ? 兵力が大分落ちますねェ。
 お嬢様、助けられちゃったりして!」
 ……元より不利を承知で構えた陣地だが、滅茶苦茶にされるのはまた別問題になる。
 クリスチアン・バダンデールは幻想切っての名声を持つ大名士である。
 抜群の経済力、流麗な見た目、覇気、何を切り取っても天才と称されるその能力。
 貴族では無いが、北部で独自の勢力圏を保有する程の政治力を見せ続けた彼は幻想民において『最も信頼されている支配層』の一人だった。
 そんな男が、こう言った。

 ――アーベントロート侯を告発する!
   先に起きたサリューでの事件は彼の差し金だ。
   私は彼の凶刃に傷付けられ、これまで療養を余儀なくされていたのだ!

『政治的な綱引きをするならば、これでもヨアヒムを仕留める事は出来ないだろう』。
 だが、ローレットとの争いで信を揺らがせる群衆の、『この場の心理』を更に乱れさせるに彼の登場と衝撃的な言葉は十分過ぎた。
 余計にややこしくなった状況にアーベントロート派の足並みが大きく乱れていた。
 これは先に攻め込んだローレットに利するものであり、混乱の隙を突き同様に鉄火場に飛び込んだ四騎にとっても同じであった。
「……クリスチアンはん」
「うん?」
「もう、あんま止めんといて下さいね。うち、おかしくなってしまいそうやから」
 たてはの言葉が『静か』だったのが致命的だった。
「分かってる」と苦笑したクリスチアンは考える。
(出来れば、集団行動をして欲しいが――難しいな。
 だが、平気だろう。私の考える所によれば、恐らくはローレットの誰かが)
 彼女は懐かない野生動物のようなものだが、兎に角連中は物好きだから――


 ※シレンツィオにて、決戦が始まりました――!
 ※アーベントロート動乱『Paradise Lost』が次のフェーズに移行しています!

鉄帝動乱編派閥ギルド

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