PandoraPartyProject

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小さな変化

「……はぁ、例の領地割譲の。誘致の為の施策ですか、ええ。随分と熱心なんですねェ」
「オトモダチの為に力を尽くすのはそれ相応の礼儀だとは思わなくて?」
「僕からすりゃあ、お嬢様がまっとうに『オトモダチ』を作ってる方が意外でしてね!」
「あら、パウル。その首は胴が恋しくはないみたいですわねぇ」
 遥かなる豊穣の地・神威神楽、そして再現性東京――特異運命座標の活躍が広域に広がる一方でその足元である幻想(レガド・イルシオン)も少しずつ変化を遂げようとしていた。
 麗らかなる秋の昼下がり。幻想北部、かの国の一大軍閥たるアーベントロートが根を張る勢力圏、その中心地ではその当主代行たるリーゼロッテ・アーベントロートと家令――『鴉』ことパウルが『何とも言えないやり取り』を続けている。
「生憎とまだ人生を辞めたくはありませんねェ! 僕はビューティフルライフの肯定派でして!
 ……いや、まぁ。別に構いやしないんですけどね?
 随分と便宜を図られるなぁと思ってるのは冗談じゃなくて。
 フォルデルマン陛下の思い付きは何時もの事ですが、今回は本当に乗り気なんですねェ?」
「……………文句でもございますの?」
 肩を竦めたパウルにリーゼロッテは少しだけ罰が悪そうに咳払いをした。(リーゼロッテ自身も余り他人の事は言えないが)年齢不詳の気のあるこの男は先代より前からアーベントロート領に仕える謂わば大番頭のようなものだ。当然ながら脈々と継がれるアーベントロートの在り様も、もっと個人的にリーゼロッテがどうだったかも良く承知していると言える。彼女が少し鼻白んだのは、これまでの彼女と最近の彼女が『大分違う』事を自覚しているからに他ならない。
 パウルは少しだけ意地の悪い顔をしたが「いえ、別に?」とリーゼロッテの問いをはぐらかす。
「ただ――まぁ、最近のお嬢様を見ている限りではコレもそう不思議じゃないのかも知れませんねェ。
 ほら、ついこの間。命知らずな――おっと、失言!
 身の程知らずな何処ぞの坊ちゃんに求婚されたじゃあないですか。
 いやあ、以前のお嬢様ならそれはそれは愉快で手酷い対応をしたもんだと思いますけどね。
 淡く笑って『ありがとうございます、と言っておけば宜しいかしら。ふふ、運命が交差する事がありましたらば』だなんて! いやあ、大人になったというか何と言うか!」
「……………」
「それだけじゃあありませんよねェ。
 アーベントロートの家の者と言えば、外部はおろか領民さえ目を合わせようとしなかったのに!
 最近の当家ときたら、領地の農民、職人から自主的な献上品がやって来る始末!
 我々に阿る貴族や豪商共のやり口ならいざ知らず、こんな事はお嬢様とは思えない状況ですよ!」
 不躾な言葉に、にっこりとした笑顔を浮かべたままのリーゼロッテに殺気が宿る。
 この道化が真意の見えない、何とも捉え難い話し方をするのは何時もの事であるが――『皮肉な事にまだ手が出ていない事それそのものが、リーゼロッテが如何に丸くなってきたかを示しているかのようである』。
 ……実際の所、茶化すパウルの指摘はある意味で本当だった。
 元々リーゼロッテは『幻想の至宝』『幻想の青薔薇』『宝石』とさえ称される美しき領主である。
 ただ、それをはみ出して余りある享楽的な嗜虐性と恐ろしく安定しない気分が全てを台無しにしていただけで――凡そ三年程前から徐々に徐々に尖った部分を丸くしてきた彼女は、その統治も含め以前よりは安定的であった。今となっては蛇蝎の如く嫌われた以前程は周りに避けられてはいない。尤もそれは政敵であるフィッツバルディ公爵家も同じようなものなのだが。
「……問いを変えましょう。パウル、貴方はそれが不満?」
「僕が他ならぬアーベントロート家の当主代行に口を挟む謂われはありませんがね。
『アーベントロート家としては』親しみやすい領主像は『違う』とは思いますねェ。
 ……言って、僕等は軍閥だ。それも人様に言えないタイプの仕事を請け負う国の暗部だ。
 舐められちゃあいけないし、神秘がミステリーを纏えばそれは正しい『恐怖』になる。
 恐怖は仕事をしやすくしますからね。当然の事でしょう?」
「……分かっておりますわよ、それ位」
 家令に諫められたリーゼロッテは珍しいタイプの苦笑を浮かべていた。
 これまた自覚している事である。リーゼロッテが畏れられたのは生来の気質からだが、アーベントロート家に意味が無かった訳ではない。『むしろ先代の引いたレールは、アーベントロートとはかくあるべし、という心得は以前のリーゼロッテを肯定していた』。ささやかな事に頬を染め、喜怒哀楽を見せ、あまつさえ周囲に親しまれる事さえある今の彼女はそれとは全く違うと言える。他ならぬ彼女が会った事も無い父親に義理を果たす必要はないのだろうが、染みついた『作法』は決して軽いものではない。
 複雑な顔をしたリーゼロッテに「でも」とパウルは笑って続けた。
「不満じゃあないですねぇ、僕は。今のお嬢様はとても瑞々しくて幸せそうだ。
『少なくともアーベントロート家の当主に徹している貴方よりはずっと、ずっとね』。
 ……ま、僕が言っても烏滸がましいし、お嬢様の思い煩いは晴れないかも知れませんけド」
 一拍間を置いて彼は言う。
「先代もそう思ってるんじゃないですかねェ?
 だって親ってのは子供の色々な顔を見たいモンだ。
 何時だって――そう、何時だってね。その成長を何より願ったりするモンでしょう?」


 *ラサ:ラサで色宝(ファルグメント)なるアイテムが発見され、ローレットの管理下に置かれています。
 *ラサに『大鴉盗賊団』の悪事が広まっているようです。
 【速報】大鴉盗賊団が色宝(ファルグメント)を狙って動き出したようです!

 *秋イベントAutumn foodが始まります!
 *カムイグラ:巫女姫一派が大規模な行動を開始しました!


※シナリオ『静寂の青、外洋の空』の結果から、クエスト『アクエリア・フェデリア開拓 総督府からの知らせ』が発生しました。
※一度だけ名声を獲得出来るクエスト三年目の祝祭が発生しました。
※一度だけ悪名を獲得出来るクエスト三年目の誘いが発生しました。

各国領土が獲得出来ます。キャラクターページの右端の『領地』ボタンより!

これまでのカムイグラ / これまでの再現性東京

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