PandoraPartyProject

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黄金色の昼下がりに

 青き空が広がっている。
 『物語』は終わった。数多の意志が、魂が込められた一戦に終幕が訪れ。
 練達のコンソールにレッド・アラートは広がっていない。
 ――それは戦いの終わりを確かに指し示していたのだ。
 さすれば、練達の各地でシェルターに避難していた人々も戻り始める。
 暴走していたドローンや警備ロボの類もマザーの制御下に置かれれば無害なものだ……とはいえHades――否、クリストが妹・クラリス(マザー)へのクリミナル・ワクチンの投与による治療からまだほとんど時は立っていない。クラリスの活動には兄による大きな補助が成されており、マザーが完全なる調子を取り戻すには時間が掛かりそうだ。
「さて――ご機嫌は如何かな? マザー」
 そんなマザーへと声を掛けたのはDr.マッドハッターである。
 モニター越しに捉えた彼女の様子は平静そのもの……に見えるが、さて実際は大きな疲労が彼女にはあるものだろう。尤もシステムたる彼女はモニターに移す自身の姿に、斯様な表現など齎さず、軽く頷く様にしながら。

「……えぇ」

 ――ちょっとちょっと、帽子屋chang! クラリスchangは病み上がりってか、治療中なんだからサ!
   そんな気軽に声を掛けないでよNE! 休憩しなくっちゃ治るモノも治らないっしょ?

 返答する。と、直後に声を掛けてきたのは――件の兄たるクリストか。マザーを庇う様にスピーカーから声を滲ませてくる彼に、マッドハッターは笑みを浮かべながら。
「これはこれは、過保護な兄上が付いたモノだな! いやはや、違うのですよ、マザー。
 どうにもね、貴女を心配しすぎて胃痛と心労で倒れそうな我らが塔主カスパールに代わりご機嫌伺いと、茶会の誘いに参ったのです。ええ、ええ、茶会とは実に良い物だ。心の毒さえティータイムで全て拭い去ることが出来る。さ、ティーカップの準備は良いかい?」

 ――え? ヤバくなーい? 聞いてなくない? 俺様chang傷つくんだけどッ!

「……この子は平時からこの様子ですからね」
 マザーの一言にクリストが「ええー?」と声を上げるのを聞きながら平穏がやってきたのだとマッドハッターは笑みを零した。
 現状のマザーはクリストによる『データの補修』が行われている。『過保護なお兄ちゃん』は彼女が誰かと会話することにも心配を滲ませている様子だが……。

 ――で? 帽子屋chang! お茶会って?

「お茶会とはその名の通り! 愛しの特異運命座標(アリス)達も誘っての功労会――と言った所だろうか。なにせR.O.Oにしろ現実にしろ彼らがいなくば、今やこうしてお二方と言葉を交わす余裕もなかった事だろうし――これは一つ、皆でテーブルを囲うぐらいの催事はあって然るべきかと」
 単純に翻訳すれば祝勝会を皆でやろう、という事である。
 それは勿論クラリスやクリストも含めて――だ。誰ぞを除け者にする事もない……この結果は、皆がいたからこそ紡がれた者であるのだから。
 それに。皆が集まる場で――話しておきたい事もあるのだ。
「そう、それと……なんとも聞いた所、R.O.Oの住民が『人工身体』に定着したとか?」

 ――耳が早いねぇ、帽子屋chang! そうだヨ、そうそウ!
   そー言う技術が見つかって、ネェ! 試しに繋いダ人工身体との相性がバッチリだったのサ!

 クリストは、言う。電子と現実が結合……
 つまり――R.O.Oの住民が『外』へと出る事が可能になった、という訳だ。
 それは『電子生命体が人工身体に定着した』というべき事象だろうか。
 それらが『新たな生命か?』と言われると些か微妙な所ではある。単純に言えばAI搭載ロボットなのだが……ごく一部には混沌肯定に認められ『秘宝種』の枠組みとしてこの世界に顕現する者もいるのだ。
 技術自体が<ダブルフォルト・エンバーミング>の結果を受けて発見されたものであるため、R.O.O.以外の電子生命体にも適用できる――つまりどこかの博士が作った高度AIなど――も定着する可能性があるという事だ。
 ……これもイレギュラーズ達が齎した『奇跡』と言えるのだろうか――さて、その辺りはともあれ。

「まぁひとまずは愛しき特異運命座標(アリス)達と共に平和の味を甘受しようではありませんか」

 今は、ただ再度訪れた平穏を祝おうではないかと。
 Dr.マッドハッターは彼らも茶会へと――誘うものだ。
 カスパールや佐伯操も来る。希望ヶ浜の面々も至ってくるであろう。
 R.O.O側でも似たように――世界に訪れた平和を、祝っている筈だ。
「……そうですね。ならば、一時ばかりの……」

 ――おーっとッ! なら俺様changも勿論いくYO!

 では。この一時限り味わえる甘味を、此処に。
 クラリスとクリストもまた自らの演算機能をそちらへと幾分回すものだ。
 何時も通りの蒼を取り戻した空の下で。

 あぁ。世界は今日も、どこまでも行ける様な透き通る色が――広がっていた。


 ※現実側では『Happily ever after.』で、R.O.O側では『仮称、世界を救った君たちへ』で祝勝会が行われているようです――!
 ※<ダブルフォルト・エンバーミング>の結果を受けて、『電子生命体が人工身体に定着した』タイプの生まれが秘宝種に追加されました!


 ※……Detection. risk Jabberwock
 ※――観測コード Jabberwock:観測域から離脱しました。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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