PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

光を抜けて

 亜竜集落イルナーク。
 死してなお強大な威圧を放つサンダードレイクの骨と、岩山をくり抜いた硬い岩盤に守られた集落。
 それがアダマンアントの群れによって壊滅し、イレギュラーズによる大々的な調査が行われた。
 その結果は三大集落の里長たちに伝えられ、今この瞬間も今後の対策の為の会議が行われていた。
 今後どうするか。
 アダマンアントクイーンへの対策は。
 どのような影響が考えられ、どのように防ぐか。
 話し合うべきことは多々あり、それによって再びイレギュラーズに大規模な依頼が出されることは確実であろうと思われた。
 だからこそ今は僅かな平穏を享受すべき時であり、実際そうなるはずだった。
 元より覇竜における亜竜種たちの生活とは、そんな薄氷の上でハイヒールを履いてタップダンスを続けるようなものなのだから。
 それでも、かなりの危機感と迅速性をもって話し合いは行われていた。
 それは「攻撃的なアダマンアント」という覇竜の地下の覇者に対する正確な危機感がもたらしたものだろう。
 だから、1つ言わなければならない。
 里長達の行動は遅くはない。
 むしろ素早すぎる程の、そんな迅速な対応であったと断言出来る。
 だが、それが常に最善の結果をもたらすとは限らない。
 亜竜集落イルナークを襲ったアダマンアントの群れ。
 それは「イルナークを襲うだけ」では、やはり満足していなかったのだ。
 各所で伝えられるアダマンアント発見の報告。
 そしてアダマンアントではない上位種にして戦闘種「アダマンアントナイト」出現の報告。
 それらは地下ではなく……地上へとその活動の舞台を移していたのだ。
 とある場所ではアダマンアントがワームへと戦いを挑み、大暴れしていた。
 とある場所では、アダマンアントの群れが空のワイバーンを酸を吐いて落そうとしていた。
 とある場所では、アダマンアントがアースドレイクに戦いを挑み、雷撃で叩き潰されていた。
 また、とある場所では。
 また、別の場所では。
 次々と舞い込む報告は、イルナークを襲ったアダマンアントの群れが更に勢力を拡大しようとしている、その地獄のような未来予測を裏付けていた。
 そうなれば、どうなるか。
 すでに戦闘種たるアダマンアントナイトが現れている状況で、その戦力拡大を許したらどうなるのか。
 たとえば、たとえばだ。
 100を超えるアダマンアントナイトが誕生するような事態になったらどうなるだろうか。
 イレギュラーズの助力を得たとて、それこそドラゴンを相手にするような絶望的な事態になりかねない。
 そうなれば、今度こそイルナークの壊滅を超える騒ぎになる。
 亜竜種の小集落も、ウェスタも、ペイトも、フリアノンも。
 もしかするとそれすら超えて「外」へとアダマンアントの大軍勢が流れ出るかもしれない。
 そうなれば……世界全てがアダマンアントに喰い尽くされる可能性すら冗談の類ではなくなる。
 今回現れたアダマンアントクイーンは、間違いなく過去最大の侵略の意思を持っている。
 何故なのか。
 今まで現れた、そして現存しているアダマンアントクイーンに、そこまで強い勢力拡大の意思を持っている個体はいなかった。
 だが……現実としてアダマンアントたちは大規模な食糧調達を開始している。
 許すわけにはいかない。
 させるわけにはいかない。
 幸いにも覇竜を生きるモンスターや亜竜たちは、アダマンアントに簡単に殺される程ヤワではない。
 むしろアダマンアントを叩き潰す実力を持った化け物も多い。
 だがそれとて数で攻められればどうなるか。
 アダマンアントの最大の恐ろしさは上位種たるアダマンアントナイトではなく、その数の多さなのだから。
「……でも、これはチャンスでもあるんだ」
 『鉄心竜』黒鉄・奏音(p3n000248)は、そう言うとグッと拳を握る。
 ピンチはチャンス、とは言うが……これに関しては精神論ではなく、純然たる事実だ。
 アダマンアントのその最大の強みは「数」であり、それを今食糧調達に使っている。
 つまりそのモンスターにとってアダマンアントは最大の敵ということになる。
 当然だ、アダマンアントが襲っているのだから。
「つまり敵の敵は味方……とまではいかないまでも、共闘の真似事は出来るかもしれない」
「勿論、出来ないかも。でも、最大のチャンスではあるの」
 静李棕梠も、そう続ける。
 そうだ。その通りなのだ。
 今この時であれば、覇竜を闊歩する強大なモンスターや亜竜の力を利用して、アダマンアントの勢力を削り取ることが出来るかもしれない。
 勿論、少しずつ……ではあるが、その僅かな一歩が重なれば大きな成果に繋がるかもしれない。
 少なくとも、アダマンアントの勢力拡大と……それによる覇竜滅亡を食い止める事が出来るのだから。

※アダマンアント勢力の拡大を防ぐための掃討作戦が始まります!
 今日から継続的に掃討依頼が発行されるでしょう

これまでの覇竜編深緑編

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM